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99・痛くてたまらないです……

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 99・痛くてたまらないです……


 いつも通りに目が覚めたはずだった。決まった時間にパッと両目が開いて、「うぅん……」 とか悶えながらもうちょい寝たいと思う。今朝もそうい始まりになるはずだったけれど、ちょっと違った。

「うぉぉぉぉ……ちょ、なにこれ!」

 両目が太陽光線でパッと開いたとき、その瞬間にわたしはドキッとして胸に抱きしめていた枕を突き放す。そしてパジャマの上から右側の乳首の辺りを触った。

「あんにゅぅうぐ!!! い、痛い……あぁうぅぅう!」

 やば……なにこれ……と真剣に心臓が冷えた。左側は大丈夫なのだけれど、右側の乳はひっきりなしに痛いと脳に情報を送ってくる。

「マリー、起きてる?」

 お母さんの声が聞こえたとき、今日は学校を休む! と言いたかった。でも乳首の辺りが痛いから学校を休むって、恥ずかしくて言えるわけがなく、仕方ないからいま起きて着替えるところと言ってしまった。

「言った以上は起きないといけない……くぅ……」

 左手で右側の乳を抑えながら立ち上がる。なんだろう、今日はなんかの試練日ですか? と思いながらパジャマを脱ぐ。

「うわぁ……やだぁ……こんなのってない」

 白フルカップブラにおっぱいを収納して整えるとき、その時でさえ右側は痛いという情報を送ってくる。

「我が娘……いったいどうした?」

 自分の巨乳を見下ろしながら……ブラにこすれるだけで痛いとか重症だと思った。でも思ったからって学校を休めるわけじゃない。だから痛い、痛いと何度も思いながらシャツを着てブレザーを着る。

(やば……今日は色々気を付けないと……)

 朝食だの歯磨きだのを終えて家を出たわたしは、今日は完全武装みたいな心で生活しなきゃいけないと心する。たまにエロい友人が乳揉みしたりするけれど、今日はそれを絶対にさせない。もしされたら、わたしは相手に火の玉ビンタをしなきゃいけなくなる。

 しかも今日は体育なんてあるんだ。おっぱいが痛いから休みますなんて恥ずかしくて言えないからやるけれど、ひたすらおっぱいを守るって意識でやらないといけない。

「マリー、どうしたの?」

 体育ために着替えるという時間、友だちがわたしを見て言った。

「え、別に……」

 わたしは自分が変な事をしているのは知っているけれど、そうするしかない。自分の席ではなくロッカーを背にして着替える。これは背後から乳揉みをされたりしないようにって防災意識。

(痛いよぉ……)

 本日の体育……地獄……ただでさえ巨乳で目立つわたしが、おっぱいを気にして何度も触ったら「何やってんの?」 って言われる。イヤだ、恥ずかしくて言いたくない。だからどんなに痛いとか思っても冷静に、何にも悩みを抱えていません! という表情で乗り切るしかない。

 長い……苦痛を抱えると時間の経過が遅くて一日が長いとなる。いったいどれだけ学校が終わって欲しいと願っただろう。永遠かと思う長いトンネルを抜けたみたいにホッとした。

「マリー」

 わたしが不調なときに光のテンションが高い。こういうのもイヤなんだよね、光にだったら言えるか? って言われたら、やっぱり言えない。言えないからちょっと腹が立つ。

「今日は用事があるからすぐに帰る」

「えぇ……今日のマリーってなんか冷たくない?」

 光はテンションの高い日は、ちょっとワガママっぽくなったりする。いつもなら、じゃぁな! ってすぐ了解してバイバイするのに、今日は小学生みたいに粘着する。

「あぁ、うるさい。光は子どもか!」

「なんだよそれ、なんで機嫌が悪いんだよ。言わないと言うまで付きまとうぞ」

「ねぇ、光……」

 わたしはここで思い切って聞いてみようかと思ったんだ。男子も乳首が痛くなるような事ってある? と。多分聞いてもいいんだ、絶対にそれは変な質問ではないんだ。だけど、なんだろう……なんか不思議と言いにくいって思っていえなかったりする。

「なんだよ、なにが言いたいんだよ」

「光のお子さま! 小学生! 今日は用事があるって言ったんだから、これ以上わたしにかまわないで」

「わかったよ、だーれがマリーといっしょに帰りたいとか思うもんか、マリーのバーカ!」

「ったくもう!」

 光のバカ! なんて思いながら家に帰ったのだけれど、それでもまだ右側が痛い。

「やだぁ……わたしって死んだりするのかな」

 家に帰って着替えたら、わたしは明日になっても痛いならお母さんに相談しようと思いながらベッドに潜った。実際痛くて気が散るゆえ勉強とかやる気が湧かない。

「神さま……わたしまだ死にたくないです……悪いこともした覚えはないから、どうか天国へのお誘いはもうちょっと待ってください」

 そんな事を祈りながらちょっとだけ寝入ってしまった。でもハッと目が覚めたら、朝の7時から数えておよそ9時間後にしてやっと痛みは消え去っていたんだ。
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