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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第十五幕 初任務と魔族襲来

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 しかしジャムは放心状態になっていた。

「どうして、私は負けたのだ……」
 どうしても理解できないと和也を見つめる。

「お前は、私の攻撃を捌ききれなくなったのではなかったのか。それ以前に躱すことも出来なかったではないか!」
「そんなわけ無いだろ。最初っから躱すことだって出来た。だけどお前は警戒心が強い。躱せば警戒して守りに入られたら困るからな。躱さず捌いていき少しずつお前の警戒を解いていったんだよ。で、最後お前が完全に勝利を確信した時が俺の待ち続けた瞬間だ短だよ。警戒もせずに勝利を確信した瞬間ってのは無防備だからな」
 蒼槍を担ぎ考えていたことを話す。

「そうか。最初っから私はお前の掌の上で踊らされていたのか」
「気にするな、それが戦いだ。これからは共に戦う仲間だ。一緒に強くなろうぜジャム」
「そうだなカズヤ。これから強くなろう」
 どこか爽快な笑みを浮かべるジャムは差し伸べられた手を握るのだった。

「これにて親睦試合を終了する。皆もカズヤの実力は分かっただろう。これからは同じ仲間として扱え良いな!」
「「「「「「はっ!」」」」」」
 ライラの言葉に大声で返答する。

「さて、問題はカズヤをどこの隊に入れるかだが……」
「ライラ様!」
「どうした」
 慌てた面持ちで遣ってきた一人の兵士。

「そ、それが……」
「落ち着いて話せ」
「す、すいません!」
 新兵なのか、息があがり上手く喋れなくなっていた。

「お伝えします! 近隣の村に魔族が現れました!」
「なに!」
 兵士からの報告に騎士たちだけでなくライラまでもが驚愕の表情を受けべていた。

「直ちに村に向かうと教皇様に伝えろ!」
「はっ!」
 兵士はライラの命に従い駆けていった。

「これより、魔族討伐に向かう! 直ちに準備をしろ!」
「「「「「「はっ!」」」」」」
「カズヤ、お前は臨時の補佐として私の隊に入れ!」
「分かった」
 さきほどとは打って変わり慌しい空気がライラたちを覆う。
(それにしても魔族がこの国に来ているとか何があった?)
 国の場所から考えてもこのフィリス聖王国に魔族が現れることなど、そうそうない。まして首都の近くの村に現れるなど異常事態でしかなかった。
(サンクリードたちでは無いことを祈るしかないか)
 迅速な行動で準備が整った『三日月の剣騎』は急いで王都を出発した。
 ライラの左後方で馬に乗る和也は視線を村がある方向へ向ける。
(今のところ機器察知に反応はないな。マップに敵意を持つ存在もいない)

「ラケム」
「なんだ」
「今、向かっている村までどのぐらい掛かる」
「早くてもあと3時間は掛かる」
(それじゃ、遅すぎる。運よく村にそれなりの手練れが居ることを祈るしかないな)
 現在、和也に出来ることはない。千夜ならば余裕で村を助けることは可能だ。しかし、力を抑えているため助けることは不可能に近かった。
 ましてやこの国に来た理由は調査であって村を救うことではない。そのことは和也自身がよく理解していた。
(きっと勇治たちならば危険を冒しても助けただろうな)
 そんなことを思いながらも和也はただ依頼をこなす。
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