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第三章 魔力無し転生者はランクを上げていく
第二十九話 漆黒のサンタクロース ⑪
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事情聴取は1時間と案外短く終わった。
犯人が既に討伐された事と、ローブ爺以外にリサたちを襲う輩が居るとは思えないからだ。
確かに奴等は自分たちが崇めていた神を愚弄されたと勝手に思い込んで行動しただけに過ぎない。それも軍人が調べた限りではたった2人が崇める神だったようだ。それはもうただの現実逃避どころの話じゃない。
自分勝手な自分にとって都合の良い存在を妄想内で生み出していただけに過ぎない。
ま、そんなわけでリサたちは事件の内容と俺に対して依頼をした事を説明するだけで終わり、俺もリサたちと出会ってからの経緯を話すだけで終わった。
詰め所を出た俺たちはタクシーを拾ってマンションに向かっていた。
今日は仕事があるがそれは夜からだ。
それまで自由に過ごせる。ま、俺の仕事ももうおしまいだからな。夜の仕事には同行する事はない。
マンションに到着したリサたちはリビングのソファーで寛いでいた。
と言うよりもグッタリとしていた。なんともだらしない姿。きっとファンが見たら幻滅するレベルだぞ。
「どうぞ」
「お、サンキュー」
リビングの入り口から眺めているとインスタントコーヒーが入ったコップを旭が手渡してくれた。やっぱり、旭はリサたちと違ってこういう時もしっかりしているな。
「今、失礼な事考えなかったか?」
「いや、別に」
どうしてこの世界の女性はこうも鋭いんだ?内心そんな疑問を考えながら俺はインスタントコーヒーを軽く冷ましてから一口飲む。うん、美味しい。って、コーヒーを堪能しているわけには行かない。俺がここに来たのはセリシャに頼んで依頼達成を冒険者組合に報告して貰うためだ。
「セリシャ、冒険者組合に依頼達成の報告をしてくれ」
「チッ」
俺の言葉にセリシャの隣に座るリサから何故か舌打ちが聞えて来たような気がした。
俺の位置からではセリシャとリサの後頭部しか見えない。だから今どんな表情をしているとかまったく分からないのだ。
だが対面に座る旭やアンジェリカはクスクスと笑ったりしていた。まったく理解できないんだが。
「ええ、分かってるわ」
そう呟いたセリシャはスマホを取り出して弄りだした。きっと冒険者組合に依頼達成の報告メールを送ってるんだろう。
達成報告はメールか電話で出来る。俺は冒険者だから依頼をする側ではなくこなす側だからそこら辺はよく知らないが。
インスタントコーヒーを味わっているとセリシャがスマホを少し掲げるとこちらに顔を向ける。
「今、依頼達成のメールを送っておいたわ。そのうち冒険者組合から依頼達成の通知が届くと思うわ。それとお金は既に冒険者組合に頼んで私たちの口座から120万RK分ジンの口座に振り込んでおいたわよ」
「分かった」
そう返事をしてた時、俺のスマホ通知音がなる。
スマホを開いて確認すると、冒険者組合から指名依頼の達成を確認しました。と言う通知メールだった。
セリシャがメールを送ってま5分も経ってない。この早さから考えてきっとミキが俺のスマホにメールを送ったんだろう。相変わらず仕事が速くて助かる。
「ああ、確かに確認した。それじゃ俺はこれで。また何かあったら依頼してくれ」
スマホをポケットにしまった俺はコーヒーを飲み干したカップを流し台に置いて部屋から出ようとした。
しかしリビングの出入り口をリサに塞がれていて出ることが出来ない。これは最後の悪戯かなにかか?
一瞬そう思った俺は嘆息しそうになるが、その前にリサがスマホを突き出してきた。
「なんの真似だ?」
俺がそう言うと、リサは視線を合わせようとはせずどこか別の方向に向けながら口を開いた。
「い、依頼するにしても、れ、連絡先知らないと不便だろ!だ、だから……こ、交換だ!」
ああ、そういう事か。
思い返してみれば俺はHERETICのメンバーの誰とも連絡先を交換していなかった。依頼は冒険者組合を通してからだし、依頼を引き受けてからはマネージャーとしてずっと傍に居たから、メールや電話で連絡をし合う事がなかったのだ。
俺はさっきしまったスマホを取り出して呟いた。
「分かった」
電話番号は口答で伝え、IDアドレスはQRコードで交換した。
アプリに新しい友達の名前が表示されている事を確認した俺はリサに視線を向けるとスマホを嬉しそうにと言うよりも、ニヤつきながら凝視する彼女に、
「どうした?」
と問い掛けるとハッ!我に返ると頬を赤らめて、「なんでもない!」と絶叫するだけだった。
いったいなんだったんだ?と怪訝に感じていると俺の前に4つスマホが向けられており、その所有者であるセリシャ、旭、アンジェリカ、ノーラの4人が、
『私とも交換しよう』
と、押し迫る勢いで言って来たのだ。俺はその勢いに気圧されてしまい、言葉に詰まりながらも了承の返事をして交換したのだった。何故かは分からないが、そんな俺たちの姿を見てリサが俺を睨んでいたような気がするが気のせいだろう。
連絡先の交換を終えた俺は、今度こそリサたちに「じゃあな」と伝えて部屋を出た。
エレベーターに乗り込み、1階へ下りるボタンを押した俺はドアが閉まる時になって、依頼があるのなら冒険者組合を通せば良いだけなんじゃ?と思ったが、今更思ったところで何の意味も無い。
ま、そんなわけで俺は公暦1327年1月1日火曜日、地球ならば元旦の日に無事に指名依頼を達成した。
その喜びを感じながら俺は冷たい風が吹く冬空の下、ホームに向かって歩くのだった。寒っ!
─────────────────────
【依頼】
依頼難易度 Bランク
依頼 指名
依頼内容 HERETICの護衛とストカー討伐
依頼状況 完了
依頼報酬+120万RK
【ギルド残高】
指名依頼依頼報酬2割
+24万RK
【1ヶ月の生活費】
光熱費 -4万589RK
食費(外食費除く) -12万6890RK
通信費 -4400RK
ギルド口座残高 792万9621RK
【ギルドランク】
Dランク
【個人残高】
指名依頼報酬 +96万RK
煙草1カートン -5200RK
スマホ代 -5800RK
残高 2045万5340RK
【冒険者ランク】
現在Aランク
Sランク昇格まで残り944ポイント
=================================
お久しぶりです、月見酒です。
最後は少し短いです。
で、今回の漆黒のサンタクロース編はどうだったでしょうか?
クリスマスと言うことで、ドイツのサンタクロースをモチーフにしてみました。
正確にはサンタクロースでは無いですが。
さて次回ですが、遂にベルヘンス帝国の皇族でありながら未だ姿を見せていなかったあの人が!
気になる方はぜひ、次回を楽しみにしていて下さい。
それでは今後とも「魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~」を宜しくお願いします。
犯人が既に討伐された事と、ローブ爺以外にリサたちを襲う輩が居るとは思えないからだ。
確かに奴等は自分たちが崇めていた神を愚弄されたと勝手に思い込んで行動しただけに過ぎない。それも軍人が調べた限りではたった2人が崇める神だったようだ。それはもうただの現実逃避どころの話じゃない。
自分勝手な自分にとって都合の良い存在を妄想内で生み出していただけに過ぎない。
ま、そんなわけでリサたちは事件の内容と俺に対して依頼をした事を説明するだけで終わり、俺もリサたちと出会ってからの経緯を話すだけで終わった。
詰め所を出た俺たちはタクシーを拾ってマンションに向かっていた。
今日は仕事があるがそれは夜からだ。
それまで自由に過ごせる。ま、俺の仕事ももうおしまいだからな。夜の仕事には同行する事はない。
マンションに到着したリサたちはリビングのソファーで寛いでいた。
と言うよりもグッタリとしていた。なんともだらしない姿。きっとファンが見たら幻滅するレベルだぞ。
「どうぞ」
「お、サンキュー」
リビングの入り口から眺めているとインスタントコーヒーが入ったコップを旭が手渡してくれた。やっぱり、旭はリサたちと違ってこういう時もしっかりしているな。
「今、失礼な事考えなかったか?」
「いや、別に」
どうしてこの世界の女性はこうも鋭いんだ?内心そんな疑問を考えながら俺はインスタントコーヒーを軽く冷ましてから一口飲む。うん、美味しい。って、コーヒーを堪能しているわけには行かない。俺がここに来たのはセリシャに頼んで依頼達成を冒険者組合に報告して貰うためだ。
「セリシャ、冒険者組合に依頼達成の報告をしてくれ」
「チッ」
俺の言葉にセリシャの隣に座るリサから何故か舌打ちが聞えて来たような気がした。
俺の位置からではセリシャとリサの後頭部しか見えない。だから今どんな表情をしているとかまったく分からないのだ。
だが対面に座る旭やアンジェリカはクスクスと笑ったりしていた。まったく理解できないんだが。
「ええ、分かってるわ」
そう呟いたセリシャはスマホを取り出して弄りだした。きっと冒険者組合に依頼達成の報告メールを送ってるんだろう。
達成報告はメールか電話で出来る。俺は冒険者だから依頼をする側ではなくこなす側だからそこら辺はよく知らないが。
インスタントコーヒーを味わっているとセリシャがスマホを少し掲げるとこちらに顔を向ける。
「今、依頼達成のメールを送っておいたわ。そのうち冒険者組合から依頼達成の通知が届くと思うわ。それとお金は既に冒険者組合に頼んで私たちの口座から120万RK分ジンの口座に振り込んでおいたわよ」
「分かった」
そう返事をしてた時、俺のスマホ通知音がなる。
スマホを開いて確認すると、冒険者組合から指名依頼の達成を確認しました。と言う通知メールだった。
セリシャがメールを送ってま5分も経ってない。この早さから考えてきっとミキが俺のスマホにメールを送ったんだろう。相変わらず仕事が速くて助かる。
「ああ、確かに確認した。それじゃ俺はこれで。また何かあったら依頼してくれ」
スマホをポケットにしまった俺はコーヒーを飲み干したカップを流し台に置いて部屋から出ようとした。
しかしリビングの出入り口をリサに塞がれていて出ることが出来ない。これは最後の悪戯かなにかか?
一瞬そう思った俺は嘆息しそうになるが、その前にリサがスマホを突き出してきた。
「なんの真似だ?」
俺がそう言うと、リサは視線を合わせようとはせずどこか別の方向に向けながら口を開いた。
「い、依頼するにしても、れ、連絡先知らないと不便だろ!だ、だから……こ、交換だ!」
ああ、そういう事か。
思い返してみれば俺はHERETICのメンバーの誰とも連絡先を交換していなかった。依頼は冒険者組合を通してからだし、依頼を引き受けてからはマネージャーとしてずっと傍に居たから、メールや電話で連絡をし合う事がなかったのだ。
俺はさっきしまったスマホを取り出して呟いた。
「分かった」
電話番号は口答で伝え、IDアドレスはQRコードで交換した。
アプリに新しい友達の名前が表示されている事を確認した俺はリサに視線を向けるとスマホを嬉しそうにと言うよりも、ニヤつきながら凝視する彼女に、
「どうした?」
と問い掛けるとハッ!我に返ると頬を赤らめて、「なんでもない!」と絶叫するだけだった。
いったいなんだったんだ?と怪訝に感じていると俺の前に4つスマホが向けられており、その所有者であるセリシャ、旭、アンジェリカ、ノーラの4人が、
『私とも交換しよう』
と、押し迫る勢いで言って来たのだ。俺はその勢いに気圧されてしまい、言葉に詰まりながらも了承の返事をして交換したのだった。何故かは分からないが、そんな俺たちの姿を見てリサが俺を睨んでいたような気がするが気のせいだろう。
連絡先の交換を終えた俺は、今度こそリサたちに「じゃあな」と伝えて部屋を出た。
エレベーターに乗り込み、1階へ下りるボタンを押した俺はドアが閉まる時になって、依頼があるのなら冒険者組合を通せば良いだけなんじゃ?と思ったが、今更思ったところで何の意味も無い。
ま、そんなわけで俺は公暦1327年1月1日火曜日、地球ならば元旦の日に無事に指名依頼を達成した。
その喜びを感じながら俺は冷たい風が吹く冬空の下、ホームに向かって歩くのだった。寒っ!
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【依頼】
依頼難易度 Bランク
依頼 指名
依頼内容 HERETICの護衛とストカー討伐
依頼状況 完了
依頼報酬+120万RK
【ギルド残高】
指名依頼依頼報酬2割
+24万RK
【1ヶ月の生活費】
光熱費 -4万589RK
食費(外食費除く) -12万6890RK
通信費 -4400RK
ギルド口座残高 792万9621RK
【ギルドランク】
Dランク
【個人残高】
指名依頼報酬 +96万RK
煙草1カートン -5200RK
スマホ代 -5800RK
残高 2045万5340RK
【冒険者ランク】
現在Aランク
Sランク昇格まで残り944ポイント
=================================
お久しぶりです、月見酒です。
最後は少し短いです。
で、今回の漆黒のサンタクロース編はどうだったでしょうか?
クリスマスと言うことで、ドイツのサンタクロースをモチーフにしてみました。
正確にはサンタクロースでは無いですが。
さて次回ですが、遂にベルヘンス帝国の皇族でありながら未だ姿を見せていなかったあの人が!
気になる方はぜひ、次回を楽しみにしていて下さい。
それでは今後とも「魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~」を宜しくお願いします。
応援ありがとうございます!
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