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その頃、百鬼家では?

我輩は、報告する。

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 我輩は童ラムと共にギルドに来ていた。
 出来るだけ早く報告して安心させるつもりでおったが、好奇心旺盛な童ラムによって予定よりも一日遅く到着したのだった。まったく気になるからといって木に登ったり、食人植物に近づかないで欲しい。助けた意味がなくなるのでな。
 肉体よりも精神的に疲労が溜まったが、報告するのに支障はない。

「そうか。討伐を終えたか。流石はセンヤの仲間だな」
「いえ、我輩は殿の家臣に過ぎませぬ。仲間などと恐れ多い」
「そ、そうか。だがこれで商人や冒険者、付近の村が襲われる心配は無くなったな」
「それに関しては問題はない」
「どういうことだ?」
 腑に落ちない肯定にバルディは顔を顰める。

「それを話すにはこの童の事から説明しないとならない。ラム挨拶しろ」
「えっと、私はラム。5歳で、怖い男の人たちに襲われそうになった所をタイガーに助けて貰った」
「そ、そうか。それは良かった。俺はてっきりタイガーが……いや、なんでもない」
 何を言いかけたのか気になるが聞かないほうが我輩自身に良さそうだ。精神的に。

「で、この幼女、ラムちゃんと言ったか? 何がどうした?」
「ラム見せてやれ」
「大丈夫なの? お父さんとお母さんにはそう容易く見せるものじゃないって言われたけど」
「安心しろこの男は信頼出来る。なんたって我輩が仕える殿の友人なのだからな」
「おい、いったい何の話をしているんだ。まさか如何わしい話じゃないだろうな!」
「何を言ってるんだ? ステータスの事に決まっているだろ」
「そ、そうだよな。ははは……」
 まったくこんな男でこのギルドは大丈夫なのか?

「タイガーがそう言うなら見せる。ステータスオープン」

────────────────────────────────

ラム
LV1
HP 600
MP 50
STR 20
VIT 15
DEX 45
AGI 25
INT 50
LUC 70

スキル
調理LV2
採取LV1

称号
森の母


──────────────────────────────

「おいおい、この幼女頭が良いな。とは、思っていたがまさか称号持ちか」
「そうだ」
「しかし、見たことの無い称号だな。どんな効果なんだ?」
「動物や魔物と意思疎通が可能な称号だ」
「おい、それって……」
「ああ、使い方を間違えれば魔物を操る事も可能だ。ましてや、魔物や魔族嫌いな連中にしられれば、魔女扱いなれても可笑しくない称号だ」
「そうだな……」
 そう、この『森の母』という称号は所有者であるラムしだいで共存する事だって可能だ。だが、その事を知った者たちが戦争に利用する可能性だってある。なんせ魔物と会話が出来るということは説得だって可能なのだ。そんな力を持つ少女を欲しがらない連中などいない。ましてや拒否しようものなら躊躇無く魔女や犯罪者にしたてあげ暗殺する事だって考える筈だ。

「安心してくれ。ラムは屋敷に住めるように殿に殿に頼むつもりだ」
「ま、それが良いだろう。あの場所ほど安全な場所なんてそうないからな。で、それがワイバーン討伐とどう関係があるんだ?」
「ラムはワイバーンと会話をしたことで今回の件の理由を知ることが出来た」
「それは本当か?」
「ああ、本当だ」
 俺はラムから聞いた話をそのままバルディに教えた。話が先に進むにつれ、表情が険しくなるのが分かった。やはり何かあるようだ。

「そうか。よく教えてくれた」
「それだけか?」
「………」
 眼光を鋭くして問う。
 バルディは少しの間黙っていたが直ぐに口を開いた。

「実はな、国王陛下から密書が届いた」
「密書が」
 それも国王直々にだ。ましてやギルドマスターとはそれなりの役職だが、密書が届くほどとは。

「手紙にはとある国の兵力が急激に増加した。そちらでもその原因を調べて欲しいとな」
 国の名前はただ言わないだけだろう。だが、

「フィリス聖王国だな」
「………」
 言えないか。ま、それもその筈だ。これは機密事項なのだから。

「俺が知る限りでは兵を増加させたわけじゃないということだ。ただ、個人の能力が尋常ないほど強力になったということだ」
「ワイバーンと同じだな」
「そうだ」
 確かに兵を増やすより個人の能力を上げたほうが遥かにメリットはある。少人数であれば国境を越えるのだって難しくは無い。それに戦争になれば食料は死活問題だ。兵を増やせばそれだけで必要となる補給物資も増える。が個人の能力が兵の10人以上の力があれば別だ。それだけで補給物資は10人分減らすことが可能なのだから。
 しかし、問題がある。それだけ個人を強くするには膨大な時間と金が必要になってくる。が、情報からみて急激に強くなったのはここ最近の事だ。そんな短期間で強くなるなど不可能。しかしその方法があるのであればそれなりに情報が出回っていても可笑しくは無い。
 やはりこれも殿に聞くべきなのかもしれない。

「心当たりがありそうな顔だな」
「いや、そういう訳ではない。もしかしたら殿ならば知ってるかもと思っただけだ」
「確かに圧倒的強さを誇るセンヤなら何か知っているかもしれないな」
「だが、殿は現在は奥方たちと旅行中だ」
「だから邪魔をするなと?」
「そうだ」
「分かってるよ。今回の事は俺たちで解決する問題だ。無関係のセンヤを巻き込むつもりはない」
「そうか」
 良かった。これで殿に迷惑を掛けずに済む。

「それじゃ、我輩はこれで失礼する」
「そうか。報酬はマキに用意させている。受付で受け取ってくれ」
「了解した」
 受付で報酬を受け取った我輩はラムと連れて屋敷へと戻るのであった。さて、皆にはなんと説明したものやら。
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