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第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第八十三幕 話し合いと新たな目的

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 ジョンのステータスを推測通りと分かった千夜。
 しかし、その事をジョンに話すかはまた別の問題である。
(もしも、話を聞けばこの世界について何か解るかもしれない。が、そうすると俺の正体を話さなければならなくなるからな)
 環の時とは違い、千夜の目の前にいるジョン・ケイルという少年の素性も前世での正体も知らない千夜はどうするか迷っていた。

「あ、あのやはり何か?」
 ジョンの顔を凝視していた千夜。その事に尋ねられる。

「いや、すまない。少し考え込んでいただけだ」
「そ、そうですか」
 千夜の態度に不信感を覚えるジョンではあった。

「それで、ジョンはどうしてこの店に?」
「あ、それは……」
「わたしとあそぶためだよ!」
 ナオが千夜の問いに元気良く答える。

「遊ぶため?」
「はい。僕はナオちゃんと遊ぶために来ました」
「そうか」
「それで、センヤさんは?」
「俺はナオの祖父に用事があってな。今日会う約束をしているんだ」
「そうなんですね」
 安堵の表情を浮かべる。その姿に千夜は。
(やはり、こいつ)
 年もナオとそこまで離れていない事やここに来た理由を言い難くそうにしていた事を踏まえて千夜はとある推測に行きつく。

「ジョン。1つ聞きたいことがある」
「な、なんでしょうか?」
「ナオの種族は知っているのか?」
「っ! はい……」
「なら、けして裏切るような事はするなよ。それで傷つくのはナオだからな」
「分かっています。でも、センヤさんがどうしてその事を?」
「ん? ああ、言っていなかったな。俺もナオと同じ混合種だ。だから同じ種族としてナオには幸せになってもらいたいのさ。ましてや俺みたいな事にはなって欲しくないからな」
「あの、それって─」
 千夜の親切心に隠された過去が気になるジョン。しかしそれは1人の老人によって邪魔をされる。

「センヤ来たか」
「ああ。約束通りな」
「なら、奥で話そう。ケイル商会の坊っちゃんもナオと仲良くしてくださいな」
「は、はい!」
 千夜はロミオの後に続く形で店の奥へと姿を消すのであった。
 そんな後ろ姿をジョンが見詰めている事など知るよしもなく。

 店の奥、リビングへとやって来た千夜たちはロミオとジュリエットと対峙する形で椅子に座っていた。

「それじゃ早速。二つ目の段取りについて聞かしてもらおうか」
「ああ、その事なんだが、正直何時になるかは分からない。現在休戦状態となっている戦争がいつ再開するかも分からないこの状況ではな」
「ま、そうだろうな。俺は混合種だが、魔族と敵対している国で活動している俺を魔王と会わせるのは至難だろう。まして俺はXランク冒険者。お前たちから見れば危険な存在だからな」
「そうだ」
「別にそれでも構わない。お前たちが無理なら俺がなんとかするだけだ」
「おい、まさか!」
「安心しろ。乗り込むつもりは今のところない。それは最終手段だ。言っただろ俺にも魔族の知り合いはお前たち以外にもいるとな」
「そうだったな……」
「それに、乗り込まなくても二つ目の賭けを無効にする方法だってある。だがそうなれば賭けは俺の勝ちという事にはなるが文句はないな?」
「………ああ」
「よし、なら魔王との謁見が出来るか出来ないかが分かったら知らせてくれ」
 そう言って千夜は懐から封筒を取りだし机に置く。

「これは?」
「それは簡単に説明すれば通信結晶の封筒バージョンだ」
「ばーじょん? なんだそれは?」
「ああ……ま、なんだ。通信結晶の機能を封筒にも付与した物だと言えば分かるか?」
「ふむ……」
「それの中に手紙を入れ、送りたい相手の名前を封筒の裏に書けば届くようになっている」
「なるほどな。わかった。謁見の事が分かれば直ぐに知らせよう」
「そうか。なら、俺たちはこれで失礼する」
 千夜は椅子から立ち上がる。それに続く形でエリーゼたちも椅子から立ち上がる。

「センヤ」
「なんだ?」
 リビングを出ようとしていた時、ロミオに声をかけられる。

「お前たちはこれからどうするつもりだ?」
「別に何も変わらない。この国に来たのは新婚旅行で来ただけだからな。観光して終われば用事を済ませて帰るだけだ」
「そうか」
「ああ、またな」
 軽く挨拶を述べると今度こそ千夜たちは店を後にするのだった。
(さてと、後はミレーネとクロエが住んでいた故郷に行くだけだな)
 新たな目的のため千夜は妻たちを連れて宿屋へと戻るのだった。

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