鬼神転生記～勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。～

第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第百十一幕 シャイネとクロエの戦い (中)

　全てにおいてクロエに劣るシャイネは最初っから全力で攻撃を仕掛けていく。
　懐に入り込もうとしたり、接近戦を多く行った。
　理由は簡単だクロエから離れてしまうと魔法ではシャイネに勝ち目が無いからである。
　今回千夜はステータスとスキルのレベル上げを全体的に行ったが、戦闘ではなるべく接近戦での戦い方を教えた。
　理由は１週間で多種多様な魔法を覚えるのは不可能だと判断したのとシャイネは魔法が得意では無かったからだ。
(それでも勝機が無いわけではない。それに唯一シャイネがクロエよりも遥かに優れているものがある。それは─)

「今だ！」
「くっ！」
　僅かな隙を見逃さなかったシャイネの短剣がクロエの右頬を掠める。

「嘘！遥かに強いクロエに傷を付けるなんて！」
　エリーゼは目の前の光景に驚きを隠せないでいた。

「これは後で説教だな」
「旦那様、流石にあの程度で説教なんて」
「何を言っている。説教はクロエだけではない。エリーゼお前もだ」
「え！ 私もなの！」
「当たり前だ」
　説教だと知り、落ち込むエリーゼを他所に千夜は二人の戦いを見守る。
(さて、これでクロエも真剣にしかけてくるぞ。どうするシャイネ)
　先程までシャイネの実力を侮っていたクロエも真剣な面持ちで反撃に転じる。
　土と火の魔法を多彩に操りシャイネを近づけさせない。
　それどころか闇魔法を使い死角から短剣や投げナイフで相手に奇襲する。
　流石のシャイネも何処から飛んでくるか分からないナイフに精神をすり減らしていく。
(防戦一方だぞ。どうするシャイネ)
　真っ直ぐな視線で見つめる千夜。

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(このままでは負ける！ どうすれば！) 
　焦りで視野が狭まる。
　そんな時、頭の中で千夜の言葉が蘇る。

『いいか。どんなに敵が強かろうと多かろうと冷静さを保て。でなければ視野が狭くなり、相手の思う壺だ』
(そうだ。冷静にだ)

『冷静さを取り戻す。一番の方法は深呼吸だ。だが、戦闘中にするのは難しい。そういった場合は一旦相手と距離をとれ』
(一旦離れてっと)
　シャイネはクロエと距離をとる。
(そうだ。よく覚えていたな)
　見守る千夜の頬は僅かに緩む。

『深呼吸をした後は、これまでの戦いを思い出せ。相手はどういった攻撃をしてきたのか、相手がよくとる行動を』
(攻撃は掠ったがクロエはまだ、油断している。その証拠に向こうから攻撃はしてこない。私が接近してそれを防ぎその隙に攻撃。それが今のクロエの行動。……なら！)
　両手に持つ短剣を強く握り締める。
(いよいよだな)
　シャイネがしようとすることを悟った千夜は不敵な笑みを浮かべる。

(これで決める！)
　決闘も終盤いよいよ決着する。


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月見酒です。
更新が遅くなりすいませんでした。