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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第十九話 ギルド「ガンナーズ」入社試験
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「確かに共に生活し学んできた仲間が居るのと一人で冒険者になった者ではその思想は違うかもしれないな」
「だから俺はその本質を教え、パーティーの凄さと大切さを試験中に教えただけだ。そしたら偶然にも俺と組んだ班全員が合格しただけのことだ」
『………………』
「ん?どうかしたのか?」
なんで全員呆けた表情をしてるんだ。変な事でも言ったか?
「まさかそれを短時間で教えたのかい。それも実技試験の最中で」
「教えるのは簡単だし、運良く俺の班の奴らは物分りが良かっただけだ。だから誰もが俺の言葉を信じ行動してくれただけだ」
(ジン君は運が良かった、簡単だったと片付けているが普通はそうはいかない。自分の考えを変えると言うのは早々出来ることじゃないからな。それを変えさえるだけの力。不愉快に思わせないだけの力を彼はまさに持っている。それは上に立つべき人間が持つ力だ。だがジン君はその事に気づいていない。つまり無意識でそれをやってのけているってことだ。恐ろしい。もしも彼が他国の王にでもなればその国は一気に発展し力をつけるだろう)
ん?ボルキュス陛下の顔色が悪いが悪い物でも食ったのか?
「そ、それでジン君はこれからどうするんだい?」
「勿論ギルドに入って冒険者活動をするつもりだ。出来ればこの都市にあるギルドに入社したいと思っている。この街を気に入ったからな」
「そ、そうか!それは嬉しいね!」
急に元気になったな。そんなにこの都市を褒められてた事が嬉しいのか。ま、国のトップとしては嬉しいのかもしれないけど。
食事も終わり、俺はボルキュス陛下たちとソファーに座りながら談話する。
「それでジン君は冒険者になったわけだけど。どんなギルドに入りたいと思ってるんだい?」
「どんなって言われてもな」
俺が知る限りでもギルドには種類はある。
魔物討伐を専門にするギルド。
護衛や犯罪者を討伐専門にするギルド。
ダンジョンや遺跡と言った場所を探索を専門にするギルド。
生産系ギルド。
入手困難と言われている食材や素材などを取ってくるギルド。
または後方支援を得意とし他のギルドからの要請で依頼に同行するギルドなど様々だ。
俺は戦いが好きだし魔物の知識もそれなりにある。あのきまぐれ島で5年間も生きてきたからな。ま、こっちにいる魔物に当てはまるかと言われれば分からないが。だから魔物討伐の専門ギルドも悪くないが、食材や素材を集めるギルドにも興味はある。もしかしたら銀に美味しいものを食べさせてやれるかもしれないからな。
「俺としては魔物討伐専門ギルドかな」
「そうか。ならこちらでいくつか目ぼしいギルドを探して推薦状を書いておこう」
「いや、そこまでして貰うわけにはいかない。流石にここからは自分で探したいからな」
「そうか。それは残念だ」
正直それはとても、とてもありがたい!だが何か裏がありそうで怖い。俺の直感がそう言っている。
「なら冒険者ランクについてはどこまで知っているんだい?」
「冒険者ランクはG~SSSランクまであり、冒険者なりたての人は試験合格者、学校に通ってスカウトされた者問わず最初はGランクスタート。で、GランクからFランクに上がるのは簡単だと聞いている」
「その通りだ。Gランクは言わば教育機関みたいなものだ。だから簡単な依頼を三つこなせば誰だってFランクにあがることが出来る。だけどそこからは一定の活躍、もしくはポイントを稼がなければランクは上がらない。勿論依頼のランク度によって依頼を受ける数は変わってくるが冒険者規定で自分のランクより一つ上までのランクの依頼しか受けることが出来ない。ここまでは知っているね?」
「ああ、学園に通っている時に教えて貰ったからな」
本当の事を言えば、編入試験前にイザベラに叩き込まれただけど。今思い出しただけでもあれは地獄だったな。冒険者試験の方が楽だと思えたぐらいだからな。
「それでだけど、学校に通っていた生徒たちと違いジン君たちは入社試験を受けるわけだけど。勿論スカウトされない限り学校に通っていた生徒たちも入社試験は受ける。だけどハッキリ言って君たちと卒業間近の学生とでは入社試験の厳しさは段違いだ。理由は君たちは学校に通っていないと言う事はそれだけで習うべき知識や経験が不足していると言う事だ。だからギルド側が欲するのは直ぐにでもパーティーに組み込み依頼をこなせる即席の新人だけなんだ。言うなれば第二の関門とも言うべきだろう」
第二の関門ねぇ。つまり冒険者試験が第一関門。次にギルドの入社試験に合格することが第二関門ってことか。ま、そうだよな。冒険者として活躍するなどこかのギルドに入る事が前提条件だ。フリーの冒険者も居るが収入も手に入る情報量など安心度で言えば桁違いだろうからな。
「だからその第二の関門をクリアしない限り安心な未来は無いと思ったほうが良い」
「分かった」
「さ、話はここまでにしよう。そうそうギルドの求人応募は冒険者サイトで見られるから。勿論見られるのは冒険者だけだから。そこらへんは安心していいよ」
「何から何まで教えてくれてありがとうな」
「なに、シャルロットを助けてくれたお礼さ」
俺としてはそれだけじゃないような気もするんだが。
その日用意された客室で一泊する事になった。相変わらずフカフカなベッドだ。俺が泊まっているビジネスホテルじゃこうはいかないな。
9月7日金曜日。
朝食は堪能し皇宮を後にした俺はベンチに座りながら冒険者専用サイトにあるギルド求人募集の欄を見ていた。
見ていて分かったことが冒険者だけでなく、ギルドにもランクが存在するらしい。で、ギルドランクのつけ方が依頼達成数と依頼難易度などのポイントを生産して冒険者組合が決めるらしい。つまりは冒険者ランクとあまり変わらないわけだ。
ならギルドメンバーが多いほうが良いのではって思うかもしれないが、人件費、光熱費、依頼未達成などで支払う賠償金など様々な問題も増えてくる。ギルドは言い換えれば会社だ。有名なギルドであれば指名依頼だって殺到するだろう。そうなればそれだけでも入ってくるお金やポイントも変わってくる。
因みにギルドランクはF~SSまで存在する。勿論ランクが高ければそれだけで指名依頼時に支払う金額も高くなるしギルドメンバーのランク次第では上乗せする必要性も出てくるわけだ。色々と面倒だな。
だから大抵は組合を経由しての依頼を出すわけだが、ただ依頼を受けるかどうかは冒険者次第だし、誰が受けるかは分からない。つまりあまり評判の良くないギルドが受ける場合だってある。勿論その時は賠償金を払うことになるが上手く躱したり、最悪脅して揉み消そうってギルドも存在しなくは無いらしい。もうそれは悪徳業者だろ。
また給料もギルドによって様々だ。
月給の所もあれば、完全歩合制の所もある。また依頼を達成した報酬の一部をギルドに支払い残りは依頼を受けた冒険者に支払われると言う所もあるらしい。勿論パーティーで受けた場合は平等に振り分けされる。中には銃使いや剣使いを贔屓するギルドもあるそうだがそこはギルドによって様々だ。
「さて、どのギルドにするかな」
求人募集しているギルドの名前とは別にギルドランクと組合からの評価も付いている。評価は5段階評価。数字が5に近い程言い訳か。
お、ここなんて良いんじゃないか。ギルドランクB。評価4.1。ここなら安心できそうだ。
俺は早速応募表記に指名年齢、冒険者ランク、記入する。履歴はあまり目立ちたくないしスヴェルニ学園中退で良いか。あとは電話番号を記入して送信っと。
リィリィリィリィリィ!
「もう電話が掛かってきた!」
俺は応答ボタンをタップして耳に当てる。
「もしもし、鬼瓦仁ですけど」
『応募してくれたのは君だね。悪いんだけど今から言う場所に直ぐ来てもらえるかな』
「分かりました」
場所を聞いた俺は早速向かうが。正直場所なんて分からないのでスマホのマップを見ながら向かった。
15分ほどで到着した俺の前には「ガンナーズ」と書かれた看板のビルがあった。
中に入り受付で入社試験の事を説明した俺は応接室に案内された。
「ジ、ジンさん!」
「カルア。お前もここの入社試験を受けるのか?」
「は、はい。ジンさんもですか?」
「ああ。求人を見て受けようと思ったんだ」
「そうなんですね」
まさかカルアが居るとは思ってなかったが別にかまわない。求人項目には採用人数2人と書いてあったからな。なんの問題もない。
応接室で待っているとタバコを咥えた一人の女性が入ってきた。
「君たちが応募してきた新人だね。私の名前はカルメ・デルハース。ギルド、ガンナーズのギルドマスターだ」
これまた風格のありそうな女性が出てきたな。ヤ○ザで姉御なんて言われてても俺は納得するレベルだぞ。
「先にこちらの不手際を謝罪させて貰いたい。求人には採用人数2と表記されていたがそれはこちらの不手際だ。本当は1人だ」
「え!」
おいおい嘘だろ。つまり受かったとしても俺かカルアのどちらか一人と言う訳か。
「そこで2人には入社試験を受けて貰うわけだが、他のギルドにも応募しているのなら教えて欲しい」
なるほどそれも採用判定に咥えるつもりか。気に入らないな。ギルド側にも事情があるとは言えこちらの足元を見たかのような採用試験なんて気に入らない。ましてやミスをしたのはそっちだろうに。
「わ、私はここだけです!テレビでここの前のギルドマスターが活躍するのを見ました。私はそれに憧れて冒険者になり、そしてここに必ず入社しようとずっと夢見てました!」
「そうか……それで君は?」
「悪いが俺は今回の試験は降りさせて貰う。ギルド側であるあんた達にも色々と事情があるのは分かる。だけど受験者の足元を見たような質問をしてくるようなギルドに俺は入る気はない」
「そうか。なら今すぐ試験を行う。付いてきたまえ」
「ジ、ジンさん!すいません私のせいで……」
「誰もカルアのせいじゃねぇよ。それよりもずっとここのギルドに入りたかったんだろ。俺は別を探せば良いだけの話だからな」
「ですが……」
「良いから。ほら、早く行かないと失格に――」
「待て。お前たちは知り合いなのか?」
「この間の冒険者試験で同じ班だった仲間だが、それがどうした?」
「そうなのか。ならオニガワラ・ジン。お前も試験だけでも見ていくか?」
「良いのか?」
「共に冒険者試験を合格した仲間なんだろう」
案外悪い奴ではないのかもしれない。ただギルドを守る責任があるため、どうしてもそう言わざる得なかったのかもな。ま、俺としては別を受ければ良いだけの話だけど。
で、俺たちが案内されたのは地下にある訓練場だった。
「訓練場なんかあるのか?」
「Bランクのギルドで持っているところは少ないがな。それでは試験を始める」
「はい!」
試験内容は射撃だ。動く標的を時間制限以内にどれだけ命中させることが出来るかだ。
(せっかくジンさんが入社試験を譲ってくれたんです。絶対に合格してみせます!)
「それでは試験開始!」
速っ!
いや、俺の動体視力を持ってすれば遅いほうではあるが、あの速度で動く的を撃ち抜くなんてそうそう無理だろ。
しかしカルアの射撃速度、射撃制度はずば抜けていた。殆ど的のど真ん中に命中とか凄いな。どうしてこれで32回も冒険者試験を受けたのかとても謎だ。
数分後試験が終わると、カルメが微笑みを浮かべて言った。
「カルア・テカータ。おめでとう合格だ」
「あ、ありがとうございます!」
涙目になりながらも満面の笑みを浮かべながらお辞儀をするカルア。良かったな小さい時からの夢が叶って。
「ジンさんもありがとうございます!」
「俺は何もしてないだろうに」
「いえ、ジンさんが譲ってくれたおかげです!」
二人受けようが一人が受けようがギルドマスターが認めれば合格なんだからお礼を言われることじゃないだろうに。
「それじゃあなカルア。冒険者として頑張れよ」
「はい!」
「待て」
出て行こうとした時カルメに止められてしまった。俺は何度別れの最中を邪魔されるんだ。
「なんだ?」
「一応お前の実力も見てみたい」
「別に良いけど、俺は接近戦専門だぞ」
「だが遠距離攻撃は可能だと書いてあるが?」
「確かにそうだが」
「なら、見せてくれ。あの的に10発撃ってくれればそれで構わない」
「まあ良いけど」
的の距離はおよそ25メートル離れている。小学校のプールぐらいの距離だな。
「ならやるぞ」
「ああ、好きにしてくれ」
俺は的の真ん中目掛けてパチンコ玉を10発弾き飛ばす。時間にして5秒か。
「これで良いか?」
「……………」
あれ?固まってる?なんで急に固まるんだ?また流行のフリーズなのか?まったく撃てとか言ったくせになんだよこの扱いは。
「じゃあなカルア。また会ったら食事でも行こうぜ」
「は、はい!」
俺はこうしてギルド、ガンナーズを後にした。さてギルドを探すか。
「だから俺はその本質を教え、パーティーの凄さと大切さを試験中に教えただけだ。そしたら偶然にも俺と組んだ班全員が合格しただけのことだ」
『………………』
「ん?どうかしたのか?」
なんで全員呆けた表情をしてるんだ。変な事でも言ったか?
「まさかそれを短時間で教えたのかい。それも実技試験の最中で」
「教えるのは簡単だし、運良く俺の班の奴らは物分りが良かっただけだ。だから誰もが俺の言葉を信じ行動してくれただけだ」
(ジン君は運が良かった、簡単だったと片付けているが普通はそうはいかない。自分の考えを変えると言うのは早々出来ることじゃないからな。それを変えさえるだけの力。不愉快に思わせないだけの力を彼はまさに持っている。それは上に立つべき人間が持つ力だ。だがジン君はその事に気づいていない。つまり無意識でそれをやってのけているってことだ。恐ろしい。もしも彼が他国の王にでもなればその国は一気に発展し力をつけるだろう)
ん?ボルキュス陛下の顔色が悪いが悪い物でも食ったのか?
「そ、それでジン君はこれからどうするんだい?」
「勿論ギルドに入って冒険者活動をするつもりだ。出来ればこの都市にあるギルドに入社したいと思っている。この街を気に入ったからな」
「そ、そうか!それは嬉しいね!」
急に元気になったな。そんなにこの都市を褒められてた事が嬉しいのか。ま、国のトップとしては嬉しいのかもしれないけど。
食事も終わり、俺はボルキュス陛下たちとソファーに座りながら談話する。
「それでジン君は冒険者になったわけだけど。どんなギルドに入りたいと思ってるんだい?」
「どんなって言われてもな」
俺が知る限りでもギルドには種類はある。
魔物討伐を専門にするギルド。
護衛や犯罪者を討伐専門にするギルド。
ダンジョンや遺跡と言った場所を探索を専門にするギルド。
生産系ギルド。
入手困難と言われている食材や素材などを取ってくるギルド。
または後方支援を得意とし他のギルドからの要請で依頼に同行するギルドなど様々だ。
俺は戦いが好きだし魔物の知識もそれなりにある。あのきまぐれ島で5年間も生きてきたからな。ま、こっちにいる魔物に当てはまるかと言われれば分からないが。だから魔物討伐の専門ギルドも悪くないが、食材や素材を集めるギルドにも興味はある。もしかしたら銀に美味しいものを食べさせてやれるかもしれないからな。
「俺としては魔物討伐専門ギルドかな」
「そうか。ならこちらでいくつか目ぼしいギルドを探して推薦状を書いておこう」
「いや、そこまでして貰うわけにはいかない。流石にここからは自分で探したいからな」
「そうか。それは残念だ」
正直それはとても、とてもありがたい!だが何か裏がありそうで怖い。俺の直感がそう言っている。
「なら冒険者ランクについてはどこまで知っているんだい?」
「冒険者ランクはG~SSSランクまであり、冒険者なりたての人は試験合格者、学校に通ってスカウトされた者問わず最初はGランクスタート。で、GランクからFランクに上がるのは簡単だと聞いている」
「その通りだ。Gランクは言わば教育機関みたいなものだ。だから簡単な依頼を三つこなせば誰だってFランクにあがることが出来る。だけどそこからは一定の活躍、もしくはポイントを稼がなければランクは上がらない。勿論依頼のランク度によって依頼を受ける数は変わってくるが冒険者規定で自分のランクより一つ上までのランクの依頼しか受けることが出来ない。ここまでは知っているね?」
「ああ、学園に通っている時に教えて貰ったからな」
本当の事を言えば、編入試験前にイザベラに叩き込まれただけど。今思い出しただけでもあれは地獄だったな。冒険者試験の方が楽だと思えたぐらいだからな。
「それでだけど、学校に通っていた生徒たちと違いジン君たちは入社試験を受けるわけだけど。勿論スカウトされない限り学校に通っていた生徒たちも入社試験は受ける。だけどハッキリ言って君たちと卒業間近の学生とでは入社試験の厳しさは段違いだ。理由は君たちは学校に通っていないと言う事はそれだけで習うべき知識や経験が不足していると言う事だ。だからギルド側が欲するのは直ぐにでもパーティーに組み込み依頼をこなせる即席の新人だけなんだ。言うなれば第二の関門とも言うべきだろう」
第二の関門ねぇ。つまり冒険者試験が第一関門。次にギルドの入社試験に合格することが第二関門ってことか。ま、そうだよな。冒険者として活躍するなどこかのギルドに入る事が前提条件だ。フリーの冒険者も居るが収入も手に入る情報量など安心度で言えば桁違いだろうからな。
「だからその第二の関門をクリアしない限り安心な未来は無いと思ったほうが良い」
「分かった」
「さ、話はここまでにしよう。そうそうギルドの求人応募は冒険者サイトで見られるから。勿論見られるのは冒険者だけだから。そこらへんは安心していいよ」
「何から何まで教えてくれてありがとうな」
「なに、シャルロットを助けてくれたお礼さ」
俺としてはそれだけじゃないような気もするんだが。
その日用意された客室で一泊する事になった。相変わらずフカフカなベッドだ。俺が泊まっているビジネスホテルじゃこうはいかないな。
9月7日金曜日。
朝食は堪能し皇宮を後にした俺はベンチに座りながら冒険者専用サイトにあるギルド求人募集の欄を見ていた。
見ていて分かったことが冒険者だけでなく、ギルドにもランクが存在するらしい。で、ギルドランクのつけ方が依頼達成数と依頼難易度などのポイントを生産して冒険者組合が決めるらしい。つまりは冒険者ランクとあまり変わらないわけだ。
ならギルドメンバーが多いほうが良いのではって思うかもしれないが、人件費、光熱費、依頼未達成などで支払う賠償金など様々な問題も増えてくる。ギルドは言い換えれば会社だ。有名なギルドであれば指名依頼だって殺到するだろう。そうなればそれだけでも入ってくるお金やポイントも変わってくる。
因みにギルドランクはF~SSまで存在する。勿論ランクが高ければそれだけで指名依頼時に支払う金額も高くなるしギルドメンバーのランク次第では上乗せする必要性も出てくるわけだ。色々と面倒だな。
だから大抵は組合を経由しての依頼を出すわけだが、ただ依頼を受けるかどうかは冒険者次第だし、誰が受けるかは分からない。つまりあまり評判の良くないギルドが受ける場合だってある。勿論その時は賠償金を払うことになるが上手く躱したり、最悪脅して揉み消そうってギルドも存在しなくは無いらしい。もうそれは悪徳業者だろ。
また給料もギルドによって様々だ。
月給の所もあれば、完全歩合制の所もある。また依頼を達成した報酬の一部をギルドに支払い残りは依頼を受けた冒険者に支払われると言う所もあるらしい。勿論パーティーで受けた場合は平等に振り分けされる。中には銃使いや剣使いを贔屓するギルドもあるそうだがそこはギルドによって様々だ。
「さて、どのギルドにするかな」
求人募集しているギルドの名前とは別にギルドランクと組合からの評価も付いている。評価は5段階評価。数字が5に近い程言い訳か。
お、ここなんて良いんじゃないか。ギルドランクB。評価4.1。ここなら安心できそうだ。
俺は早速応募表記に指名年齢、冒険者ランク、記入する。履歴はあまり目立ちたくないしスヴェルニ学園中退で良いか。あとは電話番号を記入して送信っと。
リィリィリィリィリィ!
「もう電話が掛かってきた!」
俺は応答ボタンをタップして耳に当てる。
「もしもし、鬼瓦仁ですけど」
『応募してくれたのは君だね。悪いんだけど今から言う場所に直ぐ来てもらえるかな』
「分かりました」
場所を聞いた俺は早速向かうが。正直場所なんて分からないのでスマホのマップを見ながら向かった。
15分ほどで到着した俺の前には「ガンナーズ」と書かれた看板のビルがあった。
中に入り受付で入社試験の事を説明した俺は応接室に案内された。
「ジ、ジンさん!」
「カルア。お前もここの入社試験を受けるのか?」
「は、はい。ジンさんもですか?」
「ああ。求人を見て受けようと思ったんだ」
「そうなんですね」
まさかカルアが居るとは思ってなかったが別にかまわない。求人項目には採用人数2人と書いてあったからな。なんの問題もない。
応接室で待っているとタバコを咥えた一人の女性が入ってきた。
「君たちが応募してきた新人だね。私の名前はカルメ・デルハース。ギルド、ガンナーズのギルドマスターだ」
これまた風格のありそうな女性が出てきたな。ヤ○ザで姉御なんて言われてても俺は納得するレベルだぞ。
「先にこちらの不手際を謝罪させて貰いたい。求人には採用人数2と表記されていたがそれはこちらの不手際だ。本当は1人だ」
「え!」
おいおい嘘だろ。つまり受かったとしても俺かカルアのどちらか一人と言う訳か。
「そこで2人には入社試験を受けて貰うわけだが、他のギルドにも応募しているのなら教えて欲しい」
なるほどそれも採用判定に咥えるつもりか。気に入らないな。ギルド側にも事情があるとは言えこちらの足元を見たかのような採用試験なんて気に入らない。ましてやミスをしたのはそっちだろうに。
「わ、私はここだけです!テレビでここの前のギルドマスターが活躍するのを見ました。私はそれに憧れて冒険者になり、そしてここに必ず入社しようとずっと夢見てました!」
「そうか……それで君は?」
「悪いが俺は今回の試験は降りさせて貰う。ギルド側であるあんた達にも色々と事情があるのは分かる。だけど受験者の足元を見たような質問をしてくるようなギルドに俺は入る気はない」
「そうか。なら今すぐ試験を行う。付いてきたまえ」
「ジ、ジンさん!すいません私のせいで……」
「誰もカルアのせいじゃねぇよ。それよりもずっとここのギルドに入りたかったんだろ。俺は別を探せば良いだけの話だからな」
「ですが……」
「良いから。ほら、早く行かないと失格に――」
「待て。お前たちは知り合いなのか?」
「この間の冒険者試験で同じ班だった仲間だが、それがどうした?」
「そうなのか。ならオニガワラ・ジン。お前も試験だけでも見ていくか?」
「良いのか?」
「共に冒険者試験を合格した仲間なんだろう」
案外悪い奴ではないのかもしれない。ただギルドを守る責任があるため、どうしてもそう言わざる得なかったのかもな。ま、俺としては別を受ければ良いだけの話だけど。
で、俺たちが案内されたのは地下にある訓練場だった。
「訓練場なんかあるのか?」
「Bランクのギルドで持っているところは少ないがな。それでは試験を始める」
「はい!」
試験内容は射撃だ。動く標的を時間制限以内にどれだけ命中させることが出来るかだ。
(せっかくジンさんが入社試験を譲ってくれたんです。絶対に合格してみせます!)
「それでは試験開始!」
速っ!
いや、俺の動体視力を持ってすれば遅いほうではあるが、あの速度で動く的を撃ち抜くなんてそうそう無理だろ。
しかしカルアの射撃速度、射撃制度はずば抜けていた。殆ど的のど真ん中に命中とか凄いな。どうしてこれで32回も冒険者試験を受けたのかとても謎だ。
数分後試験が終わると、カルメが微笑みを浮かべて言った。
「カルア・テカータ。おめでとう合格だ」
「あ、ありがとうございます!」
涙目になりながらも満面の笑みを浮かべながらお辞儀をするカルア。良かったな小さい時からの夢が叶って。
「ジンさんもありがとうございます!」
「俺は何もしてないだろうに」
「いえ、ジンさんが譲ってくれたおかげです!」
二人受けようが一人が受けようがギルドマスターが認めれば合格なんだからお礼を言われることじゃないだろうに。
「それじゃあなカルア。冒険者として頑張れよ」
「はい!」
「待て」
出て行こうとした時カルメに止められてしまった。俺は何度別れの最中を邪魔されるんだ。
「なんだ?」
「一応お前の実力も見てみたい」
「別に良いけど、俺は接近戦専門だぞ」
「だが遠距離攻撃は可能だと書いてあるが?」
「確かにそうだが」
「なら、見せてくれ。あの的に10発撃ってくれればそれで構わない」
「まあ良いけど」
的の距離はおよそ25メートル離れている。小学校のプールぐらいの距離だな。
「ならやるぞ」
「ああ、好きにしてくれ」
俺は的の真ん中目掛けてパチンコ玉を10発弾き飛ばす。時間にして5秒か。
「これで良いか?」
「……………」
あれ?固まってる?なんで急に固まるんだ?また流行のフリーズなのか?まったく撃てとか言ったくせになんだよこの扱いは。
「じゃあなカルア。また会ったら食事でも行こうぜ」
「は、はい!」
俺はこうしてギルド、ガンナーズを後にした。さてギルドを探すか。
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※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
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