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第三章 魔力無し転生者はランクを上げていく
第六十六話 あれからのスヴェルニ王国 ②
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だからこそ呆れながらも納得出来てしまう事に皆が笑みを浮かべていました。
「それでジンはどこのギルドに所属したのかしら?」
そんな新しいジンさんの話題に私は言葉に詰まってしまう。
話せば間違いなくイザベラ様たちを悲しませてしまう事になるのですから。
ですがその部分を飛ばして話さなかったとしても質問されればそこでおしまいです。なら、正直に話すしかありませんね。
「それがジンさんは幾つものギルドの入社試験を受けたそうなのですが、全部落ちてしまったみだいです」
「それは本当なの?ジンの実力を考えれば落ちるなんてありえないと思うのだけど」
ジンさんの実力を知る者であるみんなも、ありえない。と言う顔をしていました。私も最初話を聞いた時は同じ反応でしたし。
「それがスヴェルニ王国で犯した事件が落とされた原因みたいです。それとやはり魔力無しと言う理由もありましたね」
「そう……」
申し訳ないとは思いましたが、やはり予想通りイザベラ様の表情に影が落ちる。
ですが意外です。きっと話せばロイド様たちに睨まれると思っていたのですが、そうはならず、よく話してくれた。と言う表情を向けられてしまいました。
きっと私が言葉に詰まった事を思い出したからなんでしょう。
「それで、結局ジンはどうしたんだ?」
重くなった空気を換えるためにレオリオ君が話題をふる。こういう時彼みたいなムードを変えてくれる存在が居ると話が進むし気分が楽になってありがたいですね。
そんな風に思いながら私は答えた。
「どこのギルドも受け入れてくれなったジンさんは自分のギルドを創る事にしたようです」
『え!?』
そんな私の言葉に重たい空気が無くなるほどの驚きの声が食堂内に広がる。
流石に声が大きかったのか周囲の生徒たちの視線が一斉に向けられてしまい思わず、恥ずかしくなってしまい俯いてました。誰だってそう言う反応になりますよね。私も最初聞いた時は驚きを隠せず大きな声を出してしまいましたから。
「ギルドを創った!?それは本当なのか!」
「は、はい」
よほど信じられなかったのかロイド様は身を乗り出してまで問い返して来た。まるで尋問されている気分ですね。
今度はそんなロイド様を宥めるイザベラ様が質問して来た。
「だけどギルドを創設するには幾つかの規定事項があったはずよ」
「はい」
イザベラ様の言う通りギルドを創設には冒険者組合が定めた規定事項があります。
――1つ目、ギルド創設者の冒険者ランクが最低でもDランクであること。
――2つ目、ギルドの拠点となる建物を保有している。または1フロアを持っていること。
――3つ目、ギルド創設には創設者を含め最低でも冒険者が3人必要以上であること。
――4つ目、組合が決めた規定資金を持っている事。ただしギルド創設者の自己資金のみとする。
――5つ目、ギルド名を決めておくこと。
と、この5つ全てクリアしなければ、どれだけ実力のある冒険者であっても冒険者組合からの許可は下りません。
きっとイザベラさまもギルド創設事項の内容まで把握しているでしょう。
「ギルド拠点に関して言えば、私を助けた際のお礼も篭めてお父様が幾らかジンの口座に振り込んだようだからそのお金を元手に購入したんでしょうけど、ジンの実力なら依頼を達成する事は容易くてもフリーで請けられる依頼の数を考えれば早々にランクアップ出来るとは思えないわ。だけど1番の問題はギルドメンバーとなる仲間集め。冒険者になったばかりの新人のギルドに入りたがる冒険者なんて居ないわ」
顎に手を当てて考え込んでしまうイザベラ様。その言葉に改めて私も思う。
冒険者になってたった1ヶ月たらずでギルドを創設が出来てしまうだけの実力と仲間との出会い。ハッキリ言って異常です。ランクアップに関してだけ言えばきっとジンさんが努力した賜物なのでしょうけど。
「フェリシティーさん、ジンのギルドの名前とギルドメンバー、そしてジンの冒険者ランクを教えて貰えるかしら?」
「はい」
イザベラ様にさん付けで呼ばれるなんて恐縮してしまいますが、今は答える時です。
ジンさんに教えるな。と言われたわけではないので構わないでしょうし、なにより調べればわかる事なので。
「私がジンさんと出会った時のジンさんの冒険者ランクは既にAランクでした」
『Aランク!?』
再び全員が驚きの声を上げる。分かっていた事ですが止める事は出来ませんよね。そう思いながら私は苦笑いを浮かべるしかありませんでした。
全員が落ち着きを取り戻すのを見計らってイザベラ様が質問してきました。
「聞き忘れていたのだけど、ジンはいつ頃冒険者になってギルドを創設したのかしら?」
「詳しい日にちまでは知りませんが、ジンさんは冒険者になったのが9月上旬、ギルド創設は10月上旬と言ってましたね」
「つまりジンはたった3ヶ月でGランクからAランクにまで上り詰め、たった1ヶ月でギルドを創設したって事……?」
そんな私の言葉に全員が信じられないと言う顔をしており、そんな皆の代表するようにイザベラ様が問い返してきたので私は「はい」と頷きながら答えました。私も同じ気持ちでしたからよく分かります。そして驚きすぎて思考力が低下してもう訳が分からなくなってくるんですよね。
「あの怠惰の化身がたった奴が3ヶ月でAランクになり、1ヶ月でギルドマスターだと。ソイツは本当にあのジンなのか……」
イザベラ様の隣に座るロイド様に至っては頭を抱えて当惑する程です。ま、ジンさんの性格を知っている人たちなら確かに本当にジンさんなのか疑ってしまうのは無理もありませんが。
緊急依頼などの達成や功績に応じて譲歩される事はあっても、実力があるからと言って冒険者のランクを飛び級させる事はありません。1番の理由としては実戦と言う経験を積ませるためです。危険に見舞われず偶然高ランク冒険者になってしまえば最悪の事態に対処出来なかったり、天狗になって他の冒険者や依頼主と揉めてしまう可能性を無くすためです。
「一度の依頼で沢山のお金を得られれば働く回数も減る。って思っているジンならやる気を出す可能性はあるし、実力を考えれば無理ではないわね。あの性格から考えて信じたくはないけど」
ありえない話では無い事に納得したくないイザベラ様も流石に額に手を当ててしまわれる。ジンさんここまで信用されていないのは普段の行いを通り越して天才と言えるのではないでしょうか。凄いとは思いませんが。
「まぁ、ジンのランクに関しては信じたくないけど分かったわ。それでギルド創設に必要な仲間に関して教えてくれるかしら」
「はい」
どうにか冷静さを取り戻したイザベラ様がそう言ってくる。はぁ……きっとまた驚くのでしょうね。
そう思うと周囲に迷惑を掛けてしまう事に申し訳なさを感じてしまいますが、仕方がありません。ま、一応前置きはしておきましょう。
「先に言っておきます。驚かないでくださいね」
「その言葉を聞くと、とんでもないメンバーが集まっていそうね」
不敵な笑みにも近い覚悟を決めた顔でイザベラ様がそう言う。ええ、凄いメンバーです。ハッキリ言って有名人であろうがそうで無かろうが、実力だけで言えば間違いなく異常なギルドです。
ですから私も覚悟を決めて話す事にしました。
「私がジンさんに出会った時、ジンさんを含めて現在のギルドメンバーは全員で7人です。申し訳ありませんがギルド創設時のメンバーまでは知りませんが」
「世界のギルドの平均人数に比べれば少ないけど、ギルド創設からたった2ヶ月と考えたら多いわね」
そんな独り言のような呟きに私は「はい」と答える。
大抵ギルドを設立する人はどこかのギルドに所属し経験を積んでから独立して自分のギルドを創設するのが一般的です。
ですがジンさんのようにどこのギルドにも所属せずにフリーの冒険者がギルドを創設し、ギルドメンバーを集めるのはとても困難です。
まずその土地での人脈が少ない事、ギルドマスターとなる人物の実力や人柄を知らないため信用性が低いなど色々な理由があります。ですからフリーの冒険者がギルドを創設する場合ギルドマスターとなる人物が高ランクであり他国でも名の知れた有名人でなければ短期間でギルドメンバーを集める事は困難です。
ですがジンさんの場合、冒険者になってたった1ヶ月でギルドを創設しだけでなくそれから2ヶ月で7人にまでなっている。どう考えても普通ではあり得ません。
ですからイザベラ様達は頭を抱えてしまっているのです。私も最初聞いた時はあまりの内容に頭痛に悩まれそうになりました。
「だけどフェリシティーさんの話を聞く限り、人数よりもそのメンバーが問題なんでしょ」
「はい」
私の前置きを聞いているイザベラ様たちはどうやら既に察しており、いつもいつ上に身構えていました。イザベラ様たちに話す前ですが、前置きしておいて良かったと思っています。出なければ間違いなく周囲の生徒に迷惑を掛けているでしょうから。
「ジンさんを除いたギルド『フリーダム』のメンバーはまず、アインさん、グリード・グレムリンさん、ヘレン・ボルティネさん、アリサ・ベルゼーレさん、クレイヴ・セルゲイさん、そしてトウドウ・カゲミツさんです」
『…………』
覚悟を決めていたおかげで声を上げる事はありませんが、逆に言葉を失ってしまったようです。確か私もこうなっていたはずです。ジンさん、これが普通に人たちの反応ですよ。ですからそんな私を見て不思議がるのは間違っていますからね。
数分してようやく私の言葉を処理し終えたイザベラ様は額に手を当てながら呆れた様子で言葉を口にした。
「もう驚きを通り越してなんて言えば良いのか分からないわね」
「はい。ジンに博打の運が無い事は知っていましたが、強者との出会う確率は異常です」
そんなイザベラ様の感想にジュリアスさんが同意するように感想を述べる。まったくもって私も同意見です。
「フリーの冒険者の中でも上位の実力と知名度のある人たちばかりです」
ジュリアスさんの言う通り、ジンさんのメンバーの中で知名度の高い人が殆ど、知らないのは僅か数名だけですが実力は本物です。
「まずAランクで魔力量が冒険者の平均の2倍の魔力を保有しており、その魔力量を活用した魔導軽機関銃から放たれる無数の魔導弾で大型魔物を肉片に変え、犯罪集団ならば建物ごと魔導弾の嵐で粉砕してしまう事から、『破壊する修道女』と言う二つ名の持ち主ですが、彼女は数少ない光属性を持つ1属性持ちであり、上級医療魔法師の資格まで持っている事で有名です」
ジュリアスさんの言う通り、アリサさんは戦闘力だけでなく、治癒師としても一流の人です。私も訓練をさせて頂いた時に何度も治して貰いました。
「次にSランク冒険者のクレイヴ・セルゲイさん。魔力量はアリサさんに劣りますがそれでも平均の1.5倍の魔力量を保有している風属性を持ちの1属性持ちです。ですが彼が凄いのは魔力操作の熟練度と遠距離から敵を射殺する射撃精度です。魔力感知、魔力隠蔽と言った魔力制御能力がずば抜けており、即座に敵を発見し敵の気付かれるよりも先に射殺する事から静寂な狙撃手と言う二つ名を持っています」
その通りです。ましてやクレイヴさんは殆ど喋らない無口な方です。普段から魔力を抑えているのか後ろに立たれても気づかない事が何度かあり驚いた事をよく覚えています。
「そしてそんな彼らよりも強く冒険者で無くても知っているSランク冒険者が世界最強の剣豪、トウドウ・カゲミツさん。東方の国――ヤマト皇国に昔からある神道零限流剣術の免許皆伝者であり、ドラゴンが相手であればたった一振りで首を飛ばしてしまい、相手が剣や刀などを持った近接武器使用者には一度も負けた事がない事から、冒険者組合が定めた異名地位項目で最高ランクである『神』の名が付いた二つ名――刀神の名を与えられた冒険者です。そしてSSランクにすらなれる実力を持っていながら未だにSランクでいるのは冒険者組合が定めた年間依頼規定依頼数しか依頼しか請けて来なかったためポイントが足りないと言う理由らしいです。つまりその実力はSSランク、もしかしたらSSSランクにすらなれる実力の持ち主だと言われています」
カゲミツさんが世界的に有名人な理由、それは世界最強の剣豪と言うだけではありません。
二つ名とはその人物を現すだけのものではなく、冒険者組合が定めた【異名地位】が大きく関わってきます。
「それでジンはどこのギルドに所属したのかしら?」
そんな新しいジンさんの話題に私は言葉に詰まってしまう。
話せば間違いなくイザベラ様たちを悲しませてしまう事になるのですから。
ですがその部分を飛ばして話さなかったとしても質問されればそこでおしまいです。なら、正直に話すしかありませんね。
「それがジンさんは幾つものギルドの入社試験を受けたそうなのですが、全部落ちてしまったみだいです」
「それは本当なの?ジンの実力を考えれば落ちるなんてありえないと思うのだけど」
ジンさんの実力を知る者であるみんなも、ありえない。と言う顔をしていました。私も最初話を聞いた時は同じ反応でしたし。
「それがスヴェルニ王国で犯した事件が落とされた原因みたいです。それとやはり魔力無しと言う理由もありましたね」
「そう……」
申し訳ないとは思いましたが、やはり予想通りイザベラ様の表情に影が落ちる。
ですが意外です。きっと話せばロイド様たちに睨まれると思っていたのですが、そうはならず、よく話してくれた。と言う表情を向けられてしまいました。
きっと私が言葉に詰まった事を思い出したからなんでしょう。
「それで、結局ジンはどうしたんだ?」
重くなった空気を換えるためにレオリオ君が話題をふる。こういう時彼みたいなムードを変えてくれる存在が居ると話が進むし気分が楽になってありがたいですね。
そんな風に思いながら私は答えた。
「どこのギルドも受け入れてくれなったジンさんは自分のギルドを創る事にしたようです」
『え!?』
そんな私の言葉に重たい空気が無くなるほどの驚きの声が食堂内に広がる。
流石に声が大きかったのか周囲の生徒たちの視線が一斉に向けられてしまい思わず、恥ずかしくなってしまい俯いてました。誰だってそう言う反応になりますよね。私も最初聞いた時は驚きを隠せず大きな声を出してしまいましたから。
「ギルドを創った!?それは本当なのか!」
「は、はい」
よほど信じられなかったのかロイド様は身を乗り出してまで問い返して来た。まるで尋問されている気分ですね。
今度はそんなロイド様を宥めるイザベラ様が質問して来た。
「だけどギルドを創設するには幾つかの規定事項があったはずよ」
「はい」
イザベラ様の言う通りギルドを創設には冒険者組合が定めた規定事項があります。
――1つ目、ギルド創設者の冒険者ランクが最低でもDランクであること。
――2つ目、ギルドの拠点となる建物を保有している。または1フロアを持っていること。
――3つ目、ギルド創設には創設者を含め最低でも冒険者が3人必要以上であること。
――4つ目、組合が決めた規定資金を持っている事。ただしギルド創設者の自己資金のみとする。
――5つ目、ギルド名を決めておくこと。
と、この5つ全てクリアしなければ、どれだけ実力のある冒険者であっても冒険者組合からの許可は下りません。
きっとイザベラさまもギルド創設事項の内容まで把握しているでしょう。
「ギルド拠点に関して言えば、私を助けた際のお礼も篭めてお父様が幾らかジンの口座に振り込んだようだからそのお金を元手に購入したんでしょうけど、ジンの実力なら依頼を達成する事は容易くてもフリーで請けられる依頼の数を考えれば早々にランクアップ出来るとは思えないわ。だけど1番の問題はギルドメンバーとなる仲間集め。冒険者になったばかりの新人のギルドに入りたがる冒険者なんて居ないわ」
顎に手を当てて考え込んでしまうイザベラ様。その言葉に改めて私も思う。
冒険者になってたった1ヶ月たらずでギルドを創設が出来てしまうだけの実力と仲間との出会い。ハッキリ言って異常です。ランクアップに関してだけ言えばきっとジンさんが努力した賜物なのでしょうけど。
「フェリシティーさん、ジンのギルドの名前とギルドメンバー、そしてジンの冒険者ランクを教えて貰えるかしら?」
「はい」
イザベラ様にさん付けで呼ばれるなんて恐縮してしまいますが、今は答える時です。
ジンさんに教えるな。と言われたわけではないので構わないでしょうし、なにより調べればわかる事なので。
「私がジンさんと出会った時のジンさんの冒険者ランクは既にAランクでした」
『Aランク!?』
再び全員が驚きの声を上げる。分かっていた事ですが止める事は出来ませんよね。そう思いながら私は苦笑いを浮かべるしかありませんでした。
全員が落ち着きを取り戻すのを見計らってイザベラ様が質問してきました。
「聞き忘れていたのだけど、ジンはいつ頃冒険者になってギルドを創設したのかしら?」
「詳しい日にちまでは知りませんが、ジンさんは冒険者になったのが9月上旬、ギルド創設は10月上旬と言ってましたね」
「つまりジンはたった3ヶ月でGランクからAランクにまで上り詰め、たった1ヶ月でギルドを創設したって事……?」
そんな私の言葉に全員が信じられないと言う顔をしており、そんな皆の代表するようにイザベラ様が問い返してきたので私は「はい」と頷きながら答えました。私も同じ気持ちでしたからよく分かります。そして驚きすぎて思考力が低下してもう訳が分からなくなってくるんですよね。
「あの怠惰の化身がたった奴が3ヶ月でAランクになり、1ヶ月でギルドマスターだと。ソイツは本当にあのジンなのか……」
イザベラ様の隣に座るロイド様に至っては頭を抱えて当惑する程です。ま、ジンさんの性格を知っている人たちなら確かに本当にジンさんなのか疑ってしまうのは無理もありませんが。
緊急依頼などの達成や功績に応じて譲歩される事はあっても、実力があるからと言って冒険者のランクを飛び級させる事はありません。1番の理由としては実戦と言う経験を積ませるためです。危険に見舞われず偶然高ランク冒険者になってしまえば最悪の事態に対処出来なかったり、天狗になって他の冒険者や依頼主と揉めてしまう可能性を無くすためです。
「一度の依頼で沢山のお金を得られれば働く回数も減る。って思っているジンならやる気を出す可能性はあるし、実力を考えれば無理ではないわね。あの性格から考えて信じたくはないけど」
ありえない話では無い事に納得したくないイザベラ様も流石に額に手を当ててしまわれる。ジンさんここまで信用されていないのは普段の行いを通り越して天才と言えるのではないでしょうか。凄いとは思いませんが。
「まぁ、ジンのランクに関しては信じたくないけど分かったわ。それでギルド創設に必要な仲間に関して教えてくれるかしら」
「はい」
どうにか冷静さを取り戻したイザベラ様がそう言ってくる。はぁ……きっとまた驚くのでしょうね。
そう思うと周囲に迷惑を掛けてしまう事に申し訳なさを感じてしまいますが、仕方がありません。ま、一応前置きはしておきましょう。
「先に言っておきます。驚かないでくださいね」
「その言葉を聞くと、とんでもないメンバーが集まっていそうね」
不敵な笑みにも近い覚悟を決めた顔でイザベラ様がそう言う。ええ、凄いメンバーです。ハッキリ言って有名人であろうがそうで無かろうが、実力だけで言えば間違いなく異常なギルドです。
ですから私も覚悟を決めて話す事にしました。
「私がジンさんに出会った時、ジンさんを含めて現在のギルドメンバーは全員で7人です。申し訳ありませんがギルド創設時のメンバーまでは知りませんが」
「世界のギルドの平均人数に比べれば少ないけど、ギルド創設からたった2ヶ月と考えたら多いわね」
そんな独り言のような呟きに私は「はい」と答える。
大抵ギルドを設立する人はどこかのギルドに所属し経験を積んでから独立して自分のギルドを創設するのが一般的です。
ですがジンさんのようにどこのギルドにも所属せずにフリーの冒険者がギルドを創設し、ギルドメンバーを集めるのはとても困難です。
まずその土地での人脈が少ない事、ギルドマスターとなる人物の実力や人柄を知らないため信用性が低いなど色々な理由があります。ですからフリーの冒険者がギルドを創設する場合ギルドマスターとなる人物が高ランクであり他国でも名の知れた有名人でなければ短期間でギルドメンバーを集める事は困難です。
ですがジンさんの場合、冒険者になってたった1ヶ月でギルドを創設しだけでなくそれから2ヶ月で7人にまでなっている。どう考えても普通ではあり得ません。
ですからイザベラ様達は頭を抱えてしまっているのです。私も最初聞いた時はあまりの内容に頭痛に悩まれそうになりました。
「だけどフェリシティーさんの話を聞く限り、人数よりもそのメンバーが問題なんでしょ」
「はい」
私の前置きを聞いているイザベラ様たちはどうやら既に察しており、いつもいつ上に身構えていました。イザベラ様たちに話す前ですが、前置きしておいて良かったと思っています。出なければ間違いなく周囲の生徒に迷惑を掛けているでしょうから。
「ジンさんを除いたギルド『フリーダム』のメンバーはまず、アインさん、グリード・グレムリンさん、ヘレン・ボルティネさん、アリサ・ベルゼーレさん、クレイヴ・セルゲイさん、そしてトウドウ・カゲミツさんです」
『…………』
覚悟を決めていたおかげで声を上げる事はありませんが、逆に言葉を失ってしまったようです。確か私もこうなっていたはずです。ジンさん、これが普通に人たちの反応ですよ。ですからそんな私を見て不思議がるのは間違っていますからね。
数分してようやく私の言葉を処理し終えたイザベラ様は額に手を当てながら呆れた様子で言葉を口にした。
「もう驚きを通り越してなんて言えば良いのか分からないわね」
「はい。ジンに博打の運が無い事は知っていましたが、強者との出会う確率は異常です」
そんなイザベラ様の感想にジュリアスさんが同意するように感想を述べる。まったくもって私も同意見です。
「フリーの冒険者の中でも上位の実力と知名度のある人たちばかりです」
ジュリアスさんの言う通り、ジンさんのメンバーの中で知名度の高い人が殆ど、知らないのは僅か数名だけですが実力は本物です。
「まずAランクで魔力量が冒険者の平均の2倍の魔力を保有しており、その魔力量を活用した魔導軽機関銃から放たれる無数の魔導弾で大型魔物を肉片に変え、犯罪集団ならば建物ごと魔導弾の嵐で粉砕してしまう事から、『破壊する修道女』と言う二つ名の持ち主ですが、彼女は数少ない光属性を持つ1属性持ちであり、上級医療魔法師の資格まで持っている事で有名です」
ジュリアスさんの言う通り、アリサさんは戦闘力だけでなく、治癒師としても一流の人です。私も訓練をさせて頂いた時に何度も治して貰いました。
「次にSランク冒険者のクレイヴ・セルゲイさん。魔力量はアリサさんに劣りますがそれでも平均の1.5倍の魔力量を保有している風属性を持ちの1属性持ちです。ですが彼が凄いのは魔力操作の熟練度と遠距離から敵を射殺する射撃精度です。魔力感知、魔力隠蔽と言った魔力制御能力がずば抜けており、即座に敵を発見し敵の気付かれるよりも先に射殺する事から静寂な狙撃手と言う二つ名を持っています」
その通りです。ましてやクレイヴさんは殆ど喋らない無口な方です。普段から魔力を抑えているのか後ろに立たれても気づかない事が何度かあり驚いた事をよく覚えています。
「そしてそんな彼らよりも強く冒険者で無くても知っているSランク冒険者が世界最強の剣豪、トウドウ・カゲミツさん。東方の国――ヤマト皇国に昔からある神道零限流剣術の免許皆伝者であり、ドラゴンが相手であればたった一振りで首を飛ばしてしまい、相手が剣や刀などを持った近接武器使用者には一度も負けた事がない事から、冒険者組合が定めた異名地位項目で最高ランクである『神』の名が付いた二つ名――刀神の名を与えられた冒険者です。そしてSSランクにすらなれる実力を持っていながら未だにSランクでいるのは冒険者組合が定めた年間依頼規定依頼数しか依頼しか請けて来なかったためポイントが足りないと言う理由らしいです。つまりその実力はSSランク、もしかしたらSSSランクにすらなれる実力の持ち主だと言われています」
カゲミツさんが世界的に有名人な理由、それは世界最強の剣豪と言うだけではありません。
二つ名とはその人物を現すだけのものではなく、冒険者組合が定めた【異名地位】が大きく関わってきます。
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