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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第六十七話 銀髪の吸血鬼少女 ①
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「なら単体の場合は?例えばドラゴンが襲来した時とか」
「その場合はAランク以上の冒険者によって討伐隊が組まれる事になるね。勿論帝国軍も出動するけど帝国軍の半数は一般市民の非難誘導の任務になるから。で、Eランク~Bランクの冒険者は帝国軍と一緒に避難誘導に当たって貰う事になるよ」
ま、確かにそうだろうな。だが色々と疑問な点がある。
さっき例えでドラゴンを出したが必ずしも単体で来るとは限らない。そうなった場合はどうするのとか。とか、高ランクの冒険者が帝都から離れて居ない場合とか色々と考えられる事はある。
だがここでウィネットに質問攻めしたところで不機嫌になるだけだろうな。その証拠にウィネットの表情が徐々に険しくなっているしな。
「他に分からない事があるなら、この冒険者規則事項を読んで確かめておいてね」
そう言って辞書並みに厚い本をテーブルに置く。
これを全部読めってか。流石に無理だ。漫画やラノベが好きでそれなりに本を読んでいた俺だけど、この本を読もうとは思わない。ま、気になった事だけ調べれば良いか。
「それとBランクの冒険者はこれまでとは違い、立ち入りが禁止されていた場所にも入ることが認められるようになるから」
「禁止されている場所?例えばどこだ?」
「立ち入り制限のあるダンジョンや遺跡だね。それと禁止区域と呼ばれる場所も入れるよ。勿論一部だけど」
ダンジョンってまさかゲームやラノベの世界にしかないようなの単語が出てくるとは思わなかったぞ。
まさかこの世界にもダンジョンみたいなファンタジー要素があるとは思わなかった。いや、この世界は前世と比べれば十分ファンタジー世界だな。5年以上も居ると流石に忘れそうになる。
「あとはここから北北東に1200キロ行った場所にあるオリフィス大森林とかかな。この全てに生息する魔物のランクがBランク以上と危険な場所だからね。だからCランクと言えど立ち入りを禁止してるんだ」
「なるほどね」
調子に乗って死なれたら困るからだろうな。
ま、その分報酬も高いんだろうけど。
「話を以上だよ。他に知りたいこととかない?」
言葉と表情が全然あってないな。何も無いって言え!って顔になってるぞ。
内心嘆息しながら俺は何も無いって答えた。
「それじゃ僕はこれで失礼するよ。受付で冒険者免許書の更新をしてから帰ってね」
最後に注意を述べてからウィネットは出て行った。
アイツは間違いなく出世出来ないタイプだな。
普段はポーカーフェイスだが苛立つと顔に出るタイプみたいだからな。
コーヒーを飲み干した俺は影光とアインの2人と一緒にミキの所へ向かった。
「ミキ、ギルドカードの更新を頼む」
「分かったわ」
そう言って俺たちはギルドカード、いや冒険者免許書をミキに渡す。
それにしてもややこしいな。ギルドカードでも通用はするみたいだが、それだとフリーダムのカードって勘違いされそうだ。誰だよ冒険者免許書の別名をギルドカードって決めた奴は。
冒険者免許書の更新を終えた俺たちは冒険者組合を出た。
時刻にして11時51分。そこまで動いたわけでもないが久々に全員で外食するのも良いかもしれないな。
そう思った俺はさっそく2人に提案してみる事にした。
「なぁもうお昼になるし、ここら辺で昼食にしないか?」
「拙者は別に構わないぞ」
「それは誰持ちですか?」
「勿論フリーダム持ち」
「では、今すぐ向かいましょう。この近くにマスターもOKな飲食店があります」
アイン、俺が質問すると同時に脳内ネットワークで調べていただろ。
サイボーグの癖に財布の紐はしっかり締めやがって。そんなんじゃモテないぞ。いや、こいつの場合モテたいないんて微塵も考えてないんだろうな。フリーダムの経費で落とすから別に構わないど。
昼飯にすることに決めた俺たちはアインの脳内ネットワークで見つけた飲食店に向かうことにした。
帝都で最も人通りの多いと言われているこの13区は飲食店もかなりの数が立ち並んでいる。
大半が色々な企業の会社なわけだが、それでも飲食店だけでなく、スポーツ商品や電化製品を販売しているお店だってある。
高価なブランドのお店となると8区に行かないとないけど。
因みにこの国はカジノを合法的にOKしている国だ。だから7区はカジノのお店ばかりが立ち並んでいる。アメリカのラスベガスみたいなところだ。
俺も行ってみたいがジュリアスとのポーカー対決を思い出すと破産しそうなのでやめて置く。と言うか俺以前にアインは出入り禁止な気がする。
だって監視カメラにハッキングして覗き見が出来る奴なんだぞ。どう推測しても銀のためにって考えでカジノのセキュリティーをハッキングしそうな予感がある。
ま、そんな事は置いといて、人通りが多いこの13区はそれだけ人がいるわけで、この時間帯はどこのお店も満席になる可能性が高いわけだ。
だから俺たちは早く向かうために路地裏を通ってお店に向かっていたわけなんだが、俺たちは現在問題に直面していた。
『オニガワラ・ジンハ、タオレテイルショウジョヲハッケンシマシタ』
アイン、なんだその昔のファンタジーゲームのようなセリフは。
それよりもアインが言ったように俺たちの前にはうつ伏せで倒れている少女が居た。
『1、助ける。2、見捨てる。3、殺す!』
「おい、待て!どう考えても3だけ悪意を感じるんだが!」
今のコマンド表示は絶対にカタカナじゃなくて普通に日本語だったに違いない。
「では4に、レイプしてから殺す。を追加しますか?」
「なんで俺に聞く!?俺はプロデューサーでもシナリオライターでもないぞ!いや、そんな事じゃなくてお前はどんだけ俺に恨みがあるんだ?」
「今すぐ殺したいほどにあります」
うん、よく分かった。
気を持たないアインだけどその表情を見ればすぐに分かったよ。
「それよりもジン、この娘どうするんだ?」
「どうするって言われてもな……」
見捨ててもしも死なれたら夢見が悪くなりそうだしな。だからと言って助けたら絶対に面倒事に巻き込まれそうな気がするしな。
だってそうだろ。現代の日本よりも少し最先端なこの世界で倒れていたらどう考えても面倒事が待っているに違いない。
ああ、ほら見えてきたよ。
面倒事が手招きしてるのがもう見えてきちゃったよ。
「はぁ……」
俺は覚悟を決めて嘆息しながらも倒れている銀髪少女へと近づき持ち上げる。外見からして年齢は11、2歳と言ったところだろう。
「なるほど、持ち帰ってレイプするわけですね。流石の私でもその考えはありませんでした。さすがは世界一のクズ」
「どうしてお前はそんな発想しか出来ないんだよ!普通にギルドに運んで看病するだけだ」
「大人の看病プレーですか。なんてマニアックな。やはり世界一の変態野郎ですね」
「お前の思考のほうがよっぽと変態だ!」
ったくこいつと話していると疲れる。
え?看病プレーに興味はないのかって?それに関してはノーコメントでお願いします。と言うよりも看病プレーなのかは微妙だがそれに似たプレーならスヴェルニ学園に在学中の時にしたぞ。
「ほら、これで飯でも食べて帰って来い。俺は一足先にギルドに戻ってるから」
「分かりました。あとはお楽しみください」
別にお金で買収した覚えは無いぞ。
それよりも平然とお金を取って見なかった事にしたお前の方がよっぽど心配なんだが。
そこで俺は路地で影光たちと別れてギルドに戻ってきた。
本当は助けるつもりなんて無かった。
だがその時俺自身もイザベラに助けられた事がある事を思い出した。それも路地裏なんかじゃなく禁止区域の中でだ。
どうみても警戒しなければならないのにも拘らずイザベラは助けてくれたのだ。
だったら俺も助けるしかないだろ。
そう思った時には俺はこの子を助けていた。
3階のリビングのソファーで寝かせた俺は彼女が目を覚ます間適当に時間を潰しながらその時を待つ。
中々目を覚まさないので近くのコンビニでおにぎりやお茶などを買ってきて昼食にすることにした。クソッきっとアインたちはもっと美味い物食べてるんだろうな。
グゥ~。
おにぎいを食べていると何やら聞いたことがあるような無いような音が聞こえてくる。
グゥ~。
まただ。
俺はそう思って音が出ている方へと視線を向けると、俺のとなりで寝ている銀髪少女からだった。
まさかと思い新しいおにぎりを少女の鼻に近づける。
「っ!ハグッハグッハグッ!」
パッと目を開けるなり手に持っていたおにぎりを奪って頬張りだす。そんなに腹が減っていたのか。
そんな彼女の眼は紅く輝いき、その瞳は獣と同じ縦長だった。もしもこの眼がラノベや漫画、アニメと一緒なのであれば彼女の種族は吸血鬼なのだろう。
だが俺が一番印象的だったのは紅く輝く右眼ではなく、左目の方だ。
どうしてかは分からないが彼女の左は黒い眼帯で覆われていたからだ。
そう言えば冒険者試験で一緒だったジュディーも眼帯をしていたな。まさかこんなにも早く2人目の中二病の女子に出くわすとは思わなかったぞ。
「~っ!」
トントントン!
「ほれ、お茶」
ったく喉に詰まるほど慌てて食べるなよな。
それから俺は彼女が満足するまで食べさせた。
念のためにと買っておいたおにぎり20個と弁当10個が僅か20分足らず消えるのを見て驚いたがどうにか満足したようだ。
「ぷはっ!食べた食べた。こんなに食べたのは一ヶ月ぶりなのだ!」
そりゃあそうだろうよ。あれだけ食べて満足しないなんてもはや化け物だろ。それよりもそんな細い体のどこにあれだけの量が収まったのか気になるぐらいだ。
いや、今はそれよりも。
「それでお前は誰なんだ?」
「そう言うお前は誰なのだ?」
俺の問い掛けに銀髪少女は自分の指に付着した塩気を舐め取りながら同じ言葉で問い返して来た。
ま、相手に質問する時は自分から名乗るのが礼儀ってものだし別に構わないが。
「俺の名前は仁。鬼瓦仁。ギルドフリーダムのギルドマスターをしている。で今俺たちが居るのが拠点のギルドだ。でお前は誰なんだ?」
一通りの説明も踏まえて自己紹介をした俺は改めて銀髪少女に自己紹介を求めてた。
「私の名前はヘレン・ボルティネ。年齢は22歳。種族は見ての通り吸血鬼なのだ!」
ま、その長い犬歯と紅の瞳を見れば吸血鬼だと分かるよな。
「って待て。22歳だと。どうみても俺よりも年下にしか見えないぞ」
確かにこれまで外見に比べて若く見えた奴に何人か会ってはいるがここまで見た目と年齢が合わない奴に会うのは初めてだ。まさしく合法ロリと言うべき存在と言えよう。ま、俺はロリコンじゃないけど。
「吸血鬼は不老だからな。人間よりも肉体成長が遅いのだ。成人の見た目になるまであと14年は掛かるのだ」
つまり人間の成人が18歳で、吸血鬼は倍の36歳。なら今の年齢を人間で言うところの11歳って事か。
それなら見た目相応と言っても良いのかもしれないが、それでもまだ違和感が残る。
いや、それよりもだ。
「どうしてあんた所で倒れていたんだ?」
「空腹で気を失ったのだ!」
無い胸を張って自慢することじゃないだろ。
それよりもまさか俺と同じ理由で倒れている奴を発見するとは思わなかったぞ。この世界は地球に比べて空腹で行き倒れたりする奴の確率が高いのか?
「ならどうして行き倒れなんかになったんだ?」
「それは……言いたくないのだ」
先ほどまで自身に満ち溢れていたとは思えないほど暗く悲しげな表情になる。いったいコイツに何があったって言うんだ。
今すぐ放り出して面倒事のフラグを回避したいところだが、もう手遅れな気もする。
「まぁ言いたくないのなら言わなくても良い。それよりも行く宛てはあるのか?」
「な、無いのだ……」
そうだろうな。でなきゃあんな所で行き倒れている訳がないもんな。
仕方がない。ここまで助けて見捨てるのは目覚めが悪いしな、最後まで面倒見るか。
「なら少しだけの間ならここに居ても良いぞ」
「本当なのか!?」
さっきと打って変わって太陽のように嬉しそうな表情で問うてくる。
表情豊かな奴だな。だけど絶対ギャンブルは向いてないだろうな。ポーカーフェイスが一切出来ない奴だろうし。まずポーカーフェイスって言葉を知っているのかも怪しいぐらいだ。
「ああ。ただし自分の食扶ちぐらいは働いて貰うからな」
「それなら問題ないのだ!こう見えて私はAランクの冒険者だからな!」
「え、ウソだろ」
「本当だぞ。ほら」
そう言って冒険者免許書を見せてくる。
本当だ。しかもAランクって書いてある。
まさかこんな子供にランク負けしているなんて思わぬ衝撃が心に響く。
「どうかしたのか?」
「い、いやなんでもない」
どうにか平常心に戻った俺はお茶を飲んで一息入れる。
まずはこの後の事だな。
影光とアインに紹介して。いや、アイツ等が帰って来る前に部屋だけで案内しておくべきか?ベッドが無いんだから教えたところで意味がないな。
なら今日はここで寝て貰って明日ベッドを買いに行くとするか。
いや、それならまずする事は、
「ヘレンは今後どうするんだ?」
「別に目的は無いのだ」
それは俺にとっても都合が良い。
「なら俺たちのギルドに入らないか?」
「良いのか!?」
「ああ、Aランクのヘレンなら大歓迎だ」
「やったーなのだ。なら入るのだ!」
こうして俺は新しいギルドメンバーを手に入れた。
思わぬところで即戦力が手に舞い込んで来たな。
「その場合はAランク以上の冒険者によって討伐隊が組まれる事になるね。勿論帝国軍も出動するけど帝国軍の半数は一般市民の非難誘導の任務になるから。で、Eランク~Bランクの冒険者は帝国軍と一緒に避難誘導に当たって貰う事になるよ」
ま、確かにそうだろうな。だが色々と疑問な点がある。
さっき例えでドラゴンを出したが必ずしも単体で来るとは限らない。そうなった場合はどうするのとか。とか、高ランクの冒険者が帝都から離れて居ない場合とか色々と考えられる事はある。
だがここでウィネットに質問攻めしたところで不機嫌になるだけだろうな。その証拠にウィネットの表情が徐々に険しくなっているしな。
「他に分からない事があるなら、この冒険者規則事項を読んで確かめておいてね」
そう言って辞書並みに厚い本をテーブルに置く。
これを全部読めってか。流石に無理だ。漫画やラノベが好きでそれなりに本を読んでいた俺だけど、この本を読もうとは思わない。ま、気になった事だけ調べれば良いか。
「それとBランクの冒険者はこれまでとは違い、立ち入りが禁止されていた場所にも入ることが認められるようになるから」
「禁止されている場所?例えばどこだ?」
「立ち入り制限のあるダンジョンや遺跡だね。それと禁止区域と呼ばれる場所も入れるよ。勿論一部だけど」
ダンジョンってまさかゲームやラノベの世界にしかないようなの単語が出てくるとは思わなかったぞ。
まさかこの世界にもダンジョンみたいなファンタジー要素があるとは思わなかった。いや、この世界は前世と比べれば十分ファンタジー世界だな。5年以上も居ると流石に忘れそうになる。
「あとはここから北北東に1200キロ行った場所にあるオリフィス大森林とかかな。この全てに生息する魔物のランクがBランク以上と危険な場所だからね。だからCランクと言えど立ち入りを禁止してるんだ」
「なるほどね」
調子に乗って死なれたら困るからだろうな。
ま、その分報酬も高いんだろうけど。
「話を以上だよ。他に知りたいこととかない?」
言葉と表情が全然あってないな。何も無いって言え!って顔になってるぞ。
内心嘆息しながら俺は何も無いって答えた。
「それじゃ僕はこれで失礼するよ。受付で冒険者免許書の更新をしてから帰ってね」
最後に注意を述べてからウィネットは出て行った。
アイツは間違いなく出世出来ないタイプだな。
普段はポーカーフェイスだが苛立つと顔に出るタイプみたいだからな。
コーヒーを飲み干した俺は影光とアインの2人と一緒にミキの所へ向かった。
「ミキ、ギルドカードの更新を頼む」
「分かったわ」
そう言って俺たちはギルドカード、いや冒険者免許書をミキに渡す。
それにしてもややこしいな。ギルドカードでも通用はするみたいだが、それだとフリーダムのカードって勘違いされそうだ。誰だよ冒険者免許書の別名をギルドカードって決めた奴は。
冒険者免許書の更新を終えた俺たちは冒険者組合を出た。
時刻にして11時51分。そこまで動いたわけでもないが久々に全員で外食するのも良いかもしれないな。
そう思った俺はさっそく2人に提案してみる事にした。
「なぁもうお昼になるし、ここら辺で昼食にしないか?」
「拙者は別に構わないぞ」
「それは誰持ちですか?」
「勿論フリーダム持ち」
「では、今すぐ向かいましょう。この近くにマスターもOKな飲食店があります」
アイン、俺が質問すると同時に脳内ネットワークで調べていただろ。
サイボーグの癖に財布の紐はしっかり締めやがって。そんなんじゃモテないぞ。いや、こいつの場合モテたいないんて微塵も考えてないんだろうな。フリーダムの経費で落とすから別に構わないど。
昼飯にすることに決めた俺たちはアインの脳内ネットワークで見つけた飲食店に向かうことにした。
帝都で最も人通りの多いと言われているこの13区は飲食店もかなりの数が立ち並んでいる。
大半が色々な企業の会社なわけだが、それでも飲食店だけでなく、スポーツ商品や電化製品を販売しているお店だってある。
高価なブランドのお店となると8区に行かないとないけど。
因みにこの国はカジノを合法的にOKしている国だ。だから7区はカジノのお店ばかりが立ち並んでいる。アメリカのラスベガスみたいなところだ。
俺も行ってみたいがジュリアスとのポーカー対決を思い出すと破産しそうなのでやめて置く。と言うか俺以前にアインは出入り禁止な気がする。
だって監視カメラにハッキングして覗き見が出来る奴なんだぞ。どう推測しても銀のためにって考えでカジノのセキュリティーをハッキングしそうな予感がある。
ま、そんな事は置いといて、人通りが多いこの13区はそれだけ人がいるわけで、この時間帯はどこのお店も満席になる可能性が高いわけだ。
だから俺たちは早く向かうために路地裏を通ってお店に向かっていたわけなんだが、俺たちは現在問題に直面していた。
『オニガワラ・ジンハ、タオレテイルショウジョヲハッケンシマシタ』
アイン、なんだその昔のファンタジーゲームのようなセリフは。
それよりもアインが言ったように俺たちの前にはうつ伏せで倒れている少女が居た。
『1、助ける。2、見捨てる。3、殺す!』
「おい、待て!どう考えても3だけ悪意を感じるんだが!」
今のコマンド表示は絶対にカタカナじゃなくて普通に日本語だったに違いない。
「では4に、レイプしてから殺す。を追加しますか?」
「なんで俺に聞く!?俺はプロデューサーでもシナリオライターでもないぞ!いや、そんな事じゃなくてお前はどんだけ俺に恨みがあるんだ?」
「今すぐ殺したいほどにあります」
うん、よく分かった。
気を持たないアインだけどその表情を見ればすぐに分かったよ。
「それよりもジン、この娘どうするんだ?」
「どうするって言われてもな……」
見捨ててもしも死なれたら夢見が悪くなりそうだしな。だからと言って助けたら絶対に面倒事に巻き込まれそうな気がするしな。
だってそうだろ。現代の日本よりも少し最先端なこの世界で倒れていたらどう考えても面倒事が待っているに違いない。
ああ、ほら見えてきたよ。
面倒事が手招きしてるのがもう見えてきちゃったよ。
「はぁ……」
俺は覚悟を決めて嘆息しながらも倒れている銀髪少女へと近づき持ち上げる。外見からして年齢は11、2歳と言ったところだろう。
「なるほど、持ち帰ってレイプするわけですね。流石の私でもその考えはありませんでした。さすがは世界一のクズ」
「どうしてお前はそんな発想しか出来ないんだよ!普通にギルドに運んで看病するだけだ」
「大人の看病プレーですか。なんてマニアックな。やはり世界一の変態野郎ですね」
「お前の思考のほうがよっぽと変態だ!」
ったくこいつと話していると疲れる。
え?看病プレーに興味はないのかって?それに関してはノーコメントでお願いします。と言うよりも看病プレーなのかは微妙だがそれに似たプレーならスヴェルニ学園に在学中の時にしたぞ。
「ほら、これで飯でも食べて帰って来い。俺は一足先にギルドに戻ってるから」
「分かりました。あとはお楽しみください」
別にお金で買収した覚えは無いぞ。
それよりも平然とお金を取って見なかった事にしたお前の方がよっぽど心配なんだが。
そこで俺は路地で影光たちと別れてギルドに戻ってきた。
本当は助けるつもりなんて無かった。
だがその時俺自身もイザベラに助けられた事がある事を思い出した。それも路地裏なんかじゃなく禁止区域の中でだ。
どうみても警戒しなければならないのにも拘らずイザベラは助けてくれたのだ。
だったら俺も助けるしかないだろ。
そう思った時には俺はこの子を助けていた。
3階のリビングのソファーで寝かせた俺は彼女が目を覚ます間適当に時間を潰しながらその時を待つ。
中々目を覚まさないので近くのコンビニでおにぎりやお茶などを買ってきて昼食にすることにした。クソッきっとアインたちはもっと美味い物食べてるんだろうな。
グゥ~。
おにぎいを食べていると何やら聞いたことがあるような無いような音が聞こえてくる。
グゥ~。
まただ。
俺はそう思って音が出ている方へと視線を向けると、俺のとなりで寝ている銀髪少女からだった。
まさかと思い新しいおにぎりを少女の鼻に近づける。
「っ!ハグッハグッハグッ!」
パッと目を開けるなり手に持っていたおにぎりを奪って頬張りだす。そんなに腹が減っていたのか。
そんな彼女の眼は紅く輝いき、その瞳は獣と同じ縦長だった。もしもこの眼がラノベや漫画、アニメと一緒なのであれば彼女の種族は吸血鬼なのだろう。
だが俺が一番印象的だったのは紅く輝く右眼ではなく、左目の方だ。
どうしてかは分からないが彼女の左は黒い眼帯で覆われていたからだ。
そう言えば冒険者試験で一緒だったジュディーも眼帯をしていたな。まさかこんなにも早く2人目の中二病の女子に出くわすとは思わなかったぞ。
「~っ!」
トントントン!
「ほれ、お茶」
ったく喉に詰まるほど慌てて食べるなよな。
それから俺は彼女が満足するまで食べさせた。
念のためにと買っておいたおにぎり20個と弁当10個が僅か20分足らず消えるのを見て驚いたがどうにか満足したようだ。
「ぷはっ!食べた食べた。こんなに食べたのは一ヶ月ぶりなのだ!」
そりゃあそうだろうよ。あれだけ食べて満足しないなんてもはや化け物だろ。それよりもそんな細い体のどこにあれだけの量が収まったのか気になるぐらいだ。
いや、今はそれよりも。
「それでお前は誰なんだ?」
「そう言うお前は誰なのだ?」
俺の問い掛けに銀髪少女は自分の指に付着した塩気を舐め取りながら同じ言葉で問い返して来た。
ま、相手に質問する時は自分から名乗るのが礼儀ってものだし別に構わないが。
「俺の名前は仁。鬼瓦仁。ギルドフリーダムのギルドマスターをしている。で今俺たちが居るのが拠点のギルドだ。でお前は誰なんだ?」
一通りの説明も踏まえて自己紹介をした俺は改めて銀髪少女に自己紹介を求めてた。
「私の名前はヘレン・ボルティネ。年齢は22歳。種族は見ての通り吸血鬼なのだ!」
ま、その長い犬歯と紅の瞳を見れば吸血鬼だと分かるよな。
「って待て。22歳だと。どうみても俺よりも年下にしか見えないぞ」
確かにこれまで外見に比べて若く見えた奴に何人か会ってはいるがここまで見た目と年齢が合わない奴に会うのは初めてだ。まさしく合法ロリと言うべき存在と言えよう。ま、俺はロリコンじゃないけど。
「吸血鬼は不老だからな。人間よりも肉体成長が遅いのだ。成人の見た目になるまであと14年は掛かるのだ」
つまり人間の成人が18歳で、吸血鬼は倍の36歳。なら今の年齢を人間で言うところの11歳って事か。
それなら見た目相応と言っても良いのかもしれないが、それでもまだ違和感が残る。
いや、それよりもだ。
「どうしてあんた所で倒れていたんだ?」
「空腹で気を失ったのだ!」
無い胸を張って自慢することじゃないだろ。
それよりもまさか俺と同じ理由で倒れている奴を発見するとは思わなかったぞ。この世界は地球に比べて空腹で行き倒れたりする奴の確率が高いのか?
「ならどうして行き倒れなんかになったんだ?」
「それは……言いたくないのだ」
先ほどまで自身に満ち溢れていたとは思えないほど暗く悲しげな表情になる。いったいコイツに何があったって言うんだ。
今すぐ放り出して面倒事のフラグを回避したいところだが、もう手遅れな気もする。
「まぁ言いたくないのなら言わなくても良い。それよりも行く宛てはあるのか?」
「な、無いのだ……」
そうだろうな。でなきゃあんな所で行き倒れている訳がないもんな。
仕方がない。ここまで助けて見捨てるのは目覚めが悪いしな、最後まで面倒見るか。
「なら少しだけの間ならここに居ても良いぞ」
「本当なのか!?」
さっきと打って変わって太陽のように嬉しそうな表情で問うてくる。
表情豊かな奴だな。だけど絶対ギャンブルは向いてないだろうな。ポーカーフェイスが一切出来ない奴だろうし。まずポーカーフェイスって言葉を知っているのかも怪しいぐらいだ。
「ああ。ただし自分の食扶ちぐらいは働いて貰うからな」
「それなら問題ないのだ!こう見えて私はAランクの冒険者だからな!」
「え、ウソだろ」
「本当だぞ。ほら」
そう言って冒険者免許書を見せてくる。
本当だ。しかもAランクって書いてある。
まさかこんな子供にランク負けしているなんて思わぬ衝撃が心に響く。
「どうかしたのか?」
「い、いやなんでもない」
どうにか平常心に戻った俺はお茶を飲んで一息入れる。
まずはこの後の事だな。
影光とアインに紹介して。いや、アイツ等が帰って来る前に部屋だけで案内しておくべきか?ベッドが無いんだから教えたところで意味がないな。
なら今日はここで寝て貰って明日ベッドを買いに行くとするか。
いや、それならまずする事は、
「ヘレンは今後どうするんだ?」
「別に目的は無いのだ」
それは俺にとっても都合が良い。
「なら俺たちのギルドに入らないか?」
「良いのか!?」
「ああ、Aランクのヘレンなら大歓迎だ」
「やったーなのだ。なら入るのだ!」
こうして俺は新しいギルドメンバーを手に入れた。
思わぬところで即戦力が手に舞い込んで来たな。
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この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
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目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
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こうして彼の転生生活が幕を開けた。
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