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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第二十九話 メイドの異常なステータス
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コンビニで夕飯を買った俺は拠点に戻った。でもやっぱりコンビニのご飯も外食も飽きてきたな。やっぱり仲間に料理が出来る人を絶対に入れよう。それから冷蔵庫も買わないとな。電気はあるのに冷蔵庫が壊れてて使えないんじゃ、買い置きも出来ないからな。
で拠点に戻るとそこはまるで別世界。不良たちのたまり場と化していた廃ビルはゴミや鉄パイプなどで散乱していたが、いっさいゴミもなく綺麗に清掃されていた。あ、少し目がチカチカする。
エレベーターで3階の共有スペースに行くとこのフロアも綺麗に掃除されていた。まともな掃除道具もないのにいったいどうすれば1人でこんなに綺麗に出来るんだ?それもたったの2日で。
部屋の中に入るとボロボロのソファーがまるでこの場には不似合いに思えてくるが気にせず座る。
「ああ、疲れた。もうこのままご飯食べて1年ぐらい寝ていたい」
「一年では無く未来永劫寝ていてくださると私としては大変喜ばしいのですが」
相変わらずの口の悪さにも慣れてきた俺はコンビニで買ったおにぎりを食べる。具はおかかだ。うん、美味しいがやっぱり物足りないな。ま、ほぼ毎日食べてたら飽きるか。
「それで昨日帰りが遅かった理由はなんですか?」
「決まってるだろ。金だよ。金。ギルド設立には自己資金がある程度いるみたいだしな。それに綺麗になったとは言ってもまだまだ必要な物は沢山あるしな」
「なるほどそういう事でしたか」
なんだ案外あっさりと引くんだな。ま、面倒がなくて俺は助かるけど。
「そうそう、明日俺と銀3日ほど依頼でここをあけるから」
「は?」
な、なんだこれまでに聞いたことの無いドスの聞いた生返事は。
「それはつまり死にたいと言うことですか?」
「なんでそうなるんだよ!依頼だよ依頼!3日後の夕方には帰ってくるからそれまで我慢してくれ」
「なぜ私が、貴方のために我慢しないといけないんですか」
ったくこの女はどこまで自分勝手なんだ。
なら、仕方が無い。
「ならアインは銀のレベルアップを邪魔するわけだな」
「そ、それは……分かりました。マスターの為です。ですがマスターに何かあればその時は貴方に地獄を味合わせてあげます」
地獄って。あの島での生活以上に酷いことされてしまうのか?
「安心しろ。銀は必ず俺が護る」
「期待はしたくはありませんが、仕方が無いでしょう」
(この男から感じる強い意志は一体どこからくるのでしょう。私が知らない何かがマスターとこの男の間に何かがある?)
なんで俺は睨まれてるか分からないが、そう言えば気になった事があったんだったな。
「なぁ、アイン」
「なんですか?」
「お前の強さってどれぐらいなんだ?」
「それはつまり私と戦いたいという事ですか?私は別に構わないですよ。心置きなく殺してあげますから」
「なんでお前の思考はいつも俺を殺すって結果になるんだよ」
「貴方の事が嫌いですから」
うわ、なんて一切の曇りも無い晴れやかな表情なんだ。俺はあれほど美しい笑顔で嫌いですって言われたの初めてだわ。きっと一切の曇りも無い本心なんだろう。
いや、そんな事はどうでも良い。
「別に戦う必要はない」
「そうですか……」
残念な表情をするな!
「こないだ戸籍を作るときに血液をボルキュス陛下に渡しただろ」
「あの身分も弁えない忌々しい出来事の事ですか」
戸籍登録には本人の写真と血液が必要だ。だからアインに提出して貰ったわけなんだが、その時の今にも暴走しそうな表情は今でも鮮明に思い出せる。
「あれでお前の強さをスマホで見る事が出来るんだが、見させてくれないか?」
「何故、貴方のような下等生物にみせないといけないのですか」
絶対に言われると思ったよ。
「なら銀のステータスも見せてやるから、それでどうだ?」
「マスターを取引材料にするなんてゲスの極みですが、今回はそれで手を打ちましょう」
取引はするんだな。
アインは俺が買ってやったスマホをポケットから取り出すとステータスを表示して見せてくれた。
─────────────────────
アイン
種族 魔導機械人形RS型B-01
レベル 404
魔力 300000
力 60000
体力 50000
器用 100000
敏捷性 50000
固有スキル
亜空間収納機能
自動再生
スキル
体術Ⅹ
暗殺術Ⅹ
隠密Ⅷ
耐熱Ⅷ
耐寒Ⅷ
雷電耐性Ⅷ
魔法攻撃耐性Ⅴ
物理攻撃耐性Ⅴ
状態異常耐性Ⅹ
魔力操作Ⅹ
掃除Ⅹ
称号
龍殺し
殺戮者
掃除のスペシャリスト
正確無比
属性
無
─────────────────────
「…………」
「どうかしましたか?まさか自分より優れていて言葉もでないのですか」
確かに優れていて俺の予想を遥かに上回る数値に驚いて言葉もでない。レグウェス帝国。お前たちはいったいどんな化物を造ってたんだ?
それよりも普通に銀より強いんだが。いや、最近は銀のステータスも見てないから分からないが、それでも前に見た銀のステータスよりも遥かに上回る数値だ。唯一負けているとすればそれは魔力量だが、それは元々銀から貰った物だから仕方が無い。だがそれ以外の肉体の数値は遥かに銀の上を行っている。
てか、機械の癖に称号もあたえられるのかよ。それに何だよ殺戮者って。物騒すぎるだろ。
「それよりも早くマスターのステータスを見せて下さい」
「分かったから亜空間から銃を取り出そうとするな!」
まったくどこまで自分勝手なんだよ。
俺はそう言うとスマホを取り出して銀のステータスをアインに見せる。
─────────────────────
銀
種族 神狼
レベル 415
魔力 748000
力 44700
体力 62200
器用 38900
敏捷性 142000
固有スキル
魔命喰
天限
夜天月下
スキル
瞬脚Ⅷ
耐熱Ⅹ
耐寒Ⅹ
雷電耐性Ⅹ
魔法攻撃耐性Ⅶ
物理攻撃耐性Ⅷ
状態異常耐性Ⅶ
危機察知Ⅹ
咆哮Ⅵ
気配操作Ⅴ
魔力操作Ⅵ
称号
地獄島の守護獣
属性
火 水 風 土 氷 雷 闇 光
─────────────────────
おっ!銀はこの僅かな期間で随分と成長していた。さすがは銀だな。
戦ってレベルを上げるだけでなく固有スキルによる力でステータスまで上げれるように頑張ってきた甲斐があるってものだ。
それに全部じゃ無いにしろ銀はアインよりもステータスを上回っている。これは凄いな。
そんな銀のステータスを見るアインはと言うと、
「流石はマスターです。私なんかでは到底及ばない強さを持っているなんて」
蕩けた表情で銀のステータスを見ていた。なんだか変な領域に入ってるな。無視しておくか。
俺は銀を抱えて寝室に戻るのだった。
9月22日土曜日。
まだお店も相手すらいない早朝に待ち合わせの場所である喫茶店に銀と一緒に来ていた。
拠点を出るときにアインに睨まれながら見送られた。それだけ銀が心配なのは分かるがもう少し我慢できないのか?初秋ってこともあっていつも以上に寒気を感じたぞ。
それにしても遅いな。いや、俺が早く来すぎたのか?待ち合わせの時間の10分前に来たが、どうやらまだ前世で社畜として働いていた時の習性が身に付いていたようだ。こんな習性さっさと払い落としたいものだ。
それから少ししてロットたちがやってきた。
「おはよう、ジン。随分と早いな」
「思いのほか早く目が覚めてな」
「なるほど。それじゃ、さっそくで悪いが依頼の荷物の所に行くぞ」
「分かった」
俺と銀はロットたちの案内で依頼の荷物、レメント鉱石の許へと向かった。
到着した場所は幾つの鉄の扉やシャッターで閉まっている倉庫街。
港に面しているわけでもないが、風景から普段から使われているように感じられた。
「ここだ」
ロットが沢山立ち並ぶ倉庫の一つを指差す。
シャッターには大きく48番と書かれていたが、俺たちはその隣の小さな入り口から入る。
照明で照らされた倉庫内には一つのコンテナがポツンと置かれていた。
「レメント鉱石はあの中か?」
「そうだ」
確認のために聞いてみたがやはりそうか。さてどうやってアイテムボックスに入れるかが問題だな。
「あのコンテナごと運んでも問題ないのか?」
「依頼者からはOKを貰ってるぞ」
「そうか」
なら問題ないな。
俺のアイテムボックスの入り口は自由自在にすることが出来る。
だから指先だけ入れることも炎龍を丸々収納することも可能なのだ。
「悪いが少し下がっておいてくれ」
訝しげな表情を浮かべるロットたちだが、何かをする。と言う事だけは直ぐに察したらしく俺の言葉に従って少し下がってくれた。それじゃ、始めますか。
コンテナを丸々収納できるだけの大きな入り口をコンテナの真下に開く。
途端に重力によってコンテナは穴にでも落ちるかのようにアイテムボックスの中に入っていった。よし、これで良いな。
アイテムボックスを閉めた俺は振り返る。
「終わったぞ」
『……………』
目を見開けて呆けた表情を浮かべるロットたち。またか。いったいフリーズの流行はいつまで続くんだ。てか、そんなに面白いか。
「っ!ほ、本当にアイテムボックス持ちだったんだな」
なんだ、疑ってたのかよ。少し傷ついたぞ。
「それにしても物凄い容量ね。あれだけの質量を平然と入れるなんて」
「ん?このぐらいアイテムボックス持ちなら誰だって出来るだろ」
「いやいや!普通は無理だから。ま、俺もお前以外のアイテムボックス持ちにあった事がないから分からないけど」
だったらなんで否定したんだよ。一瞬驚いたじゃないか。
「それじゃ早速向かうとするか」
ロットの言葉に俺たちはここまで来た時に乗ってきた軍用車両ハンヴィーに乗り込み目的地である隣のワーケス領にある都市レペスに向かって出発した。それにしても冒険者が軍用車両を持ってるってやっぱりこの世界は凄いな。
出発して3時間。時間にすれば午前10時28分。
ハンヴィーに乗っての移動は以前に言われた俺のアイテムボックスに入っているレメント鉱石を狙っている奴らがいるらしいという情報があるからだが、それにしても俺が想像していたのとは違い随分と平和なドライブだな。正直欠伸が出そうだ。
俺たちが現在向かっている都市レペスはワーケス領内でも二番目に大きな都市で、技術都市とも言われているほどあらゆる分野の技術者やそれに関連した企業が集まっている事で有名な都市だ。
軍事大国で技術者や企業が集まっていれば武器やそれに関連する物を製造もしくは研究しているイメージだろうが、実際は都市の6割が家電製品や日常必需品などを製造している。そのためお店の大半は家電製品などを販売している店が多い。一種の電気街と言えるだろう。
日本で言うところの東京秋葉原に似た場所だと思って貰えれば分かるだろうか。ま、秋葉原に比べて並んでいる品は物騒な物も多いけど。
ま、そこは魔物や未知の生物が居る世界だ。仕方が無いと納得してくれ。
「それにしても退屈だな。もっと危険な運送配達になると思っていたんだが」
「あはは、本当なら費用も人材も今の倍以上は掛かるんだ。それがこれで済んでいるんだから仕方が無いさ」
「それに敵だってまさかハンヴィーだけなんて思ってもないだろうしね」
なんて俺の言葉にロットとルーチェが返答するが、
「これじゃプチ旅行にでも向かっている気分だ」
「それは言えてるな」
カクルも笑いながら同意してくる。
だけど実際そう思えてならないほど平和だ。ロットたちからも警戒している様子はない。あるとすればたまにすれ違う対向車ぐらいだ。
本当はそれじゃ駄目なんだろうが、こうも平和だと退屈だ。範囲は狭めているけど半径100メートル圏内に敵意や殺意を持った人間も魔物もいない。駄目だ、本当に眠たくなってきた。
で拠点に戻るとそこはまるで別世界。不良たちのたまり場と化していた廃ビルはゴミや鉄パイプなどで散乱していたが、いっさいゴミもなく綺麗に清掃されていた。あ、少し目がチカチカする。
エレベーターで3階の共有スペースに行くとこのフロアも綺麗に掃除されていた。まともな掃除道具もないのにいったいどうすれば1人でこんなに綺麗に出来るんだ?それもたったの2日で。
部屋の中に入るとボロボロのソファーがまるでこの場には不似合いに思えてくるが気にせず座る。
「ああ、疲れた。もうこのままご飯食べて1年ぐらい寝ていたい」
「一年では無く未来永劫寝ていてくださると私としては大変喜ばしいのですが」
相変わらずの口の悪さにも慣れてきた俺はコンビニで買ったおにぎりを食べる。具はおかかだ。うん、美味しいがやっぱり物足りないな。ま、ほぼ毎日食べてたら飽きるか。
「それで昨日帰りが遅かった理由はなんですか?」
「決まってるだろ。金だよ。金。ギルド設立には自己資金がある程度いるみたいだしな。それに綺麗になったとは言ってもまだまだ必要な物は沢山あるしな」
「なるほどそういう事でしたか」
なんだ案外あっさりと引くんだな。ま、面倒がなくて俺は助かるけど。
「そうそう、明日俺と銀3日ほど依頼でここをあけるから」
「は?」
な、なんだこれまでに聞いたことの無いドスの聞いた生返事は。
「それはつまり死にたいと言うことですか?」
「なんでそうなるんだよ!依頼だよ依頼!3日後の夕方には帰ってくるからそれまで我慢してくれ」
「なぜ私が、貴方のために我慢しないといけないんですか」
ったくこの女はどこまで自分勝手なんだ。
なら、仕方が無い。
「ならアインは銀のレベルアップを邪魔するわけだな」
「そ、それは……分かりました。マスターの為です。ですがマスターに何かあればその時は貴方に地獄を味合わせてあげます」
地獄って。あの島での生活以上に酷いことされてしまうのか?
「安心しろ。銀は必ず俺が護る」
「期待はしたくはありませんが、仕方が無いでしょう」
(この男から感じる強い意志は一体どこからくるのでしょう。私が知らない何かがマスターとこの男の間に何かがある?)
なんで俺は睨まれてるか分からないが、そう言えば気になった事があったんだったな。
「なぁ、アイン」
「なんですか?」
「お前の強さってどれぐらいなんだ?」
「それはつまり私と戦いたいという事ですか?私は別に構わないですよ。心置きなく殺してあげますから」
「なんでお前の思考はいつも俺を殺すって結果になるんだよ」
「貴方の事が嫌いですから」
うわ、なんて一切の曇りも無い晴れやかな表情なんだ。俺はあれほど美しい笑顔で嫌いですって言われたの初めてだわ。きっと一切の曇りも無い本心なんだろう。
いや、そんな事はどうでも良い。
「別に戦う必要はない」
「そうですか……」
残念な表情をするな!
「こないだ戸籍を作るときに血液をボルキュス陛下に渡しただろ」
「あの身分も弁えない忌々しい出来事の事ですか」
戸籍登録には本人の写真と血液が必要だ。だからアインに提出して貰ったわけなんだが、その時の今にも暴走しそうな表情は今でも鮮明に思い出せる。
「あれでお前の強さをスマホで見る事が出来るんだが、見させてくれないか?」
「何故、貴方のような下等生物にみせないといけないのですか」
絶対に言われると思ったよ。
「なら銀のステータスも見せてやるから、それでどうだ?」
「マスターを取引材料にするなんてゲスの極みですが、今回はそれで手を打ちましょう」
取引はするんだな。
アインは俺が買ってやったスマホをポケットから取り出すとステータスを表示して見せてくれた。
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アイン
種族 魔導機械人形RS型B-01
レベル 404
魔力 300000
力 60000
体力 50000
器用 100000
敏捷性 50000
固有スキル
亜空間収納機能
自動再生
スキル
体術Ⅹ
暗殺術Ⅹ
隠密Ⅷ
耐熱Ⅷ
耐寒Ⅷ
雷電耐性Ⅷ
魔法攻撃耐性Ⅴ
物理攻撃耐性Ⅴ
状態異常耐性Ⅹ
魔力操作Ⅹ
掃除Ⅹ
称号
龍殺し
殺戮者
掃除のスペシャリスト
正確無比
属性
無
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「…………」
「どうかしましたか?まさか自分より優れていて言葉もでないのですか」
確かに優れていて俺の予想を遥かに上回る数値に驚いて言葉もでない。レグウェス帝国。お前たちはいったいどんな化物を造ってたんだ?
それよりも普通に銀より強いんだが。いや、最近は銀のステータスも見てないから分からないが、それでも前に見た銀のステータスよりも遥かに上回る数値だ。唯一負けているとすればそれは魔力量だが、それは元々銀から貰った物だから仕方が無い。だがそれ以外の肉体の数値は遥かに銀の上を行っている。
てか、機械の癖に称号もあたえられるのかよ。それに何だよ殺戮者って。物騒すぎるだろ。
「それよりも早くマスターのステータスを見せて下さい」
「分かったから亜空間から銃を取り出そうとするな!」
まったくどこまで自分勝手なんだよ。
俺はそう言うとスマホを取り出して銀のステータスをアインに見せる。
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銀
種族 神狼
レベル 415
魔力 748000
力 44700
体力 62200
器用 38900
敏捷性 142000
固有スキル
魔命喰
天限
夜天月下
スキル
瞬脚Ⅷ
耐熱Ⅹ
耐寒Ⅹ
雷電耐性Ⅹ
魔法攻撃耐性Ⅶ
物理攻撃耐性Ⅷ
状態異常耐性Ⅶ
危機察知Ⅹ
咆哮Ⅵ
気配操作Ⅴ
魔力操作Ⅵ
称号
地獄島の守護獣
属性
火 水 風 土 氷 雷 闇 光
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おっ!銀はこの僅かな期間で随分と成長していた。さすがは銀だな。
戦ってレベルを上げるだけでなく固有スキルによる力でステータスまで上げれるように頑張ってきた甲斐があるってものだ。
それに全部じゃ無いにしろ銀はアインよりもステータスを上回っている。これは凄いな。
そんな銀のステータスを見るアインはと言うと、
「流石はマスターです。私なんかでは到底及ばない強さを持っているなんて」
蕩けた表情で銀のステータスを見ていた。なんだか変な領域に入ってるな。無視しておくか。
俺は銀を抱えて寝室に戻るのだった。
9月22日土曜日。
まだお店も相手すらいない早朝に待ち合わせの場所である喫茶店に銀と一緒に来ていた。
拠点を出るときにアインに睨まれながら見送られた。それだけ銀が心配なのは分かるがもう少し我慢できないのか?初秋ってこともあっていつも以上に寒気を感じたぞ。
それにしても遅いな。いや、俺が早く来すぎたのか?待ち合わせの時間の10分前に来たが、どうやらまだ前世で社畜として働いていた時の習性が身に付いていたようだ。こんな習性さっさと払い落としたいものだ。
それから少ししてロットたちがやってきた。
「おはよう、ジン。随分と早いな」
「思いのほか早く目が覚めてな」
「なるほど。それじゃ、さっそくで悪いが依頼の荷物の所に行くぞ」
「分かった」
俺と銀はロットたちの案内で依頼の荷物、レメント鉱石の許へと向かった。
到着した場所は幾つの鉄の扉やシャッターで閉まっている倉庫街。
港に面しているわけでもないが、風景から普段から使われているように感じられた。
「ここだ」
ロットが沢山立ち並ぶ倉庫の一つを指差す。
シャッターには大きく48番と書かれていたが、俺たちはその隣の小さな入り口から入る。
照明で照らされた倉庫内には一つのコンテナがポツンと置かれていた。
「レメント鉱石はあの中か?」
「そうだ」
確認のために聞いてみたがやはりそうか。さてどうやってアイテムボックスに入れるかが問題だな。
「あのコンテナごと運んでも問題ないのか?」
「依頼者からはOKを貰ってるぞ」
「そうか」
なら問題ないな。
俺のアイテムボックスの入り口は自由自在にすることが出来る。
だから指先だけ入れることも炎龍を丸々収納することも可能なのだ。
「悪いが少し下がっておいてくれ」
訝しげな表情を浮かべるロットたちだが、何かをする。と言う事だけは直ぐに察したらしく俺の言葉に従って少し下がってくれた。それじゃ、始めますか。
コンテナを丸々収納できるだけの大きな入り口をコンテナの真下に開く。
途端に重力によってコンテナは穴にでも落ちるかのようにアイテムボックスの中に入っていった。よし、これで良いな。
アイテムボックスを閉めた俺は振り返る。
「終わったぞ」
『……………』
目を見開けて呆けた表情を浮かべるロットたち。またか。いったいフリーズの流行はいつまで続くんだ。てか、そんなに面白いか。
「っ!ほ、本当にアイテムボックス持ちだったんだな」
なんだ、疑ってたのかよ。少し傷ついたぞ。
「それにしても物凄い容量ね。あれだけの質量を平然と入れるなんて」
「ん?このぐらいアイテムボックス持ちなら誰だって出来るだろ」
「いやいや!普通は無理だから。ま、俺もお前以外のアイテムボックス持ちにあった事がないから分からないけど」
だったらなんで否定したんだよ。一瞬驚いたじゃないか。
「それじゃ早速向かうとするか」
ロットの言葉に俺たちはここまで来た時に乗ってきた軍用車両ハンヴィーに乗り込み目的地である隣のワーケス領にある都市レペスに向かって出発した。それにしても冒険者が軍用車両を持ってるってやっぱりこの世界は凄いな。
出発して3時間。時間にすれば午前10時28分。
ハンヴィーに乗っての移動は以前に言われた俺のアイテムボックスに入っているレメント鉱石を狙っている奴らがいるらしいという情報があるからだが、それにしても俺が想像していたのとは違い随分と平和なドライブだな。正直欠伸が出そうだ。
俺たちが現在向かっている都市レペスはワーケス領内でも二番目に大きな都市で、技術都市とも言われているほどあらゆる分野の技術者やそれに関連した企業が集まっている事で有名な都市だ。
軍事大国で技術者や企業が集まっていれば武器やそれに関連する物を製造もしくは研究しているイメージだろうが、実際は都市の6割が家電製品や日常必需品などを製造している。そのためお店の大半は家電製品などを販売している店が多い。一種の電気街と言えるだろう。
日本で言うところの東京秋葉原に似た場所だと思って貰えれば分かるだろうか。ま、秋葉原に比べて並んでいる品は物騒な物も多いけど。
ま、そこは魔物や未知の生物が居る世界だ。仕方が無いと納得してくれ。
「それにしても退屈だな。もっと危険な運送配達になると思っていたんだが」
「あはは、本当なら費用も人材も今の倍以上は掛かるんだ。それがこれで済んでいるんだから仕方が無いさ」
「それに敵だってまさかハンヴィーだけなんて思ってもないだろうしね」
なんて俺の言葉にロットとルーチェが返答するが、
「これじゃプチ旅行にでも向かっている気分だ」
「それは言えてるな」
カクルも笑いながら同意してくる。
だけど実際そう思えてならないほど平和だ。ロットたちからも警戒している様子はない。あるとすればたまにすれ違う対向車ぐらいだ。
本当はそれじゃ駄目なんだろうが、こうも平和だと退屈だ。範囲は狭めているけど半径100メートル圏内に敵意や殺意を持った人間も魔物もいない。駄目だ、本当に眠たくなってきた。
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