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82・そういうのもいいんじゃない? かと思う
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82・そういうのもいいんじゃない? かと思う
「えぇ!」
いま、わたしがちょいと驚いたのは光の読み切り新作小説が激に恐ろしかったから。
「やだ……光……どうしちゃったの?」
R15指定だけれど、彼氏の書いた小説を彼女が読まないなんて事はありえない。だからいつものように読んだら、これがもうすごいバイオレンスと人殺し満載。ものすごい勢いと同時に変なところでうまい! という感じがあるから怖くて夜が寝られなくなりそうって気がした。
「電話、電話」
わたしは午後の8時20分過ぎに光へ電話した。
「もしもし、マリー?」
おそろしい小説を書いた本人はとってものんびりとかおだやかな声。わたしは別に光を怒りたいと思って電話したわけじゃない。怖いんだよ! って事くらいは伝えたかったから。
「光……新作の読み切り怖いよ……」
「あぁ、あれ……勢いで書いちゃって」
「なんかあったの?」
「いや、その……」
「いいから、彼女のわたしには正直に言いなさい!」
「ネットにさぁ、恋愛とかSF的なモノとか巨乳女子が出てくるちょいエロとか書いているんだけど、一回として思い描くような大当たりっていうのができないんだよね」
「でも光はがんばっているから、いつか成功すると思う」
「いや、それでさ……ほんとうはやりたくないと思っていたんだけれど、異世界がどうとか追放がどうとかってマンネリなのを、結局そういうのしか受けないなら自分もやってみようかなと思ったんだ」
「え、それってどこにある?」
「あ、いや、いまのペンネームとは無関係でありたいから別名で別場所。作品が受けなかったらそのまま捨てるつもり」
「それってどうだったの?」
「なんでだろうって……って思っちゃいけないんだろうけど、やっぱり思っちゃうんだ。他の人だったら異世界でも追放でもみんな一定の読者数とかお気に入りがつくのに、自分だけほぼゼロ。だからものすごく腹が立って、思った」
「何を思った?」
「異世界とか追放とかそういうのしか支持しないやつらを殺しちゃおうって。バラバラのぐちゃぐちゃって斬殺して液体にしてやろうって」
「ああ、そういうことか!」
「ほんとうは書き終えてから出すかどうか悩んだんだ。他の人がどう思うかは全然どうでもいいのだけれど……出したらマリーも見る可能性があって、見たらショックを受けるかもしれないって」
「受けた、めっちゃびっくりした。光に何があったの? ってドキドキしたし、今夜は怖くて眠れないかもしれない」
光はあんなすさまじい小説を書いた人間とは思えないほど、今はちょっとオドオドしている。そこには……もしかすると、わたしに嫌われたらどうしようみたいな、そんな不安があるのかな? と伝わる。
「光」
「な、なに?」
「全然いいじゃん! そんなのたかが小説だし、わたしはまちがっても光が悪いことしたなんて思っていない。いいじゃん、これからも気に入らないのはどんどん消しちゃったらいいじゃん。それにあれ、怖いっていうのをかけるのも強みになるじゃん」
「あ、ありがとう……」
「しかしよく思いつくね、地面に埋められ出ている顔をトラックで踏みつぶすとか、巨大なミキサーにさかさまにした憎いやつを突っ込んで脳みそが飛び出すように潰してジュースを作るとか芸術だよ」
「あ、いや……もう終わったことだから、あんまり言わないで……後から色々言われると恥ずかしいっていうか」
「そうか。でも光は相変わらずがんばっているんだって知れてよかった。あ、そして覚えておいて」
「な、なに?」
「マリーはいつだって光を応援しているから!」
「あ、ありがとう……」
「じゃぁね!」
「うん、じゃぁ」
わたしは光と話をして気が楽になった。まぁ……わたしを怖がらせたのは光なんだけれどね。
「んっと……」
わたしはベッドに寝転んで思う。創作というカタチで怒りの発散ができるなら全然いい。そういうのができなくて実際の他人を攻撃するようなのがクズ。だから光は問題なし。そしてちょっぴりうらやましいなとも思った。創作でウサ晴らしができるなんて、いかにも素質とか才能ある人って感じでかっこういいなとあこがれちゃうよ。
「えぇ!」
いま、わたしがちょいと驚いたのは光の読み切り新作小説が激に恐ろしかったから。
「やだ……光……どうしちゃったの?」
R15指定だけれど、彼氏の書いた小説を彼女が読まないなんて事はありえない。だからいつものように読んだら、これがもうすごいバイオレンスと人殺し満載。ものすごい勢いと同時に変なところでうまい! という感じがあるから怖くて夜が寝られなくなりそうって気がした。
「電話、電話」
わたしは午後の8時20分過ぎに光へ電話した。
「もしもし、マリー?」
おそろしい小説を書いた本人はとってものんびりとかおだやかな声。わたしは別に光を怒りたいと思って電話したわけじゃない。怖いんだよ! って事くらいは伝えたかったから。
「光……新作の読み切り怖いよ……」
「あぁ、あれ……勢いで書いちゃって」
「なんかあったの?」
「いや、その……」
「いいから、彼女のわたしには正直に言いなさい!」
「ネットにさぁ、恋愛とかSF的なモノとか巨乳女子が出てくるちょいエロとか書いているんだけど、一回として思い描くような大当たりっていうのができないんだよね」
「でも光はがんばっているから、いつか成功すると思う」
「いや、それでさ……ほんとうはやりたくないと思っていたんだけれど、異世界がどうとか追放がどうとかってマンネリなのを、結局そういうのしか受けないなら自分もやってみようかなと思ったんだ」
「え、それってどこにある?」
「あ、いや、いまのペンネームとは無関係でありたいから別名で別場所。作品が受けなかったらそのまま捨てるつもり」
「それってどうだったの?」
「なんでだろうって……って思っちゃいけないんだろうけど、やっぱり思っちゃうんだ。他の人だったら異世界でも追放でもみんな一定の読者数とかお気に入りがつくのに、自分だけほぼゼロ。だからものすごく腹が立って、思った」
「何を思った?」
「異世界とか追放とかそういうのしか支持しないやつらを殺しちゃおうって。バラバラのぐちゃぐちゃって斬殺して液体にしてやろうって」
「ああ、そういうことか!」
「ほんとうは書き終えてから出すかどうか悩んだんだ。他の人がどう思うかは全然どうでもいいのだけれど……出したらマリーも見る可能性があって、見たらショックを受けるかもしれないって」
「受けた、めっちゃびっくりした。光に何があったの? ってドキドキしたし、今夜は怖くて眠れないかもしれない」
光はあんなすさまじい小説を書いた人間とは思えないほど、今はちょっとオドオドしている。そこには……もしかすると、わたしに嫌われたらどうしようみたいな、そんな不安があるのかな? と伝わる。
「光」
「な、なに?」
「全然いいじゃん! そんなのたかが小説だし、わたしはまちがっても光が悪いことしたなんて思っていない。いいじゃん、これからも気に入らないのはどんどん消しちゃったらいいじゃん。それにあれ、怖いっていうのをかけるのも強みになるじゃん」
「あ、ありがとう……」
「しかしよく思いつくね、地面に埋められ出ている顔をトラックで踏みつぶすとか、巨大なミキサーにさかさまにした憎いやつを突っ込んで脳みそが飛び出すように潰してジュースを作るとか芸術だよ」
「あ、いや……もう終わったことだから、あんまり言わないで……後から色々言われると恥ずかしいっていうか」
「そうか。でも光は相変わらずがんばっているんだって知れてよかった。あ、そして覚えておいて」
「な、なに?」
「マリーはいつだって光を応援しているから!」
「あ、ありがとう……」
「じゃぁね!」
「うん、じゃぁ」
わたしは光と話をして気が楽になった。まぁ……わたしを怖がらせたのは光なんだけれどね。
「んっと……」
わたしはベッドに寝転んで思う。創作というカタチで怒りの発散ができるなら全然いい。そういうのができなくて実際の他人を攻撃するようなのがクズ。だから光は問題なし。そしてちょっぴりうらやましいなとも思った。創作でウサ晴らしができるなんて、いかにも素質とか才能ある人って感じでかっこういいなとあこがれちゃうよ。
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