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第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第百十八幕 濡れ衣と出ていけ

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 千夜はやはりかと思った。
(エルフはダークエルフよりも遥かに傲慢で他種族を見下す傾向がある。そのため他種族に対して異常とも言えるまでの恐怖を覚えている。矛盾ではあるがけして他種族とは関わりを持とうとしない種族だからな。小さい時から親に教え困れたら無理も無い)
 その証拠に窓から様子を窺う母親と子供の目には恐怖が宿っていた。
(さて、どうするか。戦ったら圧倒的に強いこちらが余裕で勝つだろう。だが、それでは意味が無い。今回はただ単にミレーネの里帰りなのだから)
 千夜は視線でエリーゼたちに警戒だけしてけして剣を抜くなと命令をだす。
(話し合いが一番の最善策なんだろうが、こうも警戒されては話し合いなど通じないからな。一旦ここは引き下がるべきなのかもしれないが……)
 悪循環に陥っている千夜の横をミレーネが通り過ぎ前でる。
(何をするつもりだ)

「お願い弓と剣を降ろして! 私はミレーネ! この村で生まれ育ったミレーネ! 覚えてるよね!」
 ミレーネは説得を試みる。これはクロエの時と同じだ。もしかしたらと千夜も思った。その証拠に一瞬だけだがエルフたちに動揺が走る。しかし、

「この裏切り者! よくも平然と顔を出せたな!」
「え?」
 弓を構える男が怒りを露にする。しかしミレーネには理解できなかった。
(確かミレーネは山菜の採っている最中に誘拐されたと言っていた。ミレーネの性格を考えると嘘は言ってないはずだ。となると……このすれ違いには裏があるな)
 誰かの思惑が裏で糸を引いていると分かった千夜は一旦引き返すことに決めた。

「み――」
「私は裏切ってなんかいません! 私は山菜と採っている時に何者かに誘拐されたんです!」
「嘘をつくな!」
「誰がお前なんかを信じるか! この売国奴!」
「そうだ! 金欲しさに仲間を村を売った裏切り者が!」
「仲間が人間どもに何人も殺され誘拐されたのによくも嘘がつけるものだ!」
「再び現れたかと思えば今度は人間だけじゃなくダークエルフまで連れてくるのがなによりの証拠だ!」
「出て行け!」
「そうだ出て行け! 二度とここに来るな!」
 完全に裏切り者扱いされたミレーネ。周りから巻き起こる「出て行け」コールに瞳は絶望の色へと変わっていく。

「なんで……どうして……私はただ久々に……里帰りしただけなのに……」
(まずいな……)

「ミレーネ、ここは一旦下がるぞ!」
 このままではミレーネの精神が壊されてしまうと考えた千夜は返答待たずしてミレーネを担ぎあげて結界の外へと出て行くのだった。
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