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第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。
第百六幕 鬼と食事
しおりを挟む「どうしたシャイネ。もっと速く走れるだろ」
「無茶を言わないでくれ! これでも精一杯なんだ。だいたいこんな視界も悪い崖道を走って下りるなんて危険すぎる!」
「何を言っている。この程度クロエなら余裕だぞ」
(いや、それは無いだろ)
千夜の言葉に内心ツッコミを入れる。
「それにこれも訓練だ。どれだけステータスを向上させようと、実戦では経験が物を言うからな」
千夜の言葉に黙りこむシャイネ。その意味をよく理解しているのだろう。
「今日中には麓まで行くからな」
「鬼だな」
千夜の言葉に冷や汗を流しながら呟くのだった。
******************************
千夜の言いつけでクロエの家で過ごしているエリーゼたちは、食事をご馳走になっていた。
百鬼家で食べる食事に比べて遥かに見劣りする料理ではあるが冒険者として活動しているエリーゼたちは気にする事無く美味しそうに食事を楽しんでいた。
「エリーゼさんたちから見てセンヤさんとはどんな方なのですか?」
「どうとは?」
「生憎とクロエから話を聞く限りでは、どうも人柄が見えてこないのです」
クロカは自分の娘の説明力の無さに呆れながらエリーゼたちに問うた。
「そう言われてもね。冒険者としての旦那様は強くて遠い存在に感じる事もあるわね。また指導者としては厳しく、でも言葉足らずの所があるからどうしても憤りを覚える事があるわ」
「それでも優しいです。私たちが抱えている辛さを和らげてくれる存在です」
「そうです。センヤさんは辛い時や悲しい時に見透かしたかのように欲しい言葉をかけてくれます」
「それでも、旦那様にも辛い時はあるわ。だからそんな時は私たちが抱き締めてあげるの」
「センヤさんにも辛くなるような事が?」
「私たちもよくは知らないけど過去に何かあったようなの。それを思い出して悲しそうな表情をする時があるわ」
「そうなんですか」
「あとはね……我侭かな」
「我侭? そんな風には見えませんが」
「とあること限定で超がつくほど我侭になるわ。私たちですら止める事が難しいほどにね」
「それはいったい?」
「家族よ」
「家族ですか?」
「ええ。家族が危機的状況、もしくは離れてしまう可能性がある時はやり過ぎって思うほど、凄い行動をするわ」
「そこまで………では、もしかしてセンヤさんは」
「ええ、多分クロエをこの村の長にさせないために。クロエを連れて帰るために何かしてるだと思うわ」
エリーゼの言葉に、そうですね。と同意するミレーネとエルザ。頬を赤く染めるクロエであった。
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