158 / 351
第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第四十四幕 仮面と知っているのですか?
しおりを挟むフィリス聖王国を出発して20日が過ぎた。
ファブリーゼ皇国を通過し、レイーゼ帝国へと入国を果たしたライラたち。
帝都まであと3日というところまで来ていた。
途中、魔物との戦闘も数度あったが怪我人を出す事無く順調に任務を続行している。
今回フィリス聖王国の使者としてライラが、ライラの護衛として6人の騎士が隊列をなして帝都へと進行している。そんな中に異様な姿の騎士が居た。
他の者と同じ白銀の甲冑に、蒼槍を携える男。肩を越す蒼槍と同じ色の髪を靡かせる。しかしその男表情はまったくもって分からない。辛いのか、楽しいのか、眠いのか、退屈なのか、一切読み取れない。
目元から涙が伝うように赤で描かれた仮面を被る男。
彼が今回ライラの補佐として帝国に行く朝霧和也なのだ。
「カズヤ、もう直ぐだが、大丈夫か」
「ああ、大丈夫だ。あいつ等にバレなければ平気だからな」
「なら、良い。だが、まだ帝都に到着したわけではない警戒だけは怠るなよ」
「分かってるよ」
青空の下日光によって輝く白銀の甲冑を身に纏った集団が着々と帝都に近づいているのだった。
**************
一方その頃、帝都千夜家では。
「それで、何をすればよろしいでしょうか」
薄気味の悪い仮面をつけた魔人がエリーゼに問いかける。
「そうね、これから稽古なの。悪いんだけど相手してくれる」
「畏まりました」
エリーゼ、クロエ、ミレーネ、エルザ、タイガー、ラッヘンの6人は数日後に行われる魔族対策会議に呼ばれていたのだ。
冒険者は基本、国との争いに不参加である。
しかし、帝国で一番力を有する存在を会議に呼ぶのは情報の共有が目的だからである。
重要な会議に呼ばれたエリーゼたちだが、会議のことなど気にする様子も無く準備体操を行っていた。
「それにしても前もって知らされていたとはいえ、旦那様の姿で現れた時は驚いたわよ」
「スキルを付与するなんて流石は主ですね」
「申し訳ありません。創造主様のご命令でしたので」
「別にラッヘンを責めているわけじゃないわよ。ただ改めて旦那様の凄さを思い知っただけよ」
「一つ伺ってもよろしいでしょうか?」
「どうしたの?」
「皆様は創造主様の正体をご存知なのでしょうか?」
「ええ、みんな知ってるわよ。正確にはこの家で住む者たちだけだけどね」
タイガーに正体を明かしたのを期に千夜はセバス、マリン、ロイドの3人にも自分の招待を明かしたのだ。勿論ステータスを見せたときは驚いていたのは勿論だが、セバスたちは嬉しさで一杯だった。自分達の主人が伝説の種族だった事にではない。ようやく信頼された事への喜びであった。召使にとって主人からの信頼は給料の昇給よりも遥かに嬉しいことなのだ。
「それに、旦那様が百鬼族の長であった事もね」
「そこまでご存知とはいやはや、奥様たちは創造主様の信頼が厚いのですね」
「そうでもないわ……」
一瞬にして漂う空気が重く反転する。
「どうされたのですか?」
「いえ、なんでもないわ。それよりも始めるわよ。ラッヘン悪いんだけどスケアクロウたちを呼んで貰える」
「畏まりました」
亜空間に住まう千夜の眷属たちは千夜にしか召喚することが出来ない。しかし千夜が造った武器同様に許可を貰った者も呼び出すことが可能なのだ。
「御呼びでしょうかエリーゼ様」
魔方陣から一瞬にして現れたのはスケアクロウと数体のグレーたースケルトンたち。
「久しぶりねスケアクロウ。悪いんだけど模擬戦の相手をしてくれないかしら」
「畏まりました」
「なら、始めましょうか」
魔族軍対策会議まであと5日。
波乱の渦は着々と帝都に近づいていた。
10
お気に入りに追加
10,103
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。