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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す

第二十三話 最初の仲間はサイボーグメイド

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「なんだこれ?」
 触れてみるが何も反応しない。やはり古いものだからな。壊れているのかもしれないな。

「ガウッ!」
「なんだ触れてみたいのか?」
「ガウッ!」
 球体だし遊んでみたいんだろう。

「ほれ」
 俺は銀を持ち上げて近づけると銀は水晶玉に肉球を押し当てる。 
 ゥウィイイイイイイイイイイイィィ!!

「な、なんだ!?」
 突然駆動音のような音が室内に響きだしだし、水晶が光りだす。いったいどうなってるんだ?
 そんな俺の混乱など関係無しに室内のモニターに数字やグラフが映りだす。なんださっぱり分からん。

『大量のマナを感知。吸収を開始します』
 マナ?魔力の事か。てか魔力を感知ってまさか銀の事か?

「銀、離れるぞ!」
「ガウッ!」
 しかし銀は嫌がり離れようとしない。いつも賢い銀がいったいどうしたって言うんだ!

『マナチャージ完了まで残り97.4%』
 これはマジでやばいっていったい何にチャージしてるって言うんだよ!

「銀、いい加減に離れるぞ!」
「ガウッ!」
 クソッ!銀がこんなに嫌がるなんてそんなに大事なことなのか?

「だったらお前を信じるぞ、銀!」
「ガウッ!」
 流石はジン!って言ったような気もするが今はそれどころじゃない。

『マナチャージ完了まで残り94.5%』
 まだ終わらないのか。そんな事を思いながらも俺は銀を抱く腕の力を緩めない。お前だけは絶対に守ってみせる。それがアイツとの最後の約束だからな!
 それから時間はどんどん過ぎていく。

『マナチャージ完了まで残り2.3%』
 あと少しあと少しだ。

『マナチャージ完了まで残り1.5………1………0.5…0.3……0.1……完了』
 プシュッー!
 電子アナウンスの言葉と同時にカプセルが冷機を噴出しながら開かれる。いったいどうなってるんだ。
 未だに混乱が治まらない俺をほっといて時間も混乱の原因も先へと進んでいく。頼むから待ってくれ。
 そんな俺の願いなど叶うわけも無くカプセルの中で寝ていた美女が目を覚まし立ち上がる。

「状況を確認しました。おはよう御座いますマスター」
「…………」
 俺の目のまでいったい何が起きているのかさっぱり理解できなかった。全裸の女が微笑みながらマスターと口にしている。え?つまりこれって

「従順メイド来たあああああああぁぁ――グヘッ!」
 拳を突き上げて歓喜に浸っていると突然腹部に強烈な鈍痛が襲い掛かり吹き飛ばされる。

「って何しやがる!」
「黙りなさい。この脆弱で、不遜で、愚かで、ゴブリンよりも低脳な蛆虫が」
「なんだと!だいたいマスターの俺を殴るってどういうことだ!」
「やはり低脳な蛆虫。いえ、それでは蛆虫に失礼ですね。この低脳なミジンコ。どうして私が魔力も無い低脳で、脆弱で、能無しのミジンコをマスターにしなければならないのです。それは私と高貴な存在であるマスターに失礼と言う物。万死に値します。ですので今すぐ自殺してください」
「なんでそうなるんだよ!」
「では、私自ら処分します」
「だからなんでそうなるんだよ!だいたい俺じゃなかったら誰がお前のマスターになるんだよ!」
「そんなの決まっています。素晴らしい魔力量の持ち主であるこの方です」
 そう言って手で示した先には毛繕いをする銀の姿があった。

「ま、まさか。お前のマスターって銀の事か?」
「当然です。やはり貴方の脳みそはミジンコ以下ですね」
 だんだんと罵倒が酷くなってないか?
 いや、それよりもだ。

「いったいお前は何なんだ?」
「何なんだ。とは?」
「だからお前は何者だって事だよ!」
「そんな事も知らないのですか」
「知るわけ無いだろ!遺跡の中で見つけたんだから!」
「遺跡?それはなんの事ですか?今は帝国暦894年6月25日では?」
「違う。今は公暦1326年9月17日の月曜日だ」
「では、帝国はどこに?」
 こいつは何を言ってるんだ?帝国?ん?帝国ってまさか。

「お前が言っている帝国ってレグウェス帝国の事か?」
「それ以外に何があるのです。私を造った創造主は帝国技術開発局局長レイモンド・B・ゼスティファ様です」
「そうか。だがその帝国は1500年前に滅んだぞ」
「何を戯言を。どうやら貴方の脳みそは私が想像している以上に深刻なようですね」
「そう思うんなら自分の目で確かめたら良いだろうに」
「………そうですね。それが一番のようです」
 俺が平然としている事が気に食わなかったのか。そう言うと銀を抱き変えて外に出ようとした。

「ちょっと待て」
「何ですか?」
「悪いが、その前にこれでも着てくれ。裸のまま外をウロウロされるのは色々と拙い」
「言っておきますが私は貴方のことを微塵も興味ありません。と言うよりもさっさとこの場から消えてください」
 なんて酷い言われようだ。イザベラのところに居るクレイジー三姉妹よりも毒舌の持ち主だ。

「それに私は魔導機械人形サイボーグ。正式名魔導機械人形サイボーグRS型BM-01、アインと言います。ですので生殖行為は出来ても繁殖は不可能です」
「待て魔導機械人形だと。それってオートマタの事か?」
「あんな時代遅れのロートル人形と一緒にしないで下さい」
「分かったからまず服を着てくれ。でないと俺が変態に思われる」
「確かにこの格好ではもしもの戦闘に支障を来たす可能性がありますね」
 そう言うとアインは部屋の引き出しからメイド服を取り出す。

「服あったのか」
「何を当然な事を。貴方と違い局長は素晴らしい頭脳の持ち主。これぐらいの予想するまでもないでしょう」
 だけどきっとメイド好きだ。でないとメイド服なんて用意しないはずだ。
 メイド服に黒のブーツ。完全なメイドがそこに居た。
 美女のメイドか。マジで綺麗だ。性格は最悪だが。

「それではマスター参りましょう」
 そう言って銀を抱きかかえて外に出ると。

「どうだ俺が言った通りだったろ」
「どうやら貴方が嘘を言っていないと言う事が分かりました。ここら一体の地形を最新データと照らし合わせましたが最低でも1500年が経過している事が分かりましたので」
 それってつまり帝国が滅んでも直ぐに今の帝国が出来たわけじゃないって事だよな。帝国の歴史はまだ1300年ぐらいだったはずだからな。
 その後遺跡の中を調べたがそれらしい物は見つからなかった。ま、一応後でボルキュス陛下に伝えておくか。

「銀、村に戻るぞ」
「ガウッ!」
 俺がそう言うと銀は俺の腕の中に戻ってきた。

「な、何故私ではなくその様な下等生物の許へ」
「これが俺と銀の信頼度だ」
「くっ!ですが直ぐにでもその信頼を私が圧倒することでしょう」
 いったいその自信はどこから来るんだ?
 村に戻ると俺が助けた女性たちが駆け寄ってきた。

「ジンさんどこに行ってたんですか!」
「ちょっとあの遺跡の探索にな。まだ未発掘の遺跡だから調査して国に報告しないといけないんだ」
「そうだったんですか。それでその人は?」
「私はサ――んむっ!」
『さ?』
「な、何でもない!彼女の名前はアインって言って偶然遺跡の前で出会ったんだ」
「そうなんだ」
「ふう……っと!」
 またしもてアインの拳を食らうところだったが未然に防ぐ。

「っ!」
「(悪いがさっきと違って手加減は出来ないぞ)」
「…………」
 俺の言葉を理解したのか捻じ込もうとしていた拳を引っ込めた。それにしてもなんて力だ。咄嗟だったから4%の力を使って止めたけどギリギリだったぞ。これが滅んだレグウェス帝国の技術力の力か。

「さて、俺はこれから帝都に戻るがどうする?」
「私たちはこの村に残ります。見ず知らずの私たちを招いてくれた恩もありますから」
「そうか」
「でも、たまには遊びに来てくださいね!」
「ああ、今度は普通に遊びにくるさ」
 この村に残れば合える頻度が劇的に減るとは言え、そこまで寂しそうな顔をしなくても良いだろうに。

「じゃあな」
「また会いましょうね!」
「楽しみにしてるから!」
「絶対に来て下さいね!」
「本当に有難う御座いました!」
 依頼主の老人、その孫、村人、助けた女性たちに見送られながら俺、銀、アインの1人と1匹と1機は帝都に向かって村を後にした。
 村が見えなくなるところまで来た。ここら辺で良いだろう。

「銀、元の姿に戻ってくれ」
「ガウッ!」
 再び銀は元の3メートル超えの大きさになる。

「これがマスターの本当のお姿。なんて立派で凛々しいのでしょうか」
 ほんとこいつって自分が認めた相手にしか靡かないな。それに対して俺には冷たい目を平然と向けてくるからな。
 そう思いながら俺は銀の背中に乗る。

「マスターの背中に乗るとは思い切った事を。どうやら死にたいようですね」
「なんでそうなる。この村に来る時だってこうやって来たんだ。お前がどう思うが銀は嫌がってないだろうが」
「そ、それは………」
「それよりもさっさと乗れ」
「メイドである私がマスターの背中にですか……」
「嫌なら走って帝都に向かうか?俺は別にそれでも構わないけど」
「くっ!仕方がありません。マスターのお世話をするためです」
 そう良いながら銀の背中に乗る。

「銀、向かってくれ」
「ガウッ!」
 そう言うと銀は帝都へと走った。

「くっ!」
 後ろに座るアインに視線を向けるとどうにか銀の毛を握り締めて耐えている。ま、新幹線どころか戦闘機よりも速い速度だからな無理もないか。どちらかと言えばこの速度に耐えている事の方が凄いと言えるな。だが、この俺が先ほどの罵倒を気にせずに何もしないと思ったら大間違いだ。

「どうした辛そうだな」
「だ、だまりなさい。でないとその何も詰まっていない頭を撃ち抜きますよ」
「ほう、それは面白い。ならやってみろよ。ま、手を放せるならの話だがな」
「くっ!後で覚えておきなさい」
 ああ、なんて爽快な気分なんだ。これほど心が清清しい想いになるのは何時以来だ。
 結局帝都に到着するまで俺の鬱憤晴らしは続いた。これからの移動は全て銀に任せることにしよう。そうなると依頼も帝都から遠い場所を選ばないとな。
 帝都が見えてきたあたりで止まり銀には小型犬ほどになって貰う。でないと帝都の警備兵が国に報告して大騒ぎになりかねないからな。

「死ね!」
「っと危ない危ない」
 背後から強烈なハイキックが襲ってくるが俺はそれを難なくと躱す。

「どうやら私の推測は正しかったようですね」
「推測?何のことだ?」
「いったい貴方は何者ですか?魔力の無い能無しがどうして私の攻撃を受け止め、マスターの速度にも平然とし、背後からの攻撃を楽々と回避出来るのですか?」
「おいおい、まさかお前まで魔力量+魔法属性の数=実力と思ってるんじゃないだろうな」
「それ以外何がありますか?」
 マジか。帝国が滅んで1500年。つまりそれ以上前から魔力量+魔法属性の数=実力ってのが常識として根付いたってのか。もうこれは誰かの陰謀としか思えないんだが。

「はぁ……」
「なんですかそのため息は、とても腹が立ちます。ですので死んでください」
 俺はお前と初めて会話してからずっと苛立ってるよ。

「それなら本当の実力ってのを教えてやるよ」
「どうやらジョークを言うユーモア性は少しは持ち合わせているようですね」
「良いからさっさと来い」
 俺の挑発にアインの表情から笑みが消える。その姿はまさに殺戮機械キリングマシン。無表情で敵に一切の同情することなく殺戮を遂行する。良いね。俺が知る限りこの大陸に来て一番の実力者だ。いったいどんな戦いが出来るのか楽しみだぜ。
(標的実力スキャン開始………魔力0……推測魔法属性皆無。勝率0%・・。おかしい。どうしてこんな結果になるのです。まさかどこか壊れて……いえ、壊れてはいません。では何故?)
 ――本当の実力って奴を教えてやるよ
(本当の実力……いったいそれはどういう意味?)

「おい、来ないのか?」
「いえ、充分に理解しました」
「何がだ?」
「絶対に教えません」
(今の私では貴方に勝てないなんて口が裂けても言えません)
 いったい何だったんだ?結局その後俺たちは帝都の中に入りホテルに戻るのだった。あ、ボルキュス陛下に報告するのは……明日で良いか。
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