上 下
105 / 127

105・ヤンキーなんか死ぬほど大嫌いです!

しおりを挟む
 105・ヤンキーなんか死ぬほど大嫌いです!


「うぅ……このさぶい年末に買い物へ娘を放り出すとかお母さんは極悪人」

 わたしは薄暗くてつめたく寒い中をスーパーに向かってトボトボ歩いていた。

「お、巨乳じゃん! おい巨乳!」

 不意に後ろからデカい声が聞こえた。ここで反射的に振り返らないとかできないわけで、振り返ったらクラスメートのヤンキーってバカが自転車に乗っていた。

(こいつ……)

 わたしはこいつが真剣に嫌いだったりする。だってこいつ以前において、わたしに告白しただけならまだしも断れたからって彼氏の光に暴力を振るったやつだから。わたしの中でこのバカは永遠に罪人であり嫌われて当たり前。

「どこか行くのか巨乳」

「あのさぁ……外を歩いているときに、人に向かって巨乳って大きな声で言うのはやめてくれない?」

「なんだよ、おまえの乳がデカいのは確かだろう。それが巨乳でなかったらなんだって言うんだよ」

「お願い……橘でいいから、ふつうに名前で呼んで」

「なんだ、おまえ巨乳のくせに照れ屋なんだな。まぁ、でもおれ、照れ屋な女って好きだぞ」

 うわぁ……いやだ、わたし、どうあってもこういう奴って嫌い。こういうタイプの男が好きって女子がいたら持っていって、よろこんであなたにあげますから。

「なぁ、橘」

 ここでヤンキーが自転車から降りた。こいつわたしと話をする気だ。こっちはそんなのイヤなのに、年末の買い物とかお手伝いで忙しいのに、こいつはやることがないヒマ人とかくっそ最悪。

「おまえさぁ、おれの事って嫌いなままか?」

「なんで好かれると思うのか理解できない。人の彼氏を殴ったくせに、暴力しか取り柄がないヤンキーのくせに」

「でも……」

「でもなに?」

「おれ、いまのところはまだちょっとおまえの事を気にしているんだ。おまえ、まだあいつと付き合ってんの?」

「付き合ってるし、将来は結婚する気マンマンですから」

「え、じゃぁもうやったのか? 生の中出しとか……あ、まずはパイズリとかそういうところか」

「やるか……バカ!、大声で言うなバカ!」

「えぇ、まだなんにもやっていないのかよ。三ツ井ってほんとうはチンポがついていないんじゃないの? あるいはチンポが垂直になれない病気とか、もしかしたら男同士の同性愛じゃないのか」

「はぁ? なんだって!」

「おまえみたいな巨乳をすぐに食わないとか、そんなの男として認められない。おまえだって心の中では早く食われたいと願っているんだろう? 絶対そのはず」

「あんた嫌い、ヤンキーって最悪、最低、下品、人間のクズ!」

「でも、おれは知っているんだぞ。三ツ井はおれより最低なクズ野郎だってな」

「は、なんで光があんたより最低になるわけ?」

「三ツ井って小説家志望らしいじゃんかよ」

「そ、それがなに?」

「小説家とか根暗じゃんかよ」

「ヤンキーとかいうクズ人種よりずっとマシ」

「で、なんか噂によると三ツ井ってエロい小説も書いているらしいじゃんかよ」

「それはあれです、色んな話が書けるって事なんです」

「巨乳な彼女になんにもできないから、小説でオナニーとかそんなの男としてはただの根暗チンポじゃねぇかよ」

「じゃぁ、聞くけど……あんた何ができるの? そもそもいま、あんたヒマ人なんでしょう? 年末のお手伝いも何もせずフラフラして、下品な言葉を使いまくって、人がイヤがる事ばかり言って、それで才能も何もないとか言ったら、ヤンキーってこの世の汚物じゃんか。人間のクズ以外のなんでもないじゃん」

「でもおれは根暗じゃないからな、小説なんか書かないけれど、その代わり真っ直ぐでかっこういい男だからな」

「たんに真っ直ぐなバカってだけでしょう」

「おまえ、三ツ井の小説がどこにあるか教えろよ」

「教えてどうなるわけ?」

「ムカつくから荒らしてやる」

「あ、やっぱりそんなこと考えるんだ? ヤンキーって例外なくそういう人間のクズばっかり、あんたも例外じゃない。がんばっている人のジャマをするとか如何にもヤンキーが思いつきそうなことだもんね」

「そんなに三ツ井がいいのかよ! おれではダメなのかよ!」

「当たり前のことを力説するのやめてくれない?」

「くぅ、人がやさしく振る舞っていればつけ上がりやがって」

「どこがやさしいの……だからヤンキーってイヤ」

「ケッ! おまえみたいに乳がデカい以外になんの取り柄がない女は不幸になって死にやがれ! もうおまえの事なんか好きじゃないからな、おまえのこと嫌いになったからな」

「やった! 嫌ってくれてありがとう!」

「チッ……車に撥ねられて死んでしまえブス巨乳が!」

 ヤンキーは自転車に乗ったらさっと立ち去ったのだけれど、何回かこっちを振り返ってブスとか言う辺り、もうほんとうに嫌なんですけれど。

「あぁ……嫌だ、ものすごく疲れた……これからいっぱい買い物しなきゃいけないのに」

 わたしは歩きながら思った。この世にはヤンキーに惚れる女もけっこういるという。だからそういう女子がうちの学校にやってきて、あのヤンキーと付き合うみたいな話が起こらないかなぁって。

 いや……いま一瞬ちょっとだけ思った。たまには性格の悪いことを考えてもいいはずだとして思った。あのヤンキーが曲がり角でトラックにはねられ、地面で頭を打って即死。そして学校に言ったらヤンキーの席に死に花を飾って、先生とみんなが悲しそうな顔をしているとき、わたしだけ心の中で、やった、やった! と大喜びするって、そんな物語が発生しないかなぁと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

処理中です...