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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第四十一幕 副隊長とハイポート
しおりを挟むライラの部下になって早一ヶ月。冷静な判断力と類稀なる戦闘力で和也は副隊長にまで上り詰めていた。
その圧倒的スピードに誰もが嫉妬するかと思われたが、わけ隔てなく接する和也の態度と分かりやすい指導、魔物討伐となれば冷静な判断力と新たな戦術や戦略の考案により誰もが和也を信頼していた。
そんな副隊長の日課は一杯の紅茶からスタートする。
朝食を終えた和也はまずライラの許に向かう。
「ライラ、入るぞ」
軽くノックし返答待たずして扉を開ける行動はまるで恋人同士のような親しい者に対してのようだ。
「カズヤか、こんな朝早くにどうした?」
「どうしたじゃないだろ。今日はライラも訓練に参加する日だ」
「そ、そうだったな。すまない忘れていた」
「最近ずぼらになっていないか?」
「そ、そんな事はない!」
「そうか? それより早く行くぞ」
「わ、分かったから急かさないでくれ!」
慌てて立ち上がるライラ。
(まったくどっちが上なのか分からなくなる)
思わず額に手を当てる。
ライラを連れて訓練所へと遣って来た和也。
「ライラ様とカズヤさんだ」
「カズヤさんが副隊長になってから時間に正確になったよな」
「ああ、あの人の体内時計の正確さには驚かされる」
そんなどうでも良いような事に対して賞賛する騎士達の前に立った和也。
「全員整列!」
短い指示に騎士達は迅速な行動で和也の前に整列した。
「これより大隊長、ライラ様の訓示だ。静粛に聞け。良いな」
「「「「「「はっ!」」」」」」
「ライラ様、お願いします」
「わ、分かった」
公私混同をけしてしない和也の姿に戸惑いを覚えるライラだがすぐさま頭を切り替え真剣な面持ちで騎士達の前に立つ。
「我が部下達よ。今日は周に一回の強化訓練の日だ。分からない事や知りたいことがあれば遠慮せずに聞け。そして練磨せよ!」
「「「「「「はっ!」」」」」」
「これより強化訓練を開始する。まずは外周20周始め!」
「全体、右向け右! 駆け足、前へ進め!」
和也の号令の下全員が乱れぬ動きで右を向き走り始める。
(それにしても自衛隊の訓練は凄いな。一ヶ月行っただけで騎士達の統率力が遥かに上昇している)
昔テレビで見た自衛隊の集団行動を真似て行った物だが、たった一ヶ月で他の騎士団よりも遥かに統率のとれた行軍を行える程になった。
自衛隊の訓練の中にハイポートと呼ばれる訓練がある。
ただの持久走ではなく、武装した状態で永遠と走り続ける訓練だ。普通は走る距離などは未定で大抵は教官の気分次第である。
そして教官が求めるのは、いかに集団行動が出来ているか。縦横の列が揃っているとか、足並みが揃っているとか、声が出ているとかを見られるのだ。
しかし和也はそこまで鬼ではない。確かに足並みや縦横の列が揃っているか確かめはするがけして指定した周より多く走らせることは無いのだ。
(揃っていれば早めに終わらせることはあるが)
「カズヤ、これからどうする?」
「走りこみが終われば基礎訓練、それが終われば剣術指導。その後は模擬線だ」
「分かった。それにしてもお前が考えた訓練は凄いな。ハードではあるが騎士達の統率が段違いだ。先日アーサー殿にも賞賛の言葉を貰ったぞ」
「別にたいした事はないと思うが」
(俺が考えたわけじゃないし)
「いや、そんな事はない。カズヤこれからもこの国のため、そしてこの騎士団を強くしてくれ」
「強くするのはライラの役目の筈だが?」
「うっ、互いに頑張ろう」
「そうだな」
はぐらかす様にライラは言ったが和也は気にする事無く返答するのであった。
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