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第一章 魔力無し転生者は冒険者を目指す
第五十六話 団体戦学園代表表彰式
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武闘大会団体戦学園代表選抜のルールは学科別で決まった優勝、準優勝のチーム合計20チームで学園代表の5つの椅子を奪い合う。
まずクジ引きでAグループとBグループに分かれて試合を行い上位2チームが学園代表として二学期に行われる武闘大会の出場が決定される。
残りの1チームは両グループで3位と4位だったもので再びリーグ戦を行い1位だったものが出場する。またそのリーグ戦に出場する際成績が同じだった場合、試合終了時の人数差で判定する。それでも同じだった試合終了時のタイムで判定する。それでも同じだった場合は主審の旗の数となる。それでも同じだった場合はリーダー同士のジャンケンで決める。ってジャンケン!なんてシンプルかつ残酷な決め方。どうせこのルールにした委員会が最後は面倒になったに違いない。
「委員会にはまともに仕事する奴等がいないのか?」
「まずそこまで行ったことが無いからね。適当にもなるさ」
あれから4日が過ぎて現在は7月5日木曜日。
保健室のベッドで裸で横になっている俺とアヴァ先生はタブレットで試合のルールを見ながらそんな事を呟いていた。え?エレイン先生に叱られただろ。ってあの程度で素直に聞く玉じゃないのだよ。俺とアヴァ先生は。
「俺はいつまでここで入院していれば良いんだ?」
もう寮に戻っても良いと思うんだが。
「明日の朝には退院しても良いさ。まったくどんな生命力だい。普通なら治すのに一ヶ月は掛かる怪我を僅か数日で治すなんてね。本当に化けもんだよ、アンタは」
「だから出場できるって言ったのによ。スタンガンで痺れさせやがって」
「でもそのお陰でここ数日は楽しかっただろ?」
「それは否定しない」
「欲望に素直だねぇ」
「先生だけには言われたくねぇよ」
最近では俺より先生から誘われる方が多いのだ。教師ってやっぱりストレスが溜まるんだろうな。
「てかこんな日中から仕事しなくて良いのかよ」
「怪我人は殆ど来ないから平気さ。アンタぐらいさ。重症な怪我人を作ったりなったりする奴は」
「それはどうも」
まったく皮肉まで言われる始末だ。
「それよりアンタ明日退院だけどどうするのさ」
「ジュリアスたちと観戦に行くさ。俺たちが出てるわけじゃないから興味はないが、学生は強制的に観戦だからな」
「学生の身分も大変だね」
「まったくだ」
社会人として働くよりかはまだマシだけど。
「ま、それまでは楽しい入院生活を楽しませてもらうさ」
「ほんと、底なしだね」
「先生には言われたくねぇよ」
結局俺と先生はベッドに埋もれる形で一夜を過ごした。
7月6日金曜日。
「ジン、何している。早く行かないと試合が始まってしまうぞ」
「分かってるよ」
次の日ジュリアスが持ってきてくれた制服に着替えた俺は演習場へと向かう。
「保健室での生活はどうだった?」
「ま、楽しめたよ。ずっとベッドの中で休んでたからな。あと一週間は延長してもらいたいものだ」
「普通は一週間休んだところで傷が治るわけがないのですが」
「完全に完治したんだろ?」
「ああ。アヴァ先生にも異常だって言われたよ」
「ま、普通に考えてそうだよな」
そんな話をしながら演習場に入ると生徒たちの視線が集中する。そんなに見つめなくても。
「おい、オニガワラ・ジンだ」
「本当だ」
「もう退院してきたのか?」
「まさか、10時間以上も掛かった手術だぞ。そんなわけないだろ」
「でも平然としているわよ」
「やはり怪物ね」
この数日にいったいなにがあったんだ。これまでは蔑んだ目や嘲笑ってたのに。急におとなしくっていうか怖がってるよな。特に軍務科の連中。
「お前等、何か言ったのか?」
「そんなわけないだろ」
「先週の試合を見てみんな怯えちゃったんだよ」
「試合?なんの」
「決闘ですよ」
「暴れた覚えはないぞ」
普通に殴り飛ばしただけなんだが。
「誰だって2000人を倒したら怯えるって」
「でもお前等は怯えてないよな?」
「私たちは慣れてますから」
俺を猛獣か何かと勘違いしてないか?
「ま、適当に座って観戦しようぜ」
俺たちは空いた席に座り試合が始まるのを待つ。
「で、今のところどうなってるんだ?」
「Bグループは五芒星が全勝で代表入り決定。今日もあと1試合で終わりだね」
「あと一試合?一日2試合じゃなかったか?」
「私たちが棄権してますから」
「なるほど」
「で、今日2試合とも勝てば2位通過で代表になれるのが失われた王冠」
「へぇ……アイツ等も頑張ってるんだな」
まさか学園代表にまであと一歩とは凄いな。
「Aグループのほうはどうなんだ?」
「Aグループはもう乱戦だよ。勝ったり負けたり。それの繰り返し。殆ど差が無い状態。今のところ一歩リードしているのがマカベ君が率いる正義の剣かな」
「真壁のチームと互角に闘っているのか」
「殆どが軍務科のチームということもあって接戦です。今日の2試合に勝てば確実なところが4チームもありますから」
「4チームって、それ大丈夫なのか?」
「それぞれの試合相手みたいですから大丈夫みたいですよ」
「なるほどな」
Bチームは俺たちのチームがいないのとイザベラたちのチームがいるから平穏に試合が進んでいるが、Aチームは一試合一試合が気が抜けない状態なのか。まさに両極端なグループだな。
「あ、試合が始まるみたいだよ。どのチームを応援する?」
「ここはやはり失われた王冠だろ。俺たちが一度闘った相手だからな」
俺たちと闘って負けたからこそ、ここまできたら学園代表になってもらいたい。
素晴らしい試合を期待しているぞ後輩ども。
************************
「イザベラ様、東の観客席の前列を見てください」
そんなロイドの言葉に私は振り返り視線を向けるとそこには闘いたくても闘えなくなった人物が観戦していた。
「ジン、どうやら無事だったみたいね」
「そうみたいです」
「でも、残念ね。もしも団体戦に出ていれば同じグループで闘えたのに」
「仕方がありません」
「そうね。なら私たちの試合を見てもらうとしましょうか」
「はい」
いつも以上に気合を入れて私たちはステージに上がった。
************************
「ジン、イザベラ様たちの試合が始まるみたいだぞ」
本当だ。なんだか凄い気合入ってるんな。そんなに厳しい相手なのか?
「それよりジュリアス。前に様は要らないってイザベラに言われなかったか?」
「うっ、そ、そう簡単に直せるものでもないだろ!」
「直す気配がまったく感じられないんだが?」
「………」
「おい」
急に目を逸らしやがって。まったくコイツもコイツで不真面目なところがあるよな。
「それでイザベラたちの相手はどこのチームだ?」
「五重奏だ。全員が冒険科四年一組の生徒で構成されていて。クラスの中での強さを順位にすれば全員が10位代の連中だ」
「因みにガルムたちは?」
「ガルムたちは20位前半だ」
「なるほど」
ガルムたちより少し上なのか。イザベラたちなら警戒を怠らなければ余裕で勝てる相手だろう。なのになんでそんなにやる気に満ち溢れてるんだ?五重奏の奴等既に戦意を失いかけてるぞ。
あ、試合が始まった。
「うわっ!もう一人倒されちゃったよ!」
「速過ぎて全然見えなかった」
「あれが雷塵の戦乙女。異名通りの速さと攻撃力ですね」
いやいや!どこが乙女だよ!乙女があんな戦い方するかよ!あれはどう見ても戦士だろ。誰だよ戦乙女なんてつけたの。普通は女戦士だろうが!
「今の攻撃、お前なら躱せたか?」
「あれぐらいジュリアスでも余裕だろ?」
「今の私には無理だ」
「そうか」
「ああ………」
「でもそれなら安心だな」
「え?」
「だって今は。なんだろ?だったら今後躱せれるようになるってことだ。それなら俺が言うことは何も無いな」
「そ、そうか」
それにしてもあの速さを驚異的だな。俺はともかくジュリアスでも駄目となると。レオリオたちには当然不可能だ。それを考えると大会を棄権して正解だったかもしれない。
「それよりも問題は」
あの眠たそうにしていた獣人の女子だ。いきなり豹変しやがって。
地面から出現した木々が対戦相手を捕縛していき結果対戦相手は負けを認めて試合終了となった。
「呆気なく終わったね」
「やっぱ有力候補は違うな」
「私たちとは全然才能が違いますね」
才能ね。確かに人は生まれたときから平等ではない。ましてやこの国は階級制度が未だにある国だ。そんな世界に平等なんてない。同じ平民でも金持ちの家に生まれるか貧乏な家に生まれるかで大きな違いがある。ましてや戦闘センスも違う。才能がある奴に勝つのは大変だ。
「だが、才能があるからといって必ずしも強者とは限らない」
「ジン……」
「お前たちはそのことを一番理解していると俺は思ったんだがな」
そうこいつ等は才能がない俺の傍で数ヶ月共に訓練してきた。だからこそ知っているはずなんだ。才能とは言わば補助装置に過ぎない。補助装置が無い人間より少し早く強くなれるだけに過ぎない。ならどうすれば強くなれるのか考え行動すれば良いだけの話だ。
「それよりも俺たちはサイモンたちの応援するんだろ」
「そうだったな」
「すっかり忘れてた」
おいおい一度は闘った相手だぞ。忘れてやるなよ。生意気だから応援したくないのは分からんでもないけど。
「サイモンたちの相手は誰だ?」
「軍務科で準優勝したチームだ。全員が四年一組の生徒らしい。チーム名は『第6小隊』」
「なんだそりゃ。チーム名は適当で良いとは言え軍務科が適当で良いのか?」
「いや、将来軍に入るからこそじゃないか?」
「そういう考えも出来るか」
人のセンスとはまさに十人十色だな。
「それでサイモンたちは勝てそうなのか?」
「いや、それが……」
「それが?」
「既に勝利して試合が終わっていた」
「なに!」
準優勝チームとはいえ相手は軍務科の四年一組の生徒だぞ。イザベラたちより早く終わらせるってどんな闘いかたしんたんだ?
「どうやらサイモン君が試合開始早々に三種の猛獣を使って一掃しちゃったみたい」
「今日で学園代表が決まるからってあいつもヤル気出しすぎだろ」
(本当はジンが見に来ているからサイモン君もイザベラ様もヤル気を出していたに違いない。本人は気づいていないようだが)
ん?またジュリアスが嘆息している。そんなにサイモンたちが心配だったのか?
全ての試合が終わり表彰式が始まろうとしていた。きっと俺たちも出場していたらあそこに立っていたかもしれないのか。いや、終わったことを考えていても仕方が無い。今は素直に祝いの言葉を送ることにしよう。
「それではこれより武闘大会団体戦学園代表選抜の表彰式を行う。学園の代表として二学期に行われる武闘大会に出場するチームに盛大な拍手を」
パチパチパチパチ!
次々と出場してくる5チーム。
「それでは代表チームを紹介する。『五芒星』、『失われた王冠』、『正義の剣』、『緋色の幸せ』、『夏の雲』。以上、5チームが今大会スヴェルニ学園代表として出場する」
パチパチパチパチ!
5チームのうち3チームが軍務科のチームか。ま、どうでもいいけど。
「それでは生徒代表として軍務科四年一組イザベラ・レイジュ・ルーベンハイトに感想と抱負を述べてもらう」
スキン先生の言葉にイザベラが一歩前に出る。
「このチームで代表に選ばれたことにとても嬉しく思います。そして私は最高の仲間に出会えたと思っています。そんな最高の仲間と共に私たちは二学期に行われる武闘大会にて必ず優勝することをここに誓います!」
イザベラの演説にも似た抱負に生徒たちから大歓声が巻き起こる。一種の催眠なんじゃないのか、これ。
ん?一瞬イザベラがこっちに視線を向けたような気がしたが気のせいか?
そのあとは普通に表彰式が行われて武闘大会学園代表戦の全ての日程が終了した。
まずクジ引きでAグループとBグループに分かれて試合を行い上位2チームが学園代表として二学期に行われる武闘大会の出場が決定される。
残りの1チームは両グループで3位と4位だったもので再びリーグ戦を行い1位だったものが出場する。またそのリーグ戦に出場する際成績が同じだった場合、試合終了時の人数差で判定する。それでも同じだった試合終了時のタイムで判定する。それでも同じだった場合は主審の旗の数となる。それでも同じだった場合はリーダー同士のジャンケンで決める。ってジャンケン!なんてシンプルかつ残酷な決め方。どうせこのルールにした委員会が最後は面倒になったに違いない。
「委員会にはまともに仕事する奴等がいないのか?」
「まずそこまで行ったことが無いからね。適当にもなるさ」
あれから4日が過ぎて現在は7月5日木曜日。
保健室のベッドで裸で横になっている俺とアヴァ先生はタブレットで試合のルールを見ながらそんな事を呟いていた。え?エレイン先生に叱られただろ。ってあの程度で素直に聞く玉じゃないのだよ。俺とアヴァ先生は。
「俺はいつまでここで入院していれば良いんだ?」
もう寮に戻っても良いと思うんだが。
「明日の朝には退院しても良いさ。まったくどんな生命力だい。普通なら治すのに一ヶ月は掛かる怪我を僅か数日で治すなんてね。本当に化けもんだよ、アンタは」
「だから出場できるって言ったのによ。スタンガンで痺れさせやがって」
「でもそのお陰でここ数日は楽しかっただろ?」
「それは否定しない」
「欲望に素直だねぇ」
「先生だけには言われたくねぇよ」
最近では俺より先生から誘われる方が多いのだ。教師ってやっぱりストレスが溜まるんだろうな。
「てかこんな日中から仕事しなくて良いのかよ」
「怪我人は殆ど来ないから平気さ。アンタぐらいさ。重症な怪我人を作ったりなったりする奴は」
「それはどうも」
まったく皮肉まで言われる始末だ。
「それよりアンタ明日退院だけどどうするのさ」
「ジュリアスたちと観戦に行くさ。俺たちが出てるわけじゃないから興味はないが、学生は強制的に観戦だからな」
「学生の身分も大変だね」
「まったくだ」
社会人として働くよりかはまだマシだけど。
「ま、それまでは楽しい入院生活を楽しませてもらうさ」
「ほんと、底なしだね」
「先生には言われたくねぇよ」
結局俺と先生はベッドに埋もれる形で一夜を過ごした。
7月6日金曜日。
「ジン、何している。早く行かないと試合が始まってしまうぞ」
「分かってるよ」
次の日ジュリアスが持ってきてくれた制服に着替えた俺は演習場へと向かう。
「保健室での生活はどうだった?」
「ま、楽しめたよ。ずっとベッドの中で休んでたからな。あと一週間は延長してもらいたいものだ」
「普通は一週間休んだところで傷が治るわけがないのですが」
「完全に完治したんだろ?」
「ああ。アヴァ先生にも異常だって言われたよ」
「ま、普通に考えてそうだよな」
そんな話をしながら演習場に入ると生徒たちの視線が集中する。そんなに見つめなくても。
「おい、オニガワラ・ジンだ」
「本当だ」
「もう退院してきたのか?」
「まさか、10時間以上も掛かった手術だぞ。そんなわけないだろ」
「でも平然としているわよ」
「やはり怪物ね」
この数日にいったいなにがあったんだ。これまでは蔑んだ目や嘲笑ってたのに。急におとなしくっていうか怖がってるよな。特に軍務科の連中。
「お前等、何か言ったのか?」
「そんなわけないだろ」
「先週の試合を見てみんな怯えちゃったんだよ」
「試合?なんの」
「決闘ですよ」
「暴れた覚えはないぞ」
普通に殴り飛ばしただけなんだが。
「誰だって2000人を倒したら怯えるって」
「でもお前等は怯えてないよな?」
「私たちは慣れてますから」
俺を猛獣か何かと勘違いしてないか?
「ま、適当に座って観戦しようぜ」
俺たちは空いた席に座り試合が始まるのを待つ。
「で、今のところどうなってるんだ?」
「Bグループは五芒星が全勝で代表入り決定。今日もあと1試合で終わりだね」
「あと一試合?一日2試合じゃなかったか?」
「私たちが棄権してますから」
「なるほど」
「で、今日2試合とも勝てば2位通過で代表になれるのが失われた王冠」
「へぇ……アイツ等も頑張ってるんだな」
まさか学園代表にまであと一歩とは凄いな。
「Aグループのほうはどうなんだ?」
「Aグループはもう乱戦だよ。勝ったり負けたり。それの繰り返し。殆ど差が無い状態。今のところ一歩リードしているのがマカベ君が率いる正義の剣かな」
「真壁のチームと互角に闘っているのか」
「殆どが軍務科のチームということもあって接戦です。今日の2試合に勝てば確実なところが4チームもありますから」
「4チームって、それ大丈夫なのか?」
「それぞれの試合相手みたいですから大丈夫みたいですよ」
「なるほどな」
Bチームは俺たちのチームがいないのとイザベラたちのチームがいるから平穏に試合が進んでいるが、Aチームは一試合一試合が気が抜けない状態なのか。まさに両極端なグループだな。
「あ、試合が始まるみたいだよ。どのチームを応援する?」
「ここはやはり失われた王冠だろ。俺たちが一度闘った相手だからな」
俺たちと闘って負けたからこそ、ここまできたら学園代表になってもらいたい。
素晴らしい試合を期待しているぞ後輩ども。
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「イザベラ様、東の観客席の前列を見てください」
そんなロイドの言葉に私は振り返り視線を向けるとそこには闘いたくても闘えなくなった人物が観戦していた。
「ジン、どうやら無事だったみたいね」
「そうみたいです」
「でも、残念ね。もしも団体戦に出ていれば同じグループで闘えたのに」
「仕方がありません」
「そうね。なら私たちの試合を見てもらうとしましょうか」
「はい」
いつも以上に気合を入れて私たちはステージに上がった。
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「ジン、イザベラ様たちの試合が始まるみたいだぞ」
本当だ。なんだか凄い気合入ってるんな。そんなに厳しい相手なのか?
「それよりジュリアス。前に様は要らないってイザベラに言われなかったか?」
「うっ、そ、そう簡単に直せるものでもないだろ!」
「直す気配がまったく感じられないんだが?」
「………」
「おい」
急に目を逸らしやがって。まったくコイツもコイツで不真面目なところがあるよな。
「それでイザベラたちの相手はどこのチームだ?」
「五重奏だ。全員が冒険科四年一組の生徒で構成されていて。クラスの中での強さを順位にすれば全員が10位代の連中だ」
「因みにガルムたちは?」
「ガルムたちは20位前半だ」
「なるほど」
ガルムたちより少し上なのか。イザベラたちなら警戒を怠らなければ余裕で勝てる相手だろう。なのになんでそんなにやる気に満ち溢れてるんだ?五重奏の奴等既に戦意を失いかけてるぞ。
あ、試合が始まった。
「うわっ!もう一人倒されちゃったよ!」
「速過ぎて全然見えなかった」
「あれが雷塵の戦乙女。異名通りの速さと攻撃力ですね」
いやいや!どこが乙女だよ!乙女があんな戦い方するかよ!あれはどう見ても戦士だろ。誰だよ戦乙女なんてつけたの。普通は女戦士だろうが!
「今の攻撃、お前なら躱せたか?」
「あれぐらいジュリアスでも余裕だろ?」
「今の私には無理だ」
「そうか」
「ああ………」
「でもそれなら安心だな」
「え?」
「だって今は。なんだろ?だったら今後躱せれるようになるってことだ。それなら俺が言うことは何も無いな」
「そ、そうか」
それにしてもあの速さを驚異的だな。俺はともかくジュリアスでも駄目となると。レオリオたちには当然不可能だ。それを考えると大会を棄権して正解だったかもしれない。
「それよりも問題は」
あの眠たそうにしていた獣人の女子だ。いきなり豹変しやがって。
地面から出現した木々が対戦相手を捕縛していき結果対戦相手は負けを認めて試合終了となった。
「呆気なく終わったね」
「やっぱ有力候補は違うな」
「私たちとは全然才能が違いますね」
才能ね。確かに人は生まれたときから平等ではない。ましてやこの国は階級制度が未だにある国だ。そんな世界に平等なんてない。同じ平民でも金持ちの家に生まれるか貧乏な家に生まれるかで大きな違いがある。ましてや戦闘センスも違う。才能がある奴に勝つのは大変だ。
「だが、才能があるからといって必ずしも強者とは限らない」
「ジン……」
「お前たちはそのことを一番理解していると俺は思ったんだがな」
そうこいつ等は才能がない俺の傍で数ヶ月共に訓練してきた。だからこそ知っているはずなんだ。才能とは言わば補助装置に過ぎない。補助装置が無い人間より少し早く強くなれるだけに過ぎない。ならどうすれば強くなれるのか考え行動すれば良いだけの話だ。
「それよりも俺たちはサイモンたちの応援するんだろ」
「そうだったな」
「すっかり忘れてた」
おいおい一度は闘った相手だぞ。忘れてやるなよ。生意気だから応援したくないのは分からんでもないけど。
「サイモンたちの相手は誰だ?」
「軍務科で準優勝したチームだ。全員が四年一組の生徒らしい。チーム名は『第6小隊』」
「なんだそりゃ。チーム名は適当で良いとは言え軍務科が適当で良いのか?」
「いや、将来軍に入るからこそじゃないか?」
「そういう考えも出来るか」
人のセンスとはまさに十人十色だな。
「それでサイモンたちは勝てそうなのか?」
「いや、それが……」
「それが?」
「既に勝利して試合が終わっていた」
「なに!」
準優勝チームとはいえ相手は軍務科の四年一組の生徒だぞ。イザベラたちより早く終わらせるってどんな闘いかたしんたんだ?
「どうやらサイモン君が試合開始早々に三種の猛獣を使って一掃しちゃったみたい」
「今日で学園代表が決まるからってあいつもヤル気出しすぎだろ」
(本当はジンが見に来ているからサイモン君もイザベラ様もヤル気を出していたに違いない。本人は気づいていないようだが)
ん?またジュリアスが嘆息している。そんなにサイモンたちが心配だったのか?
全ての試合が終わり表彰式が始まろうとしていた。きっと俺たちも出場していたらあそこに立っていたかもしれないのか。いや、終わったことを考えていても仕方が無い。今は素直に祝いの言葉を送ることにしよう。
「それではこれより武闘大会団体戦学園代表選抜の表彰式を行う。学園の代表として二学期に行われる武闘大会に出場するチームに盛大な拍手を」
パチパチパチパチ!
次々と出場してくる5チーム。
「それでは代表チームを紹介する。『五芒星』、『失われた王冠』、『正義の剣』、『緋色の幸せ』、『夏の雲』。以上、5チームが今大会スヴェルニ学園代表として出場する」
パチパチパチパチ!
5チームのうち3チームが軍務科のチームか。ま、どうでもいいけど。
「それでは生徒代表として軍務科四年一組イザベラ・レイジュ・ルーベンハイトに感想と抱負を述べてもらう」
スキン先生の言葉にイザベラが一歩前に出る。
「このチームで代表に選ばれたことにとても嬉しく思います。そして私は最高の仲間に出会えたと思っています。そんな最高の仲間と共に私たちは二学期に行われる武闘大会にて必ず優勝することをここに誓います!」
イザベラの演説にも似た抱負に生徒たちから大歓声が巻き起こる。一種の催眠なんじゃないのか、これ。
ん?一瞬イザベラがこっちに視線を向けたような気がしたが気のせいか?
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