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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第三十一話 鷹の爪VS月の剣&Eランク冒険者
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「(ロットたちはこれからどうするんだ?)」
「(どうするって言われてもな)」
「(俺は戦うつもりだ)」
俺の言葉に全員が目を見開ける。
「(ジン、本気か?)」
「(あたりまえだろ。どうせレメント鉱石を渡した後は始末されるに決まってる。それに戦ったほうが生き残る可能性も出てくる)」
「(私もジンに賛成よ。あいつ等に犯されるなんて絶対に嫌。それなら戦って死んだほうがマシよ)」
「(俺も賛成だぜ。俺たちは直ぐに始末するって言ってたからな)」
「(カクル、お前まで……分かった戦おう。陣形はいつも通りだ)」
『(了解)』
良いパーティーだな。
俺もこんなギルドが作れたらな。なんて思っていたが、今は妄想に浸っている場合じゃない。
「おい!なにさっきからごちゃごちゃと話してるんだよ!」
盗賊ギルドのリーダーも限界のようだしな。
なら、先制攻撃は俺に任せて貰おうか。おっとその前に。
「シェーミ」
「何ですか?」
「さっきの質問の答え。今から見せてやるよ」
「え?」
俺はそう答えると0.4%の力で地面を蹴った。
足に道路が軽く陥没する感触が伝わってくるが関係ない。俺はそのまま拳銃を片手に余裕の表情を浮かべるギブスの顔面に殴り飛ばした。
突然の事で対処が出来なかったのかそのまま後ろの車に激突した。おいおいこれがBランク冒険者に匹敵する実力の持ち主かよ。まだロイドの方が強かったぞ。
さて次はどいつにってあれ?なんでみんな固まってるんだ?
こんな状況なのにやっぱり流行のフリーズで遊びたいのか?それは今することじゃないだろ。
「ロット、何してるんだ!今のうちにそっちの数人を倒せ!」
「っ!わ、分かった!よし、行くぞ!」
『おう!』
ルーチェたちもどうやら我に戻ったらしく反対側の盗賊たちに攻撃を仕掛ける。
そんじゃ俺も暴れるか。ギルド資金の調達のために!
ようやく現状を理解した下っ端の盗賊たちだが、既に遅いんだよ!
俺は遠慮する事無く指突で敵を葬っていく。
同属の下っ端20人。リーダーを合わせて21人最初は居たが、既にリーダーを含めて8人がやられている。
突然の事もあってか盗賊たちの動きも連携も悪い。ましてやリーダーを失っているんだ俺たちでも倒すのは楽勝だ。
「隙だらけだぜ!」
「ねぇよ」
「カハッ!」
ったく背後から襲い掛かって来るのは別に良いが、大声で叫んでたら奇襲の意味が無いって事を知らないのか?
俺の方は残るは8人。ギブスの野郎は気絶させただけだからな。念のために1人だけ生かしておくか。
そうと決まった後はもうただの作業に等しかった。俺の想像を遥かに上回る弱さに一切の楽しさも興奮もない。
一応仕事だからそれで良いのだろうが、それでも冒険者になったのは強い奴と戦いたいと言う欲望があるからで、別に殺人鬼のように殺しを楽しみたいわけじゃない。
そう、よく戦闘狂と殺人鬼を同じ存在だと思う奴が居るが、別物だ。
殺人鬼は自分より弱い敵しか狙わない。ま、中には強い敵を狙う奴もいるかもしれないが、殺すと言う行為が好きなだけだ。もっと分かり易く言うなら一方的な虐殺だ。
それに対して戦闘狂、もしくは武士は戦うと言う行為が好きなのだ。
その二つが何が違うの?と思うかもしれないが、全然違う。殺人鬼は結果を求めるが戦闘狂は過程を求めるのだ。
強い相手との戦闘で感じられる緊張感。死ぬかもしれないスリル。そんな生死の狭間で戦う事が大好きな人種なのだ。
だから誰もが死んだとしてもそれだけ強い相手と戦えたと満足して死んでいく。
勿論勝ったら勝ったで、生き残った。強い相手を倒せたという達成感に浸れる。結果的にどちらでも満足できるのだ。ま、満足度は違うだろうが。
俺の方は終わった。1人だけ動けないようにもしたし、あとはロットたちだが。
少し心配で振り返ってみたら予想以上に戦えていた。いや、押していたと言うべきか。
練度の高い連携で戦うロットたち。それに大して連携が疎かな敵は徐々に敵を減らしていった。ま、ギブスが倒されたのがよっぽど効いたんだろうな。
精神的支えを失った軍隊は一瞬にして瓦解する。それは何時の時代であろうと同じことだ。それだけリーダーの存在は偉大であり大きいのだ。
最後はルーチェの矢で額を貫かれて終了した。
初めてプロの冒険者の戦いを見たが予想以上に強いな。個々の能力はイザベラやロイドに劣るが実戦を何度も生き抜いてきたであろう精神力とそのために何度も訓練してきた連携技。
ロットはリーダーとして仲間の士気の維持の仕方。
後衛であるルーチェは援護の上手さ。
カクルは味方の邪魔にならないように移動する動き。
シェーミは冷静な判断による補助魔法の発動。
キリアンは味方の動きを予測して倒す敵の見極め。
どれも実戦を幾つも行き抜けてきたからこそ身につき洗礼されいた。
その点においてはどこか力押しだったイザベラのチームに比べて上を行っていた。
「よ、お疲れさん」
「え、もう終わったの!?」
驚愕の表情を浮かべながら聞き返してくるルーチェだが、あの程度誰だって楽勝だろ。
「ああ。みんなは怪我はしてないか?」
「俺たちは大丈夫だ。それよりもジンの方は大丈夫だったのか?」
「あの程度楽勝だ。それよりもギブスともう1人情報を引き出すために動けないようにしているから行こうぜ」
俺はそう言って気絶しているギブス許へと向かった。
「あの状況で気絶させる余裕があるなんて」
「ジンっていったい何者?」
「スヴェルニ学園のニュースを見てみろって言ってましたけど……」
「あとで見てみるか」
「そうね」
「なにしてるんだ?早く来いよ」
「あ、ああ。分かった」
まったくさっさと依頼を終わらせないとアインに何を言われるか。いや、その前に遅いって理由だけで殺されるかも。アイツなら充分にありえるからな。
気絶したギブスを叩き起こした俺は情報を引き出す。
「よ、目が覚めたか」
「てめぇはいったい何者だ?」
「何者ってアイテムボックス持ちの餓鬼だが?」
「けっ、そうかよ」
俺の皮肉に血が混ざった赤い唾を吐く。
さて、そろそろ本題だな。
「それでお前らを雇ったのはいったい誰なんだ?」
「俺が答えると思うか?」
「そうしてくれると俺も楽で助かる。それにお前だってああはなりたくないだろ」
親指で差した方向には四肢を折られた盗賊の1人が激痛で悲痛な声を漏らしていた。
「力だけじゃなくて心までも化物だな」
「褒め言葉と取っておくよ」
あの島で5年間も生きてきたんだ。非常にも耐性は付くさ。
「それで答える気になったか?今なら特別に楽に殺してやるよ」
「どっちみち殺すのかよ」
「生かしておくより安全だろ?」
「その歳で冷徹な事を口にしやがる」
確かにそうかもしれない。だけどそれでも俺は出来るだけ安全を確保する。それがあの島で生き抜くために必要な事だったからだ。
「それでどうする?」
「嫌だね」
「そうか」
俺はそのままギブスの心臓を指突で貫いた。
悲痛な声を上げる部下も指突で葬る。
「さて、これで懸賞金は俺たちのものだ」
「ね、ねえジン」
「ん?」
「どうして殺したの?」
「駄目だったか?」
「そうじゃなくてどうして拷問しなかったの?情報を引き出したかったんでしょ?」
「ああ、それな。ギブスの野郎に部下の無残な姿を見せても一切の恐怖が無かったからだ。まるで因果応報が当たり前って感じでな」
「それって……」
「いつか自分も拷問され殺される日が来るだろうって心のどこかで考えていたんだろうよ。悟った人間から情報を引き出すのは至難の業だ。生憎と俺は拷問の知識は無いからな。これ以上は無理だと判断しただけだ。それにあんまり見たくなかっただろ?」
「それは……」
別にルーチェたちが気にするような事じゃない。
俺がそうしたいからしただけの事なんだからな。それに拷問は拷問のスペシャリストにでも任せておけば良い。ルージュとかにな。
「それよりもさっさと死体を片付けてレペスに向かわないと依頼失敗になっちまうぞ」
「そ、それもそうだな。ジン悪いが死体をアイテムボックスの中に収納して貰えるか?冒険者組合に行った時に証拠として提出するからな」
「別に構わねぇよ」
人間の死体をアイテムボックスに入れるのは初めてだが、人間の姿に変貌した魔物は入れた事があるからな。何も考えずに黙々と作業を行った。
一箇所に集めた死体をコンテナを収納したときの要領でアイテムボックスに収納するとギブスたちの車を端に寄せてハンヴィーで出発した。
時間までに間に合うと良いけど。
そんな俺の心配を他所に俺たちは黄昏の空が闇に呑まれ始めた頃にようやく目的地である都市レペスに到着した。と言うか盗賊集団鷹の爪に襲われた時には既に領地の境目近くまで来ていたらしい。
ギルドカードを門兵に見せて俺たちは中に入る。そこらへんは中世ヨーロッパ時代のなごりなのかラノベみたいな事があるんだな。
「今日はもう遅いから荷物は明日届けよう」
「それって大丈夫なのか?」
「元々そのつもりだったし、早目に付いたらラッキーって思ってたぐらいだからな」
「そうか」
ロットたちが手配したホテルにそのまま向かった俺たちはそのままやわからなベッドで夜を過ごした。
************************
俺の名前はロット。ロット・バーケスだ。
Cランクギルド、月の剣に所属するDランク冒険者だ。
この歳で未だにDランクと言うのは平均よりも遅い。それがコンプレックスでもあり、不安や焦りを生み出していたが、ジンを見ているとそれが全て馬鹿らしく思えてきて心がスッキリした気分になった。
そしてそれは俺だけでなく、色んな悩みや問題を抱えている仲間たちも同じだったようだ。こんな世界だ。色々な悩みを抱えた奴なんて当たり前に居る。逆に悩みや問題を抱えていない奴が少ないぐらいだ。
時刻にすれば今は午後11時5分。
深夜とも言える時間帯にジン以外全員が俺の部屋に集まっていた。
元々夜になれば話し合いをするつもりでいたため四部屋予約しておいた。ジンも部屋数を聞いて察していたはずだ。
最初はフリーのジンを俺たちのギルドにスカウトするかどうかの話し合いをするつもりでいた。
アイテムボックス持ちと言う希少な人材は高ランクギルドでも欲しい人材だからだ。
だけどその話し合いは今日の戦闘で必要なくなった。
誰もがジンをスカウトする事に異論がないからだ。
勿論俺たちのギルドマスターを説得する必要はある。そこは何とかしてみるつもりだ。
「それにしてもジンの強さには驚かされたぜ」
「そうね」
未だに鮮明に残るジンの戦闘の姿にカクルは懐かしい思い出を語るように口にする。
ああ、その通りだ。
最初はスヴェルニ王国の王族を殴り飛ばした犯罪者、魔力が無い能無しとスカウトするのは諦めかけていたが、それを吹き飛ばす程の圧倒的戦闘能力の高さに俺たちは自分の目を疑った。
一瞬、いや、刹那の時間でギブスに接近して殴り飛ばした時は状況を飲み込む事が出来なかった。
それなのに終わってみれば俺たちよりも多い敵をたった1人でそれも早い時間で終わらせていた。これほどのフリーの冒険者をスカウトしない奴はいない。もしも居たとしたらそいつはただの馬鹿だ。
「だけどあれだけの力をどうやって手に入れたのか不思議です。魔力もないのに」
「きっと辛い人生を送ってきたに違いない」
シェーミの疑問にキリアンが答える。確かにそうだ。魔力が実力を左右するこの世界で魔力を持たずにあれだけの力を手に入れる事なんて、俺たちが想像もしえない人生を送らなければ不可能だ。
「そう言えばジンがスヴェルニ学園に関するニュースを見ろって言ってましたね」
ジンがギブスを殴る直前にシェーミにそんな事を言っていたな。
さっそくシェーミがスマホでスヴェルニ学園のニュースを調べる。それがなんだと言うのか知らないが、ジンに関係する事なのかもしれない。
「え?」
そんな理解できないとでも言うような声を上げるシェーミに俺たちの視線が一斉に向けられる。
彼女は遠慮気味の性格であまり表情を表に出す子ではない。だから車での大声には俺たちは驚かされたが、今回もあまり見ない表情に驚きと好奇心が押し寄せてきた。
「(どうするって言われてもな)」
「(俺は戦うつもりだ)」
俺の言葉に全員が目を見開ける。
「(ジン、本気か?)」
「(あたりまえだろ。どうせレメント鉱石を渡した後は始末されるに決まってる。それに戦ったほうが生き残る可能性も出てくる)」
「(私もジンに賛成よ。あいつ等に犯されるなんて絶対に嫌。それなら戦って死んだほうがマシよ)」
「(俺も賛成だぜ。俺たちは直ぐに始末するって言ってたからな)」
「(カクル、お前まで……分かった戦おう。陣形はいつも通りだ)」
『(了解)』
良いパーティーだな。
俺もこんなギルドが作れたらな。なんて思っていたが、今は妄想に浸っている場合じゃない。
「おい!なにさっきからごちゃごちゃと話してるんだよ!」
盗賊ギルドのリーダーも限界のようだしな。
なら、先制攻撃は俺に任せて貰おうか。おっとその前に。
「シェーミ」
「何ですか?」
「さっきの質問の答え。今から見せてやるよ」
「え?」
俺はそう答えると0.4%の力で地面を蹴った。
足に道路が軽く陥没する感触が伝わってくるが関係ない。俺はそのまま拳銃を片手に余裕の表情を浮かべるギブスの顔面に殴り飛ばした。
突然の事で対処が出来なかったのかそのまま後ろの車に激突した。おいおいこれがBランク冒険者に匹敵する実力の持ち主かよ。まだロイドの方が強かったぞ。
さて次はどいつにってあれ?なんでみんな固まってるんだ?
こんな状況なのにやっぱり流行のフリーズで遊びたいのか?それは今することじゃないだろ。
「ロット、何してるんだ!今のうちにそっちの数人を倒せ!」
「っ!わ、分かった!よし、行くぞ!」
『おう!』
ルーチェたちもどうやら我に戻ったらしく反対側の盗賊たちに攻撃を仕掛ける。
そんじゃ俺も暴れるか。ギルド資金の調達のために!
ようやく現状を理解した下っ端の盗賊たちだが、既に遅いんだよ!
俺は遠慮する事無く指突で敵を葬っていく。
同属の下っ端20人。リーダーを合わせて21人最初は居たが、既にリーダーを含めて8人がやられている。
突然の事もあってか盗賊たちの動きも連携も悪い。ましてやリーダーを失っているんだ俺たちでも倒すのは楽勝だ。
「隙だらけだぜ!」
「ねぇよ」
「カハッ!」
ったく背後から襲い掛かって来るのは別に良いが、大声で叫んでたら奇襲の意味が無いって事を知らないのか?
俺の方は残るは8人。ギブスの野郎は気絶させただけだからな。念のために1人だけ生かしておくか。
そうと決まった後はもうただの作業に等しかった。俺の想像を遥かに上回る弱さに一切の楽しさも興奮もない。
一応仕事だからそれで良いのだろうが、それでも冒険者になったのは強い奴と戦いたいと言う欲望があるからで、別に殺人鬼のように殺しを楽しみたいわけじゃない。
そう、よく戦闘狂と殺人鬼を同じ存在だと思う奴が居るが、別物だ。
殺人鬼は自分より弱い敵しか狙わない。ま、中には強い敵を狙う奴もいるかもしれないが、殺すと言う行為が好きなだけだ。もっと分かり易く言うなら一方的な虐殺だ。
それに対して戦闘狂、もしくは武士は戦うと言う行為が好きなのだ。
その二つが何が違うの?と思うかもしれないが、全然違う。殺人鬼は結果を求めるが戦闘狂は過程を求めるのだ。
強い相手との戦闘で感じられる緊張感。死ぬかもしれないスリル。そんな生死の狭間で戦う事が大好きな人種なのだ。
だから誰もが死んだとしてもそれだけ強い相手と戦えたと満足して死んでいく。
勿論勝ったら勝ったで、生き残った。強い相手を倒せたという達成感に浸れる。結果的にどちらでも満足できるのだ。ま、満足度は違うだろうが。
俺の方は終わった。1人だけ動けないようにもしたし、あとはロットたちだが。
少し心配で振り返ってみたら予想以上に戦えていた。いや、押していたと言うべきか。
練度の高い連携で戦うロットたち。それに大して連携が疎かな敵は徐々に敵を減らしていった。ま、ギブスが倒されたのがよっぽど効いたんだろうな。
精神的支えを失った軍隊は一瞬にして瓦解する。それは何時の時代であろうと同じことだ。それだけリーダーの存在は偉大であり大きいのだ。
最後はルーチェの矢で額を貫かれて終了した。
初めてプロの冒険者の戦いを見たが予想以上に強いな。個々の能力はイザベラやロイドに劣るが実戦を何度も生き抜いてきたであろう精神力とそのために何度も訓練してきた連携技。
ロットはリーダーとして仲間の士気の維持の仕方。
後衛であるルーチェは援護の上手さ。
カクルは味方の邪魔にならないように移動する動き。
シェーミは冷静な判断による補助魔法の発動。
キリアンは味方の動きを予測して倒す敵の見極め。
どれも実戦を幾つも行き抜けてきたからこそ身につき洗礼されいた。
その点においてはどこか力押しだったイザベラのチームに比べて上を行っていた。
「よ、お疲れさん」
「え、もう終わったの!?」
驚愕の表情を浮かべながら聞き返してくるルーチェだが、あの程度誰だって楽勝だろ。
「ああ。みんなは怪我はしてないか?」
「俺たちは大丈夫だ。それよりもジンの方は大丈夫だったのか?」
「あの程度楽勝だ。それよりもギブスともう1人情報を引き出すために動けないようにしているから行こうぜ」
俺はそう言って気絶しているギブス許へと向かった。
「あの状況で気絶させる余裕があるなんて」
「ジンっていったい何者?」
「スヴェルニ学園のニュースを見てみろって言ってましたけど……」
「あとで見てみるか」
「そうね」
「なにしてるんだ?早く来いよ」
「あ、ああ。分かった」
まったくさっさと依頼を終わらせないとアインに何を言われるか。いや、その前に遅いって理由だけで殺されるかも。アイツなら充分にありえるからな。
気絶したギブスを叩き起こした俺は情報を引き出す。
「よ、目が覚めたか」
「てめぇはいったい何者だ?」
「何者ってアイテムボックス持ちの餓鬼だが?」
「けっ、そうかよ」
俺の皮肉に血が混ざった赤い唾を吐く。
さて、そろそろ本題だな。
「それでお前らを雇ったのはいったい誰なんだ?」
「俺が答えると思うか?」
「そうしてくれると俺も楽で助かる。それにお前だってああはなりたくないだろ」
親指で差した方向には四肢を折られた盗賊の1人が激痛で悲痛な声を漏らしていた。
「力だけじゃなくて心までも化物だな」
「褒め言葉と取っておくよ」
あの島で5年間も生きてきたんだ。非常にも耐性は付くさ。
「それで答える気になったか?今なら特別に楽に殺してやるよ」
「どっちみち殺すのかよ」
「生かしておくより安全だろ?」
「その歳で冷徹な事を口にしやがる」
確かにそうかもしれない。だけどそれでも俺は出来るだけ安全を確保する。それがあの島で生き抜くために必要な事だったからだ。
「それでどうする?」
「嫌だね」
「そうか」
俺はそのままギブスの心臓を指突で貫いた。
悲痛な声を上げる部下も指突で葬る。
「さて、これで懸賞金は俺たちのものだ」
「ね、ねえジン」
「ん?」
「どうして殺したの?」
「駄目だったか?」
「そうじゃなくてどうして拷問しなかったの?情報を引き出したかったんでしょ?」
「ああ、それな。ギブスの野郎に部下の無残な姿を見せても一切の恐怖が無かったからだ。まるで因果応報が当たり前って感じでな」
「それって……」
「いつか自分も拷問され殺される日が来るだろうって心のどこかで考えていたんだろうよ。悟った人間から情報を引き出すのは至難の業だ。生憎と俺は拷問の知識は無いからな。これ以上は無理だと判断しただけだ。それにあんまり見たくなかっただろ?」
「それは……」
別にルーチェたちが気にするような事じゃない。
俺がそうしたいからしただけの事なんだからな。それに拷問は拷問のスペシャリストにでも任せておけば良い。ルージュとかにな。
「それよりもさっさと死体を片付けてレペスに向かわないと依頼失敗になっちまうぞ」
「そ、それもそうだな。ジン悪いが死体をアイテムボックスの中に収納して貰えるか?冒険者組合に行った時に証拠として提出するからな」
「別に構わねぇよ」
人間の死体をアイテムボックスに入れるのは初めてだが、人間の姿に変貌した魔物は入れた事があるからな。何も考えずに黙々と作業を行った。
一箇所に集めた死体をコンテナを収納したときの要領でアイテムボックスに収納するとギブスたちの車を端に寄せてハンヴィーで出発した。
時間までに間に合うと良いけど。
そんな俺の心配を他所に俺たちは黄昏の空が闇に呑まれ始めた頃にようやく目的地である都市レペスに到着した。と言うか盗賊集団鷹の爪に襲われた時には既に領地の境目近くまで来ていたらしい。
ギルドカードを門兵に見せて俺たちは中に入る。そこらへんは中世ヨーロッパ時代のなごりなのかラノベみたいな事があるんだな。
「今日はもう遅いから荷物は明日届けよう」
「それって大丈夫なのか?」
「元々そのつもりだったし、早目に付いたらラッキーって思ってたぐらいだからな」
「そうか」
ロットたちが手配したホテルにそのまま向かった俺たちはそのままやわからなベッドで夜を過ごした。
************************
俺の名前はロット。ロット・バーケスだ。
Cランクギルド、月の剣に所属するDランク冒険者だ。
この歳で未だにDランクと言うのは平均よりも遅い。それがコンプレックスでもあり、不安や焦りを生み出していたが、ジンを見ているとそれが全て馬鹿らしく思えてきて心がスッキリした気分になった。
そしてそれは俺だけでなく、色んな悩みや問題を抱えている仲間たちも同じだったようだ。こんな世界だ。色々な悩みを抱えた奴なんて当たり前に居る。逆に悩みや問題を抱えていない奴が少ないぐらいだ。
時刻にすれば今は午後11時5分。
深夜とも言える時間帯にジン以外全員が俺の部屋に集まっていた。
元々夜になれば話し合いをするつもりでいたため四部屋予約しておいた。ジンも部屋数を聞いて察していたはずだ。
最初はフリーのジンを俺たちのギルドにスカウトするかどうかの話し合いをするつもりでいた。
アイテムボックス持ちと言う希少な人材は高ランクギルドでも欲しい人材だからだ。
だけどその話し合いは今日の戦闘で必要なくなった。
誰もがジンをスカウトする事に異論がないからだ。
勿論俺たちのギルドマスターを説得する必要はある。そこは何とかしてみるつもりだ。
「それにしてもジンの強さには驚かされたぜ」
「そうね」
未だに鮮明に残るジンの戦闘の姿にカクルは懐かしい思い出を語るように口にする。
ああ、その通りだ。
最初はスヴェルニ王国の王族を殴り飛ばした犯罪者、魔力が無い能無しとスカウトするのは諦めかけていたが、それを吹き飛ばす程の圧倒的戦闘能力の高さに俺たちは自分の目を疑った。
一瞬、いや、刹那の時間でギブスに接近して殴り飛ばした時は状況を飲み込む事が出来なかった。
それなのに終わってみれば俺たちよりも多い敵をたった1人でそれも早い時間で終わらせていた。これほどのフリーの冒険者をスカウトしない奴はいない。もしも居たとしたらそいつはただの馬鹿だ。
「だけどあれだけの力をどうやって手に入れたのか不思議です。魔力もないのに」
「きっと辛い人生を送ってきたに違いない」
シェーミの疑問にキリアンが答える。確かにそうだ。魔力が実力を左右するこの世界で魔力を持たずにあれだけの力を手に入れる事なんて、俺たちが想像もしえない人生を送らなければ不可能だ。
「そう言えばジンがスヴェルニ学園に関するニュースを見ろって言ってましたね」
ジンがギブスを殴る直前にシェーミにそんな事を言っていたな。
さっそくシェーミがスマホでスヴェルニ学園のニュースを調べる。それがなんだと言うのか知らないが、ジンに関係する事なのかもしれない。
「え?」
そんな理解できないとでも言うような声を上げるシェーミに俺たちの視線が一斉に向けられる。
彼女は遠慮気味の性格であまり表情を表に出す子ではない。だから車での大声には俺たちは驚かされたが、今回もあまり見ない表情に驚きと好奇心が押し寄せてきた。
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※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
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異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
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