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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第八十四幕 ハクアとギン

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 報告を終えた和也はレイと共に何処かへと向かっていた。

「レイ様、何処に向かっているのですか?」
「様付けは止めてくれ。お前はもう八聖天なのだ。つまりは対等な存在なのだから」
「ですが、貴方様は第一席、自分は第八席です。どう考えても……」
「所詮は存在進化を果たした順番に過ぎない、気にしなくて良い。それよりも私はライラ同様にタメ口だと嬉しいんだが」
 どうやらこの人は対等な仲間が欲しいんだと和也は思った。
(色々と役職とかあると上下関係とかが面倒そうだもんな)

「そこまで言うのなら、分ったよ。これからよろしく頼む、レイ」
「順応が早くて助かるよ。カズヤ」
「で、何処に向かっているんだ?」
 会議が終わり、いきなり付いて来いと言われただけの和也は気になって仕方が無かった。

「今、向かっている場所は聖装が置いてある場所だ」
「聖装?」
「そうだ。我々八聖天が身につける鎧や甲冑は他の騎士達が着けている物よりも遥かに貴重で凄いものだ」
「なるほど、つまりは八聖天専用の武具って事か」
「そうだ。着いたぞ、ここだ」
 話している内に一つの扉の前に来ていた。謁見の間程では無いにしろ、かなり大きな扉である。
 レイの後ろに続いて中に入ると沢山の武器、武具が置かれていた。
(また、凄い数だな)
 目の前に広がる大量の数に和也は感嘆の声が漏れる。

「ここは我々八聖天以外立ち入り禁止だ。勿論入る時は二人以上でないと駄目だ」
(盗まれないようにするためだろうな)

「この中から好きな物を選ぶと良い。武器もあるが、聖剣や聖槍の類は一切無い。あれは他の場所で厳重に管理されている。出入りする時は私と教皇様が持つ鍵が二つ必要になるからな」
「なるほどな。じゃあ、選ばせて貰うぞ」
「ああ」
 大きさや重さ、装飾などを見て選んでいく。勿論こっそり超解析を使用して性能も確かめていた。
(あんまり良いのはないな。殆どか良好か天才しかない。これなら俺が持つ武具を着た方が良いような)

「これで良いか」
 和也は動きやすく、サイズが合えば良いとばかりに適当に選んだ。

「武器はどうする?」
「いや、俺には蒼槍があるから大丈夫だ」
「そうだったな。次はお前の新しい部屋だ」
「部屋まで貰えるのか」
「当たり前だ。お前は八聖天なんだからな。他の国の軍で言えば将軍だ」
「そ、そうか」
(俺、そんな地位にまで上り詰めていたのか)
 改めて実感する和也。

「こっちだ」
 色々とやる事が多いな、とか思いながらレイの後を付いて行く。
 結局その後は部屋に案内され、荷物を運び込んだ。
(造りはライラの部屋と殆ど同じだな)
 そんな事を思いながらレイの話を聞く。

「この後はお前の側近と召使の候補たちにあって貰う」
「そんなのもあるのか。だが、ライラの部屋には居なかったような」
「確かにライラは召使を拒否した、その代わり側近を二人にしたがな」
「なるほど」
「ここだ」
 扉を開けると中には騎士数名とシスター数名が並んでいた。
(なるほど、召使ってシスターの事か)

「お前たちも知っての通り、彼がカズヤ・アサギリであり、八聖天になった者だ」
「「「「よろしくお願いします。カズヤ様」」」」
「あ、ああ」
 一糸乱れぬ動きでお辞儀と敬礼をされた和也は反応に困った。

「この中から好きな奴を一人ずつ選べ。言って置くが適当に選ぶなよ」
「わ、分っている」
 そんなに親しい訳でもないのに心を見透かされて挙動が可笑しくなる。
(で、誰を選ぶかだが)

「どっちから選んだも良いんだよな?」
「構わない」
(なら、まずは側近となる騎士だな)
 一人一人品定めしていく、勿論超解析も使って。
(お、へぇ………)
 面白いステータスを持った奴がいる事に気がついた和也は笑みを零す。

「お前、名前は?」
「はっ! ギンと言います!」
「そうか、ならお前に決定だ」
「あ、有難う御座います!」
 次にシスターの一人を選ぶがこちらは最初っから決まっていた。それでも品定めする振りをして一人の白髪の女性の前に止まる。

「名前は?」
「ハクアと申します」
「そうか、ならお前に決めた」
「ありがとう御座います」
 こうして和也の側近と召使が決まった。
(この後は面白くなりそうだ)
 そんな事を考えて笑みが零れそうになる。

「カズヤ、明日の9の鐘が鳴ると同時に八聖天の会議を行う。色々と決めないといけない事もあるからな。悪いが一人で来てくれ」
「分った」
 こうして和也はレイと別れ、ギンとハクアを連れて新たな部屋へと向かった。


 部屋に入った和也はオフィスチェアに座ると目の前に立つ二人に視線を向ける。

「で、お前たちは何しにここに来たんだ?」
 そんな和也の言葉にギンは驚いた表情をするが、ハクアの表情は一切変わらない。
(ハクアの方が一枚上だな)
 実力はギンより高いと分っていた和也だが、それでもこういった場面でボロが出ないのはそうとう場数を積んできていると分る。

「安心しろ、防音と盗聴防止の魔法を発動している。俺達以外に知られることはない。で、何しに来たんだ。混合種と魔人が?」
 今度は鋭い視線を向ける。すると流石に隠し通せないと判断したのか、ハクアは笑みを零す。

「やはり、侮れないわね。伊達に十二神将2人とその補佐官3人を倒しただけはあるわ」
「姉御!」
 口を開いたハクアの対応に驚くギン。

「それはどうも。で、魔人が何しに来たんだ。ま、どうせこの国の内情を知るために派遣された諜報員と言ったところだろうが」
「そうよ。で、私とギンが選ばれたの」
「そうか。それでお前たちは何を調べに来たんだ?」
「それは言えないわ」
「別に言っても良いと思うがな。どうせ俺を殺すつもりなんだろ?」
「最初はそう思ったけどね。正体がバレた時点で諦めたわ」
「そうなのか。普通は正体がバレたら殺す筈だが」
「勝てる気がしないもの」
 そうか。と呟いた和也は改めて二人を見詰める。

「別にお前たちの事を他の奴らに言うつもりはない」
「あら、どうしてかしら?」
「どうしてだと思う?」
「………まさか貴方も!」
「そうだ。俺もお前らと同じって事だ。国は違うけどな」
「そう、まさかこれ程運が良いとわね」
「どうしてだよ姉御。正体がバレたんだぞ!」
「簡単な話よ。私達とこの人は同じ目的かは分らないけど、この国を調べるために諜報活動しているのよ。動くのにこれほど楽な事はないわ」
「成る程……」
 納得したのか頷くギン。

「これからよろしく頼む」
「ええ、こちらこそ」
 二人は不適な笑みを浮かべる。それを見てギンは苦笑いを浮かべる。

「さて、ハクア。紅茶が飲みたいんだが」
「畏まりました、カズヤ様」
 切り替えの早い二人は即座に己の役目をこなす。
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