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67・萌えゲーも大事な勉強になるってか……4
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67・萌えゲーも大事な勉強になるってか……4
「いやぁ、ほんとうに勉強になるわ。女のわたしでさえ、よくこんな女キャラを思いつくもんだと感心させられる。このゲームつくった人ってどういう人? 尊敬しちゃうよ、マジで」
本日学校から帰って着替えたわたしは、ベッドの上に座りながらノートにあれこれ書いている。それは勉強とか詩作とかではなく、プレイ中ゲームの大事なことを忘れないように書き留めているってこと。
「えっと……山崎、そうこいつが嫉妬深いんだよ。こいつとのデートをすっぽかしたら大爆発で好感度が一気に下がっちゃうんだ。あと、地味な文系を気取りながら侮れない田中も曲者。おまえなんかどうでもいいんだから人の恋路を邪魔するなって」
わたしはすっかりこのゲームにハマっていた。そして光が夏海のビキニ姿を見たいと必死になった事への理解すら抱いていた。
「たしかになぁ、これは夏海のビキニ姿を見るために必死となるわ。だって現実において巨乳女子なわたしですらこんなに燃え上がってしまうんだから」
わたしはもはやゲームの域を超えたような必死さでプレイする。これが勉強だったら、わたしは一流コースを歩めるかもしれない。
「わたしが魅力的な巨乳だからって胸ばっかり見るのやめてくれないってか? 夏海め……ちょっと巨乳だからっていい気になり腐ってからに」
わたしは夏海の放ったセリフを聞いたとき、そういう事は小学生の頃にわたしも思った事があったな……と回想し、その姿を傍から見たらこんな感じになるのかと人生を学習している気になれた。
「それにしても……どのキャラもムカつく! と思わせてから、時々ふっとしおらしい事を言ってこっちの感情をキュウッとさせるんだ。女はあざとい、うん、女はイヤらしい生き物」
わたしはこの恋愛ゲームをやりながら、これなら光がハマるのもムリは無いと思った。あげく女がこういうゲームをやってもおもしろいもんだと脳の中央がテカテカっと光ってもいる。
「よし、これでイケるはず……1年目から夏海のビキニ姿を見れるはず。今度こそ夏海の巨乳ムービーが拝めるはず」
ここにたどり着くまで数時間かかった。ゲーム内ではたったの3ヶ月なのだけれど、もうすでにゲームをプレイするわたしのライフは0よ! みたいに疲れちゃっている。
「え、ちょっと待って、なんで、なんでまたワンピース? ふざけんなよ、何で人の期待をサクッと裏切るの?」
わたしはここでネットを見ようと思ったのだけれど、大事なことに気づいた。
「そうだ、こういうときこそ彼氏の光に聞くべしだ。同じたのしさを2人で共有するって、それこそシアワセなカップルの営みだって、えらい先生が言っていたもんね」
わたしは光に電話をかける。そして何がいけないのかわからないと素朴な疑問をぶつけた。
「だって勉強よし、運動よし、ルックスよしとそろっているんだよ? 1年目から並々ならぬ神経を削ってやってぬかりはないのに、何がいけないのかわからない、教えて!」
「おぉ、ハマってますなぁマリーさん」
「いいから教えてよ」
「そのプールデートの日付って7月30日じゃない?」
「そうだけれど、よくわかるね」
「だって、それより早くにプールデートの選択肢は出て来ないから。で、大事なのは7月14日の縁日に夏海を誘ったかどうか」
「縁日?」
「1年目で夏海のビキニ姿を見るためにはその日が重要」
「え、なに? じらさないで教えてよ」
「縁日に誘ってその浴衣すごくかわいいよ! ってべた褒めして、金魚すくいで高得点を出して夏海にプレゼントして、帰り道で不良に絡まれたときの殴り合いで勝利しなきゃいけないんだ」
「あぁ……」
わたしはこのとき、なんだそれ? と思ったのだけれどすぐにある事を思い出したんだ。そういえば……1年目で夏海のビキニ姿を拝むためには、相当な好感度上げと試練のクリアがあるってネットに書いてあるのを見たと。試練、それがこれなのか! と胸にブッ刺さる。
「マリー、最終セーブの日付は?」
「え、セーブって……7月31日って日付しかないよ……」
「じゃぁ、最初からすべてやり直し、がんばれ!」
「……」
「マリー、だいじょうぶ?」
「ごめん、ちょっと瞑想する」
わたしはゲームごときなんて表現では済まされないおそろしい脱力感に襲われた。
「どうしたのマリー? どこか具合でも悪いの?」
晩ご飯のときお母さんがわたしの暗い顔を見て心配した。ふつうは心配するよね? でもそのとき実はゲームでさぁ……なんていうのはふつうじゃないよね。言えるわけないよ、そんなこと……そんなこと言ったらお母さんから女子力のムダ遣いって怒られちゃうよ。
「えっと……」
わたしは晩ご飯が終わってもフラフラだった。今日はもうゲームはできないと思ったし、真面目に勉強だけして寝ようとも思った。そして実際に午後11時までしっかり勉強して自分はいい子だと自らをホメてホッとしたんだ。ところがオフロから上がったとき、ちょっとばっかりテンションが復活してしまう。
「夏海、ビキニ姿を拝みたいってまっすぐな心を甘く見るなよ。絶対に拝んでやるから」
そんな感じでちょっとだけ……と思いながらまた最初からゲームをやり直した。でもって寝入ったのは午前3時だった。
「いやぁ、ほんとうに勉強になるわ。女のわたしでさえ、よくこんな女キャラを思いつくもんだと感心させられる。このゲームつくった人ってどういう人? 尊敬しちゃうよ、マジで」
本日学校から帰って着替えたわたしは、ベッドの上に座りながらノートにあれこれ書いている。それは勉強とか詩作とかではなく、プレイ中ゲームの大事なことを忘れないように書き留めているってこと。
「えっと……山崎、そうこいつが嫉妬深いんだよ。こいつとのデートをすっぽかしたら大爆発で好感度が一気に下がっちゃうんだ。あと、地味な文系を気取りながら侮れない田中も曲者。おまえなんかどうでもいいんだから人の恋路を邪魔するなって」
わたしはすっかりこのゲームにハマっていた。そして光が夏海のビキニ姿を見たいと必死になった事への理解すら抱いていた。
「たしかになぁ、これは夏海のビキニ姿を見るために必死となるわ。だって現実において巨乳女子なわたしですらこんなに燃え上がってしまうんだから」
わたしはもはやゲームの域を超えたような必死さでプレイする。これが勉強だったら、わたしは一流コースを歩めるかもしれない。
「わたしが魅力的な巨乳だからって胸ばっかり見るのやめてくれないってか? 夏海め……ちょっと巨乳だからっていい気になり腐ってからに」
わたしは夏海の放ったセリフを聞いたとき、そういう事は小学生の頃にわたしも思った事があったな……と回想し、その姿を傍から見たらこんな感じになるのかと人生を学習している気になれた。
「それにしても……どのキャラもムカつく! と思わせてから、時々ふっとしおらしい事を言ってこっちの感情をキュウッとさせるんだ。女はあざとい、うん、女はイヤらしい生き物」
わたしはこの恋愛ゲームをやりながら、これなら光がハマるのもムリは無いと思った。あげく女がこういうゲームをやってもおもしろいもんだと脳の中央がテカテカっと光ってもいる。
「よし、これでイケるはず……1年目から夏海のビキニ姿を見れるはず。今度こそ夏海の巨乳ムービーが拝めるはず」
ここにたどり着くまで数時間かかった。ゲーム内ではたったの3ヶ月なのだけれど、もうすでにゲームをプレイするわたしのライフは0よ! みたいに疲れちゃっている。
「え、ちょっと待って、なんで、なんでまたワンピース? ふざけんなよ、何で人の期待をサクッと裏切るの?」
わたしはここでネットを見ようと思ったのだけれど、大事なことに気づいた。
「そうだ、こういうときこそ彼氏の光に聞くべしだ。同じたのしさを2人で共有するって、それこそシアワセなカップルの営みだって、えらい先生が言っていたもんね」
わたしは光に電話をかける。そして何がいけないのかわからないと素朴な疑問をぶつけた。
「だって勉強よし、運動よし、ルックスよしとそろっているんだよ? 1年目から並々ならぬ神経を削ってやってぬかりはないのに、何がいけないのかわからない、教えて!」
「おぉ、ハマってますなぁマリーさん」
「いいから教えてよ」
「そのプールデートの日付って7月30日じゃない?」
「そうだけれど、よくわかるね」
「だって、それより早くにプールデートの選択肢は出て来ないから。で、大事なのは7月14日の縁日に夏海を誘ったかどうか」
「縁日?」
「1年目で夏海のビキニ姿を見るためにはその日が重要」
「え、なに? じらさないで教えてよ」
「縁日に誘ってその浴衣すごくかわいいよ! ってべた褒めして、金魚すくいで高得点を出して夏海にプレゼントして、帰り道で不良に絡まれたときの殴り合いで勝利しなきゃいけないんだ」
「あぁ……」
わたしはこのとき、なんだそれ? と思ったのだけれどすぐにある事を思い出したんだ。そういえば……1年目で夏海のビキニ姿を拝むためには、相当な好感度上げと試練のクリアがあるってネットに書いてあるのを見たと。試練、それがこれなのか! と胸にブッ刺さる。
「マリー、最終セーブの日付は?」
「え、セーブって……7月31日って日付しかないよ……」
「じゃぁ、最初からすべてやり直し、がんばれ!」
「……」
「マリー、だいじょうぶ?」
「ごめん、ちょっと瞑想する」
わたしはゲームごときなんて表現では済まされないおそろしい脱力感に襲われた。
「どうしたのマリー? どこか具合でも悪いの?」
晩ご飯のときお母さんがわたしの暗い顔を見て心配した。ふつうは心配するよね? でもそのとき実はゲームでさぁ……なんていうのはふつうじゃないよね。言えるわけないよ、そんなこと……そんなこと言ったらお母さんから女子力のムダ遣いって怒られちゃうよ。
「えっと……」
わたしは晩ご飯が終わってもフラフラだった。今日はもうゲームはできないと思ったし、真面目に勉強だけして寝ようとも思った。そして実際に午後11時までしっかり勉強して自分はいい子だと自らをホメてホッとしたんだ。ところがオフロから上がったとき、ちょっとばっかりテンションが復活してしまう。
「夏海、ビキニ姿を拝みたいってまっすぐな心を甘く見るなよ。絶対に拝んでやるから」
そんな感じでちょっとだけ……と思いながらまた最初からゲームをやり直した。でもって寝入ったのは午前3時だった。
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