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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第一幕 帰還と格好いい!

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 帝都ニューザへと戻ってきた千夜たちは、久方ぶりの屋敷の門を潜る。

「あの宿屋も良かったけど、やっぱり我が家が一番ね」
「はい。それにこれほどの家は他に無いでしょうしね」
「そうじゃな」
 馬車から降りて各々今の気持ちを言葉にする。
 各地を観光するのも悪くないが、やはり我が家が一番のようだ。

「「「「お帰りなさいませ」」」」
 セバス、マリン、ロイド、タイガーが礼儀正しく出迎えてくれる。

「お帰りなさいませ」
 そんな洗礼された4人の横には小さな少女が可愛らしく出迎えてくれた。

「この子が依頼の最中に保護した子ね」
「そうでございます」
「お名前はなんて言うのかしら」
「ラム」
「ラムちゃんっていうの。私はエリーゼ。この屋敷の主、旦那様の正妻よ」
「私はミレーネです。センヤさんの妻です」
「我はクロエじゃ。センヤの妻じゃ」
「私はエルザと言います。妻であり、主の戦闘メイドです」
「戦闘メイドってなに?」
「主の身の回りのお世話をするだけでなく、危機的状況でも戦えるメイドのことです」
 エルザは既にメイド服に着替えていた。妻としての役目はこの屋敷に入る直前で終わったからだ。今からは千夜の側近の一人として行動するのだ。

「なんか格好良い!」
「そ、そうですか」
「うん! 私もなりたい!」
「そう簡単になれるものではありません」
「頑張る!」
「ですが…………分かりました」
 他人に対してはゴミを見るような目で相対するエルザだが、ラムの愛らしさには発動しないようだ。

「さて、タイガー」
「はっ! 既にギルドマスター及び皇帝陛下には通達済みでございます」
「そうか。ならセバス、帰ってきたことを伝えておいてくれ。俺はオールリキュールの様子を見に行ってくる」
「畏まりました」
「旦那様は休まないの?」
「数ヶ月も空けていたからな」
「でも、それは明日からでも……」
「いや、俺の推測が正しければ、今から動かないと間に合いそうに無いからな」
「それってフィリス聖王国との……」
 不安そうな表情を浮かべるエリーゼ。

「安心しろ。戦争を始めるつもりはない。そんな事をしたらお前たちを巻き込んでしまうからな」
「私はそれでも――!」
「駄目だ。俺が一人で行動するならまだ良いが、そうなればお前たちを心配させてしまう。で、お前たちまで巻き込めば、お前たちの事を大切に思っている者たちまで巻き込む恐れがある。ウィルとかな」
「それは……」
「だから、そうならないために今のうちに済ませれる事は済ませておきたいのさ」
「分かったわ」
「分かってくれたか。ならウィルに帰ってきたことを報告してくると良い」
「ええ、そうするわ。でもそれは後でするわ。今は旦那様と王宮に行くわ」
 そう言ってエリーゼは千夜の右腕に抱きつく。

「それなら私も行きます!」
「我も行くのじゃ!
 ミレーネ、クロエは家の中で休みたかったが千夜の傍に居たいという気持ちで王宮に行く事を決める。

「さてと」
「お供致します」
(休めと言う前に言われてしまったな)
 そう言われることを予期したのであろうエルザは千夜の後ろに控えていた。

「わかった。なら行くぞ」
「はい」
「なら我輩も」
「タイガーはラムに稽古をつけて遣れ」
「しかし……」
「ラムの目標が今のところ戦闘メイドならば、今のうちに鍛えておくべきだ。もちろん無理が無い範囲でだがな」
「分かりました」
「帰ったら男だけで酒でも呑もう」
「はっ!」
 最初よりも遥かに大きな声で返答するのであった。
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