79 / 127
79・きみにあげるフォー・ユー
しおりを挟む
79・きみにあげるフォー・ユー
「光、ちょっと家まで来て欲しいんだ」
本日の学校帰り、わたしはとなりを歩く光にそう言った。
「え、なんで?」
そう言われたとき、なぜならこうだからと言いたいけれど、それを言っちゃうとサプライズが成立しなくなる。だから言いたいという衝動をグゥっと飲み込む。
「ま、とりあえず入って」
わたしは門を開けて敷地内に光を招いた。そして横の自転車置き場の位置で待ってもらう事にした。
「すぐ、来る。ほんとうにすぐ来るから、ちょっとだけ待っていて、10秒で戻ってくるよ」
言ったわたしは家の中に入ると、ついにこの瞬間が来たとばかり興奮しながら自分の部屋に行き、カバンを置いて代わりに大事な袋をつかんで階段を下りる。
「光」
「お、さすがマリー! ほんとうに10秒ジャスト!」
「えっと、その……えっとさぁ……」
「え、なに? どうしたの?」
「光にあげたいと思うものがあって……」
「あげるって、くれるってこと?」
「そ、そう。この間、おもしろいモノをわたしの誕生日プレゼントにくれたでしょう? そのお礼。で、ちょっと早いんだけれどさ、冬向けだからクリスマスプレゼントも兼ねるってことで」
「クリスマスプレゼント? え、なに、もらえるのはうれしいけれど、お金使って高いモノを買ったとかだったら気が引けるよ……」
「ち、ちがうよ」
わたしはお祖母ちゃんに教えてもらいながら作ったモノを大事に入れたデパートのおしゃれ紙袋を差し出す。
「わたしが……作った……」
「作った? って、これって手袋にマフラー」
「その、初めてだからへたくそだから手袋はミトンになって、マフラーはまったくもってかざりっ毛がないけれど、でも……ちゃんと心を込めて作ったんだよ」
「ほ、ほんとうに? おれのために作ってくれたの?」
「うん……」
「う、うわぁ……つ、作ってもらえるなんて……」
光は袋の中を見ながらとってもカンゲキなつぶやきを落としたのだけれど、わたしにとってうれしかったのはその続きがあったってこと。うれしいと思っているセリフを出してくれたこと。
「マリー、お、おれさぁ……」
「な、なに?」
「女の子から手作りのモノをプレゼントされるとか、そういうのってアニメとか小説の中だけとか思っていて、自分でそういう場面が出る小説を書いた事もあるんだけど、でも……実際に自分がもらうってことが起こったりすると……」
「起こったりすると?」
「夢みたいなキブン……いま人生で一番幸せな瞬間に立ち会っているみたいな、そんな感じ」
「あ、あのさぁ光……」
「なに?」
「この流れだから……せっかくだから、やってみたいことがあるんだけれど」
「な、なに?」
わたしはマフラーを取り出すと、胸をドキドキさせながら一言添えて光にかけてあげたりする。
「はい、どうぞ!」
「ぁ……ありがとう」
光はマフラーに目を向けたら、急に顔を横に向け目にゴミが入ったとか言って横を向き、2回ほど鼻を啜ったりした。
「これ、一生の宝物にするよ。マリーがもう捨ててとか言っても捨てないから」
光が真剣な顔でそう言ってくれた時、わたしはこの瞬間にタイムスタンプを押したくなった。後でしっかりこのキモチを日記に書いて残しておきたいと思った。
「光、ちょっと家まで来て欲しいんだ」
本日の学校帰り、わたしはとなりを歩く光にそう言った。
「え、なんで?」
そう言われたとき、なぜならこうだからと言いたいけれど、それを言っちゃうとサプライズが成立しなくなる。だから言いたいという衝動をグゥっと飲み込む。
「ま、とりあえず入って」
わたしは門を開けて敷地内に光を招いた。そして横の自転車置き場の位置で待ってもらう事にした。
「すぐ、来る。ほんとうにすぐ来るから、ちょっとだけ待っていて、10秒で戻ってくるよ」
言ったわたしは家の中に入ると、ついにこの瞬間が来たとばかり興奮しながら自分の部屋に行き、カバンを置いて代わりに大事な袋をつかんで階段を下りる。
「光」
「お、さすがマリー! ほんとうに10秒ジャスト!」
「えっと、その……えっとさぁ……」
「え、なに? どうしたの?」
「光にあげたいと思うものがあって……」
「あげるって、くれるってこと?」
「そ、そう。この間、おもしろいモノをわたしの誕生日プレゼントにくれたでしょう? そのお礼。で、ちょっと早いんだけれどさ、冬向けだからクリスマスプレゼントも兼ねるってことで」
「クリスマスプレゼント? え、なに、もらえるのはうれしいけれど、お金使って高いモノを買ったとかだったら気が引けるよ……」
「ち、ちがうよ」
わたしはお祖母ちゃんに教えてもらいながら作ったモノを大事に入れたデパートのおしゃれ紙袋を差し出す。
「わたしが……作った……」
「作った? って、これって手袋にマフラー」
「その、初めてだからへたくそだから手袋はミトンになって、マフラーはまったくもってかざりっ毛がないけれど、でも……ちゃんと心を込めて作ったんだよ」
「ほ、ほんとうに? おれのために作ってくれたの?」
「うん……」
「う、うわぁ……つ、作ってもらえるなんて……」
光は袋の中を見ながらとってもカンゲキなつぶやきを落としたのだけれど、わたしにとってうれしかったのはその続きがあったってこと。うれしいと思っているセリフを出してくれたこと。
「マリー、お、おれさぁ……」
「な、なに?」
「女の子から手作りのモノをプレゼントされるとか、そういうのってアニメとか小説の中だけとか思っていて、自分でそういう場面が出る小説を書いた事もあるんだけど、でも……実際に自分がもらうってことが起こったりすると……」
「起こったりすると?」
「夢みたいなキブン……いま人生で一番幸せな瞬間に立ち会っているみたいな、そんな感じ」
「あ、あのさぁ光……」
「なに?」
「この流れだから……せっかくだから、やってみたいことがあるんだけれど」
「な、なに?」
わたしはマフラーを取り出すと、胸をドキドキさせながら一言添えて光にかけてあげたりする。
「はい、どうぞ!」
「ぁ……ありがとう」
光はマフラーに目を向けたら、急に顔を横に向け目にゴミが入ったとか言って横を向き、2回ほど鼻を啜ったりした。
「これ、一生の宝物にするよ。マリーがもう捨ててとか言っても捨てないから」
光が真剣な顔でそう言ってくれた時、わたしはこの瞬間にタイムスタンプを押したくなった。後でしっかりこのキモチを日記に書いて残しておきたいと思った。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる