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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第六十六話 Bランク昇級試験 下
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「何よこの子。どこまで自信家なの。ここまでくればもう傲慢よね」
人を傲慢とは随分と酷い言われようですね。
ですが最高傑作である私が傲慢であろうとそれは当然の事であり、許される事です。なぜなら私は最高傑作の戦闘メイドなのですから。
「さて、時間が掛かりましたね。早く終わらさなければマスターに迷惑が掛かります」
「へぇ~傲慢な癖にあの成年には心を許しているのね」
「何を戯けた事を言っているのですか?あんな蛆虫以下の存在であるあの男が私のマスターなわけ無いでしょ」
「え?でもあの成年が貴方たちのギルドマスターよね?」
何故困惑の表情を浮かべているのですか。見れば分かるでしょ。だれがあんな畜生以下の存在をマスターにしたがりますか。
と言うよりもどうして分からないのでしょうか。やはり露出性癖女は男を誑かす事にしか興味が無いようですね。
「私のマスターはあの蛆虫の腕の中で寝ていらっしゃるお方です」
「え、それってあの銀色の魔狼の事?」
「そうです。それとあんな脳がスポンジで出来た野良犬とマスターを一緒にしないで下さい!」
まったく高貴な存在であらせられるマスターをあのような野良犬と見間違えるなんて万死に値しますね。
「露出性癖女」
「え?それって私の事?」
「貴方以外に誰が居るのですか?それとも痴女と呼んだ方が嬉しいのですか?分かりましたではこれはらは痴女と呼ぶ事にしますね」
「そんなわけないでしょ!」
「おや、そうですか。いえ、そんな話がしたいわけではありません。貴方は運が良いです」
「運が良い?」
やはりただの痴女ですね。
私が言いたい事が理解できずに首を傾げるなんて、貴方こそ脳みそがスポンジで出来ているんじゃないんですか?
「はい、これが昇級試験で本当に運が良いです。どれだけ撃たれようとも死ぬことは無いのですから」
「何を馬鹿な事を言って――っ!」
「おや、私の魔力が感じられるようですね」
「何よ………この魔力。本当に貴方人間なの?」
怯えた声で痴女はゆっくりと後方へと下がる。
「そんな事痴女である貴方には関係あいりません」
会話で時間稼ぎしようとしても無駄ですから。
そう心の中で呟いた私はソコソコ本気を出して痴女の背後に回りこむ。
「マスターを侮辱した罪。その身をもって味わいなさい」
私はそう呟いてトリガーを引こうとした。
「そこまで!」
女にしては少し低めの声の持ち主が試験終了の合図を宣言する。確か冒険者組合の人間でしたね。
それよりも問題なのは。
「いい加減離してくれませんか?」
気が付けば私は地面に叩き付けられ身動きが取れない状態にされていた。
それをしたのは私がこの世でもっとも嫌う蛆虫にだ。
まさかこの私が蛆虫以下の存在に地面に叩き付けられるなんて屈辱です。
「お前がフローネさんを殺そうとしないと口にするならな」
「あの痴女はマスターを侮辱したのですよ」
「だとしてもだ。お前がアソコで引き金を引けば間違いなくお前は逮捕されていた。そうなれば誰が銀の世話をするんだ?」
「この私が逮捕されるとでも」
「お前の力なら脱走ぐらい出来るだろうよ。だけどお前はマスターである銀にも迷惑を掛けるつもりか。周りの連中にお前のメイドは犯罪者って言われたいのか?」
「そ、それは……」
「それに銀を見てみろ。全然気にしてないだろうが。マスターである銀が気にしてないのにお前が暴れてどうするんだよ」
「………分かりました。あの痴女を狙うのはやめます」
「そうか」
そう言って蛆虫は私の頭から手をどかした。
************************
ったくまさか銀を魔狼と間違えただけであそこまで怒るとは思わなかった。
俺は手をどけて立ち上がろうとした。
ドンッ!
とそれと同時に下の方から散弾が襲ってくる。
体を反らせてどうにか躱す。危ない危ない危うく死ぬところだった。ってそれよりも、
「なんで俺を殺そうとするんだよ!」
「当たり前です。この私を地面に押し付けるなどこれほどの屈辱はありません」
「それはお前が原因なんだろうが!」
「だとしてもです。それに私は痴女は殺さないと言いましたが誰も蛆虫以下の存在である貴方を殺さないとは一言も言っていませんよ?」
確かにアインは口にしてはいない。だとしてもだ、
「だからと言って本当に殺そうとする奴がいるかよ。このポンコツが!」
「ポ、ポンコツ……この私に対してポンコツとはどうやら死にたいようですね」
薄気味悪い笑みを浮かべながら亜空間から魔導軽機関銃を取り出しやがった。
ま、拙い。このままどとマジで死ぬかもしれない。
俺はどうにかして貰おうと影光に視線を向ける。
影光も俺が助けを求めていることを察してくれたのか嘆息しながらもアインに近づく。
「アイン、お主もそれぐらいで止めたらどうだ」
「どいてください。私はあの脳みそ空っぽの蛆虫以下の害虫を殺さなければなりませんので」
「確かにジンも言い過ぎたのかもしれない。だがその原因を使ったのはお主自身ではないのか?」
「む、だとしてもあの害虫は私をポンコツと言い放ったのです。これほどの屈辱はありません」
「そうか、なら攻撃すると良い。だがそうなるとジンの頭に乗っている銀にまで負傷させる可能性があるわけだが良いのだな?」
「うっ……分かりました。今回はカゲミツさんに免じて許してあげましょう」
「ふぅ……」
影光の説得のお陰でどうにか冷静さを撮りも出したアインは魔導軽機関銃を亜空間に戻す。
危なかった。本当に危なかった。このままど死ぬ可能性があったけど。その前に間違いなくこの訓練所が壊れていた。そしてここに居る冒険者の連中も。
だけどその前にこの状況をなんとかしないとな。
俺は感じないがきっとアインの体から膨れ上がった魔力を感じた者達が腰を抜かしていたり、武器を構えていたりとしていた。
「もう大丈夫だから武器を下ろしてくれ。俺のギルドメンバーが迷惑を掛けたな」
「誰のせいだと思ってるんですか」
どう考えてもお前だろ。俺も1割ぐらいは責任があるかもしれないけど。
ただ今後アインに大してポンコツと言うのは止めておこう。殺されるかもしれないからな。
「それよりもフローネさん、大丈夫か?」
「もう大丈夫よ。それよりも本当に貴方たちは同じギルドの仲間なの?」
「ま、まあな。見ての通り俺たちはこんなんだが、実戦になればチームワークは良いほうなんだぜ」
「そ、そうなんだ」
どうみても信じられてないな。ま、一緒に実戦で戦った事があるかと言われれば微妙だからな。こないだ起きたレイノーツ学園での事件でも俺が指示を出しただけで一体の敵に対して一緒に戦ったわけじゃないからな。
フローネさんが立ち上がり異常が無いと判断したのかウィネットが喋りだす。
「アインさんの昇級試験は合格とします。それじゃ次はオニガワラ・ジンさんの試験を始めたいと思うけど、レガッツさんも準備は良いかな?」
そう言ってウィネットがレガッツに視線を向けて状態を聞いてくる。
しかし、返って来た言葉は予想だにもしない言葉だった。
「悪いが今回は遠慮させてくれ」
「おや、どうしてだい?」
レガッツの言葉にウィネットは鋭い視線を向ける。
「別に気まぐれとかで行ってるわけじゃねぇぜ。ただとんでもない魔力を保有している嬢ちゃんをいとも容易く無力化するような奴に俺が勝てるわけが無い。その証拠に俺はソイツが嬢ちゃんを無力化するために移動する姿が見えなかった。いや、それ以前に気づかなかった。だから悪いが俺は遠慮させてもらう。負けると分かっていて怪我はしたくないからな。勿論これは依頼放棄に引っかかるんなら賠償金だって払うぜ」
「いや、その必要はないよ。レガッツさんがそこまでジンさんの実力を評価するなら認めないわけにはいかないからね。それじゃオニガワラ・ジンさんもまたBランク昇級試験に合格したものとし、2人をBランクとして認めるよ」
と、ウィネットさんは宣言した。
まさかこんな結果になるとは思わなかったけど楽してBランクに昇級できるなら文句は無い。
それよりもアインが納得いかないって顔をしているが今は無視しておこう。
「それじゃ2人には今後Bランクとして行動する際の注意事項を説明するから応接室まで来てくれるかな」
こうして昇級試験は終わり俺たちフリーダムは注意事項などの説明を聞くためにウィネットの案内で応接室へとやって来た。
8畳程の部屋の中にはテーブルと4人が座れるソファーが置かれておりあとは調度品が幾つかあるぐらいの、どこにでもありそうなシンプルな応接室。
ただ一点違うところがあればこの部屋に窓らしい窓はない。そのため部屋の電気がつくまでは真っ暗だった。
どうして窓が無いのか不思議だが、きっと何か理由があるのだろう。でなければ窓が無い応接室なんて考えられないからな。
一番警備が必要な皇宮の応接室にだってあったぐらいなんだから。
ウィネットと対峙する形で俺たちはソファーに座るとタイミング良くドアがノックされた。
「誰かな?」
「ミキです。飲み物をお持ちしました」
「入って良いよ」
「失礼します」
そう言ってミキがテーブルにコーヒーが入ったティーカップが人数分とミルク、角砂糖が入った小瓶をテーブルに置いた。
一瞬こっちに視線を向けて、やったね!って顔をしたミキはお辞儀をして平常運転で部屋を出て行った。
「それじゃBランクになったばかりの2人に説明したいと思うね。まず緊急時に際してBランクは必ず出動して貰う事になるよ。それに対して報酬は出るから安心して。そして緊急時、つまり緊急依頼が起きた場合の出動と言うのは場所は関係無いからね。この帝都で緊急依頼が出れば直ぐに出動して貰う事になる。そしてそれは他の都市でも同様だよ。レペスに居てレペスで緊急依頼があれば出動して貰う。ただし都市カランカに居て帝都で緊急依頼があった場合は出動する必要はないよ。距離があるからね。勿論間に合うようだったらそこは自分たちで判断して決めてちょうだい。それで出動し間に合い戦闘を行ったのであれば報酬はちゃんと支払うから安心して」
つまりは現在自分たちが居る都市や町、村などで緊急依頼が発動すれば強制的に出動しなければならないと言う訳か。で、間に合わないようであれば出動する必要はない、と。なんとも曖昧な決め方だな。
もっと具体的には決めてないのか?
「具体的にどれぐらいの距離なんだ?」
「具体的に言うなら6時間以内に現場に到着できるなら強制参加。6時間1分以上12時間以内であれば自由参加。12時間1分以上であれば参加は不可能となっているから参加しなくて平気だよ」
「それって本当は間に合っても気分しだいでは参加する奴が居ない可能性とかあるんじゃないか?」
「それについては心配ないよ。冒険者の皆が持っている冒険者免許書の中にはGPSと冒険者の個人データが入ったIDチップが埋め込まれているから直ぐに居場所を特定する事が可能なんだ。そして現在地から戦場までの移動距離を逆算し移動時間を出すんだ。だから規則を破れば罰則があるから注意してね」
「わ、分かった」
ウィネットの微笑みに俺は思わず頬を引きつらせる。これはどうみても脅迫未遂だろ。
つまりは微妙な場所に居たら罰則がある可能性が高いって事だな。
気分転換にとミキが持ってきてくれたコーヒーを飲む。
皇宮で飲んだコーヒーに比べたらやはり劣るが美味しいので文句はない。
「もう一つ質問なんだが、緊急依頼の難易度。つまりは魔物のランクに関わらず出動しなければならないのか?」
「勿論だよ。ただし役割は変わって来るよ。緊急依頼の内容は大まかに分けて単体か集団のどちらかなんだ。これは規模にもよるけど、魔物の集団が帝都に向けて接近してきた場合は大抵は帝国軍は処理するから出動することは少ないよ。あったとしても避難誘導ぐらいかな。だけど規模が大きい場合は戦場に立つことになるかもしれないから覚悟はしておいてね」
確かにそうだろう。帝都は帝国の要とも言える都市だ。つまりは帝国軍が最も守らなければならない場所だ。皇族や貴族だけでなく、なにより住んでいる一般市民の数も他の都市に比べて遥かに多いのだから。
人を傲慢とは随分と酷い言われようですね。
ですが最高傑作である私が傲慢であろうとそれは当然の事であり、許される事です。なぜなら私は最高傑作の戦闘メイドなのですから。
「さて、時間が掛かりましたね。早く終わらさなければマスターに迷惑が掛かります」
「へぇ~傲慢な癖にあの成年には心を許しているのね」
「何を戯けた事を言っているのですか?あんな蛆虫以下の存在であるあの男が私のマスターなわけ無いでしょ」
「え?でもあの成年が貴方たちのギルドマスターよね?」
何故困惑の表情を浮かべているのですか。見れば分かるでしょ。だれがあんな畜生以下の存在をマスターにしたがりますか。
と言うよりもどうして分からないのでしょうか。やはり露出性癖女は男を誑かす事にしか興味が無いようですね。
「私のマスターはあの蛆虫の腕の中で寝ていらっしゃるお方です」
「え、それってあの銀色の魔狼の事?」
「そうです。それとあんな脳がスポンジで出来た野良犬とマスターを一緒にしないで下さい!」
まったく高貴な存在であらせられるマスターをあのような野良犬と見間違えるなんて万死に値しますね。
「露出性癖女」
「え?それって私の事?」
「貴方以外に誰が居るのですか?それとも痴女と呼んだ方が嬉しいのですか?分かりましたではこれはらは痴女と呼ぶ事にしますね」
「そんなわけないでしょ!」
「おや、そうですか。いえ、そんな話がしたいわけではありません。貴方は運が良いです」
「運が良い?」
やはりただの痴女ですね。
私が言いたい事が理解できずに首を傾げるなんて、貴方こそ脳みそがスポンジで出来ているんじゃないんですか?
「はい、これが昇級試験で本当に運が良いです。どれだけ撃たれようとも死ぬことは無いのですから」
「何を馬鹿な事を言って――っ!」
「おや、私の魔力が感じられるようですね」
「何よ………この魔力。本当に貴方人間なの?」
怯えた声で痴女はゆっくりと後方へと下がる。
「そんな事痴女である貴方には関係あいりません」
会話で時間稼ぎしようとしても無駄ですから。
そう心の中で呟いた私はソコソコ本気を出して痴女の背後に回りこむ。
「マスターを侮辱した罪。その身をもって味わいなさい」
私はそう呟いてトリガーを引こうとした。
「そこまで!」
女にしては少し低めの声の持ち主が試験終了の合図を宣言する。確か冒険者組合の人間でしたね。
それよりも問題なのは。
「いい加減離してくれませんか?」
気が付けば私は地面に叩き付けられ身動きが取れない状態にされていた。
それをしたのは私がこの世でもっとも嫌う蛆虫にだ。
まさかこの私が蛆虫以下の存在に地面に叩き付けられるなんて屈辱です。
「お前がフローネさんを殺そうとしないと口にするならな」
「あの痴女はマスターを侮辱したのですよ」
「だとしてもだ。お前がアソコで引き金を引けば間違いなくお前は逮捕されていた。そうなれば誰が銀の世話をするんだ?」
「この私が逮捕されるとでも」
「お前の力なら脱走ぐらい出来るだろうよ。だけどお前はマスターである銀にも迷惑を掛けるつもりか。周りの連中にお前のメイドは犯罪者って言われたいのか?」
「そ、それは……」
「それに銀を見てみろ。全然気にしてないだろうが。マスターである銀が気にしてないのにお前が暴れてどうするんだよ」
「………分かりました。あの痴女を狙うのはやめます」
「そうか」
そう言って蛆虫は私の頭から手をどかした。
************************
ったくまさか銀を魔狼と間違えただけであそこまで怒るとは思わなかった。
俺は手をどけて立ち上がろうとした。
ドンッ!
とそれと同時に下の方から散弾が襲ってくる。
体を反らせてどうにか躱す。危ない危ない危うく死ぬところだった。ってそれよりも、
「なんで俺を殺そうとするんだよ!」
「当たり前です。この私を地面に押し付けるなどこれほどの屈辱はありません」
「それはお前が原因なんだろうが!」
「だとしてもです。それに私は痴女は殺さないと言いましたが誰も蛆虫以下の存在である貴方を殺さないとは一言も言っていませんよ?」
確かにアインは口にしてはいない。だとしてもだ、
「だからと言って本当に殺そうとする奴がいるかよ。このポンコツが!」
「ポ、ポンコツ……この私に対してポンコツとはどうやら死にたいようですね」
薄気味悪い笑みを浮かべながら亜空間から魔導軽機関銃を取り出しやがった。
ま、拙い。このままどとマジで死ぬかもしれない。
俺はどうにかして貰おうと影光に視線を向ける。
影光も俺が助けを求めていることを察してくれたのか嘆息しながらもアインに近づく。
「アイン、お主もそれぐらいで止めたらどうだ」
「どいてください。私はあの脳みそ空っぽの蛆虫以下の害虫を殺さなければなりませんので」
「確かにジンも言い過ぎたのかもしれない。だがその原因を使ったのはお主自身ではないのか?」
「む、だとしてもあの害虫は私をポンコツと言い放ったのです。これほどの屈辱はありません」
「そうか、なら攻撃すると良い。だがそうなるとジンの頭に乗っている銀にまで負傷させる可能性があるわけだが良いのだな?」
「うっ……分かりました。今回はカゲミツさんに免じて許してあげましょう」
「ふぅ……」
影光の説得のお陰でどうにか冷静さを撮りも出したアインは魔導軽機関銃を亜空間に戻す。
危なかった。本当に危なかった。このままど死ぬ可能性があったけど。その前に間違いなくこの訓練所が壊れていた。そしてここに居る冒険者の連中も。
だけどその前にこの状況をなんとかしないとな。
俺は感じないがきっとアインの体から膨れ上がった魔力を感じた者達が腰を抜かしていたり、武器を構えていたりとしていた。
「もう大丈夫だから武器を下ろしてくれ。俺のギルドメンバーが迷惑を掛けたな」
「誰のせいだと思ってるんですか」
どう考えてもお前だろ。俺も1割ぐらいは責任があるかもしれないけど。
ただ今後アインに大してポンコツと言うのは止めておこう。殺されるかもしれないからな。
「それよりもフローネさん、大丈夫か?」
「もう大丈夫よ。それよりも本当に貴方たちは同じギルドの仲間なの?」
「ま、まあな。見ての通り俺たちはこんなんだが、実戦になればチームワークは良いほうなんだぜ」
「そ、そうなんだ」
どうみても信じられてないな。ま、一緒に実戦で戦った事があるかと言われれば微妙だからな。こないだ起きたレイノーツ学園での事件でも俺が指示を出しただけで一体の敵に対して一緒に戦ったわけじゃないからな。
フローネさんが立ち上がり異常が無いと判断したのかウィネットが喋りだす。
「アインさんの昇級試験は合格とします。それじゃ次はオニガワラ・ジンさんの試験を始めたいと思うけど、レガッツさんも準備は良いかな?」
そう言ってウィネットがレガッツに視線を向けて状態を聞いてくる。
しかし、返って来た言葉は予想だにもしない言葉だった。
「悪いが今回は遠慮させてくれ」
「おや、どうしてだい?」
レガッツの言葉にウィネットは鋭い視線を向ける。
「別に気まぐれとかで行ってるわけじゃねぇぜ。ただとんでもない魔力を保有している嬢ちゃんをいとも容易く無力化するような奴に俺が勝てるわけが無い。その証拠に俺はソイツが嬢ちゃんを無力化するために移動する姿が見えなかった。いや、それ以前に気づかなかった。だから悪いが俺は遠慮させてもらう。負けると分かっていて怪我はしたくないからな。勿論これは依頼放棄に引っかかるんなら賠償金だって払うぜ」
「いや、その必要はないよ。レガッツさんがそこまでジンさんの実力を評価するなら認めないわけにはいかないからね。それじゃオニガワラ・ジンさんもまたBランク昇級試験に合格したものとし、2人をBランクとして認めるよ」
と、ウィネットさんは宣言した。
まさかこんな結果になるとは思わなかったけど楽してBランクに昇級できるなら文句は無い。
それよりもアインが納得いかないって顔をしているが今は無視しておこう。
「それじゃ2人には今後Bランクとして行動する際の注意事項を説明するから応接室まで来てくれるかな」
こうして昇級試験は終わり俺たちフリーダムは注意事項などの説明を聞くためにウィネットの案内で応接室へとやって来た。
8畳程の部屋の中にはテーブルと4人が座れるソファーが置かれておりあとは調度品が幾つかあるぐらいの、どこにでもありそうなシンプルな応接室。
ただ一点違うところがあればこの部屋に窓らしい窓はない。そのため部屋の電気がつくまでは真っ暗だった。
どうして窓が無いのか不思議だが、きっと何か理由があるのだろう。でなければ窓が無い応接室なんて考えられないからな。
一番警備が必要な皇宮の応接室にだってあったぐらいなんだから。
ウィネットと対峙する形で俺たちはソファーに座るとタイミング良くドアがノックされた。
「誰かな?」
「ミキです。飲み物をお持ちしました」
「入って良いよ」
「失礼します」
そう言ってミキがテーブルにコーヒーが入ったティーカップが人数分とミルク、角砂糖が入った小瓶をテーブルに置いた。
一瞬こっちに視線を向けて、やったね!って顔をしたミキはお辞儀をして平常運転で部屋を出て行った。
「それじゃBランクになったばかりの2人に説明したいと思うね。まず緊急時に際してBランクは必ず出動して貰う事になるよ。それに対して報酬は出るから安心して。そして緊急時、つまり緊急依頼が起きた場合の出動と言うのは場所は関係無いからね。この帝都で緊急依頼が出れば直ぐに出動して貰う事になる。そしてそれは他の都市でも同様だよ。レペスに居てレペスで緊急依頼があれば出動して貰う。ただし都市カランカに居て帝都で緊急依頼があった場合は出動する必要はないよ。距離があるからね。勿論間に合うようだったらそこは自分たちで判断して決めてちょうだい。それで出動し間に合い戦闘を行ったのであれば報酬はちゃんと支払うから安心して」
つまりは現在自分たちが居る都市や町、村などで緊急依頼が発動すれば強制的に出動しなければならないと言う訳か。で、間に合わないようであれば出動する必要はない、と。なんとも曖昧な決め方だな。
もっと具体的には決めてないのか?
「具体的にどれぐらいの距離なんだ?」
「具体的に言うなら6時間以内に現場に到着できるなら強制参加。6時間1分以上12時間以内であれば自由参加。12時間1分以上であれば参加は不可能となっているから参加しなくて平気だよ」
「それって本当は間に合っても気分しだいでは参加する奴が居ない可能性とかあるんじゃないか?」
「それについては心配ないよ。冒険者の皆が持っている冒険者免許書の中にはGPSと冒険者の個人データが入ったIDチップが埋め込まれているから直ぐに居場所を特定する事が可能なんだ。そして現在地から戦場までの移動距離を逆算し移動時間を出すんだ。だから規則を破れば罰則があるから注意してね」
「わ、分かった」
ウィネットの微笑みに俺は思わず頬を引きつらせる。これはどうみても脅迫未遂だろ。
つまりは微妙な場所に居たら罰則がある可能性が高いって事だな。
気分転換にとミキが持ってきてくれたコーヒーを飲む。
皇宮で飲んだコーヒーに比べたらやはり劣るが美味しいので文句はない。
「もう一つ質問なんだが、緊急依頼の難易度。つまりは魔物のランクに関わらず出動しなければならないのか?」
「勿論だよ。ただし役割は変わって来るよ。緊急依頼の内容は大まかに分けて単体か集団のどちらかなんだ。これは規模にもよるけど、魔物の集団が帝都に向けて接近してきた場合は大抵は帝国軍は処理するから出動することは少ないよ。あったとしても避難誘導ぐらいかな。だけど規模が大きい場合は戦場に立つことになるかもしれないから覚悟はしておいてね」
確かにそうだろう。帝都は帝国の要とも言える都市だ。つまりは帝国軍が最も守らなければならない場所だ。皇族や貴族だけでなく、なにより住んでいる一般市民の数も他の都市に比べて遥かに多いのだから。
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