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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第六幕 勇者パーティーVS月夜の酒鬼 中盤
しおりを挟む「残りは……二人ですね」
エルザの攻撃を必死に受け流す正利とエリーゼに吹き飛ばされた勇治。
二人の膨れ上がる魔力は地肌で感じるエリーゼたち。
「「よくも………」」
受け流しながら。
立ち上がりながら。
「「よくも……よくも……」」
怒気を含みながら。
「よくも、真由美を!」
「よくも、紅葉を!」
怒りを爆発させた。
しかし、この程度で気圧されるエリーゼ達ではない。なぜならもっと重く、この場から逃げたくなるほどの恐怖を身をもって味わっているからだ。
変わるとしたら警戒レベルを数段階引き上げたぐらいだろう。
それでも、
「エリーゼお姉さまとエルザさんは先ほどと同じく、勇者1と2の相手を。クロエは勇者2、私は勇者1の相手をします」
「「「わかったわ」のじゃ」りました」
ミレーネの指示に冷静に返答するエリーゼ、クロエ、エルザ。
(格下であろうと油断せずに対応しているな)
妻たちの様子を分析する千夜はこっそりと回収した真由美と紅葉に治癒魔法をかける。
(ん? そういえば奏はどこだ?)
奏の姿が見当たらない事に気付いた千夜。
「ここよ」
「ん?」
突然真横から聞こえる声。
そこには心配そうに真由美たちを見つめる奏の姿があった。
(俺の考えが分かったのか?)
兄妹だからこそ分かる事があるのだろう。と決めつける事はけしてしない千夜は勇者の中で一番危険だと確信する。
「お前は参加しないのか?」
「前にも言ったでしょ。私の名前は奏。お前じゃない」
「そうだったな。で、奏は参加しないのか?」
「私は元から興味ないから」
「強くなるんじゃなかったのか?」
「そうよ。でも私は貴方と戦ってみたいのよ」
獲物を狩る肉食動物のような鋭い眼光が千夜へと向けられる。
「何故だ?」
「ただの好奇心」
「そうか。別に構わない」
「本当に?」
「ああ。だが、存在進化に至ったらな」
「出来ると思ってるの?」
「ああ、思っている。なんせお前は――」
その時だけ千夜の表情はとても優しく、包み込むような笑みを浮かべていた。
「勇者なんだからな」
「お兄ちゃん……」
「ん? なんかいったか?」
「なんでもないわよ! 治癒魔法はもう良いでしょ! 早く審判に戻って」
「ああ、そうしよう」
顔を赤らめて怒鳴る奏を傍目に千夜は戦闘へと視線を向けるのであった。そんな千夜の後姿を見つめる奏の気持ちなど気付く事無く。
(やっぱり、千夜は………お兄ちゃん…………だよね?)
それが確信へと変わったのか、はたまたただの願望なのかは、奏本人に聞くしか分からない事だろう。
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