鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第三十一幕 勝鬨と謎の援軍

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「勝ったのか……」
「どうやらそのようですね」
 観戦していたライラたちは信じられない光景でも見ているのではないかと己の目を疑っていた。が、

「よう、倒してきたぜ」
 蒼槍を担いで帰還してきた和也の一言によって魔族の死体だらけの戦場の中央で勝鬨の雄たけびが響き渡るのだった。

 それから間もなくして勝利で酔いしれる騎士たちに一喝の声が飛んで来る。

「まだ、戦闘は終わっていない! 速く先に王都に向かった部下達の許に向かうぞ!」
「「「「「「はっ!」」」」」」
「カズヤすまないが傷の手当をしている余裕が無いのだ」
「回復ポーションと治癒魔法で何とかするから、気にするな」
「そうか、すまない。それと王都に帰還したら大事な話がある」
「分かった」
 真剣な面持ちで伝えてくるライラの姿に和也は笑みを消して了承するのだった。
 隊列を即座に編成した三日月の剣騎第一部隊は即座に王都に向かう部下達の許へ向かった。
(頼む! 生きていてくれ!)
 ただただ願うばかりのライラは姿見えぬ部下達が居る方角を見つめるのであった。


 2時間弱で部下達と合流を成し遂げたライラたちは、王都に向かわず休息していた。理由としては負傷者が多いことと、謎の援軍についての思案が大きな理由であった。
 仮設テント一つが作戦本部となっており、その中では謎の援軍についての会議が行われていた。

「すまないがもう一度詳細に報告してくれ」
「はっ」
 ライラの一言に面倒臭そうな顔色一つ見せる事無く第四部隊隊長ジャムは報告を開始する。

「突如、アンデットの群れと洗脳されていたであろう村人達の襲撃を受けた我々は迎撃を開始いたしました。しかしアンデットであれば容易く倒せましたが、洗脳された村人達に剣を振るうことに騎士たちの間で戸惑いが生じ、死傷者及び負傷者を続出、戦力的には圧倒的であった我々は苦戦を余儀なくされました。しかし戦闘開始から約一時間後、突如60体のスケルトン、それもグレータースケルトンにデスナイトが出現したのです。新手かと思いましたが、デスナイトもグレータースケルトンも我々には一切興味を示す事無く、逆に加勢してくれたのです。その後突如アンデットは弱体化したので殲滅し、洗脳された村人たちはその場で意識を失いました。目が覚めた者たちが再び襲わないかと警戒していましたが、そんな事もなくどうしてここに居るのか理解できていない状況でした」
「そうか、分かった。さて、報告を聞いたとおりだ。魔王の部下とされるグレータースケルトンやデスナイトが我々に加勢した。気がつけば姿が消えていたそうだが、これは一大事である。人間を守る筈の我々が敵対する魔族の配下に助けられるなど、屈辱でしかない!」
「その通りです!」
 ライラの一言に同意を示すジャムや他の隊長たち。そんな彼らを眺めていた和也は思うのであった。
(真面目過ぎるのも問題だな)

「だが、報告はしないとならない。どれだけ屈辱的であろうと自己保身のために情報を隠すなどあってはならない事だ」
(ここら辺は無駄にプライドの塊である貴族よりマシだな)

「よって責任追及されるかもしれない。すまないが覚悟だけしておいてくれ」
 申し訳なさそうな表情でラケムたちに視線を向けるが、誰も咎める者たちは居なかった。

「謎の援軍について気になる者も居るだろうが、今は王都へ帰還することが最優先目的だ。話は以上だ。明日朝食を済ませ次第王都へ向かう。解散!」
「「「「「「はっ!」」」」」」
 報告は簡素に終わりを告げると隊長たちはテントから出て行くのであった。
(さて、俺も寝るとしよう)

「カズヤ、お前は残れ」
「なんだ?」
「王都で話すつもりだったが、今話すことにした」
「そうか」
 和也はライラと対峙する形で空いた椅子に座るのだった。
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