鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第四十四幕 仮面と知っているのですか?

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 フィリス聖王国を出発して20日が過ぎた。
 ファブリーゼ皇国を通過し、レイーゼ帝国へと入国を果たしたライラたち。
 帝都まであと3日というところまで来ていた。
 途中、魔物との戦闘も数度あったが怪我人を出す事無く順調に任務を続行している。
 今回フィリス聖王国の使者としてライラが、ライラの護衛として6人の騎士が隊列をなして帝都へと進行している。そんな中に異様な姿の騎士が居た。
 他の者と同じ白銀の甲冑に、蒼槍を携える男。肩を越す蒼槍と同じ色の髪を靡かせる。しかしその男表情はまったくもって分からない。辛いのか、楽しいのか、眠いのか、退屈なのか、一切読み取れない。
 目元から涙が伝うように赤で描かれた仮面を被る男。
 彼が今回ライラの補佐として帝国に行く朝霧和也なのだ。

「カズヤ、もう直ぐだが、大丈夫か」
「ああ、大丈夫だ。あいつ等にバレなければ平気だからな」
「なら、良い。だが、まだ帝都に到着したわけではない警戒だけは怠るなよ」
「分かってるよ」
 青空の下日光によって輝く白銀の甲冑を身に纏った集団が着々と帝都に近づいているのだった。

            **************

 一方その頃、帝都千夜家では。

「それで、何をすればよろしいでしょうか」
 薄気味の悪い仮面をつけた魔人がエリーゼに問いかける。

「そうね、これから稽古なの。悪いんだけど相手してくれる」
「畏まりました」
 エリーゼ、クロエ、ミレーネ、エルザ、タイガー、ラッヘンの6人は数日後に行われる魔族対策会議に呼ばれていたのだ。
 冒険者は基本、国との争いに不参加である。
 しかし、帝国で一番力を有する存在を会議に呼ぶのは情報の共有が目的だからである。
 重要な会議に呼ばれたエリーゼたちだが、会議のことなど気にする様子も無く準備体操を行っていた。

「それにしても前もって知らされていたとはいえ、旦那様の姿で現れた時は驚いたわよ」
「スキルを付与するなんて流石は主ですね」
「申し訳ありません。創造主様のご命令でしたので」
「別にラッヘンを責めているわけじゃないわよ。ただ改めて旦那様の凄さを思い知っただけよ」
「一つ伺ってもよろしいでしょうか?」
「どうしたの?」
「皆様は創造主様の正体をご存知なのでしょうか?」
「ええ、みんな知ってるわよ。正確にはこの家で住む者たちだけだけどね」
 タイガーに正体を明かしたのを期に千夜はセバス、マリン、ロイドの3人にも自分の招待を明かしたのだ。勿論ステータスを見せたときは驚いていたのは勿論だが、セバスたちは嬉しさで一杯だった。自分達の主人が伝説の種族だった事にではない。ようやく信頼された事への喜びであった。召使にとって主人からの信頼は給料の昇給よりも遥かに嬉しいことなのだ。

「それに、旦那様が百鬼族の長であった事もね」
「そこまでご存知とはいやはや、奥様たちは創造主様の信頼が厚いのですね」
「そうでもないわ……」
 一瞬にして漂う空気が重く反転する。

「どうされたのですか?」
「いえ、なんでもないわ。それよりも始めるわよ。ラッヘン悪いんだけどスケアクロウたちを呼んで貰える」
「畏まりました」
 亜空間に住まう千夜の眷属たちは千夜にしか召喚することが出来ない。しかし千夜が造った武器同様に許可を貰った者も呼び出すことが可能なのだ。

「御呼びでしょうかエリーゼ様」
 魔方陣から一瞬にして現れたのはスケアクロウと数体のグレーたースケルトンたち。

「久しぶりねスケアクロウ。悪いんだけど模擬戦の相手をしてくれないかしら」
「畏まりました」
「なら、始めましょうか」
 魔族軍対策会議まであと5日。
 波乱の渦は着々と帝都に近づいていた。
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