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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第七十三幕 探索四日目と巨大ウツボ再び
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筒状の中に設置された螺旋階段を30人以上の人々が海底遺跡へと向かって下りていく。
その先頭を歩くのは勿論和装姿の千夜だ。
既に班ごとに行動を開始した千夜たち。ここで班の大まかな隊長を紹介しておこう。
一斑は千夜。二班はエリーゼ。三班はミレーネ。四班はクロエ。五班はエルザとなている。因みにウィルは千夜と同じ一斑で、ベノワはエリーゼと同じ二班に組み込まれている。
これには理由があり、一番先頭を歩く一斑にベノワ非戦闘員であるベノワを入れるわけにはいかないからだ。それに一斑にはすでにウィルがいるため千夜の負担をなるべく減らす目論見もある。それならベノワを三班に配置した方が良いと思うかもしれないが、リーダーであるミレーネはどちらかと言えば後衛タイプの戦闘スタイルのため非戦闘員を庇いながら戦うには向かない。四班のクロエには暗殺という役目もあり、五班のエルザには背後の警戒に集中して貰いたいため結果的に二班という事になったのだ。それにもしも二班が最初の襲われた場合は即座に千夜が向かえるメリットもあるからだ。
海底遺跡へと辿り着き、魔物が生息していない一階層を進んで二階層入り口へと向かう。
二階層へと近づくにつれ冒険者たちから漂う緊張感が増していく。それは隣の冒険者へと連鎖していき、入り口前まで辿り着くころには全員に伝染していた。勿論千夜たちは他の冒険者ほど緊張はしていない。
「全員武器を構えろ。左右の壁、天井や床、全ての方向に警戒を怠るな」
最終確認と言わんばかりに千夜の指示が後ろのエルザたちのところまで響き渡る。
「よし、行くぞ」
照明の魔法によって照らされた二階層へと千夜たちは足を踏み入れる。
前と違いいきなり襲われることはなく順調に進んでいく。千夜たちが探し終えた部屋の前を通り過ぎ別の部屋を探す。
数分後、微妙に開いた扉の前を千夜たち一斑は発見する。
「止まれ」
その言葉に一斑はその場に停止し、追従してくる他の班を待つ。
四メートル間隔で移動していた距離が一メートル間隔にまで狭まったところで千夜はベノワを呼んだ。
「もしかして昨日入ろうとしていた部屋はあの部屋か?」
「そうです」
右の壁にあるドアを見つめながら肯定する。
「そうか。ベノワはリーゼの許に戻ってくれ」
「分かりました」
確認が取れたところで千夜はドアに近づく。
その行動を見守る冒険者たちの一人が緊張のあまり生唾を飲み込む。
(マップに反応なし。まったく姿を見せるまでマップに表示されないなんてどうなってるんだ)
危機察知を全開にして千夜はドアを開けた。
(何も起こらないか)
「大丈夫だ。だが警戒は怠るなよ」
(こういう時に襲い掛かってくることがあるからな)
千夜の言葉に警戒を怠ることなく冒険者たちは千夜の許に集まる。
「まずは俺が入って部屋の確認をする」
先に財宝を独り占めする気だと誰も不満を口にしない。それは一昨日と昨日の出来事で千夜の事をある程度信頼しているからだ。
同意の視線を感じ取った千夜は鬼椿片手に部屋に一歩足を踏み入れた。その時だった。
「ギョァヤアアアアアアアァァァ!!」
突如背後の壁が破壊されそこから先日千夜を襲った巨大ウツボが再び千夜に襲い掛かってきた。しかし先日とは違い二度目と言う事もあり即座に反応して振り向き様に鬼椿で一閃する。
猪突猛進と言って良いほどの勢いで襲ってきた巨大ウツボの開いた口を斬り裂きそのまま胴体を二枚に下ろす。それによって完全に絶命した。
「俺に同じ手が通用すると思うな」
絶命した死体を見下ろしながら呟く千夜の姿に雄叫びをあげる冒険者たち。その姿はまるで戦争に勝利した際の勝鬨のようであった。
しかし千夜は、
「警戒を怠るな。巨大な魔物がこいつだけとは限らないんだぞ」
その言葉に一瞬にして静寂と化す。きっと空気が読めない奴と思った者もいるだろうが、現在の状況を考えれば千夜の言葉は間違ってはいなかった。
(まったく困った連中だ。ん?)
すると巨大ウツボは砂となって消え、赤黒いバレーボールぐらいの魔核が残っているだけだった。その光景に千夜はほぼ確信する。
(やはりここはダンジョンだな)
頭を切り替えて警戒しながらゆっくりと部屋に入るとその部屋は前に探索した部屋より広く。全員でも余裕で入れる部屋だった。
「よしそれじゃ全員で探索を開始する。引出しや箱を見つけてもすぐには開けず俺かベノワに報告すること。分かったか」
「「「「「はい!」」」」」
先ほどの一瞬の戦闘で千夜の実力を知った冒険者たちは千夜の指示に不満を漏らすことなく素直に返事をして探索を開始した。
その間千夜はベノワに近づき会話をしていた。
「どうにか順調に進んでいるな」
「ええ。もしも今回もセンさんが居てくれなければ死人が出ていました」
「ま、それは分からないな。昨日のはただ単に考えなしに行動した結果だったからな」
「そうかもしれませんが、それでもきっとあの巨大化け物を倒せるのはセンさんぐらいでしょう」
砂となって消えた巨大ウツボの事を思い出す。
「そうでもない。あの程度なら俺の仲間なら造作もない」
「それは凄いわね」
「それじゃ、俺も探索する」
「ええ、お願いするわ」
これ以上話していたら余計な事まで言いそうだと思った千夜は話を切り上げ探索に参加するのだった。
その先頭を歩くのは勿論和装姿の千夜だ。
既に班ごとに行動を開始した千夜たち。ここで班の大まかな隊長を紹介しておこう。
一斑は千夜。二班はエリーゼ。三班はミレーネ。四班はクロエ。五班はエルザとなている。因みにウィルは千夜と同じ一斑で、ベノワはエリーゼと同じ二班に組み込まれている。
これには理由があり、一番先頭を歩く一斑にベノワ非戦闘員であるベノワを入れるわけにはいかないからだ。それに一斑にはすでにウィルがいるため千夜の負担をなるべく減らす目論見もある。それならベノワを三班に配置した方が良いと思うかもしれないが、リーダーであるミレーネはどちらかと言えば後衛タイプの戦闘スタイルのため非戦闘員を庇いながら戦うには向かない。四班のクロエには暗殺という役目もあり、五班のエルザには背後の警戒に集中して貰いたいため結果的に二班という事になったのだ。それにもしも二班が最初の襲われた場合は即座に千夜が向かえるメリットもあるからだ。
海底遺跡へと辿り着き、魔物が生息していない一階層を進んで二階層入り口へと向かう。
二階層へと近づくにつれ冒険者たちから漂う緊張感が増していく。それは隣の冒険者へと連鎖していき、入り口前まで辿り着くころには全員に伝染していた。勿論千夜たちは他の冒険者ほど緊張はしていない。
「全員武器を構えろ。左右の壁、天井や床、全ての方向に警戒を怠るな」
最終確認と言わんばかりに千夜の指示が後ろのエルザたちのところまで響き渡る。
「よし、行くぞ」
照明の魔法によって照らされた二階層へと千夜たちは足を踏み入れる。
前と違いいきなり襲われることはなく順調に進んでいく。千夜たちが探し終えた部屋の前を通り過ぎ別の部屋を探す。
数分後、微妙に開いた扉の前を千夜たち一斑は発見する。
「止まれ」
その言葉に一斑はその場に停止し、追従してくる他の班を待つ。
四メートル間隔で移動していた距離が一メートル間隔にまで狭まったところで千夜はベノワを呼んだ。
「もしかして昨日入ろうとしていた部屋はあの部屋か?」
「そうです」
右の壁にあるドアを見つめながら肯定する。
「そうか。ベノワはリーゼの許に戻ってくれ」
「分かりました」
確認が取れたところで千夜はドアに近づく。
その行動を見守る冒険者たちの一人が緊張のあまり生唾を飲み込む。
(マップに反応なし。まったく姿を見せるまでマップに表示されないなんてどうなってるんだ)
危機察知を全開にして千夜はドアを開けた。
(何も起こらないか)
「大丈夫だ。だが警戒は怠るなよ」
(こういう時に襲い掛かってくることがあるからな)
千夜の言葉に警戒を怠ることなく冒険者たちは千夜の許に集まる。
「まずは俺が入って部屋の確認をする」
先に財宝を独り占めする気だと誰も不満を口にしない。それは一昨日と昨日の出来事で千夜の事をある程度信頼しているからだ。
同意の視線を感じ取った千夜は鬼椿片手に部屋に一歩足を踏み入れた。その時だった。
「ギョァヤアアアアアアアァァァ!!」
突如背後の壁が破壊されそこから先日千夜を襲った巨大ウツボが再び千夜に襲い掛かってきた。しかし先日とは違い二度目と言う事もあり即座に反応して振り向き様に鬼椿で一閃する。
猪突猛進と言って良いほどの勢いで襲ってきた巨大ウツボの開いた口を斬り裂きそのまま胴体を二枚に下ろす。それによって完全に絶命した。
「俺に同じ手が通用すると思うな」
絶命した死体を見下ろしながら呟く千夜の姿に雄叫びをあげる冒険者たち。その姿はまるで戦争に勝利した際の勝鬨のようであった。
しかし千夜は、
「警戒を怠るな。巨大な魔物がこいつだけとは限らないんだぞ」
その言葉に一瞬にして静寂と化す。きっと空気が読めない奴と思った者もいるだろうが、現在の状況を考えれば千夜の言葉は間違ってはいなかった。
(まったく困った連中だ。ん?)
すると巨大ウツボは砂となって消え、赤黒いバレーボールぐらいの魔核が残っているだけだった。その光景に千夜はほぼ確信する。
(やはりここはダンジョンだな)
頭を切り替えて警戒しながらゆっくりと部屋に入るとその部屋は前に探索した部屋より広く。全員でも余裕で入れる部屋だった。
「よしそれじゃ全員で探索を開始する。引出しや箱を見つけてもすぐには開けず俺かベノワに報告すること。分かったか」
「「「「「はい!」」」」」
先ほどの一瞬の戦闘で千夜の実力を知った冒険者たちは千夜の指示に不満を漏らすことなく素直に返事をして探索を開始した。
その間千夜はベノワに近づき会話をしていた。
「どうにか順調に進んでいるな」
「ええ。もしも今回もセンさんが居てくれなければ死人が出ていました」
「ま、それは分からないな。昨日のはただ単に考えなしに行動した結果だったからな」
「そうかもしれませんが、それでもきっとあの巨大化け物を倒せるのはセンさんぐらいでしょう」
砂となって消えた巨大ウツボの事を思い出す。
「そうでもない。あの程度なら俺の仲間なら造作もない」
「それは凄いわね」
「それじゃ、俺も探索する」
「ええ、お願いするわ」
これ以上話していたら余計な事まで言いそうだと思った千夜は話を切り上げ探索に参加するのだった。
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