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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第三十三幕 帰還と凱旋パレード
しおりを挟む朝食を終えた三日月の剣騎は救助した村人達と洗脳されいた村人達、そうぜい千人をつれて王都へ帰還した。
「それにしてもこれだけの村人を洗脳するなんてな」
「ああ、これだけの数となるといくつの村が襲われたことか。まったく今頃になって気づくなんて民を守る騎士が呆れる」
凱旋パレードのような派手さは無かったが、それでもライラたちの帰還を祝して人々たちが群がっていた。
そんな民に心配させまいと笑みを浮かべ手を振る女騎士の姿は絵になるだろう。それでも内心は己の不甲斐なさで怒り狂っていた。それは他の騎士もおなじだったが。
聖教会本部へと戻ってきた。といっても見た目は完全にお城だ。名前もあり、ガンドルフ城と言うらしい。
(聖教会本部だが見た目は城ってやっぱおかしいよな?)
そんな違和感を覚えながら待合室にてライラと待機していた。
村人達への指示も出さなければならないライラがどうして待合室にて待機させられているのか、それは今回の件を報告するためだ。
(なんて報告すれば)
出された紅茶を飲みながら億劫な気持ちを抑える。
「それでどうして俺まで呼び出されているんだ?」
「さっきも言っただろう。今回の首謀者である貴族吸血鬼を討伐したのはお前なのだ」
「つまりは本人から話を聞きたいと」
「ま、そういうことだ」
(まったく面倒な。依頼で調査をすることにはなったが、あまりにも上層部の連中と接触するのが早すぎる。出世しやすいやつは疎まれやすい。そうなれば要らぬ噂が広まり、行動がしにくくなるのにな。まったく)
潜入捜査において時間かけて信頼を勝ち取り、調べるのが定石である。にも拘わらず、すでにその定石を脱線してしまった和也はため息を吐くのだった。
「そんな顔をするな。面倒なのはわかるがこれは素晴らしいことなのだぞ」
「どこがだよ。面倒なだけだろ」
「いや、今回の件でカズヤの実力が知られた。そうなればお前を七聖剣にするかもしれない」
「それはないな」
「どうしてだ?」
「偶然にも貴族吸血鬼を倒すことは出来た。それでもライラや他の七聖剣の連中より弱いからだ。それに入隊して間もない俺が七聖剣にするなんて危険だろ。信頼もなにもないからな」
「そ、それは確かにそうだが、それでも私は――!」
「失礼します」
シスター服を着た女性が入ってくる。それによってライラの言葉は遮られてしまう。
「お話の最中でしたか?」
「いや、大丈夫だ。それでなんのようだ?」
「はい。謁見の準備が整いましたので及びに参りました」
「そうか。ライラ、行くとするか」
「そ、そうだな」
いったい何を伝えようとしたのか和也には分からない。それでも恨めしそうにシスターの後姿を睨みつけるライラの姿に呆れるのであった。
(別に今じゃなくても後で言えばいいだろうに)
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