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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第九十話 ギルド、フリーダム入社試験開始!
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11月7日水曜日。
朝食を食べた俺はソファーに座ってスマホを見ていた。
募集がちゃんと載っているかを確かめるためだ。
影光たち他の連中は今日も依頼を受けるべく既に出発している。つまりホームに居るのは俺だけと言うわけだ。
さて、求人はっと。
─────────────────────
ギルド名 フリーダム
ギルドランク D
ギルドマスター 鬼瓦仁
募集人数 2名
給料 歩合制の即決払い。
募集希望要項
中距離~遠距離攻撃専門の冒険者
回復魔法が使える冒険者
Eランク以上の冒険者。
年齢制限無し。
特典
合格した場合住込みも可能。
1人一室が与えられ、ベッド、テーブル、エアコン等完備。
朝昼晩と食事も出ます。また食費、光熱費等はギルド持ち。
試験日
11月13日火曜日。午前10時。
募集人数より人数が少なくても試験はします。
連絡先 080-××××-×××××
一言
即戦力を求めているため、Bランク以上の冒険者であると好ましいです。
ただし我々が成長の見込みがあると判断すればCランク以下の冒険者でも採用する可能性はあります。
また種族、性別による差別無し。完全な実力主義です。
試験日には履歴書、愛用の武器、冒険者免許書を必ず持って来て下さい。
─────────────────────
「お、ちゃんと載っているな」
書いた事が丁寧語に修正されて載っていた。
きっとミキが印象を良くするために修正してくれたんだろう。ありがたいことだ。
確認を終えた俺は依頼を選んでソファーから立ち上がった。
11月13日火曜日。
いよいよ募集した成果の日がやって来た。
念のために前日にギルド前に受験者は地下の訓練所に移動して待機と言う看板を置いておいた。
朝食を食べ終わった俺たちはさっそくエレベーターに乗って地下室に向かう。
「さてどれぐらい集まってるかな」
「1人は居て欲しいですね」
「そうだな。でないと1万7500RKが無駄になるからな」
「ま、私としてはマスターを馬鹿にする奴は不採用と決めています」
「アイン、言っておくが最終決定権は俺にあるからな」
「なら、その時は貴方を殺して私がギルドマスターになります」
まったくなんで朝から殺害宣言をされなきゃならないんだ。ま、アインだから仕方がないか。
エレベーターが止まり地下の訓練所に入るとそこには約30人近い冒険者たちが集まっていた。
「おいおいマジかよ」
予想していなかった人数に俺は驚きを隠せなかった。
いや、誰だってこれだけの人数が集まるなんて思ってなかったからな。
「すまぬ仁」
「どうした?」
「どうやら今回集まった冒険者の大半が拙者の知り合いらしい」
「どう言う事だ?」
「拙者と一度戦って負けた奴も居れば、拙者に憧れてフリーの冒険者をしている奴も居るって事だ」
「なるほどな」
そうだ。影光は世界最強の剣豪と言われている男だ。そんな男と同じギルドに入りたいと思う奴が居てもおかしくはないよな。
この大勢の冒険者が集まった理由がようやく理解できた。
「それよりどうするのだ。これだけの人数は想定してなかったはずだ」
「確かにその通りだ。まさかこれだけの人数が集まるとは思わなかったからな。だがやるしかないだろ」
俺たちは覚悟を決めて集まった冒険者たちの前に立つ。
「初めまして。ギルド、フリーダムのギルドマスターの鬼瓦仁だ。冒険者ランクはBランクだ。それじゃまずはギルドメンバーの自己紹介からするとしよう」
そう言って俺は一番右端にいるヘレンに視線を向けた。
ヘレンも気づいたのか直ぐに口を開いた。
「ヘレン・ボルティネ。Aランク冒険者なのだ。よろしくなのだ!」
うん、相変わらず短いな。
次に喋り出したのはヘレンの隣、つまり俺の隣にいる影光だ。
「拙者は藤堂影光。冒険者ランクはSランクだ。この中には顔見知りも数人いるようだが、それで贔屓にしたりはしない。それだけは覚えておいて欲しい」
ま、影光らしい挨拶だな。
んで、次は俺の左となりに立つアインだ。
「アインです。冒険者ランクはBランク。先に言っておきますが、私のマスターは隣のアホではなく、私が抱き抱えているのがマスターなので間違えないようお願いします」
ま、よく間違われるからな。
で、最後は左端のグリードだ。
「グリード・クレムリンです!ぼ、冒険者ランクはEランクです!よ、よよ、よろしくお願いします!」
そこまで緊張することもないだろ。
そう思いながら俺は口を開いた。
「さて、これより試験を行うわけだが、その前に全員履歴書は持ってきたな。その履歴書を男はグリードに。女はヘレンに渡しておいてくれ。試験内容は全員が渡し終えてから説明する。それじゃ行動開始」
俺の言葉と同時に全員が履歴書を渡していく。
男女の割合で言えば男が6割、女が4割と言ったところだろう。
5分で全員が履歴書を渡し終える。
「それじゃ実技試験を行う。実技試験は1対1で、制限時間は10分。二試合同時に行う。お前たちの実力を見たいから受験者同士の戦闘ではなく、俺たちと戦ってもらう」
その言葉に訓練所内がざわめきだす。別に驚く事じゃないだろ。実力を知るには戦ってみるがの一番だからな。
「ただし、今回実技試験の相手をするのは俺、影光、アインの3名だけだ。ヘレンとグリードの2人は戦わないからそのつもりで。それじゃ――」
「ちょっと良いか?」
手を挙げて質問してきたのはタバコを咥え、背中には大きな鞄を背負う男だった。年齢からして影光と同じぐらいだろう。
「なんだ?」
「幾つか質問したいんだが構わないか?」
「良いぞ」
「実技試験の内容は分かったが、どうやって順番を決めるんだ?」
「それは俺たちで決める。お前たちから受け取った履歴書から適当に一枚抜く。そいつが実技試験を受ける受験者だ」
「なら試験官はどうするんだ?」
「お前たちで選べば良い。それだけか?」
「ああ、その通りだ」
まったく人の話が終わる前に質問なんかしてくるなよな。
そう思いながら俺は男性と女性の方から一枚引いた。
「まずは男の方から、ドリス・ハイト。女、シャンティー・ハント」
これまた苗字が似た2人だな。
そう思っていると名前を呼ばれた2人が俺たちの前までやってきた。
「それじゃ指名してくれ」
俺の言葉に受験者たちは困惑する。どうせ同じ相手を指名したらとか考えてるんだろうけど。それに関してもちゃんと考えがある。
「早く選べ」
そして選んだ相手は、2人とも俺だった。
その瞬間、受験者たちからざわめき出す。
それに対してフリーダムメンバーはと言うと。
「仁、人気者だな」
「運の良い人ですね」
「はいはい」
まったく好き勝手に言ってくれる。
そう思いながら俺は訓練所中央へと移動する。あれ?2人がついてこない。
「何してるんだ?試験を開始するぞ」
「お、おい!まさか2人同時に戦うなんて言わないよな?」
「そのつもりだが?何か問題でもあるのか?」
「言っておくが俺はAランクの冒険者だ。こっちのシャンティーも同じAランクだ。Bランクのお前が2人相手にして戦えるとは思えないが?」
もしかしてコイツ、相手の実力が見極めれないのか?
この瞬間、ドリス・ハイトは不合格に一歩近づいた。完全に不合格じゃないのは戦って実力を見てないからだ。
もしかしたら本当は強いのかもしれないしな。
「別に戦いたくないなら構わないが、その時は不合格になるが良いんだな?」
「チッ分かったよ!」
「負けたからって私たちのせいにしないでよね」
「はいはい」
このシャンティーって女もドリスと一緒だな。
この訓練所は入り口の壁だけ二重になっている。その理由は模擬戦で銃を使う場合観戦している連中に当たる危険性があるからだ。そのため、内側の壁は防弾の透明な分厚い壁となっている。
影光たちや受験者たちがそこに移動した事を確認した俺は合図を出す。
「それじゃ……試合開始!」
俺の言葉と同時に2人が愛用の武器で攻撃してきた。
ドリスの武器は魔導短機関銃。シャンティーは魔導拳銃の両手持ちだ。
2人ともそこそこの命中精度は持っているな。肉体強化魔法も使って身体能力も向上させているし、何より相手の動きを見て攻撃してくる。実戦経験が豊富な事が窺えるが、それだけだ。
ただ戦ってきただけで相手の実力を見極められていない。
その証拠に俺は0.5%の力で戦っている。
まさか1%未満で戦う羽目になるとは思っていなかったが、受けてくる受験者は色々だからな。
俺は影光たちに視線を向けると、向こうが頷いた。どうやら結果が出たようだな。
1人が戦っている間に戦っていないギルドメンバーが受験者たちの実力を見て判断するようにしているのだ。
終わった事だし、終わらせるか。
俺は2%まで力を解放して2人を気絶させた。
「これで終わりと」
そんな俺の姿に受験者たちは驚愕の表情を浮かべ、影光たちは当然と言わんばかりに笑みを浮かべていた。ま、ギルドマスターが負けるようでは舐められるからな。
気絶した2人を壁際まで運んで放置する。そのうち目を覚ますだろ。
「それじゃ、次の受験者を選ぶぞ」
俺はそう言って男女の履歴書から選ぶ。
そのあと、実技試験は滞りなく進んだ。
影光の知り合いと言う事もあり、そこそこ実力のある奴が数名居た。これは面接で決まるな。
ただ不満があるとすれば、最初以降俺に戦いを挑んでくる奴が居なかったと言う事だ。
影光に質問するとどうやら俺の戦い方に恐怖を覚えたそうだ。別に非道な事はした覚えはないんだが。
こうして2時間で実技試験は終わった。
「これより、面接を行う。面接は別室で1人ずつ行う。順番はこちらで適当に選んで名前を呼ぶからそれまでは待機とする。その間に昼飯を食べても良いが、ゴミは自分たちで処理しろよ」
そう言って俺、影光、アインはエレベーターに乗って地上へと戻った。
面接は2階のフロアで行う。
この部屋はまだ何も無い。と言うかお金がないから物が置けないのだ。ギルドの部屋として使うつもりなんだけどね。
で、今回のために俺、影光、アインが座る椅子にテーブルを挟んで反対側に受験者が座る椅子が1つ置かれているだけだ。うん、適当だ。
面接の流れは、地下の訓練所に残したグリード、ヘレンの2人のどちらかに連絡して受験者に来てもらうと言う仕組みだ。
「それじゃ始めるか」
俺はグリードに連絡して1人目の受験者を呼ぶ。
数分して1人の男性がやって来た。
男の名前はグローサ・デルメイユ。
Aランクの冒険者で武器はM16に似た魔導小銃。
魔法属性は土。魔力量は常人より少し多め。
履歴書には冒険者になって一度もどこのギルドにも所属していないと書いてある。
で、この男が最初に質問してきた奴だ。
因みに実技試験では影光と戦って負けた。最初は確かに良い戦いをしていた。実力もある。きっと今のグリードではギリギリ勝てるかどうかと言ったところだろう。
グローサは椅子に座ると脚を組んだ。これが日本での入社試験なら即失格だな。ま、俺は気にしないけど。
「それじゃ、いくつか質問する。どうしてこのギルドに入ろうと思ったんだ?」
「そんなのカゲミツさんがいるからに決まってるだろ」
「影光に憧れてやって来た事か?」
「そうさ。でなければこんな弱小ギルドに誰が入るかよ」
うん、とても正直でよろしい。
そして俺の怒りゲージを溜めるのが上手だな。
「次の質問だ。お前にとって仲間とはなんだ?」
「悪いが、仲間なんて要らない。俺はこれまで1人でやってきたからな。依頼受けて金さえ貰えればそれで良い」
「そうか」
うん、なんて自己中なんだ。アインよりも酷いぞ。
ま、仕事人って感じもしないでもないけどな。仲間なんて必要なく己の実力だけで戦うって感じだしな。
「分かった。面接は以上だ。合格は全員の面接が終わってから訓練所で発表する。待てないようなら帰って貰っても良いが、その時は不合格とさせて貰う」
「分かったよ」
そう言うとグローサは出て行った。もう少しコミュニケーションが取れる男かと思っていたが、全然違ったな。
俺は両隣に座る影光とアインに聞いてみる。
「で、どうだった?」
「そんなの決まってます」
「仁も同じであろう」
どうやら2人とも同じ考えのようだな。
『不合格』
奴の履歴書に不合格の判子を押した。
朝食を食べた俺はソファーに座ってスマホを見ていた。
募集がちゃんと載っているかを確かめるためだ。
影光たち他の連中は今日も依頼を受けるべく既に出発している。つまりホームに居るのは俺だけと言うわけだ。
さて、求人はっと。
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ギルド名 フリーダム
ギルドランク D
ギルドマスター 鬼瓦仁
募集人数 2名
給料 歩合制の即決払い。
募集希望要項
中距離~遠距離攻撃専門の冒険者
回復魔法が使える冒険者
Eランク以上の冒険者。
年齢制限無し。
特典
合格した場合住込みも可能。
1人一室が与えられ、ベッド、テーブル、エアコン等完備。
朝昼晩と食事も出ます。また食費、光熱費等はギルド持ち。
試験日
11月13日火曜日。午前10時。
募集人数より人数が少なくても試験はします。
連絡先 080-××××-×××××
一言
即戦力を求めているため、Bランク以上の冒険者であると好ましいです。
ただし我々が成長の見込みがあると判断すればCランク以下の冒険者でも採用する可能性はあります。
また種族、性別による差別無し。完全な実力主義です。
試験日には履歴書、愛用の武器、冒険者免許書を必ず持って来て下さい。
─────────────────────
「お、ちゃんと載っているな」
書いた事が丁寧語に修正されて載っていた。
きっとミキが印象を良くするために修正してくれたんだろう。ありがたいことだ。
確認を終えた俺は依頼を選んでソファーから立ち上がった。
11月13日火曜日。
いよいよ募集した成果の日がやって来た。
念のために前日にギルド前に受験者は地下の訓練所に移動して待機と言う看板を置いておいた。
朝食を食べ終わった俺たちはさっそくエレベーターに乗って地下室に向かう。
「さてどれぐらい集まってるかな」
「1人は居て欲しいですね」
「そうだな。でないと1万7500RKが無駄になるからな」
「ま、私としてはマスターを馬鹿にする奴は不採用と決めています」
「アイン、言っておくが最終決定権は俺にあるからな」
「なら、その時は貴方を殺して私がギルドマスターになります」
まったくなんで朝から殺害宣言をされなきゃならないんだ。ま、アインだから仕方がないか。
エレベーターが止まり地下の訓練所に入るとそこには約30人近い冒険者たちが集まっていた。
「おいおいマジかよ」
予想していなかった人数に俺は驚きを隠せなかった。
いや、誰だってこれだけの人数が集まるなんて思ってなかったからな。
「すまぬ仁」
「どうした?」
「どうやら今回集まった冒険者の大半が拙者の知り合いらしい」
「どう言う事だ?」
「拙者と一度戦って負けた奴も居れば、拙者に憧れてフリーの冒険者をしている奴も居るって事だ」
「なるほどな」
そうだ。影光は世界最強の剣豪と言われている男だ。そんな男と同じギルドに入りたいと思う奴が居てもおかしくはないよな。
この大勢の冒険者が集まった理由がようやく理解できた。
「それよりどうするのだ。これだけの人数は想定してなかったはずだ」
「確かにその通りだ。まさかこれだけの人数が集まるとは思わなかったからな。だがやるしかないだろ」
俺たちは覚悟を決めて集まった冒険者たちの前に立つ。
「初めまして。ギルド、フリーダムのギルドマスターの鬼瓦仁だ。冒険者ランクはBランクだ。それじゃまずはギルドメンバーの自己紹介からするとしよう」
そう言って俺は一番右端にいるヘレンに視線を向けた。
ヘレンも気づいたのか直ぐに口を開いた。
「ヘレン・ボルティネ。Aランク冒険者なのだ。よろしくなのだ!」
うん、相変わらず短いな。
次に喋り出したのはヘレンの隣、つまり俺の隣にいる影光だ。
「拙者は藤堂影光。冒険者ランクはSランクだ。この中には顔見知りも数人いるようだが、それで贔屓にしたりはしない。それだけは覚えておいて欲しい」
ま、影光らしい挨拶だな。
んで、次は俺の左となりに立つアインだ。
「アインです。冒険者ランクはBランク。先に言っておきますが、私のマスターは隣のアホではなく、私が抱き抱えているのがマスターなので間違えないようお願いします」
ま、よく間違われるからな。
で、最後は左端のグリードだ。
「グリード・クレムリンです!ぼ、冒険者ランクはEランクです!よ、よよ、よろしくお願いします!」
そこまで緊張することもないだろ。
そう思いながら俺は口を開いた。
「さて、これより試験を行うわけだが、その前に全員履歴書は持ってきたな。その履歴書を男はグリードに。女はヘレンに渡しておいてくれ。試験内容は全員が渡し終えてから説明する。それじゃ行動開始」
俺の言葉と同時に全員が履歴書を渡していく。
男女の割合で言えば男が6割、女が4割と言ったところだろう。
5分で全員が履歴書を渡し終える。
「それじゃ実技試験を行う。実技試験は1対1で、制限時間は10分。二試合同時に行う。お前たちの実力を見たいから受験者同士の戦闘ではなく、俺たちと戦ってもらう」
その言葉に訓練所内がざわめきだす。別に驚く事じゃないだろ。実力を知るには戦ってみるがの一番だからな。
「ただし、今回実技試験の相手をするのは俺、影光、アインの3名だけだ。ヘレンとグリードの2人は戦わないからそのつもりで。それじゃ――」
「ちょっと良いか?」
手を挙げて質問してきたのはタバコを咥え、背中には大きな鞄を背負う男だった。年齢からして影光と同じぐらいだろう。
「なんだ?」
「幾つか質問したいんだが構わないか?」
「良いぞ」
「実技試験の内容は分かったが、どうやって順番を決めるんだ?」
「それは俺たちで決める。お前たちから受け取った履歴書から適当に一枚抜く。そいつが実技試験を受ける受験者だ」
「なら試験官はどうするんだ?」
「お前たちで選べば良い。それだけか?」
「ああ、その通りだ」
まったく人の話が終わる前に質問なんかしてくるなよな。
そう思いながら俺は男性と女性の方から一枚引いた。
「まずは男の方から、ドリス・ハイト。女、シャンティー・ハント」
これまた苗字が似た2人だな。
そう思っていると名前を呼ばれた2人が俺たちの前までやってきた。
「それじゃ指名してくれ」
俺の言葉に受験者たちは困惑する。どうせ同じ相手を指名したらとか考えてるんだろうけど。それに関してもちゃんと考えがある。
「早く選べ」
そして選んだ相手は、2人とも俺だった。
その瞬間、受験者たちからざわめき出す。
それに対してフリーダムメンバーはと言うと。
「仁、人気者だな」
「運の良い人ですね」
「はいはい」
まったく好き勝手に言ってくれる。
そう思いながら俺は訓練所中央へと移動する。あれ?2人がついてこない。
「何してるんだ?試験を開始するぞ」
「お、おい!まさか2人同時に戦うなんて言わないよな?」
「そのつもりだが?何か問題でもあるのか?」
「言っておくが俺はAランクの冒険者だ。こっちのシャンティーも同じAランクだ。Bランクのお前が2人相手にして戦えるとは思えないが?」
もしかしてコイツ、相手の実力が見極めれないのか?
この瞬間、ドリス・ハイトは不合格に一歩近づいた。完全に不合格じゃないのは戦って実力を見てないからだ。
もしかしたら本当は強いのかもしれないしな。
「別に戦いたくないなら構わないが、その時は不合格になるが良いんだな?」
「チッ分かったよ!」
「負けたからって私たちのせいにしないでよね」
「はいはい」
このシャンティーって女もドリスと一緒だな。
この訓練所は入り口の壁だけ二重になっている。その理由は模擬戦で銃を使う場合観戦している連中に当たる危険性があるからだ。そのため、内側の壁は防弾の透明な分厚い壁となっている。
影光たちや受験者たちがそこに移動した事を確認した俺は合図を出す。
「それじゃ……試合開始!」
俺の言葉と同時に2人が愛用の武器で攻撃してきた。
ドリスの武器は魔導短機関銃。シャンティーは魔導拳銃の両手持ちだ。
2人ともそこそこの命中精度は持っているな。肉体強化魔法も使って身体能力も向上させているし、何より相手の動きを見て攻撃してくる。実戦経験が豊富な事が窺えるが、それだけだ。
ただ戦ってきただけで相手の実力を見極められていない。
その証拠に俺は0.5%の力で戦っている。
まさか1%未満で戦う羽目になるとは思っていなかったが、受けてくる受験者は色々だからな。
俺は影光たちに視線を向けると、向こうが頷いた。どうやら結果が出たようだな。
1人が戦っている間に戦っていないギルドメンバーが受験者たちの実力を見て判断するようにしているのだ。
終わった事だし、終わらせるか。
俺は2%まで力を解放して2人を気絶させた。
「これで終わりと」
そんな俺の姿に受験者たちは驚愕の表情を浮かべ、影光たちは当然と言わんばかりに笑みを浮かべていた。ま、ギルドマスターが負けるようでは舐められるからな。
気絶した2人を壁際まで運んで放置する。そのうち目を覚ますだろ。
「それじゃ、次の受験者を選ぶぞ」
俺はそう言って男女の履歴書から選ぶ。
そのあと、実技試験は滞りなく進んだ。
影光の知り合いと言う事もあり、そこそこ実力のある奴が数名居た。これは面接で決まるな。
ただ不満があるとすれば、最初以降俺に戦いを挑んでくる奴が居なかったと言う事だ。
影光に質問するとどうやら俺の戦い方に恐怖を覚えたそうだ。別に非道な事はした覚えはないんだが。
こうして2時間で実技試験は終わった。
「これより、面接を行う。面接は別室で1人ずつ行う。順番はこちらで適当に選んで名前を呼ぶからそれまでは待機とする。その間に昼飯を食べても良いが、ゴミは自分たちで処理しろよ」
そう言って俺、影光、アインはエレベーターに乗って地上へと戻った。
面接は2階のフロアで行う。
この部屋はまだ何も無い。と言うかお金がないから物が置けないのだ。ギルドの部屋として使うつもりなんだけどね。
で、今回のために俺、影光、アインが座る椅子にテーブルを挟んで反対側に受験者が座る椅子が1つ置かれているだけだ。うん、適当だ。
面接の流れは、地下の訓練所に残したグリード、ヘレンの2人のどちらかに連絡して受験者に来てもらうと言う仕組みだ。
「それじゃ始めるか」
俺はグリードに連絡して1人目の受験者を呼ぶ。
数分して1人の男性がやって来た。
男の名前はグローサ・デルメイユ。
Aランクの冒険者で武器はM16に似た魔導小銃。
魔法属性は土。魔力量は常人より少し多め。
履歴書には冒険者になって一度もどこのギルドにも所属していないと書いてある。
で、この男が最初に質問してきた奴だ。
因みに実技試験では影光と戦って負けた。最初は確かに良い戦いをしていた。実力もある。きっと今のグリードではギリギリ勝てるかどうかと言ったところだろう。
グローサは椅子に座ると脚を組んだ。これが日本での入社試験なら即失格だな。ま、俺は気にしないけど。
「それじゃ、いくつか質問する。どうしてこのギルドに入ろうと思ったんだ?」
「そんなのカゲミツさんがいるからに決まってるだろ」
「影光に憧れてやって来た事か?」
「そうさ。でなければこんな弱小ギルドに誰が入るかよ」
うん、とても正直でよろしい。
そして俺の怒りゲージを溜めるのが上手だな。
「次の質問だ。お前にとって仲間とはなんだ?」
「悪いが、仲間なんて要らない。俺はこれまで1人でやってきたからな。依頼受けて金さえ貰えればそれで良い」
「そうか」
うん、なんて自己中なんだ。アインよりも酷いぞ。
ま、仕事人って感じもしないでもないけどな。仲間なんて必要なく己の実力だけで戦うって感じだしな。
「分かった。面接は以上だ。合格は全員の面接が終わってから訓練所で発表する。待てないようなら帰って貰っても良いが、その時は不合格とさせて貰う」
「分かったよ」
そう言うとグローサは出て行った。もう少しコミュニケーションが取れる男かと思っていたが、全然違ったな。
俺は両隣に座る影光とアインに聞いてみる。
「で、どうだった?」
「そんなの決まってます」
「仁も同じであろう」
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