鬼神転生記～勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。～

第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第百二十八幕 セルドと謝罪

　真犯人であり、本当の裏切り者であるデセオは千夜によって断罪された。しかし、それでエルフたちの恨みが消えるわけではない。

「さて、デセオは俺が殺した。しかし、お前たちの恨みが晴れたわけではないだろう。しかし安心しろ。ここにはお前たちにとって許せない人物がもう一人いる」
　その瞬間地面に横たわる男、セルドである。

「こいつをどうしようと好きにして構わない」
「おい！ 話が違うじゃないか！ 殺さないと言う約束だ！」
「確かに約束はした。しかし、それはお前が真実を話したらの場合だ。しかし話す前に解決してしまった。つまり約束は無効だ」
「そ、そんな……」
「それにな。もしもお前が真実を話していたところで、お前は死んでいた。家族を恋人を奪われたエルフたちによってな」
　千夜の言葉にセルドは己を囲むエルフたちに視線を向ける。

「ひぃ！」
　憎しみに憑りつかれたエルフたち。そこには美男美女などいない。ただ、憤りを顕にしたエルフだった。

「好きにしろ」
　その言葉が合図となり、セルドは無残な死を遂げるのであった。
(自業自得だ。恨むなら己自身を恨め。だが、お前なら地獄でデセオを恨んでいそうだな)


　それから一時間、エルフたちの怒りも収まり、デセオとセルドの死体は千夜によって火葬された。
　その後は村人たちによる謝罪が待っていた。

「ミレーネすまなかった！」
「ごめんなさい！」
　老若男女問わず頭を下げるエルフたち。

「いえ、私はもう平気ですから」
　そんな彼らを笑顔で許すミレーネ。第三者が見れば甘いと言いそうではあるが、これがミレーネなのだと。笑顔を浮かべる千夜たち家族の相違であった。

「そ、それで聞きたいのですが、お父様とお母様は」
　ミレーネの言葉に罪悪感の表情を浮かべるエルフたち。

「すまない。裏切り者の親を暮らさせるわけにはいけないという事になってな」
「まさか殺したの！」
「殺してはいない！ 追放したのだ！ 今はどこで何をしているかまでは……」
　エリーゼの言葉に慌てて弁解するエルフ。その事に胸を撫で下ろすミレーネ。

「なら、両親を探さないとな」
「え？ 良いのですか？」
「あたりまえだ。俺がここに来たのはミレーネの両親に結婚を許して貰うためだ。つまりミレーネの親を見つけ出さない事には始まらないということだ」
　ミレーネの頭を撫でながら答える千夜。その事に涙を流しながらお礼の言葉を口にするミレーネだあった。

「さて、一晩だけ世話になりたいんだが構わないか？」
「それに関しては問題ない」
「そうか。ならありがたくつかわせて貰う」
　空き家を借りて一晩だけ泊まる事にした千夜たち。
　こうして何とか誤解は解けるのであった。