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第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第九十四幕 平等に手に入れられると入りきらない

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 走ること1時間で王都に到着した千夜たちは王都に入る人々の列に並んでいた。

「凄いわね。半分の力しか出してい無かったのに前よりも遥かに速いんだもの」
「ほんとですね」
「でも、少し心配ですね」
「あら、エルザなにが心配の?」
「ギルドに報告する時がです。出発した時とは見た目が変わっていますから」
「「「あ」」」
「大丈夫だろ。どうしてと聞かれたら、分からないと答えておけば問題ない」
「存在進化の事は言わないの?」
「ああ。存在進化の事をしれば強さを求める連中が増えるからな」
「でも、そうなれば魔物が減って良いと思うわよ」
「忘れたのか? 経験値は魔物だけでなく人を殺しても手に入る。ましてや楽して稼ぎたい連中にとっては一石二鳥だ」
「確かにそうね」
 レベル250に達すれば、その先にある強力な力が手に入る。それが存在進化だ。エリーゼたちのように誰かを守りたいという者が手にすればまだ平気だが、闇ギルドなどで働く連中が手に入れれば国が滅ぶ可能性だって出てくるのだ。
 その力が誰にだって平等に手に入れられる事が出来るとしてもだ。

「次は俺たちの番だぞ」
 前が進んだことにより順番がやって来た。


 知名度のお陰かいまだ注目の視線を浴びながらギルドへとやって来た千夜たち。

「あ、センヤ様お帰りなさい」
「ああ、戻ったぞ」
「それで……後ろの方たちは? エリーゼ様は分かるんですが」
「何を言っている、ミレーネとクロエにエルザだぞ」
「え! そうなんですか! すいません、前見たときとは随分と姿が違っていたので」
「別に平気ですよ。私たちも驚いたので」
「我もそうだった」
「あれは驚かない方がおかしいです」
 三人が今朝の出来事を楽しそうに話す。

「それではブラッドワーム討伐を確認しますのでギルドカードの提示して下さい」
「分かったわ」
 そう言ってエリーゼがギルドカードをアリスに渡すとそれに続くようにミレーネたちもまたギルドカードを渡す。

「あ、えっとセンヤ様は?」
「ん? 俺は参加してないぞ」
「え! つまりは」
「ああ。ブラッドワームを倒したのはエリーゼ達だ」
 その言葉にギルド内は驚きの歓声に包まれる。

「それは凄いですね! あ、すいません。つい興奮してしまって」
「別に良いのよ。私たちだって倒したときは嬉しかったしね」
「そう言って頂けると幸いです。それでは確認させていただきます」
 アリスは一人一人のカードの記録を調べていく。

「あの、1つよろしいですか?」
「なに?」
「確かにブラッドワームの討伐はされています。ですが、他にも沢山倒されているようなのですが」
「ああ、それね。ブラッドワームを討伐する前に遭遇してね」
「ですが、この数は尋常ではないのですが?」
「気にしないで良いわ」
「……分かりました。申し訳ありませんがブラッドワーム以外のモンスターは討伐依頼ではないので報酬は出ません。しかし、素材として買い取ることは可能です。どうなされますか?」
「なら、買い取って頂戴。ブラッドワームもあるから、流石にここでは出せないけど」
「分かりました。それでは裏の素材場に行って下さい。その間にカードの更新を行っておきますので」
「分かったわ」
 アリスの指示に従い裏手に向かう。そこには幾つもの倉庫がたちならんでいた。

「あ、『月夜の酒鬼』の方々ですか?」
「ええ、そうよ」
「アリスから窺っています。鑑定士のハイネと言います。よろしく」
「私はエリーゼ。で、彼女たちがミレーネとクロエにエルザよ。そして彼がこのクランリーダーのだ……センヤよ」
「これはご丁寧に。それではこちらに討伐したモンスターお願いします。あれ、倒されたモンスターを乗せた荷馬車が見当たらないようですが?」
「それなら大丈夫だ」
 そう言って倉庫の中心へと進む千夜。そして、

 ドサッ。

 倒されたモンスターの山がそこにはあった。しかし、ブラッドワームはやはりその大きさから目立つ。

「こ、これ全て貴方たちが?」
「ああ、そうだ。ま、ブラッドワームは妻達が倒したんだがな」
 目の前のモンスターの山。ハイネは呆然と立ち尽くす。

「それにしてもやはり、倉庫に入りきらなかったな」
「それは仕方がないわ」
 倒した大量のモンスターは入ったがブラッドワームは4割が倉庫の外に出ていた。

「そ、それでは鑑定させて頂きます。見たところ綺麗な常態で残っているので期待して良いかと思います」
「そうか。それで、どれぐらい時間がかかる?」
「流石に一人では無理なので、今から全員で取り掛かりますが、早くても2時間はかかるかと」
「そうか」
「なら、私のところでお茶でもしていくといいよ」
 突然、背後からかけられた声。そこにはここのギルドマスターを勤めているサシャだった。

「良いのか?」
「ええ、良いよ。それに話も聞きたいしね」
「分かった」
 そう言って千夜たちはサシャと共にギルドマスターの部屋へと向かうのだった。
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