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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第二十七話 金欠のため冒険者活動に勤しむ。
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9月20日木曜日。
ボロボロのソファーで寝ていた俺は日差しで目を覚ました。
そして部屋の汚さにお金が無いことを自覚する。そうだこの廃ビルを購入したんだったな。いや、させられたんだったな。ま、色々と完備されているから文句は言えないんだが。
充電していたスマホ時間を確かめると午前10時4分だった。
部屋を見る限り銀の姿はないからアインと一緒に居るんだろう。
それにしても9月20日木曜日。たしか今日何かがあったような気がするがなんだったか?指名依頼の予約なんてものがあるわけでもないし。アインの冒険者試験でもない。はて、なんだったか?
「ま、思い出せない事を無理やり思い出そうとしても無理か。疲れるだけだし」
背伸びして立ち上がった俺は4階に洗面所で顔を洗ってからアインの許に向かう。
さっき部屋をノックしても返事が無かったし、銀の気配も無かった。となると考えられるのは3階の共有スペースだろう。
昨日のうちにアインと銀にはこのビルでの決め事を大雑把にだが伝えてある。
1階は改装して駐車場に。2階は応接室。3階は共有スペースと仕事部屋。4階、5階はギルドメンバーのプライベートフロアと決めたのだ。で地下はそのまま訓練場だ。
ま、金がないから予定に過ぎないけど。
3階に行くと予想通りアインと銀が寛いでいた。
「ようやく起きて来たのですか。奴隷の癖に随分と良いご身分ですね」
「あのな。一応このビルの持ち主は俺なんだが」
「それがなんだと言うのですか?」
この傲慢メイドは。
俺が睨んでも気にする様子もなく銀の背中を撫でる。
「はぁ、それよりもアインは各部屋の掃除でもしていてくれ」
「なぜ私がそのような面倒な事をしなければならないのですか」
「お前はメイドだろうが」
「確かにメイドですが、私が仕えるのはマスターであって、貴方のようなド畜生ではありません」
この女。一度分からせてやった方が良いんじゃないのか?
朝から怒りを覚えるがどうにか抑える。そしてハッキリしていることはこの女が来てから俺の血圧は絶対に上がっていると言う事だ。
「別に構わないが、こんな汚い場所で生活して銀が病気にならなければ良いけどな」
「それは大変です。ド畜生の部屋にゴミと病原菌全てを集めなければ!」
「なんでそうなるんだよ!」
「そうすれば直ぐにでも貴方が死ぬかと思いまして」
「お前って正直者なんだな」
「それが取り得ですので」
うわ~なんて美しい笑顔なんだ。そしてこれほど怒りを覚える笑顔も見たことが無い。
「別にそれでも構わないが銀はいつも俺と寝てるわけだが」
「……仕方がありません。しっかりと掃除をするとしましょう」
よしっ!これで面倒な掃除をしなくてすむ。
ゴンッ!
「っていきなりなにしやがる!」
「何をしているのですか?貴方も一緒に掃除をするに決まってるでしょ」
「言っておくが俺が掃除してもお前が納得できる掃除は出来ないぞ」
「だとしてもです。少しでも掃除をする事を覚えれば貴方の汚れ切った心もきっと綺麗になります」
なんだかどこかで聞いたことがあるような台詞だが。間違いなく汚れ切った心は俺じゃなくてお前だと俺は思うぞ。
「悪いが、俺は無理だ」
「ほう、どうやら今すぐ死にたいようですね」
「なんでそう解釈されるのか不思議でならないが、どこかの誰かさんが大人買いさせられてお金がないんだよ。だから今から依頼を受けて少しでもお金を稼がないと明日の飯も危ういんだよ」
「むっ、それなら致し方ありません」
どうにか納得してくれたアインは掃除を開始した。さて俺はどの依頼を受けるか。
そう思いながらボロボロのソファーに体重を預ける。
現在の俺はFランク。つまり受けられる依頼はEランクまでだ。で、こないだのゴブリン討伐で昇格まで残り82ポイントなわけだが。
さてどれにしたものやら。
Eランクの依頼内容はゴブリンやレッドウルフなどの討伐。もしくはそこそこ入手が難しい薬草なんかの採取が殆どだ。もっと強そうな依頼もあるがそれはもっと上のランクにならなければ受ける事が出来ない。
俺が求めている依頼はポイントが高くて依頼報酬も高いだ。ま、そんな美味い依頼があるわけがないんだが。
銀のレベルアップの事も考えたらやはりこのレッドウルフの討伐だろうな。皮を剥いで冒険者組合に持っていけば買い取ってくれるみたいだしな。
俺は直ぐに依頼を受ける。
「それじゃ銀、依頼に行くぞ」
「ガウッ!」
銀を抱きかかえて外に出ようとするとちょうど玄関周りをアインが掃除していた。
「依頼に行って来る」
「そうですか。逝ってらっしゃいませ」
「おい、今文字が変じゃなかったか?」
「気のせいです」
「そうか」
あれほど悪意のある逝ってらっしゃいませなんて初めて聞いたが、気にする事無いか。
街外れに拠点があるため帝都の外に出るのは近くて助かる。
30分足らずで帝都の外に出た俺たちはレッドウルフが目撃されたと言う場所に向かった。
今回の依頼内容はレッドウルフの群れを討伐することだ。
目撃情報では10体以上は居たと言う話だったので10体倒せば依頼完了となる。
元の大きさに戻った銀の背中に乗って向かう姿はまるで、どこかのお姫様のようだが、茶髪でも槍も持ってないので全然そんな風には見えない。と言うか銀の大きさがどちらかと言えば姫さんのお母さんぐらいあるのであるいみ似ても似ていない光景だ。
森の奥へと進むが今のところレッドウルフらしき気配はない。あるのは小動物と小さな魔物ぐらいだろう。
先に教えておくけど魔物と普通の動物の違いだけど魔物は普通の動物が空気中に含まれる魔素大量に取り込んだ結果の姿だ。だからと言って肉が食えないと言う訳でなく、ただ単に凶暴化した姿だと思ってくれれば良い。そして魔物から生まれる子供も自然と魔物となってしまうのだ。
「銀、気がついたか?」
「ガウ」
どうやら銀も気づいたらしく2時の方向にレッドウルフの群が居るのを気配で察知した。およそ数にして15体。
さてお金とポイントの為に頑張りますか。
小さくなった銀を頭に乗せて気配を殺してゆっくりと近づく。
よし、気がついてないな………今だ!
草むらから飛び出した俺は0.3%の力で全てのレッドウルフを討伐していく。
レッドウルフの皮は剥いで冒険者組合に持っていくからなるべく皮を傷つけないように打撃と締め技で殺していく。と言っても首の骨を折る方法をしらないけど。
飛び出してからもスピードと気配を殺しているお陰ですぐには気づかれなかったってこともあり気づかれるまで5体殺すことに成功した。
気づかれたとしても俺のスピードからは逃れることは出来ず僅か数分で戦闘は終了した。戦闘は言いがたいけど。
「後は皮剥ぎだな」
あのきまぐれ島でなんども皮剥ぎはやった。確実に1000回は超えているだろうな。だから皮剥ぎはお手の物だ。え?ナイフも持てないのにどうやって皮剥ぐのかって。そんなの決まってるだろ。手刀だよ。手刀。
最初の頃は持てるギリギリの尖った石ころで皮剥ぎをやってたけど力がついてからは手刀の方が楽だと気がついたのだ。
手が血で汚れるがそんなもの気にする事もない。最初は気分が悪くなったけどな。ほんと前世では牛や豚なんかを解体してくれていた人たちには感謝だな。
俺は手慣れた手つきでレッドウルフを皮剥ぎをしていく。出来るだけ皮の質を落とさないようにするためゆっくりとやった結果全てをするのに1時間も掛かってしまった。ま、普通ならありえない早さだけど俺の身体能力とスキルがあればこれぐらいは楽勝である。
「銀、食べて良いぞ」
「ガウッ!」
皮を剥ぎ終わったレッドウルフの肉を嬉しそうに食べる銀。
血抜きも一切していないので銀の口や地面には大量の血が付いているがこの光景にも既に慣れている。あの島で生き残るにはこういったグロテスクな光景にも慣れなければいけない。出なければ精神がやられて肉体にも影響を与えるからな。最初見たときはあまりのグロさに吐きそうになったけ。
15体のレッドウルフをペロリと完食した銀。元の大きさに戻っているとは言え、いったいその身体のどこに入るんだ?
「銀、口を拭くぞ」
アイテムボックスから取り出したタオルで血のついた口周りを拭いていく。
最初の頃は嫌がっていたが、今では既に慣れたのか全然動こうともしない。
「よし、終わったぞ銀」
そう言いながら撫でてやると嬉しそうに目を瞑っていた。大きくてもやはり銀は可愛いな。
討伐も終えた俺は帝都へと帰ろうとしたが近くにゴブリンの群を感知した。
そう言えばゴブリン討伐の依頼もあったよな。
スマホを取り出し確認してみるとやはり、あったこちらも10体倒せば依頼達成となっていた。
俺は直ぐに依頼を受ける。
「銀、ついでにあのゴブリンも倒して報酬ゲットだ」
「ガウ!」
レッドウルフの時より少し距離があるが問題ない。気配の数からして20体ぐらいだろうか。いったいこんなところで何をしているのかさっぱり分からない。いや、なるほどな。
一瞬分からなかったがふとある事を思い出した。ゴブリンの群が向かっている方向には道路があり数は少ないがそれなりに車は通る。それを襲うつもりなんだろう。
そう言えばスヴェルニ王国にまだ居た時、車ならゴブリンに襲われても平気じゃないのか?って疑問を感じたがなんでもこの世界のゴブリンは罠や投擲などを使って車を止めたりするらしい。
時代の流れに取り残されたかとも思っていたがゴブリンも成長してるんだな。気持ち悪いから全滅して欲しいけど。
背後から近づいた俺はレッドウルフの時とは違い、手加減することなく俺は殺していく。
元日本人がやく殺し合いの戦場に立てるなんて思うかもしれないが、俺だって最初は嫌だったさ。だけどそうしなければ死んでいたし、武器も魔法も仕えない。助けてくれる人間もいない。1人で化け物が平然と跋扈する島に投げ出されたら我武者羅に生きるしかないだろ。
ま、最初は怖くて木の実ばっか食べてたけど。それでも身体が肉を欲したので俺は気分を害しながらも吐き気に襲われながらも戦った。
ほんとラノベ主人公たちが平然と戦えるのか不思議でならないぞ。
でも人間って何気に凄くて何度も同じことを繰り返していれば慣れてくるもので10回目ぐらいには平然と倒してたっけ。
てか最初に倒した地龍に関してはそんな事気にしてる余裕は無かったけどな。だって一瞬で胃袋の中だったし。
で、ゴブリンも僅か数分で殺し終えた俺は依頼証拠となるゴブリンの耳を切って持ち帰る事にした。
この世界には倒した魔物を自動で記録してくれるようなハイテク装置はないからな。
帝都へと戻ってきた俺は拠点には戻らず冒険者組合へと向かった。
5階建ての建物はまるでどこかの市役所かと思わせる建物だが気にせず中へと入る。
現代の冒険者が組合に来ることは少ない。依頼はスマホやパソコンで受けられるからだ。
それでも冒険者組合の中には多くの冒険者たちが居た。ラノベ世界みたいに中に酒場は無いみたいだけど。
きっと殆どの冒険者が依頼達成の報告に来たに違いない。
俺も依頼達成の報告をすべく受付へと向かう。
「ちょっと良いか?」
「はい。なんでしょうか?冒険者試験の申請ならあちらになりますが」
あ、ここでも申請志願はしてるのね。って違う違う。
「いや、依頼を達成してきたから確認を頼みたいんだが」
「あ、そうでしたか。それではギルドカードを提示してください」
「ほい」
試験合格した時に渡されたカードを受付上に渡す。
正直カードの見た目は免許書と似ている。顔写真に名前、生年月日、住所。ランクだ。あ、住所変わった事伝えてないや。
「確認しました。オニガワラ・ジンさんが受けられた依頼はEランクのレッドウルフの群の討伐とゴブリン討伐ですね。それでは依頼達成の確認のために部位の提示をお願いします」
「分かった。ほい」
俺はそのままアイテムボックスから出す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
現在の鬼瓦人の総資産。
レッドウルフの群の討伐達成報酬 +12万RK
ゴブリン討伐達成報酬 5万RK
レッドウルフの毛皮 1万2000RK×15
残高37万5890RK
ボロボロのソファーで寝ていた俺は日差しで目を覚ました。
そして部屋の汚さにお金が無いことを自覚する。そうだこの廃ビルを購入したんだったな。いや、させられたんだったな。ま、色々と完備されているから文句は言えないんだが。
充電していたスマホ時間を確かめると午前10時4分だった。
部屋を見る限り銀の姿はないからアインと一緒に居るんだろう。
それにしても9月20日木曜日。たしか今日何かがあったような気がするがなんだったか?指名依頼の予約なんてものがあるわけでもないし。アインの冒険者試験でもない。はて、なんだったか?
「ま、思い出せない事を無理やり思い出そうとしても無理か。疲れるだけだし」
背伸びして立ち上がった俺は4階に洗面所で顔を洗ってからアインの許に向かう。
さっき部屋をノックしても返事が無かったし、銀の気配も無かった。となると考えられるのは3階の共有スペースだろう。
昨日のうちにアインと銀にはこのビルでの決め事を大雑把にだが伝えてある。
1階は改装して駐車場に。2階は応接室。3階は共有スペースと仕事部屋。4階、5階はギルドメンバーのプライベートフロアと決めたのだ。で地下はそのまま訓練場だ。
ま、金がないから予定に過ぎないけど。
3階に行くと予想通りアインと銀が寛いでいた。
「ようやく起きて来たのですか。奴隷の癖に随分と良いご身分ですね」
「あのな。一応このビルの持ち主は俺なんだが」
「それがなんだと言うのですか?」
この傲慢メイドは。
俺が睨んでも気にする様子もなく銀の背中を撫でる。
「はぁ、それよりもアインは各部屋の掃除でもしていてくれ」
「なぜ私がそのような面倒な事をしなければならないのですか」
「お前はメイドだろうが」
「確かにメイドですが、私が仕えるのはマスターであって、貴方のようなド畜生ではありません」
この女。一度分からせてやった方が良いんじゃないのか?
朝から怒りを覚えるがどうにか抑える。そしてハッキリしていることはこの女が来てから俺の血圧は絶対に上がっていると言う事だ。
「別に構わないが、こんな汚い場所で生活して銀が病気にならなければ良いけどな」
「それは大変です。ド畜生の部屋にゴミと病原菌全てを集めなければ!」
「なんでそうなるんだよ!」
「そうすれば直ぐにでも貴方が死ぬかと思いまして」
「お前って正直者なんだな」
「それが取り得ですので」
うわ~なんて美しい笑顔なんだ。そしてこれほど怒りを覚える笑顔も見たことが無い。
「別にそれでも構わないが銀はいつも俺と寝てるわけだが」
「……仕方がありません。しっかりと掃除をするとしましょう」
よしっ!これで面倒な掃除をしなくてすむ。
ゴンッ!
「っていきなりなにしやがる!」
「何をしているのですか?貴方も一緒に掃除をするに決まってるでしょ」
「言っておくが俺が掃除してもお前が納得できる掃除は出来ないぞ」
「だとしてもです。少しでも掃除をする事を覚えれば貴方の汚れ切った心もきっと綺麗になります」
なんだかどこかで聞いたことがあるような台詞だが。間違いなく汚れ切った心は俺じゃなくてお前だと俺は思うぞ。
「悪いが、俺は無理だ」
「ほう、どうやら今すぐ死にたいようですね」
「なんでそう解釈されるのか不思議でならないが、どこかの誰かさんが大人買いさせられてお金がないんだよ。だから今から依頼を受けて少しでもお金を稼がないと明日の飯も危ういんだよ」
「むっ、それなら致し方ありません」
どうにか納得してくれたアインは掃除を開始した。さて俺はどの依頼を受けるか。
そう思いながらボロボロのソファーに体重を預ける。
現在の俺はFランク。つまり受けられる依頼はEランクまでだ。で、こないだのゴブリン討伐で昇格まで残り82ポイントなわけだが。
さてどれにしたものやら。
Eランクの依頼内容はゴブリンやレッドウルフなどの討伐。もしくはそこそこ入手が難しい薬草なんかの採取が殆どだ。もっと強そうな依頼もあるがそれはもっと上のランクにならなければ受ける事が出来ない。
俺が求めている依頼はポイントが高くて依頼報酬も高いだ。ま、そんな美味い依頼があるわけがないんだが。
銀のレベルアップの事も考えたらやはりこのレッドウルフの討伐だろうな。皮を剥いで冒険者組合に持っていけば買い取ってくれるみたいだしな。
俺は直ぐに依頼を受ける。
「それじゃ銀、依頼に行くぞ」
「ガウッ!」
銀を抱きかかえて外に出ようとするとちょうど玄関周りをアインが掃除していた。
「依頼に行って来る」
「そうですか。逝ってらっしゃいませ」
「おい、今文字が変じゃなかったか?」
「気のせいです」
「そうか」
あれほど悪意のある逝ってらっしゃいませなんて初めて聞いたが、気にする事無いか。
街外れに拠点があるため帝都の外に出るのは近くて助かる。
30分足らずで帝都の外に出た俺たちはレッドウルフが目撃されたと言う場所に向かった。
今回の依頼内容はレッドウルフの群れを討伐することだ。
目撃情報では10体以上は居たと言う話だったので10体倒せば依頼完了となる。
元の大きさに戻った銀の背中に乗って向かう姿はまるで、どこかのお姫様のようだが、茶髪でも槍も持ってないので全然そんな風には見えない。と言うか銀の大きさがどちらかと言えば姫さんのお母さんぐらいあるのであるいみ似ても似ていない光景だ。
森の奥へと進むが今のところレッドウルフらしき気配はない。あるのは小動物と小さな魔物ぐらいだろう。
先に教えておくけど魔物と普通の動物の違いだけど魔物は普通の動物が空気中に含まれる魔素大量に取り込んだ結果の姿だ。だからと言って肉が食えないと言う訳でなく、ただ単に凶暴化した姿だと思ってくれれば良い。そして魔物から生まれる子供も自然と魔物となってしまうのだ。
「銀、気がついたか?」
「ガウ」
どうやら銀も気づいたらしく2時の方向にレッドウルフの群が居るのを気配で察知した。およそ数にして15体。
さてお金とポイントの為に頑張りますか。
小さくなった銀を頭に乗せて気配を殺してゆっくりと近づく。
よし、気がついてないな………今だ!
草むらから飛び出した俺は0.3%の力で全てのレッドウルフを討伐していく。
レッドウルフの皮は剥いで冒険者組合に持っていくからなるべく皮を傷つけないように打撃と締め技で殺していく。と言っても首の骨を折る方法をしらないけど。
飛び出してからもスピードと気配を殺しているお陰ですぐには気づかれなかったってこともあり気づかれるまで5体殺すことに成功した。
気づかれたとしても俺のスピードからは逃れることは出来ず僅か数分で戦闘は終了した。戦闘は言いがたいけど。
「後は皮剥ぎだな」
あのきまぐれ島でなんども皮剥ぎはやった。確実に1000回は超えているだろうな。だから皮剥ぎはお手の物だ。え?ナイフも持てないのにどうやって皮剥ぐのかって。そんなの決まってるだろ。手刀だよ。手刀。
最初の頃は持てるギリギリの尖った石ころで皮剥ぎをやってたけど力がついてからは手刀の方が楽だと気がついたのだ。
手が血で汚れるがそんなもの気にする事もない。最初は気分が悪くなったけどな。ほんと前世では牛や豚なんかを解体してくれていた人たちには感謝だな。
俺は手慣れた手つきでレッドウルフを皮剥ぎをしていく。出来るだけ皮の質を落とさないようにするためゆっくりとやった結果全てをするのに1時間も掛かってしまった。ま、普通ならありえない早さだけど俺の身体能力とスキルがあればこれぐらいは楽勝である。
「銀、食べて良いぞ」
「ガウッ!」
皮を剥ぎ終わったレッドウルフの肉を嬉しそうに食べる銀。
血抜きも一切していないので銀の口や地面には大量の血が付いているがこの光景にも既に慣れている。あの島で生き残るにはこういったグロテスクな光景にも慣れなければいけない。出なければ精神がやられて肉体にも影響を与えるからな。最初見たときはあまりのグロさに吐きそうになったけ。
15体のレッドウルフをペロリと完食した銀。元の大きさに戻っているとは言え、いったいその身体のどこに入るんだ?
「銀、口を拭くぞ」
アイテムボックスから取り出したタオルで血のついた口周りを拭いていく。
最初の頃は嫌がっていたが、今では既に慣れたのか全然動こうともしない。
「よし、終わったぞ銀」
そう言いながら撫でてやると嬉しそうに目を瞑っていた。大きくてもやはり銀は可愛いな。
討伐も終えた俺は帝都へと帰ろうとしたが近くにゴブリンの群を感知した。
そう言えばゴブリン討伐の依頼もあったよな。
スマホを取り出し確認してみるとやはり、あったこちらも10体倒せば依頼達成となっていた。
俺は直ぐに依頼を受ける。
「銀、ついでにあのゴブリンも倒して報酬ゲットだ」
「ガウ!」
レッドウルフの時より少し距離があるが問題ない。気配の数からして20体ぐらいだろうか。いったいこんなところで何をしているのかさっぱり分からない。いや、なるほどな。
一瞬分からなかったがふとある事を思い出した。ゴブリンの群が向かっている方向には道路があり数は少ないがそれなりに車は通る。それを襲うつもりなんだろう。
そう言えばスヴェルニ王国にまだ居た時、車ならゴブリンに襲われても平気じゃないのか?って疑問を感じたがなんでもこの世界のゴブリンは罠や投擲などを使って車を止めたりするらしい。
時代の流れに取り残されたかとも思っていたがゴブリンも成長してるんだな。気持ち悪いから全滅して欲しいけど。
背後から近づいた俺はレッドウルフの時とは違い、手加減することなく俺は殺していく。
元日本人がやく殺し合いの戦場に立てるなんて思うかもしれないが、俺だって最初は嫌だったさ。だけどそうしなければ死んでいたし、武器も魔法も仕えない。助けてくれる人間もいない。1人で化け物が平然と跋扈する島に投げ出されたら我武者羅に生きるしかないだろ。
ま、最初は怖くて木の実ばっか食べてたけど。それでも身体が肉を欲したので俺は気分を害しながらも吐き気に襲われながらも戦った。
ほんとラノベ主人公たちが平然と戦えるのか不思議でならないぞ。
でも人間って何気に凄くて何度も同じことを繰り返していれば慣れてくるもので10回目ぐらいには平然と倒してたっけ。
てか最初に倒した地龍に関してはそんな事気にしてる余裕は無かったけどな。だって一瞬で胃袋の中だったし。
で、ゴブリンも僅か数分で殺し終えた俺は依頼証拠となるゴブリンの耳を切って持ち帰る事にした。
この世界には倒した魔物を自動で記録してくれるようなハイテク装置はないからな。
帝都へと戻ってきた俺は拠点には戻らず冒険者組合へと向かった。
5階建ての建物はまるでどこかの市役所かと思わせる建物だが気にせず中へと入る。
現代の冒険者が組合に来ることは少ない。依頼はスマホやパソコンで受けられるからだ。
それでも冒険者組合の中には多くの冒険者たちが居た。ラノベ世界みたいに中に酒場は無いみたいだけど。
きっと殆どの冒険者が依頼達成の報告に来たに違いない。
俺も依頼達成の報告をすべく受付へと向かう。
「ちょっと良いか?」
「はい。なんでしょうか?冒険者試験の申請ならあちらになりますが」
あ、ここでも申請志願はしてるのね。って違う違う。
「いや、依頼を達成してきたから確認を頼みたいんだが」
「あ、そうでしたか。それではギルドカードを提示してください」
「ほい」
試験合格した時に渡されたカードを受付上に渡す。
正直カードの見た目は免許書と似ている。顔写真に名前、生年月日、住所。ランクだ。あ、住所変わった事伝えてないや。
「確認しました。オニガワラ・ジンさんが受けられた依頼はEランクのレッドウルフの群の討伐とゴブリン討伐ですね。それでは依頼達成の確認のために部位の提示をお願いします」
「分かった。ほい」
俺はそのままアイテムボックスから出す。
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現在の鬼瓦人の総資産。
レッドウルフの群の討伐達成報酬 +12万RK
ゴブリン討伐達成報酬 5万RK
レッドウルフの毛皮 1万2000RK×15
残高37万5890RK
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