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第三章 魔力無し転生者はランクを上げていく
第六十一話 眠りし帝国最強皇女 ㉜
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インテリ眼鏡野郎を警戒しながら俺は倒れるジャンヌに起こして座らせる。触るな、変態!とか言われるかと少し考えたが、この状況でそんな事を言う程ジャンヌは馬鹿じゃなかったようだ。いや、当然か。
元第304独立遊撃連隊に所属してたんだ助け合うのは当然と考えているだろうしな。
それにしても焦った~。
なんでこんな場所に公園があるのか俺には分からないが、新たに軍人墓地を作る際の土地選びで最適な場所がこの公園の隣しかなかったのかもしれないな。
そんな公園の木に隠れてジャンヌたちの戦いを観戦していたが、まさか名前を呼ばれるとは思っていなかったからな。え?出るのが遅いって。確かに殺されそうにはなっていたよ。だけどまだ諦めて無かったし何か打開策があるのかと思っていたからな。それに危ない場面では助けたし大丈夫だろ。
ほら、これは元連隊長と元副連隊長2人の戦いだから邪魔するのは無粋ってもんだろ?
ま、それもここまでだ。
名前を呼ばれて出てきた以上、ここからは俺の仕事だ。
10メートルほど吹き飛んだインテリ眼鏡野郎を見据えながら俺は指をポキポキと鳴らす。
「確かお前は……ボルキュス陛下が雇ったAランク冒険者」
「ああ、そうだよ」
掛けていた眼鏡の右目のレンズにヒビが入ってしまい邪魔だと思ったのか投げ捨てながら確かめるように言葉を吐く。へぇ、俺の事覚えていたのか1ヶ月以上前に1度会っただけなのによく覚えていたな。さすがはインテリ眼鏡野郎。
「お前がどうしてここに居るのか知らないが、どうやら死にたいようだな」
殺気を飛ばしなら睨みつけて来るインテリ眼鏡野郎。
確かにお前の強さはこの大陸に来てこれまで会ったどんな奴よりも強い気配を感じるぜ。間違いなく俺の後ろで座っているジャンヌよりもな。
「だが、お前程度じゃ俺には勝てないどころか殺せねぇよ」
「Aランク程度の冒険者風情が……まぁ、言い、所詮相手の力量も読み取る事も出来ない、それだけの実力って事なんだろう」
ほぉ……怒りで襲い掛かって来るかと思ったが、案外冷静さも持ち合わせてるんだな。流石はベルヘンス帝国、人材豊富なことで。ま、読み取れて無いのはお前なんだけどな。
「だがお前も災難だったな。哀れな皇女殿下のカウンセラーとして雇われたせいで死ぬ羽目になるんだからよ」
馬鹿にした態度で嘲笑うインテリ眼鏡野郎。
もしかしてこれがコイツの本性なのか?それとも薬の影響なのか?どちらにしろ言葉遣いがそこらに居るチンピラと変わらないぞ。
やっぱり本能で生きていると言葉遣いまで荒くなるんだな、怖い怖い。え?お前もだろって。私程礼儀正しい人間はいませんよ。
ま、そんな冗談はさておいて、だ。
「馬鹿か。俺は冒険者だ。依頼を請けたからにはそこが死地であろうと完遂する。それが俺の信念だ」
「そうかよ……なら、あの世で後悔するんだな。大それた事を口するだけの無能だった自分にな!」
強く地面を蹴ってインテリ眼鏡野郎は接近してくる。
おいおい、魔法拳銃を持ってるくせに接近してくるのか。せっかくの距離的有利を捨てるなんて馬鹿だろ。いや、俺がパチンコ玉で攻撃してくる事を調べて知っているのかもしれない。それとも何か策でもあるのか。
そんな考え事をしているとインテリ眼鏡野郎は俺が反応出来ていないと勘違いしたのか俺の背後に回り魔法拳銃を後頭部に突き付ける。
「終わり――ガハッ!」
完全に勝利を確信し油断していた事が声音で聞き取れた瞬間、振り向きざまにインテリ眼鏡野郎が魔法拳銃を握っている右手首を掴み、左へと射線をずらすと同時に前へと体勢が崩れたところに上段回し蹴りを叩き込み吹き飛ばす。
実戦で初めて使った事もあってかほぼ力で叩き込む形になってしまったため、5メートルほどしか吹き飛ばなかった。
それでも初めて上手く行った事に自分でも内心驚いていた。いや、マジで驚いた。
どうして俺がそんな武術が使えるかと言うと影光に瞬脚を教えて貰うついでに神道零限流の体術を教えて貰ったのだ。
影光は神道零限流剣術の免許皆伝者だが、体術も既に免許皆伝レベルに達しているらしい。冒険者を引退したら亡くなった先代師範の後を継いで神道零限流を門下生に教えるつもりだと言っていた。
この事を影光に言えばまだまだだ。って言われるだろうな。俺もそう思う。さっきは相手が声を発した事で油断している事と距離を掴む事が出来たが、本来背後の敵を相手にする時は気配を感じ取り距離を瞬時に見極めてカウンター気味に行う技だって影光も言っていたしな。
それに未だ体術での連続攻撃が出来ない。ま、教えて貰った技が少ないと言うのもあるが、どうしたって昔ながらの力任せの喧嘩スタイルになってしまう。
本気で戦えば勝てるだろうが、それじゃ意味はない。更なる高みを目指すなら同等の身体能力で武術で勝たなければ。
「まさか2度も攻撃を喰らうとは」
それはお前が油断しているからだ。
1度目は不意を突いた完璧な奇襲、2度目は完璧な油断からのカウンター攻撃。今の俺が開放している力を考えれば奴が不思議がるのも無理は無い……と思う。
だがやはり奴の身体能力は相当高いようで今の攻撃ですら唇を軽く切った程度で済んでいる。これはもしかしたら面白いじゃなくて厳しい戦いになるかもしれないな。
「っとそうだった」
俺は懐からスマホを取り出してジャンヌに投げ渡す。
突然の事に驚くジャンヌに俺はインテリ眼鏡野郎から視線を外す事無く説明する。
「現在の場所と現状報告を頼む。その間俺がコイツの相手をしておくから」
「だ、だが……いや、分かった」
俺一人じゃ厳しいと思ったようだが、自分の状態と今の戦いを見て考えを改めたようだ。これは少しは信頼してくれたと思ってもいいのか?
ま、それに連絡しなくても10分もしないうちにヘリで来るだろう。
なんせ、この場所を特定したのはレティシアさんたちだ。俺1人が気付いて来たわけじゃない。全員がこの場所に居るとしっている。ただ俺が誰よりも早くこの場所に来ることが出来るから1人で来ただけに過ぎないからな。
だからよ、インテリ眼鏡野郎お前の寿命も長く持って10分だ。
不敵な笑みを浮かべインテリ眼鏡野郎を見ていると、それが気に喰わなかったのか更に険しい表情で睨んで来る。
「次はこっちから行くぜ」
地面を蹴りインテリ眼鏡野郎に接近する。
俺の攻撃を2度喰らっているからだろう。嫌な顔をしながら魔法拳銃を向けて来る。
奴に致命傷どころか外傷と言う外傷を与えられていない。軽く口端を切ったぐらいだ。だがそれでも痛みを感じていないわけじゃない。
あの超特大ミミズ野郎と同じでどれだけ身体能力が上がり体が頑丈になろうが、魔力が増幅しようが、痛いと感じればそれは痛いのだ。
そして痛みに対する耐性は何度も攻撃を喰らうしかない。だがそんな命の危険のある戦い方なんて模擬戦でもない限り普通は出来ない。
インテリ眼鏡野郎がどれだけ模擬戦をしてきたかは知らないが、今の反応を見る限り痛みに対する耐性はさほど高くないようだ。
だからこそ無意識に痛みを味わいたくないと言う恐怖心から奴は嫌な顔をしたのだろう。
魔法拳銃で照準を定めると水速針を連射する。
ジャンヌとの戦闘を見る限り接近戦が相手である場合、下半身を中心に攻撃してくることは分かっている。まさに誰もが知っているセオリー通りの戦術。
だが奴は数発に一発胸や顔と言った急所を狙った攻撃を混ぜて来ることがある。それも相手が下半身に意識が集中している隙を狙って。
遠距離攻撃をしてくる相手に慣れていない奴やジャンヌのような動体視力や反射神経が優れている奴が陥りやすい罠がある。
それは自分の動体視力や反射神経では躱しきれない攻撃に対しての対処法が下手言う点だ。
大抵そう言う奴は目の前の攻撃大してのみ反応してしまう。
つまりは1つ1つ躱して攻略していくと言う事だ。
だがそれでは間に合わない場合がある。
ならどうするか?
全体を見ればいい。初弾だけでなく、次弾、更に次弾を見て軌道を見切り、記憶し、回避行動をしつつ接近する道を作り出す。
そうすれば後は道を辿って行くだけで自然と近づく事が出来る。
「こんな風にな!」
「チッ!」
最小の動きで躱し接近してパンチを繰り出した。
当たらない事に苛立ちを覚えながらもインテリ眼鏡野郎は俺の攻撃を横に跳んで躱す。
追撃されないために牽制の攻撃をしてくるが、俺は簡単な動作で躱す。勿論追撃しても良かったが、正直このままでは優勢は維持できても倒しきるのは難しい。
正直ライアンたちが来ると戦いずらくなる。連携の問題もあるが、何よりこのインテリ眼鏡野郎が俺じゃなくライアンやライアンが連れて来た部下たちが攻撃対象になる可能性があるからだ。
そうなれば俺は攻撃し辛くなる。盾にされる危険性や巻き添えにしてしまう可能性があるからだ。
「仕方がない。ちょっと本気を出すか」
「な、何を馬鹿げたことを。まるで今まで本気で戦っていなかったと言っているように聞こえるぞ」
俺の攻撃に対処しきれない事に苛立ちを覚えていたインテリ眼鏡野郎は更に俺が強くなる事が信じられないのか僅かに恐怖を含んだ震えた声音で訊いて来た。
「ああ、その通りだ」
肯定の言葉を呟くと同時に俺は更に力を開放する。こんな事するから強くなれないんだよな~。
近頃依頼でレベルアップするのは難しいのかもしれないと思って来た俺は落胆する。
依頼は遊びじゃない。仕事だ。だから強い相手との戦いを楽しむのはまだ許容範囲内なんだろうが、強くなるために本気を出さないのは少しなら構わないだろうがずっとは駄目だ。それは焦りを生み、最悪死人が出る恐れがあるからだ。
「さぁこっからは討伐の時間だ」
――力開放量+1.5%。
現在俺は3%の力を開放している。
これならギリランクSSSの魔物とも戦えるだろう。
「な、なんだこの異常なまでの力の波動は!」
俺には魔力が無い。
だが生物とは本来魔力ではなく、気でその強さを図るものだ。
気圧される。と言う言葉ある通り、その生物が発している気に中てられて恐怖を感じるのだ。
ましてや気配操作能力が高ければ高いほど相手の強さを顕著に感じ取る事が出来る。
(な、なんだこの圧倒的な力は。まだこれほどまでの力を隠していたのか)
奴より気配操作能力が高いジャンヌの方が敏感に感じ取っているのだろう。あとで説明を求められたら面倒だが仕方がない。今は依頼をこなすだけだ。
完全に弱腰になっているインテリ眼鏡野郎に対して接近し容赦する事無く奴の顔面に拳を叩き込む。
「ガハッ!」
拳に伝わって来る感触から多分だが顎の骨にヒビが入っただろう。もしかしたら折れているかもしれない。どうでも良いが。
「ほら、続けるぞ」
殺しはしない。殺してしまえば奴から薬を製造している連中の情報を引き出せなくなるからな。
後方に吹き飛ぶインテリ眼鏡野郎に地面を蹴って一瞬で接近した俺は更に拳を数発叩き込む。
最後の一発を喰らったインテリ眼鏡野郎は更に吹き飛び、激突した木を圧し折りながらまだ吹き飛んでいく。少し強く殴り過ぎたか?
吹き飛ばされる勢いが弱まり地面に落ちる。
だが地面に落ちたからと言って止まる事無く、まるでゴムボールのように何度も地面に叩きつけられ転がる。飛行機だって着陸したからと言って直ぐに止まるわけじゃなく1キロ近くは滑走路の上を走っているのと同じ理屈だ。
ようやく止まったのはジャンヌの場所から50メートル近く離れた場所だった。
どうやら気絶はしていないらしく痛みで呻き声を漏らしながらも立ち上がろうとするインテリ眼鏡野郎の口からは血が流れ落ち、瞼や頬が腫れ上がり以前のキリッとしか顔はどこにもなかった。
まだ立ち上がろうとする気概は認めよう。だが正直残念だ。
「俺はお前の事を少しだが認めていたんだぞ」
「な……なに?」
意外そうな表情を浮かべるインテリ眼鏡野郎は枯れた声で問い返して来た。
「方法はどうであれ、帝国最強皇女と呼ばれているジャンヌ相手に謀略と言うジャンルにおいてお前は勝利を掴んだ。その一点においてお前はジャンヌよりも強者であると認めている」
「貴様はどっちの味方だ!」
どうやらジャンヌにも聞こえていたらしく、少しだけだが回復したのだろう。後ろから怒気を含んだ声が飛んでくる。人の話は最後まで聞きましょう。
元第304独立遊撃連隊に所属してたんだ助け合うのは当然と考えているだろうしな。
それにしても焦った~。
なんでこんな場所に公園があるのか俺には分からないが、新たに軍人墓地を作る際の土地選びで最適な場所がこの公園の隣しかなかったのかもしれないな。
そんな公園の木に隠れてジャンヌたちの戦いを観戦していたが、まさか名前を呼ばれるとは思っていなかったからな。え?出るのが遅いって。確かに殺されそうにはなっていたよ。だけどまだ諦めて無かったし何か打開策があるのかと思っていたからな。それに危ない場面では助けたし大丈夫だろ。
ほら、これは元連隊長と元副連隊長2人の戦いだから邪魔するのは無粋ってもんだろ?
ま、それもここまでだ。
名前を呼ばれて出てきた以上、ここからは俺の仕事だ。
10メートルほど吹き飛んだインテリ眼鏡野郎を見据えながら俺は指をポキポキと鳴らす。
「確かお前は……ボルキュス陛下が雇ったAランク冒険者」
「ああ、そうだよ」
掛けていた眼鏡の右目のレンズにヒビが入ってしまい邪魔だと思ったのか投げ捨てながら確かめるように言葉を吐く。へぇ、俺の事覚えていたのか1ヶ月以上前に1度会っただけなのによく覚えていたな。さすがはインテリ眼鏡野郎。
「お前がどうしてここに居るのか知らないが、どうやら死にたいようだな」
殺気を飛ばしなら睨みつけて来るインテリ眼鏡野郎。
確かにお前の強さはこの大陸に来てこれまで会ったどんな奴よりも強い気配を感じるぜ。間違いなく俺の後ろで座っているジャンヌよりもな。
「だが、お前程度じゃ俺には勝てないどころか殺せねぇよ」
「Aランク程度の冒険者風情が……まぁ、言い、所詮相手の力量も読み取る事も出来ない、それだけの実力って事なんだろう」
ほぉ……怒りで襲い掛かって来るかと思ったが、案外冷静さも持ち合わせてるんだな。流石はベルヘンス帝国、人材豊富なことで。ま、読み取れて無いのはお前なんだけどな。
「だがお前も災難だったな。哀れな皇女殿下のカウンセラーとして雇われたせいで死ぬ羽目になるんだからよ」
馬鹿にした態度で嘲笑うインテリ眼鏡野郎。
もしかしてこれがコイツの本性なのか?それとも薬の影響なのか?どちらにしろ言葉遣いがそこらに居るチンピラと変わらないぞ。
やっぱり本能で生きていると言葉遣いまで荒くなるんだな、怖い怖い。え?お前もだろって。私程礼儀正しい人間はいませんよ。
ま、そんな冗談はさておいて、だ。
「馬鹿か。俺は冒険者だ。依頼を請けたからにはそこが死地であろうと完遂する。それが俺の信念だ」
「そうかよ……なら、あの世で後悔するんだな。大それた事を口するだけの無能だった自分にな!」
強く地面を蹴ってインテリ眼鏡野郎は接近してくる。
おいおい、魔法拳銃を持ってるくせに接近してくるのか。せっかくの距離的有利を捨てるなんて馬鹿だろ。いや、俺がパチンコ玉で攻撃してくる事を調べて知っているのかもしれない。それとも何か策でもあるのか。
そんな考え事をしているとインテリ眼鏡野郎は俺が反応出来ていないと勘違いしたのか俺の背後に回り魔法拳銃を後頭部に突き付ける。
「終わり――ガハッ!」
完全に勝利を確信し油断していた事が声音で聞き取れた瞬間、振り向きざまにインテリ眼鏡野郎が魔法拳銃を握っている右手首を掴み、左へと射線をずらすと同時に前へと体勢が崩れたところに上段回し蹴りを叩き込み吹き飛ばす。
実戦で初めて使った事もあってかほぼ力で叩き込む形になってしまったため、5メートルほどしか吹き飛ばなかった。
それでも初めて上手く行った事に自分でも内心驚いていた。いや、マジで驚いた。
どうして俺がそんな武術が使えるかと言うと影光に瞬脚を教えて貰うついでに神道零限流の体術を教えて貰ったのだ。
影光は神道零限流剣術の免許皆伝者だが、体術も既に免許皆伝レベルに達しているらしい。冒険者を引退したら亡くなった先代師範の後を継いで神道零限流を門下生に教えるつもりだと言っていた。
この事を影光に言えばまだまだだ。って言われるだろうな。俺もそう思う。さっきは相手が声を発した事で油断している事と距離を掴む事が出来たが、本来背後の敵を相手にする時は気配を感じ取り距離を瞬時に見極めてカウンター気味に行う技だって影光も言っていたしな。
それに未だ体術での連続攻撃が出来ない。ま、教えて貰った技が少ないと言うのもあるが、どうしたって昔ながらの力任せの喧嘩スタイルになってしまう。
本気で戦えば勝てるだろうが、それじゃ意味はない。更なる高みを目指すなら同等の身体能力で武術で勝たなければ。
「まさか2度も攻撃を喰らうとは」
それはお前が油断しているからだ。
1度目は不意を突いた完璧な奇襲、2度目は完璧な油断からのカウンター攻撃。今の俺が開放している力を考えれば奴が不思議がるのも無理は無い……と思う。
だがやはり奴の身体能力は相当高いようで今の攻撃ですら唇を軽く切った程度で済んでいる。これはもしかしたら面白いじゃなくて厳しい戦いになるかもしれないな。
「っとそうだった」
俺は懐からスマホを取り出してジャンヌに投げ渡す。
突然の事に驚くジャンヌに俺はインテリ眼鏡野郎から視線を外す事無く説明する。
「現在の場所と現状報告を頼む。その間俺がコイツの相手をしておくから」
「だ、だが……いや、分かった」
俺一人じゃ厳しいと思ったようだが、自分の状態と今の戦いを見て考えを改めたようだ。これは少しは信頼してくれたと思ってもいいのか?
ま、それに連絡しなくても10分もしないうちにヘリで来るだろう。
なんせ、この場所を特定したのはレティシアさんたちだ。俺1人が気付いて来たわけじゃない。全員がこの場所に居るとしっている。ただ俺が誰よりも早くこの場所に来ることが出来るから1人で来ただけに過ぎないからな。
だからよ、インテリ眼鏡野郎お前の寿命も長く持って10分だ。
不敵な笑みを浮かべインテリ眼鏡野郎を見ていると、それが気に喰わなかったのか更に険しい表情で睨んで来る。
「次はこっちから行くぜ」
地面を蹴りインテリ眼鏡野郎に接近する。
俺の攻撃を2度喰らっているからだろう。嫌な顔をしながら魔法拳銃を向けて来る。
奴に致命傷どころか外傷と言う外傷を与えられていない。軽く口端を切ったぐらいだ。だがそれでも痛みを感じていないわけじゃない。
あの超特大ミミズ野郎と同じでどれだけ身体能力が上がり体が頑丈になろうが、魔力が増幅しようが、痛いと感じればそれは痛いのだ。
そして痛みに対する耐性は何度も攻撃を喰らうしかない。だがそんな命の危険のある戦い方なんて模擬戦でもない限り普通は出来ない。
インテリ眼鏡野郎がどれだけ模擬戦をしてきたかは知らないが、今の反応を見る限り痛みに対する耐性はさほど高くないようだ。
だからこそ無意識に痛みを味わいたくないと言う恐怖心から奴は嫌な顔をしたのだろう。
魔法拳銃で照準を定めると水速針を連射する。
ジャンヌとの戦闘を見る限り接近戦が相手である場合、下半身を中心に攻撃してくることは分かっている。まさに誰もが知っているセオリー通りの戦術。
だが奴は数発に一発胸や顔と言った急所を狙った攻撃を混ぜて来ることがある。それも相手が下半身に意識が集中している隙を狙って。
遠距離攻撃をしてくる相手に慣れていない奴やジャンヌのような動体視力や反射神経が優れている奴が陥りやすい罠がある。
それは自分の動体視力や反射神経では躱しきれない攻撃に対しての対処法が下手言う点だ。
大抵そう言う奴は目の前の攻撃大してのみ反応してしまう。
つまりは1つ1つ躱して攻略していくと言う事だ。
だがそれでは間に合わない場合がある。
ならどうするか?
全体を見ればいい。初弾だけでなく、次弾、更に次弾を見て軌道を見切り、記憶し、回避行動をしつつ接近する道を作り出す。
そうすれば後は道を辿って行くだけで自然と近づく事が出来る。
「こんな風にな!」
「チッ!」
最小の動きで躱し接近してパンチを繰り出した。
当たらない事に苛立ちを覚えながらもインテリ眼鏡野郎は俺の攻撃を横に跳んで躱す。
追撃されないために牽制の攻撃をしてくるが、俺は簡単な動作で躱す。勿論追撃しても良かったが、正直このままでは優勢は維持できても倒しきるのは難しい。
正直ライアンたちが来ると戦いずらくなる。連携の問題もあるが、何よりこのインテリ眼鏡野郎が俺じゃなくライアンやライアンが連れて来た部下たちが攻撃対象になる可能性があるからだ。
そうなれば俺は攻撃し辛くなる。盾にされる危険性や巻き添えにしてしまう可能性があるからだ。
「仕方がない。ちょっと本気を出すか」
「な、何を馬鹿げたことを。まるで今まで本気で戦っていなかったと言っているように聞こえるぞ」
俺の攻撃に対処しきれない事に苛立ちを覚えていたインテリ眼鏡野郎は更に俺が強くなる事が信じられないのか僅かに恐怖を含んだ震えた声音で訊いて来た。
「ああ、その通りだ」
肯定の言葉を呟くと同時に俺は更に力を開放する。こんな事するから強くなれないんだよな~。
近頃依頼でレベルアップするのは難しいのかもしれないと思って来た俺は落胆する。
依頼は遊びじゃない。仕事だ。だから強い相手との戦いを楽しむのはまだ許容範囲内なんだろうが、強くなるために本気を出さないのは少しなら構わないだろうがずっとは駄目だ。それは焦りを生み、最悪死人が出る恐れがあるからだ。
「さぁこっからは討伐の時間だ」
――力開放量+1.5%。
現在俺は3%の力を開放している。
これならギリランクSSSの魔物とも戦えるだろう。
「な、なんだこの異常なまでの力の波動は!」
俺には魔力が無い。
だが生物とは本来魔力ではなく、気でその強さを図るものだ。
気圧される。と言う言葉ある通り、その生物が発している気に中てられて恐怖を感じるのだ。
ましてや気配操作能力が高ければ高いほど相手の強さを顕著に感じ取る事が出来る。
(な、なんだこの圧倒的な力は。まだこれほどまでの力を隠していたのか)
奴より気配操作能力が高いジャンヌの方が敏感に感じ取っているのだろう。あとで説明を求められたら面倒だが仕方がない。今は依頼をこなすだけだ。
完全に弱腰になっているインテリ眼鏡野郎に対して接近し容赦する事無く奴の顔面に拳を叩き込む。
「ガハッ!」
拳に伝わって来る感触から多分だが顎の骨にヒビが入っただろう。もしかしたら折れているかもしれない。どうでも良いが。
「ほら、続けるぞ」
殺しはしない。殺してしまえば奴から薬を製造している連中の情報を引き出せなくなるからな。
後方に吹き飛ぶインテリ眼鏡野郎に地面を蹴って一瞬で接近した俺は更に拳を数発叩き込む。
最後の一発を喰らったインテリ眼鏡野郎は更に吹き飛び、激突した木を圧し折りながらまだ吹き飛んでいく。少し強く殴り過ぎたか?
吹き飛ばされる勢いが弱まり地面に落ちる。
だが地面に落ちたからと言って止まる事無く、まるでゴムボールのように何度も地面に叩きつけられ転がる。飛行機だって着陸したからと言って直ぐに止まるわけじゃなく1キロ近くは滑走路の上を走っているのと同じ理屈だ。
ようやく止まったのはジャンヌの場所から50メートル近く離れた場所だった。
どうやら気絶はしていないらしく痛みで呻き声を漏らしながらも立ち上がろうとするインテリ眼鏡野郎の口からは血が流れ落ち、瞼や頬が腫れ上がり以前のキリッとしか顔はどこにもなかった。
まだ立ち上がろうとする気概は認めよう。だが正直残念だ。
「俺はお前の事を少しだが認めていたんだぞ」
「な……なに?」
意外そうな表情を浮かべるインテリ眼鏡野郎は枯れた声で問い返して来た。
「方法はどうであれ、帝国最強皇女と呼ばれているジャンヌ相手に謀略と言うジャンルにおいてお前は勝利を掴んだ。その一点においてお前はジャンヌよりも強者であると認めている」
「貴様はどっちの味方だ!」
どうやらジャンヌにも聞こえていたらしく、少しだけだが回復したのだろう。後ろから怒気を含んだ声が飛んでくる。人の話は最後まで聞きましょう。
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彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
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