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第一章 魔力無し転生者は冒険者を目指す

第十五話 編入初日

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 既に食堂には何人もの生徒が食事をしていた。

「ジン、こっちだ」
「ああ」
 俺とジュリアスは列に並んで食事を受け取る。まるで配膳に並んでいる気分だな。
 食事を受け取った俺たちは空いてる席に座ってから食事を始めた。そこでジュリアスが質問してくる。

「どうしてジンだけホットドックなんだ。それも5つも」
 朝と夜、寮で食べるメニューは既に決まっているし、複数の種類があるわけでもない。出来るだけ食費を抑えるためなんだろう。だからこそ一人だけメニューが違えば疑問に思うのも無理はない。普通なら一人の生徒に対して特別扱いはダメなんだろうが、称号の能力のためどうする事も出来ない。一般的に言えば体質みたいなものだからな。
 因みに今日の夕食のメニューは白米、ほうれん草とベーコンのソテー、トマトサラダ、ワカメスープとなっている。どう考えても俺のホットドックよりも美味しそうに思えてくるが、こればかりは仕方がない。一人だけメニューが違うのに、これ以上我儘を言うわけにはいかないしな。
 それにしても誰が俺の呪いの事を伝えたんだ?イザベラあたりか?

「ちょっと事情があってな」
「………そうか。すまない聞かれたくないことだったか」
 ジュリアスに教える事に関しては別に問題はないが、ここで話すわけにもいかないので敢えて濁して答えたんだが、返って気を使わせてしまったらしいい。

「いや、そういう事じゃないんだが、人が多いところでは話しにくいだけだ。部屋に戻ったら事情を説明する」
「分かった。では頂くとしよう」
「そうだな」
 俺たちは食事を開始した。美味い。だけどイザベラの所に比べたら落ちるな。ま、あたりまえか。
 そんな時だった。

「久しぶり、ジュリアスく~ん」
 三人のガラの悪い生徒たちがジュリアスに絡む。まったくどこにでも居るんだな不良って。

「………」
「あれ~無視ですか。せっかく俺たちが話掛けてあげてるのに。なぁ?」
「まったくだぜ。こんなに友達想いな俺たちを無視するなんて、酷いぜぇ」
「ジュリアス君、酷いぃ」
 ああ、なんだ………いじめか。ほんと下らないな。せっかくの飯が不味くなるっての。

「おい」
 俺は食いかけてホットドックを皿に置いてジュリアスに絡む3人の生徒に話しかける。

「なんだお前は?」
 そんな男子生徒たちは高圧的に鋭い視線で俺を見下ろして来た。

「何ってジュリアスのルームメイトだ」
「もしかしてお前が編入生か」
「そうだ」
 どうやら既に俺が編入生が居る事は伝わっているようだな。

「で、その編入生が俺たちになんの用なわけ?」
「俺が先にジュリアスの飯くってるんだ。邪魔するな」
「へぇ……」
 そう言い放つとリーダー的存在の男子生徒は何が面白かったのかしらないが、不敵な笑みを浮かべる。

「てめぇ、編入生の癖に生意気だな」
「殺すぞ」
 殺す………殺すだと。こいつら面白いことぬかすな。生きるか、死ぬか。殺すか殺されるかの生活をしてきた俺に対して殺すだってよ。

「まあ、待て。お前何組だ?」
 取り巻きの2人が今にも攻撃態勢に入るが、リーダーの男子生徒がそれを制す。何気に冷静な対応が出来るようだな。
 意外な行動に俺はリーダーの警戒度を少し上げた。

「何言ってるんだ?」
「編入するクラスだよ。知らせは着てるんだろ?」
「そういう事か。俺は11組だ」
「11組!アハハハッ!」
「マジかよ。ありえねぇ!」
「ヤバッ。可笑しくて腹痛てぇ!」
 大爆笑する3人に対して俺は冷たい視線を向けるだけ。頭の悪そうな笑い方だな。

「それで、その11組の編入生様が1組の俺たちに説教ってわけか?」
「後悔するなよ」
 三人は俺の周りを囲む。隙だらけだ。ちょっと力を出せば一瞬で殺せるが、どうするかね。

「おら、何とか言ってみろよ」
「あら、入寮して早々喧嘩かしら?」
 そんな時食堂の入り口にマリリンが現れた。

「チッ。行くぞ」
 状況が悪いと分かると不良生徒どもはどこかへ行ってしまった。

「入寮早々喧嘩なんてしないで頂戴ね」
「しねぇよ。あいつ等が絡んできただけだ」
 不良生徒たちが食堂から出ていくのを最後まで見届けたマリリンは俺たちの許へやって来ると困った表情で注意してくる。ま、それが寮母の役目なんだろうけど。

「そう、なら良いけど。それと一つ良いこと教えてあげる」
「なんだ?」
「この学園には特殊な決りがあってね。喧嘩はダメだけど決闘は許されてるの。勿論教員が許可しないとダメなんだけどね」
「へぇ、そんなのがあるのか」
「ま、私もジュリアス君の事が心配だからね」
 流石は寮母。気づいていたんだな。

「ま、頑張ってね」
 そう言い残して食堂を出て行った。

「さて、食事を再開するか」
「うん……」
 その後一言も喋ることなく夕食を終えた。せっかくの夕食が台無しだ。
 部屋に戻った俺たちだが、先ほどの楽しげな会話が嘘のように静寂が支配していた。まったく何も知らないからって銀のやろう美味そうに肉をやがる。ハロルドのおっさんが銀のために用意してくれた肉だからな。有難く食えよ。

「何か飲むか?」
「…………」
「そうか……」
 俺は冷蔵庫を開け確かめるお茶が入っているだけで他には何も無い。これで良いか。
 お茶を入れてダイニングに戻る。勿論ジュリアスの分も一緒にだ。
 その後も静寂な時間が続いたが、ジュリアスが口を開くことで解消された。

「何も聞かないんだな……」
「聞いて欲しいのか?」
「……聞いて欲しくない」
「なら、聞かない」
「……うん」
 さて、どうするかな。ってそうだったな。俺のこと話すんだった。

「ジュリアス知りたがってたよな」
「え?」
 何を言ってるのかさっぱりって感じだな。ま、いいや。

「食堂での事だよ。どうして俺だけホットドックを食べてたのか」
「そ、そうだったな」
「忘れてたのかよ」
「すまない……」
「ま、良いや。これは呪いみたいなもんだよ」
「呪い」
 その言葉にジュリアスは少し下がった気がした。ま、当然の反応だよな。

「安心しろ。うつる呪いじゃねぇから」
「そ、そうか」
「この呪いはな。ある条件に当てはまる物が触れられない呪いさ」
「ある条件?」
 そんな俺の言葉にジュリアスは単語を口にしながら首を傾げる。

「そうだ。その条件とは呪いをかけた術者が武器と定めた物を掴めないというものさ」
「武器と定めた物……例えば?」
「剣や刀、銃は勿論、箸やナイフ、フォークと言った普段生活で使う物すら持てない呪いさ」
「そ、それは大変だな」
「まあな。でも触れる程度なら平気だし、その呪いを掛けた張本人が武器と認識している物でなければ普通に持てる。だからこのグラスだって持てる」
「確かに」
「でも、この呪いが厄介でな。戦闘となると俺は限られてくるもしもそれを武器として使えば武器として認定される恐れがあるからな」
「なら、どうやって戦っているんだ?」
「一定の大きさまでの石ころと自分の拳」
「それだけか!」
「そうさ。それに加え魔力も無いから、これまた大変さ」
「それで、よく冒険者になろうと思ったな。夢だったのか?」
「夢ってほどでもないな。ただ楽して一番稼げそうだったのが冒険者ってだけさ。会社に入って決められた時間に出勤して上司の指示に従う。まるで機械みたいな生活が嫌だったんだよ。俺は俺だ。時間にも縛られたくないんだよ」
 前世みたいな人生は二度とゴメンだしな。

「格好良いな」
「我侭で、欲望に素直で、怠け者なだけさ」
「それじゃダメ人間だな」
「そうかもな」
「だけど、羨ましいな」
 ジュリアスから呟かれた言葉に俺は思わず目を見開けた。意外だ。あのジュリアスから羨ましいなんて単語が出てくるなんて。

「そうやって自分の意思を口に出せるところや、それを実行するところ。私には無いものだ」
「そうかね」
「そうさ」
「俺は俺さ。で、ジュリアスはジュリアスさ。相手が羨ましいって思うのは誰にだってある。俺だって沢山魔力を持ってる奴が羨ましいって思うしな」
「そうか。いや、そうだよな」
「だけど、一歩踏み出すだけで現状が変わる可能性があるなら、俺ならそうする。理不尽な現状を黙って従うのは人間じゃない。それは心を持たない機械だ」
「そうかもしれないな」
「でもま、俺はダメ人間だからな。どうせ自分がしたいことだけしか、しないだろうけどな」
「ハハッ、なんだそれは」
 少しだけ乾いた笑い声だったが、少しは元気が出たようだ。今の俺に出来るのはこの程度だ。あとはジュリアス次第だ。一人でなんとかするのか。はたまた周りに助けを求めるのか。それは俺が決めることじゃない。

「さて、それじゃ先にお風呂に入らせて貰うぞ」
「ああ、構わないよ」
「なら、遠慮なく。銀、風呂に入るぞ」
「ガウッ」
 そのまま銀と一緒にお風呂場に入って寝たのだった。



 4月9日。今日はいよいよ入学式だ。と言ってもこの学園では在籍している生徒は入学式には参加せずに普通に授業だそうだ。正直それは有難い。ジジババの長話を聞いても眠くなるだけだからな。勉強でも同じか。
 と思っていたが、ジュリアスと一緒に寮を出ると、

「オニガワラ・ジン君ね」
 俺の名前を口にするのは眼鏡を掛けたまるでアスリート選手のように引き締まった肉体の女教師だった。だが胸はソコソコあるな。
 そして何より彼女の頭とお尻辺りから黒の獣耳と尻尾が生えていた。そうどうみても獣人だ。耳の形からしてネコ科の獣人族だろう。

「そうだが」
「私はエレイン・グン・ウェルマンよ。アナタが今日から通う11組の担任をしてるの。担当教科は近接格闘術よ。よろしくね」
「よろしく」
 まさか、近接格闘術の先生がこんな美人な先生だったとは。てっきりマリリンみたいな筋骨隆々の先生を想像していた。
 でも改めて言われると納得だな。
 大男が片手で彼女の腕を圧し折りそうなほどスレンダーな体系だが、彼女から感じる気配はとてつもなく洗礼されている。正直今のイザベラでは相手にならないだろう。伊達にこの学園の近接格闘術を教えているだけの事はある。

「あら、確かあなたは1組のジュリアス君だったわね」
「は、はい!」
「なに緊張してるんだ?」
「ジン知らないのか!エレイン先生は冒険者時代は『鮮血の鉤爪ブラッディ・ネイル』って異名を持つほどの凄い先生なんだぞ!」
「そうだったのか」
「昔の話よ。結婚してからは引退したし、今はこの通り先生をしているわ」
 気配から只者ではないと思ってはいたが、そこまでの有名人だったとは知らなかった。でも結婚してるのか。少し残念だな。いや、それもそれで……ありかもしれない。

「ジン、今卑猥なこと考えてなかったか?」
「ソンナコトハナイ」
「本当か?」
 ジュリアスにジト目を向けられ思わず視線を逸らす。なんて鋭い。イザベラ並みだな。

「それで、俺になんの用だ?」
 一人の生徒に教師が会いに来るなんて事は早々ある事じゃない。編入生が一度職員室に顔を出すのなら分かるが、一々教師が自ら呼びに来ることでもないだろう。ま、相手が上級貴族や王族なら分からないが。
 だが俺は貴族じゃない、ただの平民だ。ましてや彼女は俺の担任の先生だ。それなら寮の前で待つ理由にもならないはずだ。事前に学園の規則を教えるためでなければだが。
 だいたいそう言う事はルームメイトやクラスメイトが教えてくれる筈だ。まさか俺が緊張してコミュニケーションが出来ないかもしれないとでも思われたのか?

「学園長がお呼びよ。入学式前に一度会っておきたいそうなの」
 なるほど学園長の指示か。だけど放送で呼び出さない辺り何かあるな。

「分かった。ジュリアスすまないが、一人で行ってくれ」
「分かった。昼休みになったらクラスに迎えに行くから忘れないでくれよ」
「ああ、分かってる。一緒にご飯食べような」
 俺はジュリアスと別れてエレイン先生と一緒に学長室に向かった。
 歩く事、15分ようやく学園長室の前に到着した。
 だが15分前よりも俺の肩の位置は下がっていた。
 あまりにも学園長室までの距離が遠いからだ。だいたい徒歩15分ってどんだけだよ!

「なんで、エレベーターが無いんだよ」
 俺は思わず本音を漏らす。

「勉学を行う本校舎にエレベーターなんて設置したら奪い合いになるでしょ」
「だからってなんで学園長室が最上階にあるんだよ」
 五階建の階段を上るのは精神的にきついぜ。

「学園で最も偉大な人なのよ。一番高い場所にあるのは当然じゃない」
 別に国王や皇帝じゃないんだから別に良いだろうが。

「当然じゃねぇよ。普通は効率とか優先して一階につくるものだろ。来客とかが着たらどうするんだよ」
「その時は教員専用のエレベーターを使うから問題ないわ」
 教員専用のエレベーターはあるのかよ。
 まるで教員専用のトイレだけ最新の物が取り付けられてるパターンだな。

「まったく生徒に優しくない学園だな」
「ほら、愚痴ってないで入るわよ」
「分かったよ」
 これって虐待にならないのか?
 そんな俺の気持ちなど気にすることなくエレイン先生はドアをノックする。

「エレインです。オニガワラ・ジン編入生を連れて来ました」
「入りたまえ」
 渋い声が聞こえるとエレイン先生は大きな扉を開ける。無駄に大きくする必要があるのか?
 中に入り、オフィスデスク前まで来ると、そこには長い白髪に長い白い髭。ブルーの瞳を持つ老人が居た。ダンブ○ドア先生だ!

「初めまして、オニガワラ・ジン君。ワシはこの学園で学園長を務める。ヴァイゼ・デューイ・ダグラスじゃ。皆はダグラス学園長と呼ぶ」
「どうも、鬼瓦仁だ」
「どうやら君は敬語が苦手なようじゃな」
「した方が良いなら、そうするが」
「いや、構わぬよ」
 その時、白い髪の間から先端が尖った耳が見えた。

「もしかしてエルフなのか?」
「そうじゃよ。ワシはこう見えても1500年以上生きておるエルフじゃ」
 なんて長生きな。いや、エルフならありえるのか。俺もそれぐらい生きられたらな。

「して、君を呼んだのは他でもない。君に聞きたいことがあるからじゃ」
 早速か。だがここは惚けておくか。イザベラにもバレないようにしろって言われてるしな。

「俺に?」
「そうじゃ………お主は何者じゃ」
 先ほどまで温厚そうな表情と雰囲気が一変して鋭い視線ととてつもない大きな威圧が襲い掛かってくる。凄いな。こんなに強い威圧を放てる奴がいるなんて。でもあの島では通用しないだろうが。

「それはどういう意味だ?」
「惚けるきか?両親不明、身元不明、ステータス不明。分かっておることと言えば、魔力が無いって事ぐらいじゃ」
 呼び出した理由はやはりそれか。でもこれは困ったな、なんて答えるべきか。適当にはぐらかすとかするか。

「言っておくが、嘘だと分かればお主の編入は即座に取り下げる。素性が分からぬ危険人物をこの学園に通わせるわけにはいかぬからな」
 ま、普通はそうだよな。でも、仕方が無いんだよな、イザベラとの約束だし。なら、こうするか。

「質問してきな。俺はそれに正直に答えるから」
「………良かろう。では、お主はどこから来た」
 鋭い視線を向けて俺の言葉を信じるか否かを見極めるためか、返事が少し遅れたが直ぐに質問してきた。

「ルーベンハイト領、都市ライルビードからだ」
「それは分かっておる。その前はどこに居たのかと訊いておるのじゃ」
 だよな。こんな言葉遊びみたいなことしても意味無いよな。だけど、

「言えない」
「何故じゃ」
「それに関しても言えない」
 俺はダグラス学園長から視線を逸らすことなく質問に答える。

「……それじゃ次の質問じゃ。お主の両親は?」
「居ない」
 事実この世界に俺の両親は居ない。育ての親と言うか似た存在は居たが、俺にとってアイツは親と言うよりも師匠と言った方がしっくり来る。

「………この学園に編入した理由は?」
「冒険者になるため」
「その理由は?」
「簡単にお金が稼げそうだから」
 それしかないだろ。他に冒険科に通う理由があるなら教えて欲しいものだ。勿論名誉や注目を浴びるためと言う理由以外で。

「次の質問じゃ。編入試験の実技試験ではどうやって試験官を倒した」
 なんでそんな事を聞く。報告書を読んで知ってるだろうに。

「殴って」
「何回殴ってじゃ?」
 何回ってそれも報告書に書いてあるだろうに。

「一発」
「いつじゃ?」
 いつってどういう意味だ?まさか俺が実技試験以前に試験官にダメージでも与えてたって言いたいのか?

「試験開始直後」
「………では、最後の質問じゃ。魔力を持たぬお主はどうやって試験官を倒した」
 は?いったいこの学園長は何が知りたいんだ?まったく意味が分からないんだが。

「だから殴ってって言ってるだろ」
「そうではない。その力は身体能力によるものなのかと訊いておるのじゃ」
「そうだ」
 そう言う事なら最初からそう質問しろよ。だいたい俺に魔力が無い事は履歴書にも書いた筈だぞ。それ以外に倒す方法なんてあるわけないだろ。

「その力はお主がライルビード以前に居た場所と関係あるのか?」
 確信を突いてくる質問が来たな。だが残念だったな。

「悪いがその質問には答えられない」
「ほう、何故じゃ?」
 ようやく俺の力の一端を知れると思ったのかダグラス学園長の頬が軽く吊り上がる。威厳のある爺さんかと思ったらとんだ狸爺だな。

「既に最後の質問は答えたからだ。まさか学園長が嘘を吐くわけないよな?」
 俺は逆に不敵な笑みを浮かべ返して答える。

「むぅ……」
 ダグラスは自分が言った言葉を思い出した。確かに今の質問をジンが答える理由は無い。
 だが、ジンが浮かべる不敵な笑みをに少しだけイラッと来たのもまた事実であった。

「それで、判断は?」
(正直、これほど謎の多い男をこの学園に通わせるのは危険すぎる。もしかしたらどこぞの裏組織の手先の可能性もある。だが彼に編入試験を受けさせて欲しいと申請してきたのがルーベンハイト家当主だからの。正直最初はルーベンハイト家の全員が幻惑魔法の類で操られている可能性も考えた。だが履歴書に書かれてある通り彼から一切の魔力を感じない。となると幻惑魔法の類の線は消える。だいたいルーベンハイト家に住む者全員に幻惑魔法で操るとなると相当の魔法師の筈。そんな奴が態々ルーベンハイト家に接触し編入試験を受ける理由はない。逆にリスクしかないはずだからのぉ)

「………良かろう。但し不穏な動きを見せたら再び呼び出すからの」
(今は監視をつけて泳がせておくしかあるまい)

「分かりました、ダグラス学園長」
「エレイン先生、あとの事は任せたぞ」
 どうやら学園の生徒として通うことは出来そうだが、どうも信用はされてなさそうだな。

「分かりました。ジン君教室に向かうわよ」
「分かった」
 俺はこうして無事、学園長室を後にした。まったく編入早々面倒ごとばかり重なるな。無事卒業出来るか心配になって来た。
 その後はエレイン先生と一緒に冒険科11組の教室に向かった。
 さて、いったいどんな生徒が居るのやら。
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