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第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第百二十幕 報告とまさかタイガーって

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 突如、タイガーから連絡があったことに千夜は驚いたが、それでも何かがあると悟った。

「どうした?」
『実は報告がありまして』
「なんんだ?」
 千夜はタイガーの事を信頼している。そのため依頼報告はしなくて良いと伝えている。しかし、それも連絡してきた事に何かがあったのだと悟り、そしてそれは確信へと変わった。
(まさかフィリス聖王国がな。高確率でそれは存在進化だろう。急激に強くなったのだから間違いない。しかし、存在進化をするにはかなりの戦闘が必要だ。龍やワームといった高ランクの魔物を倒さないと存在進化までは辿りつく事は不可能だからな。しかし倒した噂すら無いとなると……いったい何をした?)
 千夜やエリーゼたちのように高ランクモンスターを倒さなければ一定のレベルからはレベル上げが難しくなる。しかし龍やワームを倒したなどの噂が無い以上他の方法で存在進化したことになる。その方法に千夜は頭を抱えていた。

『殿どうかなされましたか?」
「いや、なんでもない。たぶんだが、急激な力の上昇は存在進化だろうな」
『存在進化……』
「そうだ。それに関しての説明は戻ってから説明するとバルディとベルグに伝えておいてくれ」
『畏まりました』
「あ、それと出来るだけ情報を集めてくれ。急激な力を得てからと得る前の情報を。根も葉もない噂でも何でもいいから、集めれるだけ集めてくれと言っておいてくれ」
『畏まりました』
 タイガーとの通信を切り、千夜は再び思考の海へと潜る。
(それにしてもどういうわけだ? そんなレベル上げを楽に行う方法……だめだ思いつかない)

「ねぇ旦那様」
 あっけなく思考の海からエリーゼによって引き上げられる。

「なんだ?」
「タイガーの後ろに居た幼女は何だったの?」
「ああ、あれはラムって言うらしい。依頼中に人攫いに襲われそうになっていた所を偶然見つけて助けたらしいが懐かれたらしくてな。屋敷に住まわせたいと前に手紙で連絡してきた」
「でも、本当はタイガーって」
 エリーゼは変な妄想をする。が、

「いや、それはない……たぶん」
 完全に否定することが出来ない千夜であった。

「それよりも問題はミレーネの事が先だ」
 そう。まだ今回の件は解決していない。まだ始まってすらいない。準備段階と言っても過言ではないのだ。

「そうね。でも誰がこんなひどい事を」
 怒りと悲しみが入り混じった表情を浮かべるエリーゼ。それはクロエとエルザも同じだった。

「それに関しては明日、調べるとしよう」
「どうやって?」
「簡単だ。街の連中から話を聞く」
「でも、それが出来るなら……」
「安心しろ。それに関しては大丈夫だ。それよりもエリーゼたちは訓練をしておいてくれ」
「それは良いけど。別に今じゃなくても」
「確かにそうだが、話を聞くにしたって大勢で行けば警戒される。それに、何か嫌な予感がする」
 千夜は揺らめく炎を見つめながらざわつく心を静めるため、出来るだけ準備にとりかかるのだった。
(こういった時の勘は外れたことが無いからな)
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