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49・光のお母さんに気に入ってもらえた

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 49・光のお母さんに気に入ってもらえた


「マリー、よろしく頼むわ」

 学校が終わったら本日の日直だった友人からプリントの数々を手渡された。

「了解」

 わたしはいったい何を受け取って何を了解したのか? それは本日は風邪で学校を休んだ光の家にプリントを届けに行くって話だ。わたしと光が付き合っていることは周知の事実であり、大多数からは祝福されているからこの流れは当然でしかない。

「さてと……」

 わたしはカバンを持って教室から出ると、これこそ彼女の役目ですよ! とプチ興奮を巨乳って胸に隠し持って光の家を目指していく。

 光の家はまだ中に招かれたことはないけれど、ここがそこ! という情報はちゃんと持っている。だから迷うことなくまっすぐ、まさによく出来た彼女って感じでたどり着いた。

(ドキドキ……)

 家のインターホンを鳴らすとき、わたしはいったいどうなるのだろうと乙女な緊張をしていた。光はラインメールを送っても返事をしてくれないから寝ているかもしれない、それを起こしたらわたしは悪い彼女になっちゃうのかなぁなどと色々思って息を飲む。そうするとガチャっと音がして家のドアが開く。

「あ、あの……」

 光のお母さんだ! と思ったら余計に緊張して声を躓かせる自分がいた。

「あら、ものすごくかわいい子、光の同級生?」

 お母さんはにっこり笑って、かわいい子だなんて言ってくれた。

「は、はい、クラスメートで、今日のいろんなプリントとか持ってきたんです」

 わたしが言ってカバンを足元に置こうとすると、お母さんはわたしをジーっと見て、ほんとうにかわいい子と言った後、ちょっといたずらっぽい声で、なかなかの巨乳さんね! とか言ってわたしをドキドキさせる。わたしの顔が赤くなったリしてもそれは無罪としか言えない。

「あぁ、光にこんなかわいい彼女ができたらいいんだけれど」

 お母さんがそう言ったとき、わたしは一瞬の中で判断しなければいけなくなったんだ。今ここで言うべきじゃない? ここで流したら嘘にならない? もっといえば絶好のタイミングを逃すことにならない? などなど。だからすぐにわたしは結論付け、その思いを声にした。

「か、彼女です!」

「え?」

「わたし光っていうか、三ツ井くんの彼女です。ちゃんとまっすぐ太陽みたいに明るくお付き合いしています」

「ほんとう? あなたほんとうに光の彼女なの?」

「は、はい……」

 するとお母さんはほんとうにアニメ的な感じでわたしの両手をグッとにぎってうれしそうな声で言ってくれた。

「あなたみたいにとってもかわいい子、しかもなかなかの巨乳さんって女の子が彼女なんだなんてすごくうれしい。うちの子がこんなステキな彼女を持っていたなんて夢にも思わなかった」

 お母さんはすぐさま家のドアを開けてから、入って入ってと笑顔で手招き。

「いいんですか?」

「いいもなにも大歓迎! 今日からあなたはわたしの娘よ! って言いたいくらいなんだから」

「お、お邪魔します」

 わたしは予定外に光ホームに招かれる事となった。いいのかなぁとか思いつつ歓迎されるっていうのはすごくうれしいって、うっかりすればニヤニヤしそうな感じになっていた。

「はいはい、座って座って」

 光のお母さんに言われてイスに座った。そして楕円形のテーブルをはさんで向き合う。

「どうぞ」

 ジュースとお菓子を差し出されたわたしはどうもとお礼を言う。

「それでその、あなたのお名前は?」

「あ、橘真里です。家族からも友達からもずっとマリーと呼ばれて現在に至っています」

「マリー! いいわねぇ、あなたの魅力的なかわいらしさにぴったり! わたしもマリーって呼んでいい?」

「はい」

 とまぁ、こんな感じで始まったのだけれど、おどろくほどスムーズに親しい会話が勢いづいた。

「ねぇマリー、うちの光が何か困らせるようなことをしたり言ったりしていない?」

「い、いえ、そんなことは」

「もしなんかあったらすぐに言って、わたしはマリーの味方だから、すぐに光の首を捻りあげるから」

「ハハ……」

 こんな風に会話が弾むと40分なんて5分くらいの感じで過ぎ去っていった。

「それでその……光、三ツ井くんはだいじょうぶですか?」

「あ、いいのよ、光って呼んで。なんせマリーはかわいい彼女、将来は光のお嫁さんにしてわたしの娘、遠慮はいらないわ。で、光も全然だいじょうぶ。ただの風邪だから明日は行きたくないとか言っても絶対に行かせるから安心して」

「じゃ、じゃぁ、わたしそろそろ」

「え、うそでしょう、もう帰るの? 冗談でしょう?」

「あんまり長居したら悪いですし」

「マリー、今日からここで生活しちゃいなさいよ。わたしマリーみたいな娘が欲しいとずっと思っていたんだから」

「あぁ、それはどうも」

 この時だった、二階から部屋のドアが開くような音がした。そしてのっそりのっそり元気なく階段を降りて来る音がした。もしかし光なのかな? とわたしがドキドキすると、居間のドアが開いて光が姿を現した。その姿はまったく予想もしないモノだった。

「え!」

 わたしを見ておどろき固まった光というのは、上はTシャツで下はトランクスってパンツ1枚だった。

「あ……」

 わたしは偶然ながらすごいモノを見たと思い、必然的に顔を赤くしてしまう。

「バカ! 事もあろうにかわいい彼女に無様な姿を見せない!」

 光のお母さんは立ち上がるとすぐ光を廊下に出し、とりあえずパジャマに着替えてマスクをしてからすぐ降りてくるようにと言ったりした。

「ごめんね突然バカな姿を見せてしまって。普段からTシャツとパン一ってだらしない格好で寝るのよあの子は、ほんとうにもう……」

「い、いえ……」

 わたしは光の知らなかった一面を知ったと同時に、意外な姿を見てちょっとラッキーだったかもなんて思ったりする。

「あ、こらこら、離れて離れて、近づかない、近づかない! マリーってたいせつな彼女に風邪が移ったら大変でしょうが」

 お母さんはパジャマ姿でマスクをかけて下りて光を台所に追いやり、そこからわたし向かってちゃんと礼をいうようにと指示した。

「わざわざ……持ってきてくれてありがとう」

「う、うん……風邪……だいじょうぶ?」

「だいじょうぶ、明日は学校に行くから」

「よかった、じゃぁね」

 いつもやっているようなこの小さなやり取り、それがここでは与えられた特権シーンを演じているみたいなキブンにさせられた。

「マリー、時々は家に遊びに来てね」

「ありがとうございます」

「さっきも言ったけれど、光がマリーに何かしらイヤがるような事を言ったりしたらわたしに報告して。わたしはマリーの味方だからね、わたしとマリーはもう母娘みたいなモノだからね」

「ど、どうも」

 わたしは一礼してから歩き出し、しばらくはそのままでいた。でも光の家からかなり離れたところについたらガマン出来なくなる。

「やった……気に入ってもらえた、光のお母さんに気に入ってもらえた! えへ、やったぁ!」

 周りに誰もいないことを確認してから思いっきりニヤけた。この少し背伸びしたうれしい感じっていうのは、冗談抜きで光との結婚を認めてもらえたみたいな、そんなイメージのよろこびだった。
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