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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第百幕 救出と脱出
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フィリス聖王国王城を後にした千夜は早速フーリッシュの屋敷に向かった。屋敷の場所はハクアたちから聞いているため探す必要は無い。
人間至上主義の国であるこの国でこのまま行動すれば目立ち変な噂が流れる恐れがある。そのため千夜は隠密スキルを使い移動していた。
(さて、このスピードだとあと数分で到着する頃だろうな)
屋根伝いに移動する千夜は、たった半年弱の出来事を思い返していた。時間にしたらそんなに経ってはいない。それでも濃い出来事が多かったな。と感じていた。
最初は己のミスから始まり、冒険者として依頼をこなし、力を認められ七聖剣の一人にスカウトされる。騎士の一人となって貴族吸血鬼とも戦い、魔族対策会議では国の代表補佐として帝国に戻り、魔族軍とも戦った。そこで久しぶりに幼馴染と再会し縁を切った。セレナとも婚約もした。帰還してからは八聖天の一人となったが依頼を完遂するべくフーリッシュに取り入った。急激な力の正体が不屈の湧き水であると知り、それを全て破壊した。予想外だったのは諜報員だと疑われ正体がバレてしまった事。いや、バラしたと言うべきだろう。それでもなんとか任務は完遂した。
(あとは監禁されている女たちを救出すれば、終わりだ。心残りがあるとすれば今回の事が公になるかもしれないって事だが、俺が証拠を持っている事はヴァイスの奴も知っている。きっとなんとかしてくれるだろう)
物思いに耽っていると目的地に到着する。門の前には二人の警備兵が立っているが気にする事無く屋敷の中へと入る。
(暗殺者でも無いのに他人の家に忍び込むのはなんだか空き巣になってしまった気分だな)
自分のしている事に嘆息したくなる思いだが今は一時も早く監禁されている女たちの救出だと、頭を切り替える。
(確かハクアたちの情報だと書斎に入って左側の本棚に隠し階段の入り口があるって言っていたな)
音を立てないようにゆっくりと中に侵入した千夜は手当たり次第に調べる。
(こういうのはあんまり得意じゃ無いんだがな)
そんな事を内心思ってはいるが開けるのに2分と掛かっていない。これも千夜が持つスキルによる所が大きい。
扉を開け地下へと繋がる階段をゆっくりと下りていく。
ドアノブをゆっくりと捻り鉄の扉を開けると、思わず眉を顰めたくなる異臭が鼻腔を襲う。
(酷い。エリーゼ達が居なくて良かった。トラウマになるところだった)
部屋には全部で6人の女たちが全裸の状態で鎖で吊るされていた。彼女たちの足元には汚物の水溜りが出来ていた。
(まともにトイレにも行かせて貰ってないのか)
朧気な意識のなか、女たちは千夜を見る。正確には勝手に開いた扉を見詰めていた。そこで千夜は隠密を解き彼女たちの前に姿を現した。
「ひぃっ! 魔人!」
20代前半の人間の女が恐怖で顔を歪める。
「半分正解で半分外れだ。俺は混合種だ。お前たちを助けに来た」
「私たちを……」
今度はせっかくの綺麗な金髪を持っていたであろうエルフが掠れた声で訊いてくる。
「そうだ」
「でも……あの男に……バレたら」
「安心しろフーリッシュは死んだ」
千夜の言葉に目を見開けるが直ぐに笑みを浮かべていた。
「貴方が殺したの?」
「違う、別の奴だ。俺はフーリッシュのしていた事を暴露しただけだ。間接的殺したとも言えるかもな」
「そう、有難う」
「気にするな。それよりも今はここから脱出するのが先だ。この中でこの国に未練がある奴は居るか? 俺が住むレイーゼ帝国に連れて行くつもりだがどうする?」
千夜の言葉に最初笑みを浮かべたが直ぐに悲しげな表情を浮かべる者や不審に思う者も居た。
「安心しろ。お前たちを奴隷商に売るつもりは毛頭無い。お前たちが元気になれば直ぐにでも俺の元を離れて構わない」
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「簡単な事だ。助けたいと思ったから助ける。助けるなら最後まで完遂する。ここから脱出させたって事を助けたって事にしたくない。それはただの自己満足だからな」
「貴方魔族の血が流れている癖に優しいのね」
「別にどんな風に思うが勝手だが相手を見た目と種族だけで判断するのは間違いだと俺は思っている。大切なのは一人一人の人格や性格だ。ま、俺の考えだからな気にするな」
「そうね。人間に騙されて混合種に助けられているんだもの。そうなのかもね」
「手錠を外す。倒れ込まないように気をつけろよ」
そう言って千夜はアイテムボックスから鬼椿を取り出し鎖を斬る。
前もって言って置いた事もあり倒れ込む人間は居なかったようだ。
「荒っぽい助け方ね」
「器用な方じゃ無いからな。それよりも元気だな」
千夜が言っているのは見た目の話では無い。その事は人間の女にも分かっていた。
「私こう見えて元々スラムの生まれだからね」
「なるほどな。それよりも手を出してくれ手錠を外す」
そう言って千夜は一人一人の手錠に触れる。
「解」
千夜のスキルを使い手錠を一瞬にして弾ける様に外れた。
「さて、これを羽織っておけ。それには隠密スキルが付与されいる。誰にも見られる事はない」
全員分のフード付きのローブを渡す。
数分して全員が羽織り終わるのを見計らって。
「それじゃ脱出するぞ」
こうしてフィリス聖王国を後にした。
人間至上主義の国であるこの国でこのまま行動すれば目立ち変な噂が流れる恐れがある。そのため千夜は隠密スキルを使い移動していた。
(さて、このスピードだとあと数分で到着する頃だろうな)
屋根伝いに移動する千夜は、たった半年弱の出来事を思い返していた。時間にしたらそんなに経ってはいない。それでも濃い出来事が多かったな。と感じていた。
最初は己のミスから始まり、冒険者として依頼をこなし、力を認められ七聖剣の一人にスカウトされる。騎士の一人となって貴族吸血鬼とも戦い、魔族対策会議では国の代表補佐として帝国に戻り、魔族軍とも戦った。そこで久しぶりに幼馴染と再会し縁を切った。セレナとも婚約もした。帰還してからは八聖天の一人となったが依頼を完遂するべくフーリッシュに取り入った。急激な力の正体が不屈の湧き水であると知り、それを全て破壊した。予想外だったのは諜報員だと疑われ正体がバレてしまった事。いや、バラしたと言うべきだろう。それでもなんとか任務は完遂した。
(あとは監禁されている女たちを救出すれば、終わりだ。心残りがあるとすれば今回の事が公になるかもしれないって事だが、俺が証拠を持っている事はヴァイスの奴も知っている。きっとなんとかしてくれるだろう)
物思いに耽っていると目的地に到着する。門の前には二人の警備兵が立っているが気にする事無く屋敷の中へと入る。
(暗殺者でも無いのに他人の家に忍び込むのはなんだか空き巣になってしまった気分だな)
自分のしている事に嘆息したくなる思いだが今は一時も早く監禁されている女たちの救出だと、頭を切り替える。
(確かハクアたちの情報だと書斎に入って左側の本棚に隠し階段の入り口があるって言っていたな)
音を立てないようにゆっくりと中に侵入した千夜は手当たり次第に調べる。
(こういうのはあんまり得意じゃ無いんだがな)
そんな事を内心思ってはいるが開けるのに2分と掛かっていない。これも千夜が持つスキルによる所が大きい。
扉を開け地下へと繋がる階段をゆっくりと下りていく。
ドアノブをゆっくりと捻り鉄の扉を開けると、思わず眉を顰めたくなる異臭が鼻腔を襲う。
(酷い。エリーゼ達が居なくて良かった。トラウマになるところだった)
部屋には全部で6人の女たちが全裸の状態で鎖で吊るされていた。彼女たちの足元には汚物の水溜りが出来ていた。
(まともにトイレにも行かせて貰ってないのか)
朧気な意識のなか、女たちは千夜を見る。正確には勝手に開いた扉を見詰めていた。そこで千夜は隠密を解き彼女たちの前に姿を現した。
「ひぃっ! 魔人!」
20代前半の人間の女が恐怖で顔を歪める。
「半分正解で半分外れだ。俺は混合種だ。お前たちを助けに来た」
「私たちを……」
今度はせっかくの綺麗な金髪を持っていたであろうエルフが掠れた声で訊いてくる。
「そうだ」
「でも……あの男に……バレたら」
「安心しろフーリッシュは死んだ」
千夜の言葉に目を見開けるが直ぐに笑みを浮かべていた。
「貴方が殺したの?」
「違う、別の奴だ。俺はフーリッシュのしていた事を暴露しただけだ。間接的殺したとも言えるかもな」
「そう、有難う」
「気にするな。それよりも今はここから脱出するのが先だ。この中でこの国に未練がある奴は居るか? 俺が住むレイーゼ帝国に連れて行くつもりだがどうする?」
千夜の言葉に最初笑みを浮かべたが直ぐに悲しげな表情を浮かべる者や不審に思う者も居た。
「安心しろ。お前たちを奴隷商に売るつもりは毛頭無い。お前たちが元気になれば直ぐにでも俺の元を離れて構わない」
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「簡単な事だ。助けたいと思ったから助ける。助けるなら最後まで完遂する。ここから脱出させたって事を助けたって事にしたくない。それはただの自己満足だからな」
「貴方魔族の血が流れている癖に優しいのね」
「別にどんな風に思うが勝手だが相手を見た目と種族だけで判断するのは間違いだと俺は思っている。大切なのは一人一人の人格や性格だ。ま、俺の考えだからな気にするな」
「そうね。人間に騙されて混合種に助けられているんだもの。そうなのかもね」
「手錠を外す。倒れ込まないように気をつけろよ」
そう言って千夜はアイテムボックスから鬼椿を取り出し鎖を斬る。
前もって言って置いた事もあり倒れ込む人間は居なかったようだ。
「荒っぽい助け方ね」
「器用な方じゃ無いからな。それよりも元気だな」
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「なるほどな。それよりも手を出してくれ手錠を外す」
そう言って千夜は一人一人の手錠に触れる。
「解」
千夜のスキルを使い手錠を一瞬にして弾ける様に外れた。
「さて、これを羽織っておけ。それには隠密スキルが付与されいる。誰にも見られる事はない」
全員分のフード付きのローブを渡す。
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「それじゃ脱出するぞ」
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