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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第八十六幕 書庫とナンパ

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「では、全員の意見が出たところで多数決を取る。賛成の者挙手を」
 挙がったのは3つ。ベイラント、ライラ、エクス。

「反対の者、挙手を」
 挙がったのは5つ。レイ、リアン、クロウ、イザベラ、和也である。

「3対5で否決とする」
 レイの言葉に悔しそうにする3人。別に自分の意見が通らなかった事が悔しいのではない。和也の言葉に納得してしまった自分が居る事が悔しいのだ。

「では次の議題だが、我々にはそれぞれ役職がある。大抵は決められた区域の見廻りや部下の訓練指導など、様々だ。でカズヤにも何か役職を与えようと思うが何か案はあるか。カズヤも希望があったら言ってくれ」
(希望とか言われてもな)

「参考までに皆の役職が知りたいんだが」
「それもそうだな。私は主に軍務を預かっている。八聖天の統括とここで決まった軍務内容を教皇様に伝える役目もあるからな」
「俺は北西~北東までの区域の見廻りと部下達だけでなく兵士達の訓練指導もしている」
「僕は北西~南西までの区域の見廻りと情報収集が主な役目かな。簡単に言えば諜報活動かな」
「私は北東~南東までの区域の見廻りだけだ。何故か役職を就けてくれないのだ」
 不思議そうに悩むライラだが、
(なんとなく理由は分る)
 そんな事を思う和也。
 和也と同じ意見だったのか殆どの者が苦笑いを浮けべて居た。

「僕は南西~南東までの区域の見廻りと技術部門と共同で武器の技術開発と運用試験を行ってる」
「私が受け持つ区域はないけど、大半の区域に移動してるわ。何故なら私は医療関係だから。私の部下も殆どが戦闘向きじゃない人たちで後方で負傷した兵士達の治療を行ったりしてるの。前に薬草採取の依頼をギルドに頼んだら大量に集まったの。あれってカズヤ君がしてくれたんでしょ。ありがとうね」
 ライラに誘われる前に依頼で薬草採取を受けて大量に採取した事を思い出す。
(あれってイザベラからの依頼だったのか。どおりで採取量が多かったわけだ)

「最後に僕ですが、僕は王都の警備と治安維持に努めています。この国の人たちは良い人ばかりなので問題は少ないですが、それでもあるので遣り甲斐は感じますね」
「なるほど……」
 聞いてみたが逆に悩みが増えたような気がする和也。

「一つ聞くが空いている役職とかあるのか?」
「ありはするが我々八聖天とはあまり関係の無い物が殆どだ」
「例えば」
「土木関係や経済と色々とある」
「そういうのは普通、文官がする物じゃないのか?」
「そうだが、軍関連の事もあるからな」
「なるほど」
 色々と大変なんだな。と思う和也である。

「後は書庫の警備とかもあるが誰も遣りたがらないな」
「なに?」
 予想外の言葉に和也は首ごと捻り視線を向ける。

「遣りたいのか?」
「遣りたいな」
「だが、何故だ?」
「本が好きだから」
 なんとも解りやすい返答だろうか。

「そう言えばカズヤは暇さえあれば本を読んでいたな」
 何かを思い出したかのように呟くライラ。

「そうなのか?」
「ああ、本なら何でも良い。小説なら気分転換にもなるし、歴史書や魔法の書、戦術の書とかは勉強になるからな」
 和也はこの世界にきてあまりにも娯楽が少なく暇なときは本を読むようになっていた。もともと漫画や小説が好きな事も関係しているが。

「分った。カズヤには書庫の警備と整理を任せるとしよう。意義のある者は挙手を頼む」
 レイの言葉に誰も手を挙げるものは居なかった。

「決まりだ」
 こうして和也は書庫担当になった。八聖天がする事ではないが、それでも和也には有難かった。
 結局その後は議題もなく終えた。
 会議を終えた和也はさっそく書庫に向かおうとしていた。が、

「カズヤ」
「ライラか。どうした?」
「書庫に向かうのか?」
「ああ、部下の訓練も無いからな。せっかく書庫を任されたんだ。本を漁る……整理しようと思ってな」
「………」
 和也の言葉にジト目になるライラ。

「まあ、良い。私も付いて行って良いか?」
「別に構わないがつまらないと思うぞ」
「それは行って見ないと分らないだろ!」
「そ、それもそうだな」
 何故か強く反論された和也は怪訝に感じたが、断る理由もないので了承した。


 ライラの案内で書庫へと遣って来た和也はさっそく本を物色する事にする。

「本当に本が好きなんだな」
「まあな。元居た世界でも本は読んでいたし、何よりこの世界には娯楽が少ないからな。本を読む以外する事と言えば稽古か買い物するぐらいだったし」
「他にもあるだろ。ナンパするとか、し、しょっ、娼館に行くとか!」
「確かに娼館に行くことはあったがナンパはしなかったな」
(てか、この世界にナンパって言葉はあるんだな)
 勿論娼館に行ったってのは嘘だ。もしもそんな事をすればエリーゼたちに殺されると分っているし、家に帰れば愛する妻達が居るのだから問題ないからだ。

「やはり行くんだな……」
「なんか言ったか?」
「いや、なんでもない!」
「そうか……」
 ライラの事などお構い無しに本に没頭する和也であった。
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