29 / 46
詩貴、兄への思い
しおりを挟む
29・詩貴、兄への思い
「ぅ……」
しまった……という感じでビクッとなる詩貴、やや恥じらいながらテーブルにこぼしたスープをナプキンで拭く。なんせ頭の中は真新しく衝撃的な記憶で埋まっている。昨日にて凛々しい少年時代に若返った兄を目にしたのだ、ちょっとやそっとでは冷静になどなれない。
「詩貴、そんなに兄ラブなわけ?」
共に朝食を取っているポニーが突っ込む。それに対して詩貴は別に……と毎度の反応をしようとした。でもそれより早く電流が流れた事により、ちょいとばかりおのれのキモチを吐き出す。
「そりゃそうでしょう……あんなのを見てしまったら……」
「あんなのって?」
「若返ったお兄ちゃん。マンガみたいだけどほんとうに昔のお兄ちゃんだった。しかもわたしを助けようと思って燃えているのが伝わった。つまりそれは……わたしにしてみれば、一番かっこういいと思っていた過去のお兄ちゃんがもう一度やってきたって震える事なんだよ。なんとも言えないキモチになっても当然じゃない?」
恥じらう事なく詩貴が言うものだからポニーはちょっとおもしろくない。だから意地悪っぽくつぶやいてやる。
「お兄ちゃんねぇ……」
「なに?」
「いやぁ、詩貴ってかっこういいのにブラコンなんだなぁと思って。それさえなければパーフェクトにかっこういいと思うんだけどなぁ。ブラコンとかキモいって周りは誰も言わなかったの?」
「べつにかっこう悪くてもキモくてもいいわ」
「なんで?」
「お兄ちゃんがかっこういいから」
「やだ詩貴、ダサい女に成り下がらないでよぉ」
まったくもうと深いためいきを漏らすポニー。でもちょっと感情の揺れがいつもと違う音色を立てたらしい。だからいつもと少し異なるフンイキって事を口にしたりする。
「まぁ……ある意味ではうらやましいけどね」
豪華な白パンをつまみながらポニーが言うと、当然詩貴はどういう意味かと聞かずにいられない。するとポニーは渇いた笑いを浮かべ、なんかもうどうでもいいやと言いたげにつぶやく。
「ブラコンはともかく兄を慕うなんて青春って感じでいいのかもね。わたしだって妹として姉を慕ってみたかった。でもどうだろうねぇ、うちのお姉ちゃんは根性なし。なんていうか情けなくて哀しくなるね。そういう点ではお兄ちゃん……とか言えるのはうらやましいかなぁって一瞬思ったりして」
「ポニー……」
詩貴の顔にフッと相手を思いやるみたいな目が浮かんだ。でもそれポニーにはキモチのいいモノではないから、チッ! っと舌打ちしたらワインをグラスに注ぐ。そしてグイっと勢いよくやって言い放つのだった。
「なんか今のでちょっとムカついた。だから詩貴、多貴が挑んできたらボコボコにしてやるから。詩貴の見ている前で立ち上がれないくらい叩きのめしてやるから。それが嫌だったらわたしの彼女になるって今ここで誓えばいい」
なんとなく引き下がれないっぽい感が漂ったとき、詩貴が何も言わずジーっと見つめたりするものだから、ポニーはまた舌打ちしてワインをグイグイと飲むしかなかった。
「ぅ……」
しまった……という感じでビクッとなる詩貴、やや恥じらいながらテーブルにこぼしたスープをナプキンで拭く。なんせ頭の中は真新しく衝撃的な記憶で埋まっている。昨日にて凛々しい少年時代に若返った兄を目にしたのだ、ちょっとやそっとでは冷静になどなれない。
「詩貴、そんなに兄ラブなわけ?」
共に朝食を取っているポニーが突っ込む。それに対して詩貴は別に……と毎度の反応をしようとした。でもそれより早く電流が流れた事により、ちょいとばかりおのれのキモチを吐き出す。
「そりゃそうでしょう……あんなのを見てしまったら……」
「あんなのって?」
「若返ったお兄ちゃん。マンガみたいだけどほんとうに昔のお兄ちゃんだった。しかもわたしを助けようと思って燃えているのが伝わった。つまりそれは……わたしにしてみれば、一番かっこういいと思っていた過去のお兄ちゃんがもう一度やってきたって震える事なんだよ。なんとも言えないキモチになっても当然じゃない?」
恥じらう事なく詩貴が言うものだからポニーはちょっとおもしろくない。だから意地悪っぽくつぶやいてやる。
「お兄ちゃんねぇ……」
「なに?」
「いやぁ、詩貴ってかっこういいのにブラコンなんだなぁと思って。それさえなければパーフェクトにかっこういいと思うんだけどなぁ。ブラコンとかキモいって周りは誰も言わなかったの?」
「べつにかっこう悪くてもキモくてもいいわ」
「なんで?」
「お兄ちゃんがかっこういいから」
「やだ詩貴、ダサい女に成り下がらないでよぉ」
まったくもうと深いためいきを漏らすポニー。でもちょっと感情の揺れがいつもと違う音色を立てたらしい。だからいつもと少し異なるフンイキって事を口にしたりする。
「まぁ……ある意味ではうらやましいけどね」
豪華な白パンをつまみながらポニーが言うと、当然詩貴はどういう意味かと聞かずにいられない。するとポニーは渇いた笑いを浮かべ、なんかもうどうでもいいやと言いたげにつぶやく。
「ブラコンはともかく兄を慕うなんて青春って感じでいいのかもね。わたしだって妹として姉を慕ってみたかった。でもどうだろうねぇ、うちのお姉ちゃんは根性なし。なんていうか情けなくて哀しくなるね。そういう点ではお兄ちゃん……とか言えるのはうらやましいかなぁって一瞬思ったりして」
「ポニー……」
詩貴の顔にフッと相手を思いやるみたいな目が浮かんだ。でもそれポニーにはキモチのいいモノではないから、チッ! っと舌打ちしたらワインをグラスに注ぐ。そしてグイっと勢いよくやって言い放つのだった。
「なんか今のでちょっとムカついた。だから詩貴、多貴が挑んできたらボコボコにしてやるから。詩貴の見ている前で立ち上がれないくらい叩きのめしてやるから。それが嫌だったらわたしの彼女になるって今ここで誓えばいい」
なんとなく引き下がれないっぽい感が漂ったとき、詩貴が何も言わずジーっと見つめたりするものだから、ポニーはまた舌打ちしてワインをグイグイと飲むしかなかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
私って何者なの
根鳥 泰造
ファンタジー
記憶を無くし、魔物の森で倒れていたミラ。テレパシーで支援するセージと共に、冒険者となり、仲間を増やし、剣や魔法の修行をして、最強チームを作り上げる。
そして、国王に気に入られ、魔王討伐の任を受けるのだが、記憶が蘇って……。
とある異世界で語り継がれる美少女勇者ミラの物語。
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら
キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。
しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。
妹は、私から婚約相手を奪い取った。
いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。
流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。
そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。
それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。
彼は、後悔することになるだろう。
そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。
2人は、大丈夫なのかしら。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる