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第十二・カッサータ登場、悠と対面
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第十二・カッサータ登場、悠と対面
「今日の場所は遠いなぁ」
午前8時30分頃にお目当ての場所を目指し歩く悠がぼやいた。女子力の実を作っている畑はたくさんあるが、今日はスフレ宅からかなり離れたところの畑を見張る予定。しかし前世では考えられなかった体力があるので、体に疲れがたまってヒイコラ言うような事はない。前世では40分も歩くとしんどくなった記憶がある。
そして9時、歩き始めてから90分後に予定通り到着。ドラゴンも人間と同じで9時頃から活動し昼になれば昼寝し夕方になれば後はたのしく過ごそうという考えで生きているとスフレに教わった。
「さて、今日もシッポいただきましょう」
ちょいと離れたところにある小屋の側面に身をひそめると、ドラゴンが必要とする分を取るのは見逃し、必要以上に取ろうとしたところで出て行くよう身構える。
しかし今日はいつもと展開がちがった。ドラゴンがなかなか来ないとじれていたら、急に急に頭上が暗くなる。巨大な影に包まれたせいだから、グーっと顔を上げて一体のドラゴンがいると確認。
(ん……)
ドラゴンはまだ女子力の実を強奪していない。だからして戦う理由が浮かんでいない。理由なき戦闘は意味不明な憎しみを抱くだけだから、やってはいけないとスフレに言われている。よって悠はいきなり自分の姿を見られると戦いになるのかな? どうしよう、困った……などと思ってしまう。
「悠」
突如としてドラゴンから女子声が登場。それは初めて聞く声であると悠は認識する。
「誰?」
見上げる悠が言うと、ドラゴンの巨体がバサバサ音を立てながら地へ降りてくる。そして両足を地面につけた瞬間、スーッと空気を塗り替えるようにして人間女子の姿に変身した。
「わたしはカッサータという」
クラブピンクって色合いのショートボブ、そこにピオニーパープルのカチューシャを着け、薄いピンクのシャツと緑の半そでベストにロングスカート纏い、背中に剣を持っているという少女が自ら名乗った。見た感じの年齢は悠と同じか少し下かというところ。
「そのカッサータがなんか用?」
悠はとりあえず広い場所へと進んでから、お初となる少女に目をやる。
「噂は聞いているし、なかなか強いのも知っている。リヴァイアサンの体内から脱出したシーンをわたしは見た」
「え……」
「そうだ、あのリヴァイアサンは悠がどれほどつよいか見てみたく、わたしが湖にこっそり放ったモノ」
「いや、それはダメでしょう。あれ冗談とかじゃ済まないし」
「そんな事はどうでもいい。わたしが何より問題と思っているのは仲間のドラゴンが腑抜けていること」
「仲間のドラゴン?」
「パネトーネは……まぁ、あれはたしかにアタマが悪いから仕方ないのかもしれない。だがクラフティはまともだと思っていた。それがどうだ、ここ最近は明らかに何かがおかしい」
「どうおかしいのさ」
「そ、それは……うまく説明しづらいが、なんというか……女の芯が少し虫歯っぽくなっているというか、明らかに変なのだ。同じ女、特に意識が高い者同士としては見過ごせない」
カッサータは少しばかり前進して悠との距離を縮める。そして疑り深さと疑問をまったく隠さないとう目で悠をジーっと見つめる。
「話に聞けば悠には魔法があるという。女をおかしくさせるとかなんとか。だから一度会ってみたいと思った。でも、わたしはだまされない。今こうやって悠を見つめていて、話に聞くような胸キュンとか息苦しいなんて起こらない。むしろ逆かな」
「逆?」
「こんなのどこがいいんだ? と嫌悪感が出る」
「嫌悪感……」
「それと悠は巨乳好きとかおっぱい星人とかも聞いた」
「う……ま、まぁ……ね」
「わたしはEカップとか巨乳のつもりなのだが……あまり胸を見ないな」
「えっと……」
「ふん、悠に見つめられたいとは思わないが、なぜかそれに関してはちょっと腹が立つ。もしかするとそれなのか? それが悠の魔法とかいうモノかのか?」
カッサータ、背中の剣をㇰ―っと引き抜き右手に持つと、わたしと勝負しろとか言い出した。
「勝負? なんで?」
「わたしが勝ったらこの世界から出て行って欲しい」
「えぇ……行く場所が無くなっちゃう」
「わたしは悠がいるとこの世界の女がダメになるようで気に入らない」
「いやいや、どうせなら仲良くしようよ。だって……」
「だって、なんだ?」
「男と女は仲良くするために存在するんだよ」
「む……それはウソだ。わたしはジョーカーから、男は女を堕落させる生き物だと聞いている」
「ジョーカー?」
「わたしが尊敬する超長生きな大物ドラゴン。男が存在していたという太古より生き続けている。そのジョーカーが言うからには男は腐れな生き物なのだろう」
「腐れってひどくない?」
「さ、話はもう終わり。剣を抜け」
「ぼく……平和主義者なんだけどなぁ」
悠、背中の剣を抜いて中段構えをとる。相手がやる気マンマンと伝えてくる以上は、それを受けて立つしかない。
(つよい……でもスピードに乗っければわたしの方が速いはず)
上段構えのカッサータ、ジリジリっと動き悠との距離を詰める。そして煽るような風が悠の前髪を撫でたと目にした瞬間、ズワっと残像すら浮かぶほどの速度で接近。悠に向かって剣を振る。
「でやぁぁぁぁ!!!」
カッサータが剣を振る。踊るように舞うようにしかも猛烈なスピードで剣を振る。それは疲れて遅くなるどころからドンドン速度を増していき、あっちこっちから無限の攻撃を放つような絵をつくる。
「速いね」
すべての攻撃を剣で受けながら悠がつぶやいた。
「む……まだまだ!」
カッサータは息を切らすことなく踊り続けたが、互いの剣ががっちり噛み合ったら、ググっと力で押され踊れなくなる。
「う……おのれ……悠……」
「剣の心得。踊る剣に躍動を吹き込むなら、受けて立つ剣にはおのれのエナジーを最大限に吹き込む。そして相手が踊れなくなったら、押して、押して、押して、自分という存在で相手を覆いつくす」
グイグイっとカッサータの剣が悠に押されていく。そして汗を流し始めるカッサータは次第に顔が水平から上向きになっていた。つまり体が押し倒されそうになっている。
(こ、このままでは負ける……しかしわたしにも女としての意地がある。男などという得たいが知れない生物に敗北を喫するなど……)
カッサータ、うぎぎぎぎ!! と声を出しほんの少しばかり体力をごっそり引き出す。剣を両手で持って押されているにも関わらず、わずかな時間とはいえ左手を動かすのは大変に危険。だがそれしかないという事で、鼻血が出そうなほど苦しい時間を耐え左手でもう一本の剣を掴む。
(二刀流?)
悠、カッサータの左腕が自分に向かって振られんとする直前、パッと剣の押し合いを解除。そして相手の左側にある剣が横から上に空振りとなったのを見届けると、反射的に回し蹴りを顔面に入れる。
「きゃんぅ!!!」
顔面に痛い一撃を食らってしまったカッサータ、両手から剣を離すことはしないものの、仰向けに倒れ少し地面を滑ってしまう。
「あ、ごめん……つい……」
ごめんねと左手を垂直にして謝る悠。
「よくも乙女の顔に……」
当然だが顔面を蹴られたことでカッサータの怒りに火が付く。本気の度合いがあまり上がるとよろしくないと言わざるを得ない。だから悠はカッサータが立ち上がったそのとき、剣を一振りして叫ぶ。
「エア斬!」
ブワ! っと音が鳴り空気が一瞬揺らめき、それはドキッとしたカッサータの右肩をかすめた。するとベストと下にあるシャツの双方がなかなか広くビリビリっと破れる。そうすると色白な肌と白いブラのストラップが露出。
「む……ぅ……」
一瞬顔を赤くし左手を動かしかけた。それは剣を捨て左手で肌やブラの露出を隠したいという女子の本能。だがカッサータはググっと腕に力を入れ剣を捨てまいとしっかり握る。そして肩にブラストラップが見える状態で悠にいう。
「いま一瞬……気恥ずかしいと思った。剣を捨て破れたところを見られないよう手で覆い隠そうと思った。でもそれをやるというのは……戦っているのに剣を捨てるというのは負けを認めるのと同じ。わたしはだまされないぞ。恥ずかしくなんかないんだ、そんな卑怯っぽい手にやられたりしない」
つよい女子の心という感じで表情を固めるカッサータはまだ戦う気らしい。だがそれを見ながら悠は剣を背中に戻す。そして赤い顔で両手を合わせ、ごめんよ! と謝る。
「ごめん? いったい何を……」
カッサータがそうつぶやき怪訝な顔をした瞬間だった。なんとスカートの2つあるボタン双方が飛ぶ。そしてスカートはハラーっと地面まで一気にずり落ちる。
「な、な、な、な、な……」
顔面が真っ赤なダリアみたいに染まったカッサータ、両目を下ろしムッチリな両足と白いパンツを確認すると、しかもそれを悠に見られていると思うと、いかな戦闘意識もエラーとなり両手の剣を地面に落としスカートを引き上げる。
「お、おのれ……悠……」
「ごめん、不要な戦闘はしたくなかったから」
悠はそう言うとクルっと回って背中を向けた。スカートはもうふつうに上がらないから手で押さえっ放しにせざるを得ない。だがそれでは剣をとって背中に戻せないから、気の毒なサマは見ないようにしようという配慮。
「な、なんで背を向ける……戦っている最中なんだぞ?」
「そうなんだけど……男は女に礼儀を払わなきゃいけないモノだから」
「もしわたしがいま後ろから攻撃したらどうするんだ」
「まぁ仕方ないよ、こうなったのはぼくのせいだから、女の子のせいにしてはいけないんだ」
「む……ぅ……」
カッサータは2本の剣を背中に戻すと、赤い顔でスカートを引き上げてからドラゴンの姿に戻った。そして今日はこの辺りで引き上げてやると言いながら舞い上がっていくが、そのとき悠はちょっと聞いてみた。
「今日ぼくがここに来るってどうして知ってたの?」
するとドラゴンはとんでもない事を平然と言い返す。パネトーネやクラフティ―を尾行し悠の家を突き止めた。だからこっそり侵入して盗聴器を仕掛けたのだと。
「うそ……」
「ふん、パネトーネにクラフティにスフレなど、いつも女とイチャイチャしている悠は下品に感じる。わたしには悠が女の味方には思えない。ジョーカーが言うように男は女を堕落させるモノと認識するからな」
カッサータはプライドを傷つけられ腹立たしいという声色でそう言うと飛び去って行ったが、その直前にひとつだけ吐き残していった。
「背中を向けたこと、気遣ってくれてありがとうとか、感謝なんかしないからな」
こうして突然に登場したカッサータはひとまず去っていった。その後ろ姿を見つめながら悠は小さな声でつぶやく。
「ぼく平和に仲良くたのしく暮らしたいだけなんだけどなぁ」
「今日の場所は遠いなぁ」
午前8時30分頃にお目当ての場所を目指し歩く悠がぼやいた。女子力の実を作っている畑はたくさんあるが、今日はスフレ宅からかなり離れたところの畑を見張る予定。しかし前世では考えられなかった体力があるので、体に疲れがたまってヒイコラ言うような事はない。前世では40分も歩くとしんどくなった記憶がある。
そして9時、歩き始めてから90分後に予定通り到着。ドラゴンも人間と同じで9時頃から活動し昼になれば昼寝し夕方になれば後はたのしく過ごそうという考えで生きているとスフレに教わった。
「さて、今日もシッポいただきましょう」
ちょいと離れたところにある小屋の側面に身をひそめると、ドラゴンが必要とする分を取るのは見逃し、必要以上に取ろうとしたところで出て行くよう身構える。
しかし今日はいつもと展開がちがった。ドラゴンがなかなか来ないとじれていたら、急に急に頭上が暗くなる。巨大な影に包まれたせいだから、グーっと顔を上げて一体のドラゴンがいると確認。
(ん……)
ドラゴンはまだ女子力の実を強奪していない。だからして戦う理由が浮かんでいない。理由なき戦闘は意味不明な憎しみを抱くだけだから、やってはいけないとスフレに言われている。よって悠はいきなり自分の姿を見られると戦いになるのかな? どうしよう、困った……などと思ってしまう。
「悠」
突如としてドラゴンから女子声が登場。それは初めて聞く声であると悠は認識する。
「誰?」
見上げる悠が言うと、ドラゴンの巨体がバサバサ音を立てながら地へ降りてくる。そして両足を地面につけた瞬間、スーッと空気を塗り替えるようにして人間女子の姿に変身した。
「わたしはカッサータという」
クラブピンクって色合いのショートボブ、そこにピオニーパープルのカチューシャを着け、薄いピンクのシャツと緑の半そでベストにロングスカート纏い、背中に剣を持っているという少女が自ら名乗った。見た感じの年齢は悠と同じか少し下かというところ。
「そのカッサータがなんか用?」
悠はとりあえず広い場所へと進んでから、お初となる少女に目をやる。
「噂は聞いているし、なかなか強いのも知っている。リヴァイアサンの体内から脱出したシーンをわたしは見た」
「え……」
「そうだ、あのリヴァイアサンは悠がどれほどつよいか見てみたく、わたしが湖にこっそり放ったモノ」
「いや、それはダメでしょう。あれ冗談とかじゃ済まないし」
「そんな事はどうでもいい。わたしが何より問題と思っているのは仲間のドラゴンが腑抜けていること」
「仲間のドラゴン?」
「パネトーネは……まぁ、あれはたしかにアタマが悪いから仕方ないのかもしれない。だがクラフティはまともだと思っていた。それがどうだ、ここ最近は明らかに何かがおかしい」
「どうおかしいのさ」
「そ、それは……うまく説明しづらいが、なんというか……女の芯が少し虫歯っぽくなっているというか、明らかに変なのだ。同じ女、特に意識が高い者同士としては見過ごせない」
カッサータは少しばかり前進して悠との距離を縮める。そして疑り深さと疑問をまったく隠さないとう目で悠をジーっと見つめる。
「話に聞けば悠には魔法があるという。女をおかしくさせるとかなんとか。だから一度会ってみたいと思った。でも、わたしはだまされない。今こうやって悠を見つめていて、話に聞くような胸キュンとか息苦しいなんて起こらない。むしろ逆かな」
「逆?」
「こんなのどこがいいんだ? と嫌悪感が出る」
「嫌悪感……」
「それと悠は巨乳好きとかおっぱい星人とかも聞いた」
「う……ま、まぁ……ね」
「わたしはEカップとか巨乳のつもりなのだが……あまり胸を見ないな」
「えっと……」
「ふん、悠に見つめられたいとは思わないが、なぜかそれに関してはちょっと腹が立つ。もしかするとそれなのか? それが悠の魔法とかいうモノかのか?」
カッサータ、背中の剣をㇰ―っと引き抜き右手に持つと、わたしと勝負しろとか言い出した。
「勝負? なんで?」
「わたしが勝ったらこの世界から出て行って欲しい」
「えぇ……行く場所が無くなっちゃう」
「わたしは悠がいるとこの世界の女がダメになるようで気に入らない」
「いやいや、どうせなら仲良くしようよ。だって……」
「だって、なんだ?」
「男と女は仲良くするために存在するんだよ」
「む……それはウソだ。わたしはジョーカーから、男は女を堕落させる生き物だと聞いている」
「ジョーカー?」
「わたしが尊敬する超長生きな大物ドラゴン。男が存在していたという太古より生き続けている。そのジョーカーが言うからには男は腐れな生き物なのだろう」
「腐れってひどくない?」
「さ、話はもう終わり。剣を抜け」
「ぼく……平和主義者なんだけどなぁ」
悠、背中の剣を抜いて中段構えをとる。相手がやる気マンマンと伝えてくる以上は、それを受けて立つしかない。
(つよい……でもスピードに乗っければわたしの方が速いはず)
上段構えのカッサータ、ジリジリっと動き悠との距離を詰める。そして煽るような風が悠の前髪を撫でたと目にした瞬間、ズワっと残像すら浮かぶほどの速度で接近。悠に向かって剣を振る。
「でやぁぁぁぁ!!!」
カッサータが剣を振る。踊るように舞うようにしかも猛烈なスピードで剣を振る。それは疲れて遅くなるどころからドンドン速度を増していき、あっちこっちから無限の攻撃を放つような絵をつくる。
「速いね」
すべての攻撃を剣で受けながら悠がつぶやいた。
「む……まだまだ!」
カッサータは息を切らすことなく踊り続けたが、互いの剣ががっちり噛み合ったら、ググっと力で押され踊れなくなる。
「う……おのれ……悠……」
「剣の心得。踊る剣に躍動を吹き込むなら、受けて立つ剣にはおのれのエナジーを最大限に吹き込む。そして相手が踊れなくなったら、押して、押して、押して、自分という存在で相手を覆いつくす」
グイグイっとカッサータの剣が悠に押されていく。そして汗を流し始めるカッサータは次第に顔が水平から上向きになっていた。つまり体が押し倒されそうになっている。
(こ、このままでは負ける……しかしわたしにも女としての意地がある。男などという得たいが知れない生物に敗北を喫するなど……)
カッサータ、うぎぎぎぎ!! と声を出しほんの少しばかり体力をごっそり引き出す。剣を両手で持って押されているにも関わらず、わずかな時間とはいえ左手を動かすのは大変に危険。だがそれしかないという事で、鼻血が出そうなほど苦しい時間を耐え左手でもう一本の剣を掴む。
(二刀流?)
悠、カッサータの左腕が自分に向かって振られんとする直前、パッと剣の押し合いを解除。そして相手の左側にある剣が横から上に空振りとなったのを見届けると、反射的に回し蹴りを顔面に入れる。
「きゃんぅ!!!」
顔面に痛い一撃を食らってしまったカッサータ、両手から剣を離すことはしないものの、仰向けに倒れ少し地面を滑ってしまう。
「あ、ごめん……つい……」
ごめんねと左手を垂直にして謝る悠。
「よくも乙女の顔に……」
当然だが顔面を蹴られたことでカッサータの怒りに火が付く。本気の度合いがあまり上がるとよろしくないと言わざるを得ない。だから悠はカッサータが立ち上がったそのとき、剣を一振りして叫ぶ。
「エア斬!」
ブワ! っと音が鳴り空気が一瞬揺らめき、それはドキッとしたカッサータの右肩をかすめた。するとベストと下にあるシャツの双方がなかなか広くビリビリっと破れる。そうすると色白な肌と白いブラのストラップが露出。
「む……ぅ……」
一瞬顔を赤くし左手を動かしかけた。それは剣を捨て左手で肌やブラの露出を隠したいという女子の本能。だがカッサータはググっと腕に力を入れ剣を捨てまいとしっかり握る。そして肩にブラストラップが見える状態で悠にいう。
「いま一瞬……気恥ずかしいと思った。剣を捨て破れたところを見られないよう手で覆い隠そうと思った。でもそれをやるというのは……戦っているのに剣を捨てるというのは負けを認めるのと同じ。わたしはだまされないぞ。恥ずかしくなんかないんだ、そんな卑怯っぽい手にやられたりしない」
つよい女子の心という感じで表情を固めるカッサータはまだ戦う気らしい。だがそれを見ながら悠は剣を背中に戻す。そして赤い顔で両手を合わせ、ごめんよ! と謝る。
「ごめん? いったい何を……」
カッサータがそうつぶやき怪訝な顔をした瞬間だった。なんとスカートの2つあるボタン双方が飛ぶ。そしてスカートはハラーっと地面まで一気にずり落ちる。
「な、な、な、な、な……」
顔面が真っ赤なダリアみたいに染まったカッサータ、両目を下ろしムッチリな両足と白いパンツを確認すると、しかもそれを悠に見られていると思うと、いかな戦闘意識もエラーとなり両手の剣を地面に落としスカートを引き上げる。
「お、おのれ……悠……」
「ごめん、不要な戦闘はしたくなかったから」
悠はそう言うとクルっと回って背中を向けた。スカートはもうふつうに上がらないから手で押さえっ放しにせざるを得ない。だがそれでは剣をとって背中に戻せないから、気の毒なサマは見ないようにしようという配慮。
「な、なんで背を向ける……戦っている最中なんだぞ?」
「そうなんだけど……男は女に礼儀を払わなきゃいけないモノだから」
「もしわたしがいま後ろから攻撃したらどうするんだ」
「まぁ仕方ないよ、こうなったのはぼくのせいだから、女の子のせいにしてはいけないんだ」
「む……ぅ……」
カッサータは2本の剣を背中に戻すと、赤い顔でスカートを引き上げてからドラゴンの姿に戻った。そして今日はこの辺りで引き上げてやると言いながら舞い上がっていくが、そのとき悠はちょっと聞いてみた。
「今日ぼくがここに来るってどうして知ってたの?」
するとドラゴンはとんでもない事を平然と言い返す。パネトーネやクラフティ―を尾行し悠の家を突き止めた。だからこっそり侵入して盗聴器を仕掛けたのだと。
「うそ……」
「ふん、パネトーネにクラフティにスフレなど、いつも女とイチャイチャしている悠は下品に感じる。わたしには悠が女の味方には思えない。ジョーカーが言うように男は女を堕落させるモノと認識するからな」
カッサータはプライドを傷つけられ腹立たしいという声色でそう言うと飛び去って行ったが、その直前にひとつだけ吐き残していった。
「背中を向けたこと、気遣ってくれてありがとうとか、感謝なんかしないからな」
こうして突然に登場したカッサータはひとまず去っていった。その後ろ姿を見つめながら悠は小さな声でつぶやく。
「ぼく平和に仲良くたのしく暮らしたいだけなんだけどなぁ」
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