魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒

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第一章 魔力無し転生者は冒険者を目指す

第六十三話 魔物の群れ襲来

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 7月21日土曜日。
 朝食を終えた直後、イザベラに呼び出された俺は現在イザベラの部屋ではなく、サロン室?と言えば良いのかよく分からないが、お茶を飲みながら談話する部屋に来ていた。
 なんだろう……まさか二学期の授業に遅れない為に今から勉強するとかじゃないだろうな。頼むからそれだけは勘弁してほしい。
 表情には出さないが、いや、出したら絶対にさせられそうだから絶対に出さないわけだが、内心は土下座する勢いで願っていると、対面のソファーにイザベラが呼び出した理由を語らい始めた。

「昨日お父様から言われたの。ジンが既に貴族の間で話題になっているらしいわ」
「は?」
 よしっ!勉強じゃなかった!って、俺が貴族の間で話題にんってる?これまた奇妙な事だな。

「なんで俺が話題になるんだ?目立たないように行動していただろう」
「それ、本気で言ってるの?」
 なんで睨む。

「確かに少しは悪名が広まっていたかもしれない」
 編入早々暴力事件を起こしたりしたからな。噂になっても仕方がないな。

「はぁ……価値観や考え方が違うとこれだけ苦労するのね」
 本人を目の前に失礼な奴だな。それに価値観が違うのはどっちだこんな馬鹿デカイ屋敷に住んでいる人間に言われたくはない。

「貴方はね、この私に勝ち、2000人を相手に勝利を掴んだのよ。それだけの力を持つ人間を貴族が欲しがらないわけないでしょ」
 嘆息交じりにイザベラは注目の理由を口にし始めた。

「ハロルドのおっさんが私兵に欲しがったみたいにか?」
「否定したいけど……その通りよ」
 家族の失言に頭を軽く抱えながらも肯定の言葉を口にした。

「だが俺は貴族の私兵になるつもりも軍に入るつもりもないぞ」
「貴族を甘く見すぎよ。欲しいと思った物をどんな手を使っても手に入れるのが貴族。中には非合法な事をしても手に入れようとする貴族だっているんだから」
 俺の甘い認識を正すようにイザベラを注意してくる。
 そこら辺は今も昔も変らないんだな。昔の事なんて全然知らないけど。

「それだけじゃないわ。冒険者たちの耳にはまだ届いていないかもしれないけど、間違いなくこの夏休み期間中には耳に入るでしょうね。最終的には2学期に行われる武闘大会の結果次第では貴族、軍、ギルドの注目を集める事になる。そうなれば間違いなくスカウトがくるでしょうね」
 ま、優勝を狙うつもりでいるからな。そうなれば注目を集めるのは至極当然と言える。

「冒険者からスカウトが来るのはありがたいな」
「その通りなんだけど、気をつけなさいよ」
「分かってるって」
 そう返事したがイザベラは安心するどころか不安が増したように眉を顰めた。
 まったく失礼な奴だな、俺がそうホイホイ付いて行くわけないだろ。色仕掛けだけは分からないが。

「それより付き合ってくれないか?」
「え!?」
「貴様は唐突に何を言ってるんだ!」
 そんな俺の言葉にイザベラは頬を赤らめて驚き、イザベラとの会話が始まってから一言も喋らなかったロイドまで慌てた様子で声を荒立てていた。
 なんで2人はこんなに驚いてるんだ?塩分の取りすぎで血圧が上がっているんじゃないだろうか?

「いや、訓練がしたいから付き合ってくれたら嬉しかったんだが」
「そ、そういう事ね」
「まったく紛らわしい」
 いったい何が紛らわしいって言うんだ。

「でも、ジンから訓練がしたいなんて珍しいわね。あんなに嫌がっていたのに」
「いや、今回訓練するのは俺じゃなくて銀だ」
「「ギンを?」」
 俺の言葉に軽く首を傾げて聞き返してきた。

「ああ。学園に居た時は真面に訓練をさせる事が出来なかったからな。このままだと体だけ成長してしまう。だから銀に戦闘の経験をつませておきたいと思ってな」
 対人戦と言う意味では確かに銀は良い経験が出来ただろう。あの島で銀以上に対人戦をした事がある魔物はいないだろうしな。だが所詮は模擬戦止まりだ。実戦でしか得られない経験を銀は得られていない。
 それに口にしたように真面に訓練させてやれたかと言えば、出来てないのは事実だ。そこで学園でトップクラスの成績を持つイザベラとロイドに銀の相手をして貰えないかと考えたわけだ。

「そういう事ね、私は良いわよ。大した予定も無いし」
「なら、僕も手伝おう」
 俺の予想に反して思いのほか簡単に了承してくれたイザベラとロイド。
 学園から帰ってきた次の日だからなのか、貴族としての務めもない完全なオフの日なのかもしれないが、もう少し悩むと思っていた。
 多分だが、イザベラが言った大した予定も無い。と言うのは予定変更しても大丈夫な内容なんだろう。それよりも勇者や魔王ですら生きて帰るのは困難と言われる地獄島ヘル・アイランドで上位の生物として生きている神狼の力を身を持って経験したいという好奇心とチャンスにイザベラは断る理由がなかったに違いない。
 ロイドもきっと同じ事を考えてはいただろうが、一番の理由としては護衛としての任務が優先されての返答に違いない。
 一旦別れ動ける格好に着替えた俺たちはさっそく訓練所へ向かった。え?朝食を食べたばかりなのにもう戦闘訓練をするのかって。当たり前だ、俺たちはスポーツ選手じゃない。
 将来軍人と冒険者になろうとしている奴らが、食事中に魔物に襲われる可能性も考えず生きていけるかよ。そんな奴は壁の外に出れば一瞬で死ぬ。

「それで何をすれば良いの?」
 ルーベンハイト家が所有する訓練所の1つにやってきた俺たち。
 銀を除き3人でストレッチをしているとイザベラが問うてくる。

「本当なら魔物と戦わせるところなんだが、ここでは難しいみたいだからな」
 思わず本音を漏らす。

「城壁より向こうに行くには許可が要るのよ。お父様に頼めば出来なくも無いけど私用頼むのもね」
 両足を開いた状態で地面に座っているイザベラは右足の爪先を上体を倒しながら左手でガッチリと掴んだ体勢を維持しつつ困った笑みを浮かべていた。その笑みはストレッチが辛いのを我慢しているのか会話の内容に対してなのか少し判断に困るんだが。

「だから2人に頼んだわけだ。俺と銀は何度も闘っているから相手の手の内を知り尽くしている。それじゃ今後他の敵と戦った時に対応が遅れるかもしれないからな」
 色んなスタイルの奴と戦うのが1番の戦闘経験だと俺は思っている。

「なるほどね」
「それじゃ、まずは普通に戦ってみてくれ。それを見て今後の課題を見つけるから」
「分かったわ」
 そう言ってイザベラとロイドは武器を構える。

「元の姿に戻れ」
「ガウッ!」
 俺の一言で徐々に銀の体が大きくなる。全長約2メートル。

「いつのまにそんなに大きくなったのよ!」
「銀は神狼だぞ。固有スキルだっていくつだって持ってる。それに魔物は人間と違って成長速度が速いんだから当たり前だろ」
「だとしてもたった4ヶ月でここまで大きくなるものなの」
「既にブラックウルフリーダーよりも大きいんだが」
 ロイドよ、こいつは神狼だ。魔狼と一緒にしては駄目だぞ。

「それじゃ、始めるぞ。銀遠慮しないで思いっきり攻撃してこい」
「ガウッ!」
 どうやら銀もヤル気満々のようだな。

「それじゃ、始め!」
 試合が開始早々に銀の稲妻ライトニングが二人を襲う。

「ちょっ、なによこの威力!」
「本当に子供なのか!」
 驚きながらも躱した地面は軽い池が出来るぐらい抉られていた。

「威力も馬鹿げているわね」
「言っておくが才能だけなら俺より銀の方が上だからな」
「でしょうね!」
「もっと分かりやすく言うなら魔力量だけでもイザベラの4倍。属性も全て使えるからな」
「なによ、その化け物な狼は!」
「神狼だ」
「そうだったわ!」
 狼系モンスターの頂点と言われている皇帝黒狼エンペラーウルフを容易く屠る力を持つのが神狼だ。つうか神獣は全部が頭が可笑しいんじゃないかって思えるほど規格外の強さだ。
 銀はまだ子供だが、俺が倒した炎龍なら一撃で倒せるだけの力を持っている。ただ戦闘経験が少ないためこうして教えているのだ。因みに銀相手に俺が出す力は最高で10%だ。それぐらいの強さを既に銀は持っているのだ。
 観戦していると一方的に銀が攻めているだけになった。

「おい、これじゃ訓練にならないだろ!なんのために頼んだと思ってるんだ!」
「仕方が無いでしょ!ここまで強いなんて思わなかったんだから!」
 最悪の想定して行動するものだろ普通は。

「銀、魔法攻撃は一旦無しだ。最悪肉体強化までは許すが最初は肉弾戦だけにしてくれ。勿論爪は出すなよ」
「ガウッ!」
 ほんと賢い子育って俺は嬉しいぞ。

「銀が手加減してくれるから存分に闘ってくれ!」
「ギンの訓練のはずが、これじゃ私たちの訓練じゃない!」
「お嬢様、文句を言っている場合じゃありません!」
「分かっているわ!」
 おうおうイラついてやんの。見ている側として面白からこのまま観戦してよ。

「ロイド、そっちに行ったわ!」
「クッ!なんてスピードだ!まったく当たらない!ぐはっ!」
「ロイ――しまっ!」
 駆け寄ろうとしたイザベラに銀の肉球フックで吹き飛ばされしまう。

「そこまで!」
 まさか肉体強化を使わずに勝ってしまうとは俺の予想以上に強くなっていた。
 そんな結果に目を奪われていると銀に抱きつかれてしまった。流石にこの巨体を支えるのはキツい!
 結局押し倒されてしまった俺は褒めてと言わんばかりに尻尾を振る銀に顔を舐められるのだった。
 神狼とのスキンシップの仕方が載ってる本って無いのかな。
 イザベラたちが回復するのまってから俺たちは休憩することにした。

「まさかギンがここまで強いとは思わなかったわ」
「子供だから侮っていた。さすがは神狼だな」
 我が子を褒められているようで嬉しいな。

「ジン、ギンのステータスが見たいんだけど構わないかしら?」
「ああ、良いぞ。勿論他言無用で頼む」
「分かっているわ」
 俺はスマホを取り出して前に登録しておいた銀のステータスを開く。

─────────────────────
 ぎん
 種族 神狼
 レベル 328
 魔力 624000
 力 28400
 体力 27500
 器用 22300
 敏捷性 64100

 固有スキル
 魔命喰マガイ
 天限
 夜天月下

 スキル
 瞬脚Ⅷ
 耐熱Ⅹ
 耐寒Ⅹ
 雷電耐性Ⅹ
 魔法攻撃耐性Ⅶ
 物理攻撃耐性Ⅷ
 状態異常耐性Ⅶ
 危機察知Ⅹ
 咆哮Ⅵ
 気配操作Ⅴ
 魔力操作Ⅵ

 称号
 地獄島の守護者

 属性
火 水 風 土 氷 雷 闇 光
─────────────────────

「お、前より強くなってるな銀」
「ガウッ!」
「「…………」」
 まったく子供の成長は早くて驚かされるぜ。ってまた一時停止してるし。この世界に人たちは好きだな。一時停止が。

「まさかジンだけじゃなくて、ギンにも負けてるなんて思わなかったわ」
「仕方がありません。なんせギンは神狼なのですから」
「そうね」
 自分たちに言い聞かせるように言っている気もするが、今は何も言わないでおこう。

「ま、時間も良い頃合だし屋敷に戻ろうぜ」
「ええ、そうね」
 屋敷に戻るとお風呂に入って汗を流した俺たちは昼食を食べるべく食卓を囲んでいた。
 銀も嬉しそうにお肉を頬張っている。そんなに美味いのか?

「イザベラ、食事のあとで書斎に来てくれ。ロイド君もだ」
「分かりました」
 ん?なにかあったんだろうか?
 ハロルドのおっさんの真剣な表情に俺は勝手にそう推測する。ま、今回は俺は呼ばれてないし大人しく部屋で昼寝でもしてよう。

            ************************

 食事を終えた私とロイドはジンと別れてお父様の書斎へ来ていた。

「それでお話というのは?」
 軽い雑談に花を咲かせることもなく、本題に入る。
 父親とは言え、侯爵家当主相手に対して不遜な態度を取ったことは間違いないでしょう。しかしお父様は気にする様子もなく本題を話し出した。それだけ重大な出来事が起こっていると私は推測できた。

「ああ。先ほど管理塔から連絡があった。どうやらまた魔物たちがこちらに向けて来ているようだ」
 予想通り重大な出来事が起こっていた。
 しかしその内容に腑に落ちない私はお父様に問いかける。

「またですか?こんな短期間で2度も起きるなんてやはりあの森で何か起きたのでしょうか?」
「それは調査してみない事には分からない。今回は前回よりも数は少ないからそれほど危険はないだろう。炎龍に襲われるといった異常事態も早々起きるものでもないしな。だが念のために前回よりも多めに弾薬やらを持って行きなさい」
 前回、炎龍との突如起きた戦闘がお父様の脳裏に過っていると察した私は異見することもなく承諾の言葉を口にした。正直弾薬を以前より多く持って行けるのは現場に向かう者として嬉しい以外の言葉はない。
 私たちルーベンハイト家の兵士たちが使っている武器、弾薬はルーベンハイト家に住む領民たちから集めた税金で購入した物だ。
 つまり血税によって賄われていると言えるでしょう。
 血税はただ魔物を倒すだけに使うわけじゃない。当然上限があり予算として割り振られている。
 だからこそ今回の弾薬を多めに持って行けるというのはありがたい反面血税を沢山使うと言う意味でもある。勿論それは予算内なので大丈夫と言えば大丈夫なのでしょうけど。

「分かりました。今すぐ準備して向かわせて貰います」
「すまないな。本当なら私かライオネルが向かわなければならないところなんだが」
 次期当主であるライオネルお兄様は内政を学んでいる最中で多忙の身。ましてやルーベンハイト家に男児は長男であるお兄様のみ。そんなお兄様に何かあればルーベンハイト家の未来に影を落とすことになる。
 勿論、内政だけでは次期当主は務まらない。最悪の場合領民を守るべく戦場に赴く必要だってある。ある程度戦える力を身に着けておく必要もあるし、次期当主の力を領民に知らせ安心感を与える必要もあるでしょう。けど、それは今回は違うと言うだけの話。
 それを理解している私は不満もなく、むしろルーベンハイト家のために戦える事が誇らしくてたまらない。

「いえ、お父様もお兄様も多忙な身。家族として助け合うのは当然です」
「うぅ……本当に立派になったな」
 そう言って目じりを抑える。

「出動の度に泣かないで下さい!」
 まったくお父様は家族には弱いんだから。

「それでは失礼します」
 書斎を後にした私たちはそれぞれの寝室で戦闘服に着替える。
 誰もが疑問に思ったかもしれないが学生が魔物の森に出動することは殆どない。大抵は学園を卒業してからだ。だけど私はいち早く魔物との戦闘に慣れておくためにお父様から許可を頂いている。そのため魔物が住まう禁止区域に入る事が許されているのだ。

「お父様に聞くのを忘れていたわ」
 ジンは連れて行って良いのかしら?いや、ジンは客人よ。客人に貴族の仕事を手伝って貰うわけには……でもジンは私たちより遥かに強い。ここは万全を期すためにジンも連れて行きましょう。
 着替え終えた私は愛用の武器を携えてジンの寝室に向かった。

            ************************

 トントン。
 ドアを叩く音で目を覚ます。まったくようやく意識を飛ばしかけていたのに。誰だよ。
 ドアを開けた先には真剣な面持ちのイザベラが立っていた。

「どうしたんだ?」
「ジンに頼みがるの?」
「頼み?」
 イザベラから頼みなんて珍しいな。
 確かにイザベラは貴族だが、他の貴族ほどプライドは高くない。いや、己の弱さをしっかりと受け止められるだけの精神力を持っている分立派な貴族と言える。そんな人物が俺に頼みごとか。
 その時イザベラの腰に武器が携帯されているのが目に入る。どうやら問題が起きたようだな。

「ええ、今から私たちと一緒に禁止区域に来て欲しいの」
「禁止区域って魔物が住んでる森の事だよな?」
 クソ高い城壁で都市は守られている。だがその城壁の外は全てが禁止区域となっているのだ。だから禁止区域と言っているが、どちらかと言えば魔物が住む森の中に都市があり、そこが安全区域と言ったほうが正しい。

「そうよ。そこでまた魔物の集団がこの都市目掛けて進行しているらしいの。だからそれを阻止するのを手伝って欲しいの」
 一切真剣な面持ちで肯定したイザベラ。
 不安も申し訳なさも感じさせない凛々しい表情。
 それだけ俺の力を認めてくれているのだと高揚感を感じさせるほどだ。

「別に構わないぞ」
「ありがとう。なら直ぐに着替えて玄関に来てちょうだい」
「わかった」
 俺は急いでアイテムボックスから学園で使用している戦闘服に着替える。

「銀、魔物と戦闘が出来るぞ」
「ガウッ!」
 どうやら銀も久々の戦闘に血を滾らしているようだ。さすがはアイツの息子だな。
 玄関前でイザベラとロイドと共に車に乗り込み装甲列車が待機している駅へと向かった。

「それで今回はどんな魔物の集団なんだ?」
「場所は前回とは反対の西側よ。数はおよそ200ほど。種類はブラックウルフやゴブリンと言った低級モンスターばかりだけど、1体だけランクB+のオークウォーリアが居るって情報よ」
 集団っていうより軍団って言ったほうが正しい気もするが、何度も経験しているイザベラたちからしてみればまだ少数なのだろう。

「それに前回みたいに炎龍に襲われる危険性も考慮しなくてはならいない。気を引き締めていくわよ」
 稀な事とはいえ、一度でも経験したら対策するのは当たり前だな。
 ま、俺はいつもどおりに戦うだけだ。
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