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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第五十五幕 血と汗の臭い

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「…………ぷはっ」
 その場に座り込んだ和也は仮面を外して超級の回復ポーションを一気に飲み干す。
 白銀の鎧についた切り裂き口から漏れていた血は止まり、指で触れるとそこには完全完治した己の肉体があった。

「なんとか間に合ったみたいだな」
 正直、疲れと大量出血で視界が朧気だった。なんとかなって良かったと心の底から安堵する。

「ステータスでも確認しておくか」
 内心ステータスオープンと呟く和也だが、それでも体力の限界は近い。今すぐこの場で寝たい気持ちのほうが強いが再び魔族軍が攻めて来る恐れがあるためそれはできない。今は少しでも体力を回復させつつ、ステータス確認する事に決めた。

───────────────────────

朝霧和也
ハイヒューマン
LV15
HP 1043250
MP 985500
STR 83550
VIT 76050
DEX 63400
AGI 83550
INT 70900
LUC 100

スキル
言葉理解
言語理解
超解析
剣術LV99
槍術LV99
武術LV99
調理LV68
鑑定LV62
(超隠蔽LV99)
(変化LV99)
魔力操作LV99
状態異常耐性LV85
HP自動回復LV74
MP自動回復LV72
火属性耐性LV93
水属性耐性LV84
土属性耐性LV81
風属性耐性LV79
光属性耐性LV69
闇属性耐性LV92
レベルアップ時ステータス倍Ⅱ
限界突破Ⅲ
アイテムボックス

属性
火 水 土 風 光

称号
龍殺し
扉を開けし者

※ 扉を開けし者の効果は存在進化を果たす時、必ずLUC以外のステータスが5倍以上になる。
※ ()のスキルは隠蔽もしくは超隠蔽により表示されません。
───────────────────────


「エリーゼたちよりも存在進化した時のステータス向上は上だがやはりレベル差でまだ負けてるな」
 まだまだ先は長いと思いながら和也は吸い込んだ息を吐き出す。

「さてと、戻るか」
 蒼槍を杖代わりにして立ち上がる。
 念のためにとレナードたちの死体を火葬したのち城門を潜ると、

「ようやく会えたわ」
 視線のする方に視線を向ける。
 そこには今回の戦いで和也が生きる目的を教えてくれた存在達が立っていた。

「…………」
 しかし、エリーゼの呟きに対して和也は一言も発しない。疲れているため言葉が出ないわけではない。ただ単に話して正体がバレる事を恐れたからだ。

「黙り込んだって無駄です。私が心に決めたたった一人の主がどんな姿であろうと私には関係ありませんから」
 エルザは自信満々に宣言する。
 その事に仮面の下で笑みを零す和也。
(それはそれで嬉しいが、なんだか負けた気がしてならないんだが)

「ほら早く仮面を外して顔を見せてよ。旦那様」
「………分かった」
 エリーゼの懇願に負けた和也は仮面を外す。
 そこには朝霧和也としてこの世界に召喚された少年が笑みを零して立っていた。

「あら、意外と格好好いじゃない」
「それはそれで喜べば良いのか、悲しめば良いのか分からないな」
「安心して。私が好きなのは千夜の姿だもの。でもどんな姿でも旦那様を一番愛しているわ」
「ありがとう」
 ゆっくりと歩み寄り、言葉を紡ぐ様に語る。
 潮風によって靡く金髪は日光を浴びて輝き、透き通るハワイアンブルーの瞳は和やかな気持ちになせてくれる。
 そんな一目惚れの女性は「愛しているわ」と囁き掛けるのと同時に抱きついてくる。

「旦那様、血と汗の臭いがするわ」
「ちょっとギリギリだったからな。これじゃ、ロマンチックもあったもんじゃないな」
「いえ、これはこれで私は好きよ。夜は出来ればお風呂の後が良いけど」
「怒られない様にみっちり洗うよ」
「そうして貰えると助かるわ」
 二人の顔に涙も悲しげな表情は無い。ただ目を瞑り、愛するものを感じ、安堵し、笑みを零すのみ。

「ねえ、旦那様」
「なんだ?」
「お疲れ様」
「ああ、ありがとう」
 エリーゼには分かっていた。なぜ「お帰りなさい」ではないのか。それは千夜がまだ依頼を達成していないからだ。
 その証拠に千夜は和也の姿のままエリーゼを抱きしめていた。
 数分して離れたふたりは笑みを浮かべたまま言葉が重なる。

「それじゃ「さて、最終防衛地点に行こうか」行きましょうか」
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