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第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。
第百二十九幕 裏切り者とずるいです
しおりを挟むエルフの里で一泊した千夜たちはニューザに戻るべく森を出ようとしていた。
そんな千夜たちを罪悪感が残る瞳で見つめるエルフたち。
「ミレーネ本当にすまない」
「あなたがよければ、村で一緒に暮らしましょう」
罪滅ぼしのつもりなのか色々の言葉をミレーネに投げかける。
「ごめんなさい。確かに酷い目にあったけど、そのおかげで私はかけがえの無い親友が出来た。家族が出来た。そして……」
横に立つ千夜を微笑みを浮かべながら見上げ、
「愛する夫が出来ましたから」
嬉しそうに、自信気に答えるミレーネ。そんな彼女を引き止める者は誰一人居なかった。
「そうか。きっと彼ならミレーネを幸せにしてくれるだろう」
「ええ、既に幸せをくれてますから」
「そうだったな」
本当なら数日滞在するつもりでいた千夜たちだったが、タイガーが齎した情報を話し合った結果直ぐにでも帰国することが決定したのだ。
「すまなかったな」
「いえ、センヤさんが居る場所が私の居る場所ですから」
「まったく嬉しい事を言ってくれる」
「何度だって言いますよ」
笑みを浮かべミレーネの頭を優しく撫でる。
こうして千夜たちはエルフの里を後にするのだった。
森を出て馬車に揺られる事数時間。未だにミレーネは森がある方角を眺めていた。
「心配なら数日ぐらいなら残っても平気だったんだぞ」
「いえ、大丈夫です。私たちにはやるべき事がありますから。……それに父と母も探さないといけませんから」
「そうだな。それとミレーネの両親についてなんだがな」
「はい」
「俺の眷属たちに探させているから。もしかしたら近いうちに見つかるかもしれない」
「本当ですか!」
「ああ」
千夜のスキルの一つ魔物生成を使い捜索させているのだ。
「本当にセンヤさんはいつもずるいです」
「すまない。迷惑だったか?」
「そうではありません! そうやって嬉しい事ばかりしてくれるから何で返せば良いのか困るんです」
「そんな事か」
「そんな事って。私には重要な事なんですよ!」
真剣な面持ちで迫るミレーネ。
「すまない。別に俺はお返しを期待してしてるわけではない」
「だから困るんです」
「なら、返してくれるか?」
「何で返したら良いですか!」
「これで十分だ」
そっとミレーネに近づき優しく包むように抱きしめる。
「やはりミレーネは暖かいな」
「これは返しに入りませんよ」
「いや、これで十分返して貰っている。それどころか返しすぎなぐらいだ」
「そんな事は……」
「いや、こうやってミレーネを感じてられる。お前の温もりを感じられる。ここに愛するミレーネが居ると確認できる。それだけで俺は十分だ」
囁き掛けるように発せられた言葉にミレーネは嬉しさと恥ずかしさでどうして良いのか分からなくなり硬直する。
「やはり、ずるいです……」
「そうね。ずるいわね」
そんな二人のラブラブ空間を壊したのは羨ましそうに見つめる3人の妻たちだった。
「旦那様私たちが居ること忘れてない?」
「いや、忘れてないぞ」
「なら、もっと性質が悪いわね。妻たちの前でどうどうといちゃつくなんて」
「べ、別に、わ、私はそんなつもりでは!」
エリーゼの言葉にオドオドしながら否定しようとする。しかし表所は顔を赤くしながらもどこか嬉しそうであり、残念そうでもあった。
「ミレーネ、嘘は駄目じゃ。お主だってセンヤの背中に手を回しておったくせに」
「うっ」
クロエの言葉に反論できなくなる。
「そうですね。お二人には少しお仕置きが必要だと私は考えます」
冷静にしかしどこか不気味な笑みを浮かべるエルザ。
「そうね。それがいいわね」
「何が良いかのう」
「あ、あの……真剣に悩まなくても」
「「「裏切り者は黙ってて!」るのじゃ!」下さい!」
「はい……」
抜け駆けした事に心底お怒りのエリーゼたちの言葉にミレーネは肩を落とすのだった。
「ミレーネ」
「センヤさん……」
「二人で乗り越えたら大丈夫だ」
「そうですね」
再び幸せ空間が発動する。
「「「情けは無用のようね」じゃな」ですね」
「そ、そんな!」
嫉妬で憤怒する三人から呟かれた言葉にミレーネはその場に経たり込む。
その後、千夜とミレーネは日が暮れるまでお仕置きされたのだった。
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