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多貴は自分の姉であるエリーと結ばれるべき……なんて思うホリーだった
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35・多貴はエリーと結ばれて欲しいなんて思うホリー
激的な変化を遂げたエリスが指導者になると、多貴の激的進化はさらに加速した。ホリーに教わっていた時に生じたスピーディーな変化、そこにあったすき間が埋められたという感じだった。
「じゃぁ、いくわよ多貴」
夜の巨大な野外公園の中央に立つエリス、月明かりに照らされうつくしく色っぽく映えている。
「よし」
剣を持ちかまえる多貴の顔がキリっと引き締まる。
「せい!」
月のお姫様とばかりエレガントにしてつよく剣を振ったエリス。すると夜の暗さに穴を開けるような光の玉が数個、かなりの速さで多貴に向かっていく。
(む!)
すぐに動きたくなるのをこらえる多貴。その時間はとても短いゆえギリギリまで動かないというのは激しい緊張をもたらす。
「く!」
夜空方面こと上に逃げる多貴だったが、そのとき剣を振って蒼白い球を放っておいた。逃げるってサマの多貴から突然に放たれる攻撃というのは、油断しているとすれば相手を驚かす効果を持つ。
「ふん!」
エリスの剣が多貴の放った攻撃を斬る。まるで感情あった光の玉が命を燃やし切ったかのように破裂して消える。
「お見事! エレガントに動けるようになってきたわね」
多貴の成長をホメるエリス、今日はこれで終わりにしましょうと言った後、わたしはもう少しひとりで剣を振りたいと続けた。
「エリス」
「何かしら?」
「いつ……城に乗り込む?」
「そうね、多貴の成長がものすごく早いから、もう少ししたらって感じかしら。でもポニーは強いからさすがに明日ってわけにはいかないわ」
「わかった……」
エリスの横を通り抜けホテルに向かうとき、多貴は早く妹を救いたいってキモチにブレーキをかける。そうでないと今すぐにでも城に向かって走りたくなるから。
「ふぅ……」
超高級ホテルの渡り歩きも飽きてきた……なんて内心思ったりしていたら、1階にある喫茶店からホリーが顔を出す。多貴! と名前を呼んでクイクイっと手招きアクションを取る。
「どうしたの、ホリー」
白いテーブルを挟んで向かい側に座る多貴。
「どうもなにも……ハッキリ言って暇なんだよ。少しは相手して! ってキモチなんだよ」
ブーっと欲求不満って顔をするホリーがいた。でもそれはムリもない話だった。多貴の育成って役割を突然エリスに取られた。しかも多貴の成長がグングン加速するからには、自分がジャマするわけにはいかないとなる。とりあえず自分の腕が錆びないよう、1日に3時間ほどの密度ある訓練は怠らないが、その後にやる事がなくなって困るのだった。
「いや、ホリーには感謝してるよ。だって最初はホリーに引っ張ってもらったんだから」
「まぁ……わたしがヒマだってことはいいとして……多貴、ひとつ聞いてもいい?」
「な、なに?」
「わたしはエリスの事が好きだから、まちがっても悪口じゃないと断ってから質問するんだけど、エリスといい感じになりそうとかある?」
「ブッ! な、なに言ってるんだよ」
「エリスは美人で巨乳。多貴が心奪われ通じ合ってもおかしくない」
「な、ない、今のところそんな話はない」
「今のところか……」
「なんだよ、その思わせぶりな言い方」
ここでホリーは少し身を乗り出す。ドキッとした多貴にグッと顔を近づけ、多貴にはエリスよりお似合いの人がいるとつぶやく。
「え、だ、誰?」
「わたしのお姉ちゃん、エリー」
「え、エリー」
多貴の脳裏に苦くて痛い記憶が渦巻きのようにして湧き上がってきた。この世界にやってきたときエリーに罵られ見下された。運動不足デブに甘んじていた自分が悪いとはいえ、エリーはなかなかにきつかったと思いを持つ。
「お姉ちゃんはけっこう言うことがきついからねぇ。だけど多貴、わたしのお姉ちゃんはエリスに負けず劣らず美人で巨乳、あれ本当におっぱい大きいから! でね、今の多貴みたいにストイックに打ち込むかっこういい少年みたいなのが好み。だから今の多貴がお姉ちゃんと戦って勝利したら、まちがいなく見直してホレる。わたしは妹だから姉のことは親の次によーく知ってる。だから多貴、エリーと恋愛しなさいって」
何がなんでもそうするべし! ってフンイキを弾丸みたいに押し付けられたら、赤い顔の多貴は頭をかいて質問せざるを得ない。
「なんか……ぼくとエリーを結び付けようとしてない?」
「だから言ってるんでしょう、ニブイこと言わないで欲しいわ」
「なんでぼくとエリー?」
「決まってる。2人が結ばれてくれたら、わたしがやりやすいからだよ。わたしにも多貴に対して友だち以上恋愛未満って感情があるんだよ。姉と結ばれてくれたら横から友だちとか理解者って振る舞いがやりやすい。だけど多貴がエリスと結ばれたらやりにくいわけよ。それにね、エリスのことは本当に好きだけど……やっぱり姉の応援したくなる」
「あ、あっと、ぼくはもうそろそろシャワーでもするよ」
慌てて立ち上がった多貴はそそくさと喫茶から出て行ってしまった。その後ろ姿を見ていたホリーは小さな声でつぶやく。
「多貴とお姉ちゃんは絶対お似合い。是非とも結ばれていただきたい。わたしは多貴の義理妹になってたのしく暮らしたい」
激的な変化を遂げたエリスが指導者になると、多貴の激的進化はさらに加速した。ホリーに教わっていた時に生じたスピーディーな変化、そこにあったすき間が埋められたという感じだった。
「じゃぁ、いくわよ多貴」
夜の巨大な野外公園の中央に立つエリス、月明かりに照らされうつくしく色っぽく映えている。
「よし」
剣を持ちかまえる多貴の顔がキリっと引き締まる。
「せい!」
月のお姫様とばかりエレガントにしてつよく剣を振ったエリス。すると夜の暗さに穴を開けるような光の玉が数個、かなりの速さで多貴に向かっていく。
(む!)
すぐに動きたくなるのをこらえる多貴。その時間はとても短いゆえギリギリまで動かないというのは激しい緊張をもたらす。
「く!」
夜空方面こと上に逃げる多貴だったが、そのとき剣を振って蒼白い球を放っておいた。逃げるってサマの多貴から突然に放たれる攻撃というのは、油断しているとすれば相手を驚かす効果を持つ。
「ふん!」
エリスの剣が多貴の放った攻撃を斬る。まるで感情あった光の玉が命を燃やし切ったかのように破裂して消える。
「お見事! エレガントに動けるようになってきたわね」
多貴の成長をホメるエリス、今日はこれで終わりにしましょうと言った後、わたしはもう少しひとりで剣を振りたいと続けた。
「エリス」
「何かしら?」
「いつ……城に乗り込む?」
「そうね、多貴の成長がものすごく早いから、もう少ししたらって感じかしら。でもポニーは強いからさすがに明日ってわけにはいかないわ」
「わかった……」
エリスの横を通り抜けホテルに向かうとき、多貴は早く妹を救いたいってキモチにブレーキをかける。そうでないと今すぐにでも城に向かって走りたくなるから。
「ふぅ……」
超高級ホテルの渡り歩きも飽きてきた……なんて内心思ったりしていたら、1階にある喫茶店からホリーが顔を出す。多貴! と名前を呼んでクイクイっと手招きアクションを取る。
「どうしたの、ホリー」
白いテーブルを挟んで向かい側に座る多貴。
「どうもなにも……ハッキリ言って暇なんだよ。少しは相手して! ってキモチなんだよ」
ブーっと欲求不満って顔をするホリーがいた。でもそれはムリもない話だった。多貴の育成って役割を突然エリスに取られた。しかも多貴の成長がグングン加速するからには、自分がジャマするわけにはいかないとなる。とりあえず自分の腕が錆びないよう、1日に3時間ほどの密度ある訓練は怠らないが、その後にやる事がなくなって困るのだった。
「いや、ホリーには感謝してるよ。だって最初はホリーに引っ張ってもらったんだから」
「まぁ……わたしがヒマだってことはいいとして……多貴、ひとつ聞いてもいい?」
「な、なに?」
「わたしはエリスの事が好きだから、まちがっても悪口じゃないと断ってから質問するんだけど、エリスといい感じになりそうとかある?」
「ブッ! な、なに言ってるんだよ」
「エリスは美人で巨乳。多貴が心奪われ通じ合ってもおかしくない」
「な、ない、今のところそんな話はない」
「今のところか……」
「なんだよ、その思わせぶりな言い方」
ここでホリーは少し身を乗り出す。ドキッとした多貴にグッと顔を近づけ、多貴にはエリスよりお似合いの人がいるとつぶやく。
「え、だ、誰?」
「わたしのお姉ちゃん、エリー」
「え、エリー」
多貴の脳裏に苦くて痛い記憶が渦巻きのようにして湧き上がってきた。この世界にやってきたときエリーに罵られ見下された。運動不足デブに甘んじていた自分が悪いとはいえ、エリーはなかなかにきつかったと思いを持つ。
「お姉ちゃんはけっこう言うことがきついからねぇ。だけど多貴、わたしのお姉ちゃんはエリスに負けず劣らず美人で巨乳、あれ本当におっぱい大きいから! でね、今の多貴みたいにストイックに打ち込むかっこういい少年みたいなのが好み。だから今の多貴がお姉ちゃんと戦って勝利したら、まちがいなく見直してホレる。わたしは妹だから姉のことは親の次によーく知ってる。だから多貴、エリーと恋愛しなさいって」
何がなんでもそうするべし! ってフンイキを弾丸みたいに押し付けられたら、赤い顔の多貴は頭をかいて質問せざるを得ない。
「なんか……ぼくとエリーを結び付けようとしてない?」
「だから言ってるんでしょう、ニブイこと言わないで欲しいわ」
「なんでぼくとエリー?」
「決まってる。2人が結ばれてくれたら、わたしがやりやすいからだよ。わたしにも多貴に対して友だち以上恋愛未満って感情があるんだよ。姉と結ばれてくれたら横から友だちとか理解者って振る舞いがやりやすい。だけど多貴がエリスと結ばれたらやりにくいわけよ。それにね、エリスのことは本当に好きだけど……やっぱり姉の応援したくなる」
「あ、あっと、ぼくはもうそろそろシャワーでもするよ」
慌てて立ち上がった多貴はそそくさと喫茶から出て行ってしまった。その後ろ姿を見ていたホリーは小さな声でつぶやく。
「多貴とお姉ちゃんは絶対お似合い。是非とも結ばれていただきたい。わたしは多貴の義理妹になってたのしく暮らしたい」
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