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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第百七幕 リーダーとギルガメッシュ
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名前も知らない海賊団船長の憎しみと怒りの傷跡だらけの無残な骸を視界から外した千夜はエルザたちとこの後の事を決める。
「それでこの島の犯罪者どもを皆殺しにしますか?」
「いや、その必要はないだろう。俺たちの目的は別にある。もうこの島にはようはない」
「ですが、この島に滞在している可能性もあるのでは?」
「確かに無いとは言い切れないが、この島に住む古株だったあの男が知らないと言うんだ。その可能性はないだろう。それにこの島の住人なら海賊だけでなく他の組織にも協力を求めるはずだ。だが、その動きの影すら見えてこない。ならその可能性は無いと考えても良い」
「それってつまりは」
「ああ。この海賊団は目的のために利用されていただけだ。ま、船長は楽に財宝が手に入るという好条件に目がいって気づいてなかったみたいだがな」
「所詮は蛆虫以下の存在です。主と同等なわけがありません」
屍になった男に対しても同情や優しさなど一切無い毒舌に千夜は苦笑いを零すのだった。
「それでは船に戻りますか?」
「いや、港の探索をする。情報になるものがあるかもしれないからな」
「畏まりました。クーエ姉さん探索に行きましょう」
「よかろう」
エルザはクロエと一緒に物資が置かれている倉庫へと向かった。
「アイーシャたちも欲しい物があるなら適当に散策しても構わないぞ。ま、もうすぐこの島を出るから、あまり時間はないがな」
「言われなくても分かってるわよ」
棘のある言い方で吐き捨てたアイーシャは仲間とともに金目の物を探しに港の方へと向かった。
「さて、俺も探すとしよう」
そう呟いた千夜は船長が寝床として使っていた船の中へと入った。
木造船の船の中は千夜が予想していたより綺麗に清掃されており腐食などはしていなかった。
(バルディの部屋の方が汚いな)
内心そんな感想を抱きながら船長の書斎と思われる部屋の中へと入る。
一部は船長が気に入ったと思われる財宝が部屋の隅に乱雑に置かれていたが、それ以外は綺麗に整頓されていた。
壁には金の剣や盾。鎧などが置かれていたが、見向きもすることなくオフィスデスクの引き出しを一つ一つ開けて確かめていく。
(殆どが納品書だな。酒、麻薬、媚薬、避妊薬と様々だな。ま、殆どが盗品だろうが。俺の店の酒も発注されていたのか)
知らぬところで、自分が経営する酒が取引されていることに驚くが、別に盗まれたわけじゃない。どうせ商品を買った客から奪った酒なので、千夜にはどうでもいい事だ。
「だが、ギルガメッシュに関する資料はないな」
全ての引き出しを開けても目的の手がかりは見つからない。
「仕方がない。別の場所を探すか」
千夜はそう言うと壁や装飾品の中や裏に隠されていないか確かめるがあるのは、金貨数枚程度だけだった。
「どこかにあると思ったんだがな」
そんな事を思いながら見落としが無いかと再び引き出しを開ける。
「やはりないよ――ん?」
確かめて閉めようとした時手に違和感を覚えた。
「もしかして」
引き出しを引き抜いた千夜は中、側面、裏側と全ての方向を見たり触ったりして確かめる。
その時、指先に小さな穴に触れた感触を感じ取った。
「まさか、からくり細工された隠し引き出しになっているとはな」
思いがけない発見に笑みを零しながら千夜は中身を確かめる。
中に入っていたのは取引先の名簿だった。
「色んな組織の名前にこの島にある組織の名前。それから貴族の名前まである。それにしても随分手広くやっていたんだな。皇国、帝国、法国、聖王国の名前まである」
思いがけない裏社会の名前に呆れつつも、役に立つかもしれないとアイテムボックスに収納しておく。
「だが、ギルガメッシュの名前も暗霧の十月の名前もないか」
だが残念なことに千夜が一番求めた名前はなかった。
しかし他にも隠し引き出しがあるのではと思い探していると見事にあった。いや、ありすぎたというべきだろう。
(いったいどれだけあるんだ。この机そのものがからくり細工で出来ているみたいだな)
そんな事を思いながらもようやく千夜は目的の物を見つけた。
「暗霧の十月創設者兼リーダーギルガメッシュ。副リーダー、フランケンシュタインか」
思いがけない内容に驚きを隠せないでいた。
「まさか本当のリーダーがギルガメッシュだったとはな」
前に聞いたフランケンシュタインが転生者でリーダーと思っていたが調べていくうちにそうでない事が発覚していった。
そしてその証拠となる物が目の前にあることに千夜は嬉しく感じていた。
「これでようやく敵のボスが分かった」
亡霊のように揺ら揺らと揺らめいていた背中がハッキリと見えたことに千夜は不敵な笑みを浮かべるのだった。
「それでこの島の犯罪者どもを皆殺しにしますか?」
「いや、その必要はないだろう。俺たちの目的は別にある。もうこの島にはようはない」
「ですが、この島に滞在している可能性もあるのでは?」
「確かに無いとは言い切れないが、この島に住む古株だったあの男が知らないと言うんだ。その可能性はないだろう。それにこの島の住人なら海賊だけでなく他の組織にも協力を求めるはずだ。だが、その動きの影すら見えてこない。ならその可能性は無いと考えても良い」
「それってつまりは」
「ああ。この海賊団は目的のために利用されていただけだ。ま、船長は楽に財宝が手に入るという好条件に目がいって気づいてなかったみたいだがな」
「所詮は蛆虫以下の存在です。主と同等なわけがありません」
屍になった男に対しても同情や優しさなど一切無い毒舌に千夜は苦笑いを零すのだった。
「それでは船に戻りますか?」
「いや、港の探索をする。情報になるものがあるかもしれないからな」
「畏まりました。クーエ姉さん探索に行きましょう」
「よかろう」
エルザはクロエと一緒に物資が置かれている倉庫へと向かった。
「アイーシャたちも欲しい物があるなら適当に散策しても構わないぞ。ま、もうすぐこの島を出るから、あまり時間はないがな」
「言われなくても分かってるわよ」
棘のある言い方で吐き捨てたアイーシャは仲間とともに金目の物を探しに港の方へと向かった。
「さて、俺も探すとしよう」
そう呟いた千夜は船長が寝床として使っていた船の中へと入った。
木造船の船の中は千夜が予想していたより綺麗に清掃されており腐食などはしていなかった。
(バルディの部屋の方が汚いな)
内心そんな感想を抱きながら船長の書斎と思われる部屋の中へと入る。
一部は船長が気に入ったと思われる財宝が部屋の隅に乱雑に置かれていたが、それ以外は綺麗に整頓されていた。
壁には金の剣や盾。鎧などが置かれていたが、見向きもすることなくオフィスデスクの引き出しを一つ一つ開けて確かめていく。
(殆どが納品書だな。酒、麻薬、媚薬、避妊薬と様々だな。ま、殆どが盗品だろうが。俺の店の酒も発注されていたのか)
知らぬところで、自分が経営する酒が取引されていることに驚くが、別に盗まれたわけじゃない。どうせ商品を買った客から奪った酒なので、千夜にはどうでもいい事だ。
「だが、ギルガメッシュに関する資料はないな」
全ての引き出しを開けても目的の手がかりは見つからない。
「仕方がない。別の場所を探すか」
千夜はそう言うと壁や装飾品の中や裏に隠されていないか確かめるがあるのは、金貨数枚程度だけだった。
「どこかにあると思ったんだがな」
そんな事を思いながら見落としが無いかと再び引き出しを開ける。
「やはりないよ――ん?」
確かめて閉めようとした時手に違和感を覚えた。
「もしかして」
引き出しを引き抜いた千夜は中、側面、裏側と全ての方向を見たり触ったりして確かめる。
その時、指先に小さな穴に触れた感触を感じ取った。
「まさか、からくり細工された隠し引き出しになっているとはな」
思いがけない発見に笑みを零しながら千夜は中身を確かめる。
中に入っていたのは取引先の名簿だった。
「色んな組織の名前にこの島にある組織の名前。それから貴族の名前まである。それにしても随分手広くやっていたんだな。皇国、帝国、法国、聖王国の名前まである」
思いがけない裏社会の名前に呆れつつも、役に立つかもしれないとアイテムボックスに収納しておく。
「だが、ギルガメッシュの名前も暗霧の十月の名前もないか」
だが残念なことに千夜が一番求めた名前はなかった。
しかし他にも隠し引き出しがあるのではと思い探していると見事にあった。いや、ありすぎたというべきだろう。
(いったいどれだけあるんだ。この机そのものがからくり細工で出来ているみたいだな)
そんな事を思いながらもようやく千夜は目的の物を見つけた。
「暗霧の十月創設者兼リーダーギルガメッシュ。副リーダー、フランケンシュタインか」
思いがけない内容に驚きを隠せないでいた。
「まさか本当のリーダーがギルガメッシュだったとはな」
前に聞いたフランケンシュタインが転生者でリーダーと思っていたが調べていくうちにそうでない事が発覚していった。
そしてその証拠となる物が目の前にあることに千夜は嬉しく感じていた。
「これでようやく敵のボスが分かった」
亡霊のように揺ら揺らと揺らめいていた背中がハッキリと見えたことに千夜は不敵な笑みを浮かべるのだった。
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