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第一章 魔力無し転生者は冒険者を目指す
第三十八話 武闘大会団体戦学科別代表選抜決勝 下
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これからどう攻めて勝とうかなんて考えることなくサイモンに向かって走る。だってそうだろ?体力はある。四肢は動く。視界も良好。あとはジュリアスたちの想いを背負って楽しむだけだ!
「おらっ!」
「ぐはっ!」
「おいどうした動きが鈍いぞ!」
「煩い黙れ!」
(三種の猛獣で魔力を使いすぎた。闇の扉も何度も使える魔法ではないと言うのに!)
「なら、さっさと倒れろ!」
「それはこっちの台詞だ!」
「ち、やはり武器持っていたか。それにその形魔法剣銃か」
人間より魔力量が多いのが魔族だ。だから魔法武器を使うことに当然だが、オリヴィアと同じとは思わなかった。どんな闘いをするのかとても興味はあるが残り時間が少ないから悠長に観察する暇も無いか。
(クソッ、こんな事になるんなら魔導武器にしておくべきだった。今になった自分の考えの浅はかさが恨めしい!)
ま、どっちにしても奴を倒さない限り俺たちの勝利が確実なものにはならない。それに俺の我侭に付き合ってくれているジュリアスたちに最高のお返しがしたいからな。今出せる全力でお前を倒してやるよ後輩。
「倒れろ!」
「貴様が倒れろ!」
今出せる全力で俺たちは接近戦を行う。奴は魔法剣銃で何度も俺を斬り倒そうとする。やはり奴の性格から考えて銃の方は使ってこないか。それともあれだけの魔法は使ったんだ。魔力量に余裕がない状況で当たるか分からない賭けに出れなかったというところか。俺としてはお前とこんな闘いが出来て嬉しいから許してやるよ。
殴る躱す、斬る弾く、蹴る躱す、斬る躱す、殴る躱す、斬る流すの繰り返し。体力に余裕のある俺と違い奴は一度でもまともに食らえば致命傷になりかねないこの状況。でも正直疲れが出てきた。魔力を持たない俺としては魔法攻撃は相当体力を消耗する。ま、あの島に居たときと比べれば大したことの無い一撃だ。それでも力をスキルで制限している分体力も減っている。だからこそそろそろ気を抜くとマジでヤバイ。
「いい加減、倒れろ!」
「生意気な後輩だな!」
まったく両親はどんな育て方をしたんだ。
それにしてもよく躱すな。さっきは動きが鈍くなったと思ったがどうやらあの一撃で目が覚めたか。さっさと終わらせておけばよかったかもしれない。
(なんて奴だ。俺の攻撃ほとんど躱すより遥かに体力を消耗する闘い方をしているのに。なんで倒れないんだ!こいつの体力だけは化け物か!)
あれからどれだけの時間が経過したのか分からない。だがまだ試合終了のブザーがなっていないことから考えるとまだ一分は経っていないということだ。ま、それだけ俺とこいつが高速で攻防している証拠なんだろうが。
だが分かる。もう終わりが近いと。体力の限界。魔力の限界。そしてタイムリミットが直ぐそこまで来ている。楽しいかろうがそうで無かろうが、使命があろうが、仲間の想いを背負うが関係ない。けして誰にも支配する事が出来ないものそれは時間だ。始まりがあれば、終わりがある。それが時の流れだ。
だからこそ、この闘いにも終わりがある。
そして何故かな。それが次の一撃で決まると互いに理解し、相手が気づいたことにも気が付いた。
少し名残惜しい気持ちが無いと言えば嘘になる。それでも思ってしまった。
楽しいという感情より仲間のために勝ちたいと。ま、それは相手も同じだろうが。
だからこそ俺たちは構える。
「行くぞ、馬鹿後輩!」
「倒れろ、虫けら!」
今ミューラ先生がどんな実況をしているのか分からないが、きっと互いの攻撃が放たれた!とか言ってるんだろうな。ま、観客の大半はこの生意気後輩を応援しているんだろうが。って何考えてんだ俺。全然勝負に集中出来てないな。いや、この感じ集中しすぎて色んな事が頭を過ぎってるんだ。死ぬ瞬間の走馬灯のように。でも何故か死ぬとは思ってないし負けるとも思わない。
それどころか相手の顔がゆっくりと動いているように見える。飛び散る汗の一滴まで鮮明に見える。それにしてもなんて顔してるんだ。真剣な面持ち絶対に負けない。勝ってみせるという強い意志が表情から目に入ってくる。だが負けられない。いや、だからこそ負けられないだ!
数瞬の構えから放たれた互いの一撃。
全力の一撃は僅かながら俺の拳のほうが後輩を捉えるのが速かった。
それは少しだけ回復した拳から伝わってきた。
「これで終わりだ!」
ドンッ!
全力の殴り振り下ろされた左ストレートは地面を陥没されるほどの威力を持ってサイモンを地面に叩きつけた。
これで分かったろ。どっちが本当の強者なのか。
「しょ、勝者、AAA!」
『決まったああああああぁぁぁ!グループ青の優勝者はチームAAA!』
『ぅおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!!』
す、凄い歓声だな。てか他のグループの試合終わってるじゃねぇか。ま、残り時間1.19秒じゃ。俺たちが最後でもおかくないか。
それよりもエレイン先生が以上に疲労しているように見えるがなにかあったのか?ミューラ先生の目元もなんだか赤いし。
「それより、ジュリアスたちは――」
『ジイイイイィィン!』
「うおっ!」
心配になって振り返ればエミリアたちが抱きついてきた。
「ありがとう、ジン!」
「やっぱりお前は最高の親友だ!」
「素晴らしい闘いでした」
「やはりお前は凄いな」
各々が感謝の気持ちを伝えてくる。正直感謝なんてされたことないからこそばゆい。ましてやあの島で勝利は絶対。死なないための絶対的ルールだった。勝利して感謝されるなんて初めてだ。だけど悪いものじゃない。それどころか心が浮きだって仕方が無い。
表彰式が始まるまでの間俺たちは廊下にあるソファーに座って待っていた。
「まさか残り三人を倒しちゃうなんて凄いよ!」
「訓練で私たちより強いとは知っていましたが今日の試合ではっきりと自覚しました」
「俺たちもお前に追いつけるように頑張らないとな!」
「私もレオリオの意見と同じだ。自分の不甲斐なさを痛感したところだ。軍務科との試合までには少しでも強くならねば」
向上心が強いのはなによりだ。俺としてもそれは嬉しいからな。
「それにしてもエミリーが一組の一人を倒したことには驚きました」
「えへへ、でもあそこまで上手く行くなんて思いもしなかったよ。これもジン君が作戦を考えてくれたお陰だね」
「もっと褒め称えるがいい」
「ははあ~」
誰もがノリだと分かっているから天狗になっているとは思っていない。逆に今日の試合で自分に必要なものが見えたんじゃないだろうか。
「ジュリアス、ここに居たのか」
「ガルムにみんな、どうしてここに?」
振り向くとそこには準決勝で闘った銀の斧の面子が勢揃いしていた。
「そろそろ表彰式が始まるみたいだからな。その前に言っておこうと思ってな」
その言葉に俺たちは首を傾げる。はてなにか言われるようなことしたか?
「優勝おめでとう。そして俺たちの約束を果たしてくれたありがとうな」
その言葉で俺たちは理解した。以前に闘って勝ったあと必ず優勝してくれと頼まれたのだ。正直覚えてはいなかったが、約束を果たせたことは喜ばしいな。
「もう時間だ。そろそろ中に入ろう」
「そうだな」
俺たちはガルムたちと別れて控え室――と言っても表彰台の裏側――に来ていた。
「それではこれより武闘大会団体戦学科別代表選抜の表彰式を執り行う」
この声はいつもの丸刈り先生だな。
「四週間後の6月25日に行われる武闘大会団体戦学園代表選抜で闘う冒険科の生徒たちだ。暖かい拍手で出迎えてくれたまえ」
表彰台から降りた丸刈り先生と入れ替わるように眼鏡を掛けたエルフの女教師が喋りだした。え、なんで表彰台の裏にいながら分かるかって。モニターがあるからだよ。
「それではこれより各グループの優勝、準優勝のチームを紹介します。呼ばれたチームは表彰台に上がって来てください。まずはグループ紫。優勝チーム『静寂な満月』、準優勝チーム『銃器愛好家』。続いてグループ白。優勝チーム『第3の選択』、準優勝チーム『五重奏』。続いてグループ緑。優勝チーム『自由な旅人』、準優勝チーム『規定の書』。続いてグループ青。優勝チーム『AAA』、準優勝チーム『失われた王冠』。最後、グループ赤。優勝チーム『正義の剣』、準優勝チーム『眠りの羊』。以上が四週間後に行われる軍務科との武闘大会団体戦学園代表選抜に出場するチームとなります。皆さん盛大な拍手をお願いします」
パチパチパチパチ!
人気のあるチームには拍手だけでなく応援する声も聞こえる。それにしても本当に色々なチームがあるんだな。俺たちみたいに適当にチーム名を決めるチームも居れば、想いを名前にしたチーム。中二病臭いチーム、好きな物を名前にしたチーム、個性豊かだよな。ま、そのチームの面立ちからもなんとなく想像できるか。グループ緑の優勝、準優勝チームの選手なんて対極的過ぎるしな。髪型や服装はきっちりと整えられ姿勢も真っ直ぐだ。なんで軍務科に入らなかったのかとても不思議なぐらいだ。それに対して優勝したチームはゲームしたり、メイク直したり、筋トレしたりと各自自由に過ごしてる。あれで連携が出来てるのか別の意味で不思議だ。
それにしても未だに俺に対して不満のある生徒がいるんだな。なんで俺ってそんなに嫌われてるんだろう。接点なんて全く無いのに。
「それでは各チームリーダーから一言頂きましょう。まずはグループ赤の優勝チームの正義の剣リーダーのマカベ君。お願いね」
「はい!目標であった優勝がまず叶ったことにとても嬉しく思います。でもそれはチームの皆で団結して頑張った結果だと僕は思います!そして必ず次の武闘大会団体戦学園代表選抜でも優勝してみせます!」
これまた正義感が強くてクラスメイトで一番女子に人気のあるキャラクター的な台詞をどうもありがとうよ。正直俺とは相性が悪いタイプだ。
「素晴らしい意気込みをありがとうね。それでは次に準優勝の………」
次々と各チームのインタビューが行われた。ジュリアスも緊張しながらも答えてたっけ。
「それでは最後に学科主任に武闘大会団体戦学科別代表選抜の閉会の言葉を頂いて終わりたいと思います。学科主任お願いします」
「分かった」
って学科主任って丸刈り先生の事だったのか!あの先生そんなに偉かったの!因みに学科主任とは学園内で3番目に偉い役割だ。学園長、教頭、学科主任、学年主任、担任と言う順番だ。どうみても刑務所から出所したばかりの人って感じなのにそんなに偉いとは、人は見た目によらないとはまさにこの事だな。
「今回の闘いは前回以上に見所のある素晴らしい試合が多く、将来も期待できる生徒が多いと私は感じる。だからこそ個人戦の表彰式の時に言ったように選ばれた選手に不満があるのであればこの場でハッキリと言って貰いたい。………ないのであれば今後、代表に選ばれたチーム、生徒に対する奇襲行為、また授業等での後遺症が残る攻撃を一切禁止とする。以上だ」
今回は少し長かったが、それでも言っていることはとても素晴らしい。ほんと見た目で人を判断しちゃ駄目だな。寡黙そうな先生ではあるけど。ん?また真壁から視線を感じる。憎悪、敵意、殺意と言った負の感情は感じないからこちらから話しかけるような事はしないが、視線を向けられる理由もまったく覚えがない。いったい目的はなんだ?
「これにて武闘大会団体戦及び個人戦学科別代表選抜の閉会したいと思います。今日は午後からの授業はありませんので自由行動になります。それでは解散」
よっしゃー!午後から授業がないなんて素晴らしいの一言だ。明日は休日で優勝もしたことだしな、絶対今日は風俗店に行くぞ!楽しみだな~。
「おらっ!」
「ぐはっ!」
「おいどうした動きが鈍いぞ!」
「煩い黙れ!」
(三種の猛獣で魔力を使いすぎた。闇の扉も何度も使える魔法ではないと言うのに!)
「なら、さっさと倒れろ!」
「それはこっちの台詞だ!」
「ち、やはり武器持っていたか。それにその形魔法剣銃か」
人間より魔力量が多いのが魔族だ。だから魔法武器を使うことに当然だが、オリヴィアと同じとは思わなかった。どんな闘いをするのかとても興味はあるが残り時間が少ないから悠長に観察する暇も無いか。
(クソッ、こんな事になるんなら魔導武器にしておくべきだった。今になった自分の考えの浅はかさが恨めしい!)
ま、どっちにしても奴を倒さない限り俺たちの勝利が確実なものにはならない。それに俺の我侭に付き合ってくれているジュリアスたちに最高のお返しがしたいからな。今出せる全力でお前を倒してやるよ後輩。
「倒れろ!」
「貴様が倒れろ!」
今出せる全力で俺たちは接近戦を行う。奴は魔法剣銃で何度も俺を斬り倒そうとする。やはり奴の性格から考えて銃の方は使ってこないか。それともあれだけの魔法は使ったんだ。魔力量に余裕がない状況で当たるか分からない賭けに出れなかったというところか。俺としてはお前とこんな闘いが出来て嬉しいから許してやるよ。
殴る躱す、斬る弾く、蹴る躱す、斬る躱す、殴る躱す、斬る流すの繰り返し。体力に余裕のある俺と違い奴は一度でもまともに食らえば致命傷になりかねないこの状況。でも正直疲れが出てきた。魔力を持たない俺としては魔法攻撃は相当体力を消耗する。ま、あの島に居たときと比べれば大したことの無い一撃だ。それでも力をスキルで制限している分体力も減っている。だからこそそろそろ気を抜くとマジでヤバイ。
「いい加減、倒れろ!」
「生意気な後輩だな!」
まったく両親はどんな育て方をしたんだ。
それにしてもよく躱すな。さっきは動きが鈍くなったと思ったがどうやらあの一撃で目が覚めたか。さっさと終わらせておけばよかったかもしれない。
(なんて奴だ。俺の攻撃ほとんど躱すより遥かに体力を消耗する闘い方をしているのに。なんで倒れないんだ!こいつの体力だけは化け物か!)
あれからどれだけの時間が経過したのか分からない。だがまだ試合終了のブザーがなっていないことから考えるとまだ一分は経っていないということだ。ま、それだけ俺とこいつが高速で攻防している証拠なんだろうが。
だが分かる。もう終わりが近いと。体力の限界。魔力の限界。そしてタイムリミットが直ぐそこまで来ている。楽しいかろうがそうで無かろうが、使命があろうが、仲間の想いを背負うが関係ない。けして誰にも支配する事が出来ないものそれは時間だ。始まりがあれば、終わりがある。それが時の流れだ。
だからこそ、この闘いにも終わりがある。
そして何故かな。それが次の一撃で決まると互いに理解し、相手が気づいたことにも気が付いた。
少し名残惜しい気持ちが無いと言えば嘘になる。それでも思ってしまった。
楽しいという感情より仲間のために勝ちたいと。ま、それは相手も同じだろうが。
だからこそ俺たちは構える。
「行くぞ、馬鹿後輩!」
「倒れろ、虫けら!」
今ミューラ先生がどんな実況をしているのか分からないが、きっと互いの攻撃が放たれた!とか言ってるんだろうな。ま、観客の大半はこの生意気後輩を応援しているんだろうが。って何考えてんだ俺。全然勝負に集中出来てないな。いや、この感じ集中しすぎて色んな事が頭を過ぎってるんだ。死ぬ瞬間の走馬灯のように。でも何故か死ぬとは思ってないし負けるとも思わない。
それどころか相手の顔がゆっくりと動いているように見える。飛び散る汗の一滴まで鮮明に見える。それにしてもなんて顔してるんだ。真剣な面持ち絶対に負けない。勝ってみせるという強い意志が表情から目に入ってくる。だが負けられない。いや、だからこそ負けられないだ!
数瞬の構えから放たれた互いの一撃。
全力の一撃は僅かながら俺の拳のほうが後輩を捉えるのが速かった。
それは少しだけ回復した拳から伝わってきた。
「これで終わりだ!」
ドンッ!
全力の殴り振り下ろされた左ストレートは地面を陥没されるほどの威力を持ってサイモンを地面に叩きつけた。
これで分かったろ。どっちが本当の強者なのか。
「しょ、勝者、AAA!」
『決まったああああああぁぁぁ!グループ青の優勝者はチームAAA!』
『ぅおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!!』
す、凄い歓声だな。てか他のグループの試合終わってるじゃねぇか。ま、残り時間1.19秒じゃ。俺たちが最後でもおかくないか。
それよりもエレイン先生が以上に疲労しているように見えるがなにかあったのか?ミューラ先生の目元もなんだか赤いし。
「それより、ジュリアスたちは――」
『ジイイイイィィン!』
「うおっ!」
心配になって振り返ればエミリアたちが抱きついてきた。
「ありがとう、ジン!」
「やっぱりお前は最高の親友だ!」
「素晴らしい闘いでした」
「やはりお前は凄いな」
各々が感謝の気持ちを伝えてくる。正直感謝なんてされたことないからこそばゆい。ましてやあの島で勝利は絶対。死なないための絶対的ルールだった。勝利して感謝されるなんて初めてだ。だけど悪いものじゃない。それどころか心が浮きだって仕方が無い。
表彰式が始まるまでの間俺たちは廊下にあるソファーに座って待っていた。
「まさか残り三人を倒しちゃうなんて凄いよ!」
「訓練で私たちより強いとは知っていましたが今日の試合ではっきりと自覚しました」
「俺たちもお前に追いつけるように頑張らないとな!」
「私もレオリオの意見と同じだ。自分の不甲斐なさを痛感したところだ。軍務科との試合までには少しでも強くならねば」
向上心が強いのはなによりだ。俺としてもそれは嬉しいからな。
「それにしてもエミリーが一組の一人を倒したことには驚きました」
「えへへ、でもあそこまで上手く行くなんて思いもしなかったよ。これもジン君が作戦を考えてくれたお陰だね」
「もっと褒め称えるがいい」
「ははあ~」
誰もがノリだと分かっているから天狗になっているとは思っていない。逆に今日の試合で自分に必要なものが見えたんじゃないだろうか。
「ジュリアス、ここに居たのか」
「ガルムにみんな、どうしてここに?」
振り向くとそこには準決勝で闘った銀の斧の面子が勢揃いしていた。
「そろそろ表彰式が始まるみたいだからな。その前に言っておこうと思ってな」
その言葉に俺たちは首を傾げる。はてなにか言われるようなことしたか?
「優勝おめでとう。そして俺たちの約束を果たしてくれたありがとうな」
その言葉で俺たちは理解した。以前に闘って勝ったあと必ず優勝してくれと頼まれたのだ。正直覚えてはいなかったが、約束を果たせたことは喜ばしいな。
「もう時間だ。そろそろ中に入ろう」
「そうだな」
俺たちはガルムたちと別れて控え室――と言っても表彰台の裏側――に来ていた。
「それではこれより武闘大会団体戦学科別代表選抜の表彰式を執り行う」
この声はいつもの丸刈り先生だな。
「四週間後の6月25日に行われる武闘大会団体戦学園代表選抜で闘う冒険科の生徒たちだ。暖かい拍手で出迎えてくれたまえ」
表彰台から降りた丸刈り先生と入れ替わるように眼鏡を掛けたエルフの女教師が喋りだした。え、なんで表彰台の裏にいながら分かるかって。モニターがあるからだよ。
「それではこれより各グループの優勝、準優勝のチームを紹介します。呼ばれたチームは表彰台に上がって来てください。まずはグループ紫。優勝チーム『静寂な満月』、準優勝チーム『銃器愛好家』。続いてグループ白。優勝チーム『第3の選択』、準優勝チーム『五重奏』。続いてグループ緑。優勝チーム『自由な旅人』、準優勝チーム『規定の書』。続いてグループ青。優勝チーム『AAA』、準優勝チーム『失われた王冠』。最後、グループ赤。優勝チーム『正義の剣』、準優勝チーム『眠りの羊』。以上が四週間後に行われる軍務科との武闘大会団体戦学園代表選抜に出場するチームとなります。皆さん盛大な拍手をお願いします」
パチパチパチパチ!
人気のあるチームには拍手だけでなく応援する声も聞こえる。それにしても本当に色々なチームがあるんだな。俺たちみたいに適当にチーム名を決めるチームも居れば、想いを名前にしたチーム。中二病臭いチーム、好きな物を名前にしたチーム、個性豊かだよな。ま、そのチームの面立ちからもなんとなく想像できるか。グループ緑の優勝、準優勝チームの選手なんて対極的過ぎるしな。髪型や服装はきっちりと整えられ姿勢も真っ直ぐだ。なんで軍務科に入らなかったのかとても不思議なぐらいだ。それに対して優勝したチームはゲームしたり、メイク直したり、筋トレしたりと各自自由に過ごしてる。あれで連携が出来てるのか別の意味で不思議だ。
それにしても未だに俺に対して不満のある生徒がいるんだな。なんで俺ってそんなに嫌われてるんだろう。接点なんて全く無いのに。
「それでは各チームリーダーから一言頂きましょう。まずはグループ赤の優勝チームの正義の剣リーダーのマカベ君。お願いね」
「はい!目標であった優勝がまず叶ったことにとても嬉しく思います。でもそれはチームの皆で団結して頑張った結果だと僕は思います!そして必ず次の武闘大会団体戦学園代表選抜でも優勝してみせます!」
これまた正義感が強くてクラスメイトで一番女子に人気のあるキャラクター的な台詞をどうもありがとうよ。正直俺とは相性が悪いタイプだ。
「素晴らしい意気込みをありがとうね。それでは次に準優勝の………」
次々と各チームのインタビューが行われた。ジュリアスも緊張しながらも答えてたっけ。
「それでは最後に学科主任に武闘大会団体戦学科別代表選抜の閉会の言葉を頂いて終わりたいと思います。学科主任お願いします」
「分かった」
って学科主任って丸刈り先生の事だったのか!あの先生そんなに偉かったの!因みに学科主任とは学園内で3番目に偉い役割だ。学園長、教頭、学科主任、学年主任、担任と言う順番だ。どうみても刑務所から出所したばかりの人って感じなのにそんなに偉いとは、人は見た目によらないとはまさにこの事だな。
「今回の闘いは前回以上に見所のある素晴らしい試合が多く、将来も期待できる生徒が多いと私は感じる。だからこそ個人戦の表彰式の時に言ったように選ばれた選手に不満があるのであればこの場でハッキリと言って貰いたい。………ないのであれば今後、代表に選ばれたチーム、生徒に対する奇襲行為、また授業等での後遺症が残る攻撃を一切禁止とする。以上だ」
今回は少し長かったが、それでも言っていることはとても素晴らしい。ほんと見た目で人を判断しちゃ駄目だな。寡黙そうな先生ではあるけど。ん?また真壁から視線を感じる。憎悪、敵意、殺意と言った負の感情は感じないからこちらから話しかけるような事はしないが、視線を向けられる理由もまったく覚えがない。いったい目的はなんだ?
「これにて武闘大会団体戦及び個人戦学科別代表選抜の閉会したいと思います。今日は午後からの授業はありませんので自由行動になります。それでは解散」
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