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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第六十五話 Bランク昇級試験 上
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テレビに映ったのは先日学園で起きた暴動事件のニュースの事だった。
だがそこでは俺たちフリーダムが活躍したとは報じられておらず、軍と一部の冒険者によって無事に鎮圧された。と報じられていた。きっとこれはボルキュス陛下の気遣いなのだろう。シャルロットが誘拐された事もニュースには出ていないからな。
ダラダラとテレビを見ているとあっと言う間に時間は過ぎて俺たちフリーダムだけの宴会が始まった。と言うよりも毎回と思える飲み会が始まったのだった。ま、酒の肴はコンビニで買った物だけど。やっぱり料理が出来る人材が欲しいぜ。
10月21日日曜日。
俺たちは昇級試験を受けるべく冒険者組合へとやってきた。
どうやら俺たちが試験を受けると言う情報をどこかから掴んだのかいつも以上に冒険者たちが集まっていたため冒険者組合内はいつも以上に賑わっていた。と言うよりも騒がしい。
で、予想通りと言うか当然と言うべきに俺たちの姿を見つけた冒険者たちが噂をし始める。何を噂しているのかは知らないけどただの野次馬ならさっさと依頼を受けてここから出て行けよ。冒険者組合にとっても迷惑だろうに。
そう思いながら俺たちは受付で仕事をこなすミキの許へと近づく。
「ジン君おはよう」
「おはようミキ」
「凄い人気だね」
「やめてくれ。ただ俺たちの実力が知りたいだけだろ」
「それだけジン君たちが注目されてるってことだよ」
どうやら騒がしくなった時に俺たちが来たことに気づいていたらしく平然としている。
どちらかと言えば周囲の冒険者の方が落ち着きが無い。お前らそれでも命を掛けて戦う冒険者か?
「それじゃ、早速昇級試験を行うから裏手にある訓練所に向かって頂戴。そこにジン君たちの対戦相手と試験官がいるはずだから」
「分かった」
俺たちはさっそく試験を受けるため教えて貰った訓練所に向かう。
予想はしていたけどやっぱりついて来るんだなお前ら。
俺は後ろをゾロゾロとついてくる冒険者たちに一瞬視線を向けて嘆息するのだった。
訓練所へと遣って来るなり冒険者たちは観客席に座り俺たちの試験を観察するようだ。
で、俺たちはそのまま真っ直ぐ歩いて訓練所中央近くて立っている冒険者と思しき人物たちと組合の人間に近づく。
すると向こうさんたちも気づいたのか、そのうちの1人が話しかけてくる。
「君たちが今回昇級試験を受けるオニガワラ・ジン君とアインさんだね。僕はウィネット。冒険者組合に勤めている職員さ。よろしくね」
赤いショートヘアの女性は口調も相まってか美男子にしか見えない。しかし胸を見ると確かに膨らみがあるので女性だと分かる。
「で、こっちの2人が今回君たち2人の対戦相手の――」
「Aランク冒険者のレガッツだ。よろしく」
「同じくAランク冒険者のフローネよ。よろしくね」
筋骨隆々の男と引き締まった体の女性が挨拶してくる。確かにロットやルーチェに比べれば断然強いのが分かるが、影光や先日戦ったストーカー野郎に比べれば全然だ。それにこいつら2人を同時に相手するより俺の横に立つアインの方がよっぽど強いし怖い。
「それじゃオニガワラ・ジン君とアインさんのBランク昇級試験を始めたいと思うよ」
ん?Bランク昇級試験?
「なあ、話してるとこ悪いが、Aランクの昇級試験じゃないのか?」
「いや、Bランクの昇級試験だよ。どれだけ強くても功績をあげようとも規則は守って貰うからね」
「つまりは飛び級は無いって事か?」
「別に前例が無いわけじゃないよ。ただ君たち2人が飛び級させるのに相応しいだけの実力を持っているかどうか僕は知らない。だからこの2人と戦って判断させて貰うだけだから」
とウィネットが俺の質問に説明口調で答える。
なるほど。どれだけ功績を挙げようが自分たちの目で確かめるってわけだな。ま、噂に尾鰭が付くのは刺身に醤油を付けて食べるぐらい当たり前の事だからな。
「それじゃジン君の相手はレガッツさん。アインさんの相手はフローネさんにお願いしてるからどっちから先に始める?」
ウィネットが俺たち交互に視線を向けながら問うて来た。
「では、私からお願いします」
と、一言呟きながらアインが一歩前に出ながら答えた。
「分かったよ。では2人は10メートル離れて立ってください」
ウィネットの指示で2人は10メートル離れて対峙する。
それに合わせて俺たちも少し離れた場所から観戦することにした。
それにしてもフローネの武器はグロック17に似た二丁拳銃か。それもマガジンは拡張マガジンに変更されてるから弾切れを狙うのは難しいな。アインには関係ないだろうけど。
それに対してアインが構えた武器はスパス12に似たショットガンだ。最後の買った銃か。あのショットガンを使う姿は初めて見るがセーラー服と機関銃ならぬ、メイドとショットガンか。
どっちもおっかないけど。いや、性格から考えて遥かにこっちの方がおっかないな。対戦相手に同情したくなるレベルで可哀そうに思えて来る。
「アソコで突っ立っているゴミを実験台にするつもりでしたが、仕方ありません。この場を利用して使えるかどうか試させて貰いましょう」
おい、いったいアイツは誰を実験台にするって言った。どうせ俺の事なんだろうが。視線を俺に向けてたし。
だけどある意味ラッキーかもしれない。俺が実験台にならなくて済むんだから。
でも、アインよ。もう少し言葉を選ぼうぜ。お前さんの相手どう見ても不機嫌になってますよ。
「ふ~ん。この私を実験台にするね。随分と舐めた態度ね」
「この私が貴方程度に負ける筈がありませんから」
「へぇ~」
アインさん、アインさん。もう少し言葉を選べよ!
フローネさんから漂う気が物凄くヤバい事になってるんですけど!
確かにアインならフローネさんに負ける事はないだろうよ。油断するような奴じゃないしな。だけどもう少し言葉は選ぼうぜ。
「それではBランク昇級試験……開始!」
ウィネットの合図と共に2人は時計回りに走り出した。
この場に居る冒険者の中で高速で移動する2人を捕らえられる者は一気に減っただろう。それほどまでにこの2人の戦闘能力はずば抜けているのだ。と言うよりもアインのスピードに付いていけてるフローネの戦闘能力に俺は少し驚いているんだが、いやAランクなら当然か。肉体強化魔法も使っているに違いない。
グルグルと同じところ回る二人。よく目が回らないな。
そして先に仕掛けたのはフローネだった。
右手に持つ拳銃から発射された弾丸がアインへと向かうが、全て外れる。
それにしてもあの拳銃、連射機能があるのか。やはり見た目が似ていると機能も似てるんだな。
実力的に言えばアインの方が圧倒的に上だ。未だに本気も出していないようだし。だが傍から見れば有利なのはどう見てもフローネさんだ。
攻撃範囲と威力で言えばアインの武器の方が上だが、飛距離と連射速度は圧倒的にフローネさんの武器の方が上。
距離がある状態でだとどう見てもアインの方が不利だからな。
それに一度撃てばコッキングしなければならないアインのショットガンは同じ距離を保ちながらグルグルと走っていたとしても外せばそれだけで相手にチャンスを与える事になる。そうなれば今の均衡も崩れる事になる。
そう考えればアインが選んだ武器はどう考えても選択ミス。
きっと誰もがそう思うだろうな。
だけどそれは違う。
アインが未だに本気を出していないのとショットガンを選んだ理由。それはさっき本人が言っていた。
そうアイツは購入してから1度も使っていないであろうスパス12似のあのショットガンの性能を確かめたいだけ。だから未だに防戦に回っているのだ。
そうでなければあのアインがこんな面倒事に長時間も時間を費やすとは思えない。きっと「これで終わりですね。貴方もさっさと終わらせてください。マスターを待たせたくないので」とか言うんだろうな。
だからこそ未だにアイツはその時を待っているんだろう。
************************
あらかた相手のデータは手に入りました。
あの拡張マガジン装弾数は33発。二丁合わせて66発。
この状況なら私に近い右手の銃から撃ち、無くなれば左手に持つ拳銃で牽制。その間にリロードを行い、終われば左から右の拳銃で再び攻撃。それを繰り返す。
そして左手に持つ拳銃の弾が無くなればリロードした右手の拳銃で牽制し、リロードが終われば攻撃再開。
それの繰り返しですね。
そしてリロードに掛かる時間は凡そ1.26秒。それは右手、左手ともにほぼ同じ。
動いてなければあと0.5秒は速いリロードが可能と言ったところでしょうか。
露出性癖を持った女にしては中々の熟練度と言ったところですね。
「アインちゃん、さっきから全然攻撃してこないとどうしたの?まさか怖くなっちゃった?」
「何故私が貴方程度の冒険者に恐怖を抱かなければならないのですか?」
「へぇ~そんな事言っちゃうんだ」
そう、本当の恐怖とはあの時感じた……ってこの私があのゴミに恐怖するわけがありません。きっとあれは何かの間違いです。
それよりも今は目の前の露出性癖女の対処ですね。
「では、準備も出来ましたのでここから反撃させて頂きます」
「出来るもならやって見せてよ!」
そのつもりです!
私は相手の走る先に銃口を向けてすぐさまトリガーを引いた。
それと同時発射された散弾が露出性癖女へと向かっていく。よし、これで。
と思いましたがどうやら肉体強化魔法の効果を上げたのか先ほどよりも速い速度で移動したため躱されてしまいました。
なるほど露出性癖女だからと少し甘く見ていました。伊達にAランクでは無いようですね。
相手の新たなデータを加え行動パーターンを推測しながら薬室内に新たなシェルを送り込む。
「ったくなんて威力なのよ!」
おや?これは予想外の反応です。平然と躱していたのでてっきり予測していたものだと思っていましたが違ったのでしょうか。
「魔導散弾銃は連射に不向きですから魔力で威力を高めるのは当然ではありませんか?」
あの蛆虫に買って貰った魔導散弾銃に刻まれた術式は威力向上と強度強化の術式。これによって発射時銃本体が破壊されること無く高い威力の銃弾を広範囲に発射する事が可能にしている。
と言うよりも1500年前から銃に術式を組み込み強化することは当たり前のはず。そしてそれはこの時代も同じ。ならそれぐらい予想できて当然の筈ですかやはり所詮は露出性癖を持つだけの女と言うわけですね。
「だとしても強化しすぎよ」
これぐらいの威力レグウェス帝国時代では当たり前でしたが。やはりこの世界の実力はあの時代に比べて劣っている。いえ衰退したと言うべきでしょうね。
そう結論付けるならやはりあの蛆虫以下の男の戦闘能力は理解不能です。
やはりあの男は早く殺しておくべきですね。この私に理解不能と言う結論を出させ、屈辱を味合わせたあの男は。
そうとなればこの試験もさっさと終わらせるべきでしょうね。
結論を出した私は走り続けながら徐々に露出性癖女との距離を詰めて行く。
同じ場所を走り続け6週が過ぎた時、10メートル離れていた距離は半分の5メートルにまで縮まっていた。よし、これで届く。
この銃の有効射程距離50メートル以下。普通ならこれほど近づく必要はありませんが、確実を狙うならやはりこれぐらいは近づかなければ。それに相手がまだ何か隠している恐れもありますからね。
「そんなに近づくなんて死にたいの!」
「いえ、確実に倒すためです」
そう言って私は片手で銃を構えた。これで1メートルは距離を縮められる。
そして私は再びトリガーを引いた。
しかし露出性癖女は更にスピードアップして躱す。
「ほぉ、更に肉体強化魔法に強めましたか。ですがそんなに魔力を使って後々平気とは思えませんが」
「馬鹿げた威力で撃って来るアンタには言われたくないわね」
そう言って露出性癖女は右手に持っていた銃で攻撃してくる。
しかしこの私が躱せないわけがありません。
同じく貫通力と速度を向上させようとこの程度なら楽勝です。
体を反らせたり、ジャンプして弾丸を躱した私は走るのを止める。
それに合わせて相手も走るのを止め対峙しあう。
しかし最初とは違い互いの距離は半分の5メートル。いえ、それよりも少し短い距離。
「いえ、褒めてはいません。新たなデータが増えただけです」
「この状況で平然としているなんて精神面だけはAランクの私以上ね」
「当然です」
レグウェス帝国の最高技術者によって創り出された存在なのです。
当たり前なことを言われても逆に私が困ります。
だがそこでは俺たちフリーダムが活躍したとは報じられておらず、軍と一部の冒険者によって無事に鎮圧された。と報じられていた。きっとこれはボルキュス陛下の気遣いなのだろう。シャルロットが誘拐された事もニュースには出ていないからな。
ダラダラとテレビを見ているとあっと言う間に時間は過ぎて俺たちフリーダムだけの宴会が始まった。と言うよりも毎回と思える飲み会が始まったのだった。ま、酒の肴はコンビニで買った物だけど。やっぱり料理が出来る人材が欲しいぜ。
10月21日日曜日。
俺たちは昇級試験を受けるべく冒険者組合へとやってきた。
どうやら俺たちが試験を受けると言う情報をどこかから掴んだのかいつも以上に冒険者たちが集まっていたため冒険者組合内はいつも以上に賑わっていた。と言うよりも騒がしい。
で、予想通りと言うか当然と言うべきに俺たちの姿を見つけた冒険者たちが噂をし始める。何を噂しているのかは知らないけどただの野次馬ならさっさと依頼を受けてここから出て行けよ。冒険者組合にとっても迷惑だろうに。
そう思いながら俺たちは受付で仕事をこなすミキの許へと近づく。
「ジン君おはよう」
「おはようミキ」
「凄い人気だね」
「やめてくれ。ただ俺たちの実力が知りたいだけだろ」
「それだけジン君たちが注目されてるってことだよ」
どうやら騒がしくなった時に俺たちが来たことに気づいていたらしく平然としている。
どちらかと言えば周囲の冒険者の方が落ち着きが無い。お前らそれでも命を掛けて戦う冒険者か?
「それじゃ、早速昇級試験を行うから裏手にある訓練所に向かって頂戴。そこにジン君たちの対戦相手と試験官がいるはずだから」
「分かった」
俺たちはさっそく試験を受けるため教えて貰った訓練所に向かう。
予想はしていたけどやっぱりついて来るんだなお前ら。
俺は後ろをゾロゾロとついてくる冒険者たちに一瞬視線を向けて嘆息するのだった。
訓練所へと遣って来るなり冒険者たちは観客席に座り俺たちの試験を観察するようだ。
で、俺たちはそのまま真っ直ぐ歩いて訓練所中央近くて立っている冒険者と思しき人物たちと組合の人間に近づく。
すると向こうさんたちも気づいたのか、そのうちの1人が話しかけてくる。
「君たちが今回昇級試験を受けるオニガワラ・ジン君とアインさんだね。僕はウィネット。冒険者組合に勤めている職員さ。よろしくね」
赤いショートヘアの女性は口調も相まってか美男子にしか見えない。しかし胸を見ると確かに膨らみがあるので女性だと分かる。
「で、こっちの2人が今回君たち2人の対戦相手の――」
「Aランク冒険者のレガッツだ。よろしく」
「同じくAランク冒険者のフローネよ。よろしくね」
筋骨隆々の男と引き締まった体の女性が挨拶してくる。確かにロットやルーチェに比べれば断然強いのが分かるが、影光や先日戦ったストーカー野郎に比べれば全然だ。それにこいつら2人を同時に相手するより俺の横に立つアインの方がよっぽど強いし怖い。
「それじゃオニガワラ・ジン君とアインさんのBランク昇級試験を始めたいと思うよ」
ん?Bランク昇級試験?
「なあ、話してるとこ悪いが、Aランクの昇級試験じゃないのか?」
「いや、Bランクの昇級試験だよ。どれだけ強くても功績をあげようとも規則は守って貰うからね」
「つまりは飛び級は無いって事か?」
「別に前例が無いわけじゃないよ。ただ君たち2人が飛び級させるのに相応しいだけの実力を持っているかどうか僕は知らない。だからこの2人と戦って判断させて貰うだけだから」
とウィネットが俺の質問に説明口調で答える。
なるほど。どれだけ功績を挙げようが自分たちの目で確かめるってわけだな。ま、噂に尾鰭が付くのは刺身に醤油を付けて食べるぐらい当たり前の事だからな。
「それじゃジン君の相手はレガッツさん。アインさんの相手はフローネさんにお願いしてるからどっちから先に始める?」
ウィネットが俺たち交互に視線を向けながら問うて来た。
「では、私からお願いします」
と、一言呟きながらアインが一歩前に出ながら答えた。
「分かったよ。では2人は10メートル離れて立ってください」
ウィネットの指示で2人は10メートル離れて対峙する。
それに合わせて俺たちも少し離れた場所から観戦することにした。
それにしてもフローネの武器はグロック17に似た二丁拳銃か。それもマガジンは拡張マガジンに変更されてるから弾切れを狙うのは難しいな。アインには関係ないだろうけど。
それに対してアインが構えた武器はスパス12に似たショットガンだ。最後の買った銃か。あのショットガンを使う姿は初めて見るがセーラー服と機関銃ならぬ、メイドとショットガンか。
どっちもおっかないけど。いや、性格から考えて遥かにこっちの方がおっかないな。対戦相手に同情したくなるレベルで可哀そうに思えて来る。
「アソコで突っ立っているゴミを実験台にするつもりでしたが、仕方ありません。この場を利用して使えるかどうか試させて貰いましょう」
おい、いったいアイツは誰を実験台にするって言った。どうせ俺の事なんだろうが。視線を俺に向けてたし。
だけどある意味ラッキーかもしれない。俺が実験台にならなくて済むんだから。
でも、アインよ。もう少し言葉を選ぼうぜ。お前さんの相手どう見ても不機嫌になってますよ。
「ふ~ん。この私を実験台にするね。随分と舐めた態度ね」
「この私が貴方程度に負ける筈がありませんから」
「へぇ~」
アインさん、アインさん。もう少し言葉を選べよ!
フローネさんから漂う気が物凄くヤバい事になってるんですけど!
確かにアインならフローネさんに負ける事はないだろうよ。油断するような奴じゃないしな。だけどもう少し言葉は選ぼうぜ。
「それではBランク昇級試験……開始!」
ウィネットの合図と共に2人は時計回りに走り出した。
この場に居る冒険者の中で高速で移動する2人を捕らえられる者は一気に減っただろう。それほどまでにこの2人の戦闘能力はずば抜けているのだ。と言うよりもアインのスピードに付いていけてるフローネの戦闘能力に俺は少し驚いているんだが、いやAランクなら当然か。肉体強化魔法も使っているに違いない。
グルグルと同じところ回る二人。よく目が回らないな。
そして先に仕掛けたのはフローネだった。
右手に持つ拳銃から発射された弾丸がアインへと向かうが、全て外れる。
それにしてもあの拳銃、連射機能があるのか。やはり見た目が似ていると機能も似てるんだな。
実力的に言えばアインの方が圧倒的に上だ。未だに本気も出していないようだし。だが傍から見れば有利なのはどう見てもフローネさんだ。
攻撃範囲と威力で言えばアインの武器の方が上だが、飛距離と連射速度は圧倒的にフローネさんの武器の方が上。
距離がある状態でだとどう見てもアインの方が不利だからな。
それに一度撃てばコッキングしなければならないアインのショットガンは同じ距離を保ちながらグルグルと走っていたとしても外せばそれだけで相手にチャンスを与える事になる。そうなれば今の均衡も崩れる事になる。
そう考えればアインが選んだ武器はどう考えても選択ミス。
きっと誰もがそう思うだろうな。
だけどそれは違う。
アインが未だに本気を出していないのとショットガンを選んだ理由。それはさっき本人が言っていた。
そうアイツは購入してから1度も使っていないであろうスパス12似のあのショットガンの性能を確かめたいだけ。だから未だに防戦に回っているのだ。
そうでなければあのアインがこんな面倒事に長時間も時間を費やすとは思えない。きっと「これで終わりですね。貴方もさっさと終わらせてください。マスターを待たせたくないので」とか言うんだろうな。
だからこそ未だにアイツはその時を待っているんだろう。
************************
あらかた相手のデータは手に入りました。
あの拡張マガジン装弾数は33発。二丁合わせて66発。
この状況なら私に近い右手の銃から撃ち、無くなれば左手に持つ拳銃で牽制。その間にリロードを行い、終われば左から右の拳銃で再び攻撃。それを繰り返す。
そして左手に持つ拳銃の弾が無くなればリロードした右手の拳銃で牽制し、リロードが終われば攻撃再開。
それの繰り返しですね。
そしてリロードに掛かる時間は凡そ1.26秒。それは右手、左手ともにほぼ同じ。
動いてなければあと0.5秒は速いリロードが可能と言ったところでしょうか。
露出性癖を持った女にしては中々の熟練度と言ったところですね。
「アインちゃん、さっきから全然攻撃してこないとどうしたの?まさか怖くなっちゃった?」
「何故私が貴方程度の冒険者に恐怖を抱かなければならないのですか?」
「へぇ~そんな事言っちゃうんだ」
そう、本当の恐怖とはあの時感じた……ってこの私があのゴミに恐怖するわけがありません。きっとあれは何かの間違いです。
それよりも今は目の前の露出性癖女の対処ですね。
「では、準備も出来ましたのでここから反撃させて頂きます」
「出来るもならやって見せてよ!」
そのつもりです!
私は相手の走る先に銃口を向けてすぐさまトリガーを引いた。
それと同時発射された散弾が露出性癖女へと向かっていく。よし、これで。
と思いましたがどうやら肉体強化魔法の効果を上げたのか先ほどよりも速い速度で移動したため躱されてしまいました。
なるほど露出性癖女だからと少し甘く見ていました。伊達にAランクでは無いようですね。
相手の新たなデータを加え行動パーターンを推測しながら薬室内に新たなシェルを送り込む。
「ったくなんて威力なのよ!」
おや?これは予想外の反応です。平然と躱していたのでてっきり予測していたものだと思っていましたが違ったのでしょうか。
「魔導散弾銃は連射に不向きですから魔力で威力を高めるのは当然ではありませんか?」
あの蛆虫に買って貰った魔導散弾銃に刻まれた術式は威力向上と強度強化の術式。これによって発射時銃本体が破壊されること無く高い威力の銃弾を広範囲に発射する事が可能にしている。
と言うよりも1500年前から銃に術式を組み込み強化することは当たり前のはず。そしてそれはこの時代も同じ。ならそれぐらい予想できて当然の筈ですかやはり所詮は露出性癖を持つだけの女と言うわけですね。
「だとしても強化しすぎよ」
これぐらいの威力レグウェス帝国時代では当たり前でしたが。やはりこの世界の実力はあの時代に比べて劣っている。いえ衰退したと言うべきでしょうね。
そう結論付けるならやはりあの蛆虫以下の男の戦闘能力は理解不能です。
やはりあの男は早く殺しておくべきですね。この私に理解不能と言う結論を出させ、屈辱を味合わせたあの男は。
そうとなればこの試験もさっさと終わらせるべきでしょうね。
結論を出した私は走り続けながら徐々に露出性癖女との距離を詰めて行く。
同じ場所を走り続け6週が過ぎた時、10メートル離れていた距離は半分の5メートルにまで縮まっていた。よし、これで届く。
この銃の有効射程距離50メートル以下。普通ならこれほど近づく必要はありませんが、確実を狙うならやはりこれぐらいは近づかなければ。それに相手がまだ何か隠している恐れもありますからね。
「そんなに近づくなんて死にたいの!」
「いえ、確実に倒すためです」
そう言って私は片手で銃を構えた。これで1メートルは距離を縮められる。
そして私は再びトリガーを引いた。
しかし露出性癖女は更にスピードアップして躱す。
「ほぉ、更に肉体強化魔法に強めましたか。ですがそんなに魔力を使って後々平気とは思えませんが」
「馬鹿げた威力で撃って来るアンタには言われたくないわね」
そう言って露出性癖女は右手に持っていた銃で攻撃してくる。
しかしこの私が躱せないわけがありません。
同じく貫通力と速度を向上させようとこの程度なら楽勝です。
体を反らせたり、ジャンプして弾丸を躱した私は走るのを止める。
それに合わせて相手も走るのを止め対峙しあう。
しかし最初とは違い互いの距離は半分の5メートル。いえ、それよりも少し短い距離。
「いえ、褒めてはいません。新たなデータが増えただけです」
「この状況で平然としているなんて精神面だけはAランクの私以上ね」
「当然です」
レグウェス帝国の最高技術者によって創り出された存在なのです。
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