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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第五十七幕 長期戦と意外な人物たちの到着
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「旦那様」
「エリーゼか」
廊下を歩いていると通り過ぎた部屋から呼び止められ、振り向くとそこにはエリーゼが立っていた。
「少し話があるんだけど」
「なんだ?」
「まずは中に入って頂戴」
「分かった。それとここでは旦那様は止してくれ。誰に聞かれているか分からないからな」
「ごめんなさい。そうするわ」
忠告しながら室内に入る。
室内にはエリーゼ、ミレーネ、クロエ、エルザ、タイガー、変化を解いたラッヘンの姿があった。
「タイガーさっきは居なかったが、どこに行っていたんだ?」
「はっ、先ほどまで死体の処理の手伝いをしておりました」
「そうか。それはご苦労だったな」
「いえ、心遣い感謝致します」
深々と頭を下げるタイガーに苦笑する。
「で、俺を呼び寄せた理由はなんだ?」
「今後について話し合ったほうが良いと思ったのよ」
「なるほどな」
サイロの情報が正しければ援軍が来るのは2週間後。その間何も無く済むって考えるのはあまりにも楽観的過ぎるというものだろう。
「次攻めて来る敵の数は分からないけど、間違いなく今日より多いでしょうね」
「………」
「どうしたの?」
「相手の戦力は残り約1万4000。今日俺たちが倒した数はエリーゼたちの3000を合わせて6000を殺している。もしもエリーゼの推測どおりであり、通常の戦法で考えるなら今日よりも倍近い数で攻めてくるだろう。だからサイロは2週間持ちこたえれるか心配していたわけだが、俺から言わせれば、今日から3日間持ちこたえれば間違いなく勝てる」
「本当に?」
「エリーゼ、敵国に侵攻し、それも奇襲してきた相手が一番嫌がる事はなんだ?」
「えっと、籠城されることかしら?」
「たしかにそれも嫌だが、戦力的に有利な相手にはあんまり意味がないな」
「じゃあ何かしら?」
「答えは長期戦だ」
「ならやはり籠城が正解じゃないの?」
「確かに籠城も良い手だが、相手にとってそれは意味がない。籠城だろうとそうでなかろうと長期戦だけは避けたいんだよ。味方の援軍が来るかも分からない状況下ではな。そして一番手っ取り早い方法はこの都市ロアントを落とし逆に籠城すること。そうすれば援軍の見込みもあるからな」
「なるほどね。だったらやっぱり明日は間違いなく倍の兵数で攻めて来るわね」
「そうだろうな……」
「どうしたの、不安なことでもあるの?」
「ああ。明日がよくても明後日が問題なんだ。相手の総指揮官が四天王の一人だった場合間違いなく、エリーゼたちが戦う事になるだろう。そうなれば勝てるかどうか……」
「そんなに強いの? 私、ミレーネ、クロエ、エルザの4人でも?」
「ああ。闘技場で俺が戦ったウラエウスを覚えているか?」
「ええ、予選のバトルロワイヤルで旦那様と当たって負けたけど間違いなく、出場者の中ではトップだった。勿論旦那様を除いての話だけど。あのウラエウスでしょ」
「そうだ。そのウラエウスと同等、もしくはそれ以上の力を持っているのが四天王だと思え」
「嘘でしょ」
和也の言葉に言葉を失う面々。それだけ相手の強さを脅威に感じた証拠である。
「それに他にも問題がある」
「問題って?」
「もしも、相手が今日と同じ兵数、もしくはそれよりも少なければ間違いなく援軍の見込みがあるということだ」
「確かにそれは不味いわね」
「相手は一度この大陸を攻めた結果、撤退している。その苦い思いを忘れていないとなれば間違いなく、兵一人一人の強さも量も増やしてくるはずさ。で、腕試しに今回攻めてきたとなれば考えられるのが、援軍が近くに居るパターンと居ないパターン。居るパターンは本格的な戦争を見込んでの事。居ないパターンは本当に腕試しの可能性だ。そしてそれを見極めるのが――」
「明日の兵数って事ね」
「そうだ。今日四天王の副官とその補佐二人を殺したが、まだ居るだろう。それを踏まえると間違いなく、明後日が一番大変な日となる」
真剣な表情で宣言す和也の言葉に誰もが息を呑む。
(だが、一番最悪なのは間違いなく明日、総指揮官を含めた全軍による総攻撃だ。そうなれば俺は千夜の姿に戻る他ない)
千夜の姿に戻れば、確実に勝利を得られるだろう。だが、緊急時とはいえ、依頼の真っ最中。あまり危険を冒して依頼が失敗したとなれば、レイーゼ帝国とフィリス聖王国の戦争に発展する恐れがあるからだ。
(戦争は俺には関係ないが、俺のせいで戦争が始まったら目も当てられないからな)
思考の海に潜っている時だった。
トントン。
突如、扉をノックする音が室内に響く。
「どうかしたの?」
エリーゼが代表で返事をする。
「はっ! 勇者様一同がお見えになられましたのでその報告とサイロ隊長の許に来るように指示を預かって参りました」
「「「「「「っ!」」」」」」
信じられない報告にラッヘン以外全員が目を見開ける。
「分かったわ。直ぐに行く」
平然を装い返答するエリーゼを他所に和也は思考を巡らす。
(どういう事だ。あいつらのステータスを考えれば今日到着するのは不可能だ。もしや魔族が勇者に変化して………考えていても仕方が無いな)
答えの出ない問題を打ち止めエリーゼたちに視線を向ける。
「行くとするか。それと俺の事はカズサと呼ぶように」
「分かったわ」
和也とエリーゼたちは再びサイロの許へ向かうのだった。
「エリーゼか」
廊下を歩いていると通り過ぎた部屋から呼び止められ、振り向くとそこにはエリーゼが立っていた。
「少し話があるんだけど」
「なんだ?」
「まずは中に入って頂戴」
「分かった。それとここでは旦那様は止してくれ。誰に聞かれているか分からないからな」
「ごめんなさい。そうするわ」
忠告しながら室内に入る。
室内にはエリーゼ、ミレーネ、クロエ、エルザ、タイガー、変化を解いたラッヘンの姿があった。
「タイガーさっきは居なかったが、どこに行っていたんだ?」
「はっ、先ほどまで死体の処理の手伝いをしておりました」
「そうか。それはご苦労だったな」
「いえ、心遣い感謝致します」
深々と頭を下げるタイガーに苦笑する。
「で、俺を呼び寄せた理由はなんだ?」
「今後について話し合ったほうが良いと思ったのよ」
「なるほどな」
サイロの情報が正しければ援軍が来るのは2週間後。その間何も無く済むって考えるのはあまりにも楽観的過ぎるというものだろう。
「次攻めて来る敵の数は分からないけど、間違いなく今日より多いでしょうね」
「………」
「どうしたの?」
「相手の戦力は残り約1万4000。今日俺たちが倒した数はエリーゼたちの3000を合わせて6000を殺している。もしもエリーゼの推測どおりであり、通常の戦法で考えるなら今日よりも倍近い数で攻めてくるだろう。だからサイロは2週間持ちこたえれるか心配していたわけだが、俺から言わせれば、今日から3日間持ちこたえれば間違いなく勝てる」
「本当に?」
「エリーゼ、敵国に侵攻し、それも奇襲してきた相手が一番嫌がる事はなんだ?」
「えっと、籠城されることかしら?」
「たしかにそれも嫌だが、戦力的に有利な相手にはあんまり意味がないな」
「じゃあ何かしら?」
「答えは長期戦だ」
「ならやはり籠城が正解じゃないの?」
「確かに籠城も良い手だが、相手にとってそれは意味がない。籠城だろうとそうでなかろうと長期戦だけは避けたいんだよ。味方の援軍が来るかも分からない状況下ではな。そして一番手っ取り早い方法はこの都市ロアントを落とし逆に籠城すること。そうすれば援軍の見込みもあるからな」
「なるほどね。だったらやっぱり明日は間違いなく倍の兵数で攻めて来るわね」
「そうだろうな……」
「どうしたの、不安なことでもあるの?」
「ああ。明日がよくても明後日が問題なんだ。相手の総指揮官が四天王の一人だった場合間違いなく、エリーゼたちが戦う事になるだろう。そうなれば勝てるかどうか……」
「そんなに強いの? 私、ミレーネ、クロエ、エルザの4人でも?」
「ああ。闘技場で俺が戦ったウラエウスを覚えているか?」
「ええ、予選のバトルロワイヤルで旦那様と当たって負けたけど間違いなく、出場者の中ではトップだった。勿論旦那様を除いての話だけど。あのウラエウスでしょ」
「そうだ。そのウラエウスと同等、もしくはそれ以上の力を持っているのが四天王だと思え」
「嘘でしょ」
和也の言葉に言葉を失う面々。それだけ相手の強さを脅威に感じた証拠である。
「それに他にも問題がある」
「問題って?」
「もしも、相手が今日と同じ兵数、もしくはそれよりも少なければ間違いなく援軍の見込みがあるということだ」
「確かにそれは不味いわね」
「相手は一度この大陸を攻めた結果、撤退している。その苦い思いを忘れていないとなれば間違いなく、兵一人一人の強さも量も増やしてくるはずさ。で、腕試しに今回攻めてきたとなれば考えられるのが、援軍が近くに居るパターンと居ないパターン。居るパターンは本格的な戦争を見込んでの事。居ないパターンは本当に腕試しの可能性だ。そしてそれを見極めるのが――」
「明日の兵数って事ね」
「そうだ。今日四天王の副官とその補佐二人を殺したが、まだ居るだろう。それを踏まえると間違いなく、明後日が一番大変な日となる」
真剣な表情で宣言す和也の言葉に誰もが息を呑む。
(だが、一番最悪なのは間違いなく明日、総指揮官を含めた全軍による総攻撃だ。そうなれば俺は千夜の姿に戻る他ない)
千夜の姿に戻れば、確実に勝利を得られるだろう。だが、緊急時とはいえ、依頼の真っ最中。あまり危険を冒して依頼が失敗したとなれば、レイーゼ帝国とフィリス聖王国の戦争に発展する恐れがあるからだ。
(戦争は俺には関係ないが、俺のせいで戦争が始まったら目も当てられないからな)
思考の海に潜っている時だった。
トントン。
突如、扉をノックする音が室内に響く。
「どうかしたの?」
エリーゼが代表で返事をする。
「はっ! 勇者様一同がお見えになられましたのでその報告とサイロ隊長の許に来るように指示を預かって参りました」
「「「「「「っ!」」」」」」
信じられない報告にラッヘン以外全員が目を見開ける。
「分かったわ。直ぐに行く」
平然を装い返答するエリーゼを他所に和也は思考を巡らす。
(どういう事だ。あいつらのステータスを考えれば今日到着するのは不可能だ。もしや魔族が勇者に変化して………考えていても仕方が無いな)
答えの出ない問題を打ち止めエリーゼたちに視線を向ける。
「行くとするか。それと俺の事はカズサと呼ぶように」
「分かったわ」
和也とエリーゼたちは再びサイロの許へ向かうのだった。
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