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第三章 魔力無し転生者はランクを上げていく

第九一話 夜逃げから始まるダンジョン攻略! ㉒

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 それから更に40分程してアイン達Cチームが戻ってきた。
 Cチームには亜空間収納機能を持ったアインが居る。
 亜空間収納はアイテムボックスと似た能力だが、あの糞女神が与えた能力ではなく、科学者が一から創り出した機能に過ぎない。
 アイテムボックス内は時間の流れが無く、収納した瞬間から時間が停止するため食料の運搬に向いているが、亜空間収納内は普通に時間の流れがあるため食料などの賞味期限がある物の運搬には向かない。
 簡単に言ってしまえば、アイテムボックスの劣化版なわけだが、それでも持ち歩かなくて良いと言う意味では遥かに運搬が楽で費用も掛からない。
 そんな高性能な機能を考え開発してしまった科学者はやはり天才と言うべき人物なんだろうが、人格設定はどうやら間違えたらしい。もしも間違えていないのであれば、その科学者は間違いなくただの変態だろう。
 ま、科学者の話はさておき、亜空間収納が有るか無いかで移動速度にも影響してくるわけだが、アインが居る以上移動が遅くなるとわけがない。
 それなのに大量の魔物と戦闘をして途中で切り上げたBチームの影光たちとは違い、Dチームの戦綾香ちゃんたちは時間ギリギリまで探索を続けていた。そんな綾香ちゃんたちよりも帰還が遅いとなると帰還途中で魔物の群れと遭遇し戦闘をしていたのかとも思ったが、アインたちの実力を考えれば綾香ちゃんたちが帰って来てから40分も遅れて帰還するなんて事はないだろう。
 ま、食後の後にでも理由を聞けば済む話か。と考えるのを止めようとアイン達Cチームに視線を向けた瞬間遅れた理由が分かってしまった。いや、この場合察したと言うべきか。
 満足げに鼻歌交じりで歩くヘレン。
 それとは正反対に体長3メートルを超える姿になった銀の背中に荷物のように運ばれているのは、疲労困憊で呻き声を漏らす愛莉。
 砂漠の大地にも拘わらず気品すら感じさせる歩みで平然としているアイン。
 それだけで俺だけでなく影光たちフリーダムメンバーも即座に理解した。
 アインが魔物と遭遇しないと言っていたからな、きっとあの後、我慢の限界を迎えたヘレンが魔物を探すために砂漠地帯を走り回り魔物の群れを見つけては戦闘を続けていたんだろう。で、それのループをさっきまでしてたんだろうな。
 ヘレンより体力も戦闘力も上の銀とアインは平気として、計画性皆無のヘレンの暴挙に付き合わされた愛莉は完全に体力が無くなって銀の背中で運ばれたってところだろうな。

「もう、嫌だ……フリーダムには真面な人は居ないの……」
 涙声で小さく呟く愛莉。うん、聞こえなかったフリをしよう。昨日みたいな愚痴を聞くのは面倒はごめんだ。グリードがどことなく同情の眼差しを向けているが、気にしないでおこう。きっとグリードが愛莉の相手をしてくれるだろう。
 そう思いながら愛莉とは視線を合わせないようにしつつ、俺は煙草を吸う。
 愛莉たちも綾香ちゃんたち同様にテントないで体を濡らしたタオルで汚れを拭きとるのを待つ間、俺は影光たちと談笑しながら時間を潰す。因みにアインはどういう訳か一切汚れていないのか、銀にブラッシングしていた。アイツだって絶対汚れてるだろ。と思ったが口にには出さない。
 それから30分ほどしてようやく全員の支度が整い夕食に入る。前に、おい、誰かクレイヴを叩き起こしてくれ。
 今日の献立は肉じゃがと肉炒めである。え?肉炒めってなんぞや?って思うかもしれいが、野菜炒めの比率が肉の方が高いと言うだけである。因みに比率は8:2で肉である。うん、殆ど肉。
 肉じゃがにも肉は入っているが良く食べるフリーダムメンバーがそれだけで足りる筈も無く、ましてや今日は全員が戦闘を経験しているから昨日以上にお腹を空かせた奴ばかりだ。
 肉じゃがを用意したのは和食を食べる事が殆どであろう綾香ちゃんたちのためにグリードが気を利かせたからなのだろう。
 醤油や味噌などの調味料も持ってきてはいるが、他の調味料に比べてその量は少ないだろうにやっぱりグリードは優しいな。そう思うと俺が作ったわけじゃないが、美味しそうに食べる綾香ちゃんたちの姿を見て満足な気持ちになる。
 楽しい夕食タイムの後は食後のティータイムである。せっかく楽しい一時を直ぐに本題に入るのはKYと言う奴だろう。俺も食後の一服がしたいしな。
 お茶を一口飲んで喉を潤した後煙草に火を着ける。
 10分ほどして食後のティータイムにも満足したので今日の報告会を始めるためスマホで時間を確認する。
 現在の時刻は午後8時20分。
 各々の成果を報告するのには丁度良い時間と言えるだろう。
 そう思った俺は頭を切り替えると言う意味も込めて吸い終わりかけの煙草を全員で囲むような形で置かれているファイアグリルに投げ込む。

「それじゃ、さっそくそれぞれのチームの今日の成果を聞くとしよう」
 俺がそう呟くと先ほどまで緩んでいた頬が引き締まるのが見て取れる。ま、何故か分からないが、こっちを睨んでいる奴が数人程いるが一々気にしていたら話が進む無いから無視の方向で行こう。

「まずは俺たちAチームだが、予想外な事に昨日の戦闘が影響しているのまったくと言って良いほど魔物に遭遇しなかった。そのせいで戦闘よりも探索に時間を取られ過ぎてせいで進展はない。以上だ」
 これ以上話せる事も無いので次の影光にバトンを渡す意味も込めて視線を向ける。聞きたくないけどな。
 話を切り上げた俺の言葉に対して誰も疑問をぶつけて来る事は無かった。
 自分が担当した場所にどれだけの場物が出現したか身を持って知っているからだろう。
 だからこそ俺の視線に気づいた影光たちBチームの愚痴とも言える報告に俺とアリサは誰にも目を合わせようとはせず平静を装う事しか出来なかった。他の連中の呆れた視線が突き刺さって痛かった。
 Cチームの報告に関しては俺と似ている内容だったが、ヘレンの行動もあってか支配者が生息していそうな場所は南方面にはいないと粗方判断を出していた。明日探索して最終確認を行うと言っていた。
 さて最後はBチームほどでは無いにしろ大量の魔物と戦闘を繰り広げた綾香ちゃんたちDチームの報告を聞くとするか。
 しかし報告するのは綾香ちゃんではなく、萩之介だった。数度魔物の戦闘をしたからと言って綾香ちゃんはプロじゃない。少しばかり毛が生えた程度の素人に過ぎない。
 その事は俺を含めて全員が理解しているため誰も文句を言う事も無く萩之介の報告を聞く事にする。
 しかし聞くまでも無くその内容は予想を超えるものではなかった。
 アインが襲われていると言った際は流石に焦ったが思い返してみれば、軽い負傷程度で魔物の群れを全滅する事が出来るのであれば砂漠棘蟲ミッドバルワームの群れ程大きいものではないと推察する事が出来る。
 個体の魔物大きさや強さにもよるだろうが全滅させてる時点でなんの問題も無いと分かる。それに既に終わった事だしな。
 問題は支配者に関連するような魔物が居たかどうかだが、どうやら今回は見当たらなかったらしい。

「なら明日は今日探索出来なかった範囲を優先的に探索するとして、何か意見はあるか?」
 これ以上報告会を続けていると俺とアリサが変な目で見られそうなので、報告会を終わらせて明日の打ち合わせに移る事にする。未だにアインと影光が変な目で見て来るが気にしないでおこう。

「チーム編成はどうするつもりだ?明日も今日と同じで行くのか?」
 影光からそう問われる。

「そのつもりだ。体調が悪い奴や今日の負傷で明日の探索に影響しそうなら変えるが、問題はあるか?」
 そう言って全員に視線を向けるが誰も挙手するどころか、口を開かず首を横に振る。大丈夫みたいだな。
 そう判断した俺は話を切り上げて報告会を終了すると全員に告げた。そうだ、消費した弾薬等の物資についてクレイヴたちに聞いておかないとな。
 解散となった報告会の後、それぞれ自由行動に移す。俺もクレイヴたちに必要な物資を聞いてアイテムボックスから取り出して渡すだけで、それが終わるとファイアグリルの前で一服してからテントで寝る事にした。





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お久しぶりです。月見酒です。
吸いませんが、今回は短めです。
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