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第十一・クラフティの吹っ切れ?
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第十一・クラフティの吹っ切れ?
「ここか……」
午後5時、くノ一姿の美形巨乳女子って姿になっているクラフティ、問題の店を正面に見て立つ。パネトーネがひとりデレデレするので何事かと聞けば、悠に料理をつくったとか調味料でしくじったとか悠を入院させたとかすごい話がでてきた。だからしてクラフティも何かしら役に立つアイテムが手に入らないかと足を運んだ次第。
「パネトーネとかスフレに遅れを取っているように思う。わたしも積極的に悠へ攻め込んでいかないと」
そう思い意気込むが怪しげな雰囲気にちょっと怯む。どちらかといえば意識高い方の女子であるクラフティにしてみれば、モワーっと浮かぶ湿気みたいな怪しさはけっこう抵抗を感じる。
(えぇい、わたしだって女だ)
Hカップというパネトーネに劣らぬ豊かな胸に勇気を押し込め、胡散臭い空気に満ちた店内へと足を進めた。
「なんと……」
グルーっと見渡す空間にはたっぷりなアイテムが置かれている。それらはどれもこれもイマイチよくわからないとか、誰がどこでつくった? と聞きたくなるような面構えをしている。それをパネトーネは大変におもしろいとか言っていた。
(店員さんに聞いてみるかな)
自分で探すのが面倒くさいというより、見落としてしまうかもしれないということでクラフティはレジに立っている店員と向き合った。
「あの……」
「いらっしゃいませ」
「えっとその、わたし……じゃなく、わたしの姉とかそういう人が欲しがっているんですけどね」
ここでひとつウソが出た。姉などいない、欲しいのは自分、でも正直にいうのが大変に憚れたので上手というより定番っぽいごまかしを出す。
「お姉さまがなにか?」
「そ、その……ほ、ほ、ホレ薬みたいなモノはあるかなぁって……」
「ホレ薬ですか? ちょっと待ってくださいね」
店員がそう口にして歩き出すのを見てクラフティはおどろいた。まさか本当にあるわけ? と子どもっぽいドキドキに心拍数が少し上昇。だがそれは残念な事に空振りに終わってしまう。
「あっと、ごめんなさい、ただいま売り切れ中ですね」
「そ、そうですか」
ググっと上がりかけていた感情がズドっと落下。しかしここでかんたんに引き下がっては女が廃るという事でウソの盛り付けを増やす。
「あの、姉っていうのは照れ屋なんです」
「そうですか」
「その照れ屋を克服するっていうか乗り越えられるような薬ってないですか?」
自ら言いながらクラフティはドキつく。あったらいいけど、やっぱりそんなのはないよね? と半分あきらめな顔。
「克服というか、吹っ切れるための薬ならありますよ」
店員が案内してくれた場所には大量の小袋が吊り下げられている。それらは一見するとキャンデーみたいなと思わせるが、近くで見るとデザインがとても狂った感覚に満ちている。
「あ、これですね、グリーンジュネス」
「グリーンジュネス?」
「未熟な青春という意味です」
「それってどういうモノなんですか?」
「理性的とかおとなしい人ほどブチ切れます」
「ぶ、ブチ切れる?」
「おらぁ、てめぇふざけんじゃねぇ! というノリが出せるわけですね」
「えぇ……」
「見ればお客さんは大変に美人で巨乳な人。きっとお姉さんも似たような人なんでしょう。だったらこれでお姉さんの心を解放させてあげたらどうですか?」
「あぁ……なるほど」
「10粒入りにしてはちょっと値段が高いですが、人生を楽しめると思えば決してぼったくりではないと思いますよ?」
店員の女性がニコっと笑ったので背中を押された。つまりクラフティはそれを購入したという事。いやいや実を言うとそれだけではない。進めれば買ってくれそうな気がすると思った店員に乗せられ、手錠だの縄だのも購入。いったいなぜ? といえば、好きな相手を拘束してわがものにするのも青春ではありませんか? などと言われその気になったせいだ。
「ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる店員を後にクラフティは店を出た。思ったより散財してしまったとやや後悔しているものの、有意義な展開で満足すればいいのだと考え直す。
「よし、ひとまず悠の……ではなくスフレの家か、とりあえずそこに行こう」
ドラゴンになって空をはばたくクラフティには考えている事があった。なぜか悠とキスしてみたいと思うからキスをする。そのあげく大変気になることを確認してみようとも思う。男というモノの下半身はいったいどういう風になっているのか? である。クラフティ本来の性格だけでは悠を押した押したり縛ったりなどできないが、グリーンジュネスを服用すればイケるかも? と本人がやる気になっている。
「ふぅ……」
スフレ宅の近くで人間姿になると、買い物袋からグリーンジェノスの小袋を取り出す。黒地に緑色で落書きみたいなデザインが施され見るからにヤバそうな感がビンビン浮かんでいる。
「だいじょうぶなんだろうか……」
やや大きめの円形錠剤で色はけっこうあざやかなグリーン。口に入れ飲み込むのに一瞬はためらったが、悠を押し倒したいという女子力に満ちた願望には打ち勝てない。だから口に入れると水の入った小瓶を取り出しグイっとやった。
「ぁ……リンゴ味? 意外とおいしいかも」
予想に反する味わいにちょっと警戒心が緩みかけた。なんなら一度に2つか3つ飲もうかなんて大胆になりかける。しかし店員の女性より一度にたくさん飲むと昏睡状態に陥るかもしれないと注意を受けていたので踏みとどまる。
「よし、行こう」
買い物袋を持ってスフレ宅のインターホンを押す。
「あ、クラフティだ」
ひょこっと顔を出したスフレ、パネトーネとちがってクラフティは落ち着いているなぁと思いながら質問した。
「買い物してたの?」
「あ、あぁ……」
「ちょうどよかった、もう6時だから晩ごはんにしようと思っていたの」
「悠は?」
「いまランニング中、もうすぐ帰ってくるよ。だからクラフティもいっしょに晩ごはん食べていけばいいよ」
快くクラフティを家に招くスフレだった。そして悠が帰ってくるまで台所のテーブルで女同士の会話でもしようかと思った。
ところが……ここでクラフティの態度というかキャラクターというか、何かが突然変異を起こす。スフレ! といきなり命令的な口調で名前を呼ぶ。え? っとおどろいたスフレが振り返ろうとしたら、そのままいきなり両腕を後ろに回された。ガチャ! っとつめたく固い音がひとつ発生。それはスフレの色白むっちりな両手首が後方にて手錠されたことを意味する。
「え、ちょっと、何これ」
慌てて体を動かそうとしたら、ジタバタするな! と別人みたいな口調で怒鳴りつけられる。
「スフレ!」
「は、はい……」
「悠と2人暮らし。自分だけ何かいい思いをしていないだろうな?」
「は、はぁ? なに言ってんの? ちょっとクラフティ、どうしたの?」
「わたしは男とはいったいどういうモノか知りたいと思っているんだ。だから男というモノの下半身はどうなっているのも知りたい。スフレ……おまえ、悠の下半身を見たりした事があるか?」
「ないない、わたしだって知らないよ」
「そうか、だったらおとなしくしていてくれ。わたしと悠、つまり男と女の1対1でやるのがすごくたのしい事って気がするから」
「あんた何言ってんの? どうしたのよ一体」
「うるさい!」
クラフティはスフレを縄で縛り始めた。そして体の自由を奪うとクルっとスフレを前に向かせ、縄で縛られた状態の胸をみる。
「勝った」
「なにが?」
「スフレも巨乳だが、わたしの方が上」
「やだもう……クラフティ―、あんたパネトーネみたいになってるよ?」
「だまれ! これはわたしと悠の2人だけの物語なんだからな」
袋からガムテープを取り出すと、それをスフレの口にグワっと貼り付ける。しかもそれ2枚だからスフレはアフアフしながら声が出せない。
「さて、どこに放り込むか」
ちょっとばかり考えたクラフティはスフレの部屋に主を連れていき、クローゼットを開けて感心。
「きれいに片付いて広いこと。これならちょっと窮屈ではあろうが、スフレみたいなチンチクリンなら押し込められるな」
「ふんぅぅぅぐんぅぅんぅ!!」
「足で蹴られると音が出るか。なら両足首も縄で縛っておくか」
「ふむぅむぅんぅぅ!!」
「心配するな、悠の下半身を確認したら自由にしてやる」
言ってクラフティはクローゼットを締めた。そうして何食わぬ顔で悠が帰ってくるのを待つ。
「ただいま」
いい汗を流し腹も空いたと悠が戻ってきた。なんかいいニオイがする、今日の晩ごはん何かなぁと思うとき、わずかとはいえ周囲に対する警戒が緩む。だから突然にドン! と背中を蹴られ床にビッターン! うつ伏せに倒れる。
「な……」
なんだ? と体を起こそうとしたら、それより早く片腕を取られ手首に手錠をかけられる。
「えぇ?」
おどろいたのもつかの間、反対側の方にも手錠をがっちりかけられ後ろで結ばれてしまう。
「いったい誰が!」
モゾモゾっと動き体を仰向けにしてみた。するとそこにはくノ一姿の美人女子が立っている。下から見るとすごい巨乳ってところに思わず目を引っ張られる悠。
「く、クラフティ?」
「おかえり悠、待っていた。ちなみにスフレはお出かけ中」
「待っていたって、この手錠って何?」
悠が両足を動かしジタバタすると、床からバンバンって音が鳴る。
「少し静かにするべし!」
なんとクラフティが悠の胸板をグッと片足で踏みつけたではないか。あまりに似つかわしくない、普段のイメージとちがう行為をされた悠はマジに戸惑う。
「え、く、クラフティ? どうしたの?」
なんかフンイキが危なっかしいぞという事で悠は静かになる。ほんとうにクラフティなのか? と疑りながらだまって相手と見つめ合う。
「悠」
かがんだクラフティ、一見すれば冷静で上品な女子。だが次に口から出たセリフはぶっ飛んでいた。
「男というモノの下半身が見たい。だから見せてもらうぞ、悠」
「ブッ! く、クラフティ、なに、どうしたの?」
「だからイチイチうるさい。あんまりさわぐな、男っていうのは女よりおとなしそうに見えるのにちがうというのか?」
「いやいや、話の内容によるんだって」
「とにかく悠の下半身を見る!」
息まくクラフティの両手が悠のズボンに伸びた。が、左手の平が股間に当たったらドキッとして硬直。
「あんぅ……」
思わず悠が赤い顔でブルってしまう。
「え、え? な、なんだ……いったい何があるんだ?」
クラフティは初めて触れて感じるモノにまったく想像する事ができずアタマが白くなる。これはちょっと危険な展開だと予感する悠、真っ赤な顔をしつつまず大事な事を言っておく。
「クラフティ……こ、これは……その……男として重要なお願い」
「な、なんだ?」
「まちがってもつよくギュッとにぎったりとかしないよう。それをされたら男は死んでしまうんだ」
「な、なに? 死ぬ?」
「そ、そうだよ……ウソじゃない……そしてぼくは死にたくない」
「じゃ、じゃぁどうしたらいいんだ?」
「どうしても触るんだったら撫でるだけにして……あるいはほんのりクゥーっと指先でつかむような、その程度にして、それなら死なずに済むから」
クラフティは悠がウソを言っていないと感じたし、たとえキャラが変わっても死という言葉は無視できなかった。だからここは悠の言う事に従うとする。
「あん……ぅ」
ズボンの上からとはいえ、クラフティのやわらかい手にやんわり撫でられるとたまらない。悠は何度も両足をガクブルさせる。
「なんかこう……中途半端にやわらかいようなフニャっとした感じだ。悠、これはいったいなんだ?」
「えっとその……男の象徴というかなんというか……」
「象徴……で、さっきから何度も震えているが、それはなんだ? わたしに股間をさわられて不愉快だというのか?」
「いや、その……感じてしまうから……」
「感じる? キモチいいって事か?」
クラフティ―は何も知らないくせして官能的に手を動かしやんわりスーッと股間をなでる。そして悠が恥じらいの顔で身震いしたあげく、普段は聞かない悶え声を落とすことにうれしい驚きをおぼえた。
「く、クラフティ……あ、あんまり長々触るのは……」
「でも悠はわたしに触られてキモチいいのだろう?」
「あんぅ……ん……」
「そ、その声……まるで女みたいな」
クラフティは不思議な感動に豊かな胸を震わせた。なぜかとてもたのしい、理由はわからないが悠が感じると自分の手柄みたいに思えてハンパない喜びが胸に沸いてくるなどなど思う。
だがここで悠のこらえていたひとつが一線超えた。なんとか初期状態にとどめていたのだが、これだけ長々触られたあげくかがみ込んでいるクラフティの豊満でやわらかそうって胸のふくらみ具合を見ているとつい制御のネジが一本外れる。
「え……」
ここでクラフティの表情がカチっと固まった。悠の股間に当てている手の動きも基本的に止まっており、全神経がおどろきという4文字に集中している。
「こ、これ……」
そうなのだ、クラフティのきれいでやわらかい手の平や指先は、触っているモノに生じた変化に衝撃を受けている。
「悠、いったいなんだ、きゅ、急に固くなってきたぞ」
「う……」
「しかも固いだけじゃない、なんか大きくなっているように思う」
「うん……その通りなんだ」
「大きくなる? 何が? いったいどうして?」
スフレは思わず股間から手を離し、前屈みな体を起こしてから悠を見下ろす。そして見たり触ったり触られたり性的に感じると、男のモノは新たなステージに進むのだと説明を受けた。
「新たなステージ?」
「ま、まぁね……」
「え、いま、見たり触ったり触られたりと言ったか? だったら自分で触っても感じるのか?」
「もちろん」
「いや、待て……悠、悠はわたしみたいな女を見るだけでもこんな風に感じたりしていたのか?」
「あぅ、そ、それは……」
一瞬の詰まり、それはクラフティに衝撃と確信をもたらす。そして妙な期待感を質問に変換する。
「悠、女なら誰でも下半身は新たなステージに行くのか?」
「い、いや、誰でもって事はない」
「じゃぁ、どういう女だ?」
「ぅ……」
「言わないとつよく握るぞ? それをやると死ぬんだろう?」
「わ、わかった言うから止めて」
「じゃぁ早く言え」
「た、たとえばそのスフレとかパネトーネとかクラフティとか」
「はぁ? わたしだけじゃない? パネトーネもスフレも?」
クラフティはなぜかどうしてか屈辱だと思った。なぜあんなバカな女もしくはチンチクリンと自分がいっしょにされるのだ? とはげしい疑問が怒りに変わりかける。だがここでピン! と脳内電球が点灯。
「あん? わたし……パネトーネ、スフレなどなどっていう事は、つまりその悠はおっぱいの大きい女子が好きだって事か?」
「ぅ……」
「そうか、それならスフレやパネトーネに反応しても不思議ではないのかな。いや、しかしなんか腹が立つ、腹が立つぞ、悠!」
クラフティ―がグッと前のめりになると、グワーッとすごい勢いで悠の首を両手で絞め始める。
「んぅぉぅ……ぅう……」
シュワーっと青くなる悠の顔、彼は本気で思った……殺されると。
「うん?」
また何か思ったのかクラフティの動きが止まった。そして見るだけで感じるという事はと言いながらスクっと立ち上がる。
「悠、もしここでわたしが脱いだらどうなる?」
「う……」
「脱いでブラ姿とか裸になったら、悠はものすごく喜ぶとみた、ちがうか?」
「う、うれしいけど、冗談通じなくなったら怖いからダメ」
「冗談が通じなくなる?」
「お、男が女に欲情してガマンできないとか、それってけっこう大変なわけで」
「大変……よし! 脱ぐ」
「なんでそうなるんだよ」
「どうしてかはわからない。でもいま悠が言った大変というのは、女にとっては名誉な事という気がする。わたしという女の直感だ」
クラフティ、悠のヒザ辺りをまたいで立つ。そして青ざめている悠を見下ろしながら、ゆっくりと帯を外し始める。
「ぅ……」
それはダメだ、本音を言えば見たいけど……と、複雑な思いに駆られる悠の足がジタバタ動くと、それはクラフティの両足に辺りますます持ってやる気を促す結果になるのだった。
ハラっと落ちた帯、するとクラフティは顔を赤くし悠を見つめ下しながら悩むような声を落とす。
「な、なんだろう……今からブラ姿を見せようと思うと、なんでかものすごく恥ずかしい。しかも屈辱っぽい気もする」
「だ、だったら脱がなくていいよ」
「いや、でも悠に見せたいって女として疼く。だから脱ぐ」
クラフティ―の両手が帯をつかんで緩め始める。そしてスルスルっと女の感情を表現するかのように帯は下へと落ちていく。するとクラフティ―は両手でまとっているモノをつかむと悩める乙女のようにつぶやく。
「なぜか……屈辱的に気恥ずかしい、なぜなんだ……」
「そ、そんなに言うなら脱がなくていいよ」
「いや、脱いで悠に見せなければ女として納得できないという気もする、悠、いったいおまえはわたしにどんな魔法をかけているというんだ!」
「いや、だから……そういう魔法は持っていない」
「脱ぐ! 悠を震えさせたいのだから仕方ないだろう!」
クラフティがバッと纏っているモノを広げた。するとベージュ色のフルカップってふくらみと、色白ふっくらな谷間が揺れ動く。そして少し体を前に倒して腕をヌイたりする時、フルフルっと揺れて悠の心を鷲掴みにする。
「あぁうんぅ……」
両手を後ろに結ばれている悠、クラフティのブラ姿を見上げたら落ち着いてなどいられない。両足を苦しそうに本気でジタバタ動かす。
「その反応……なぜだかすごくうれしい。女としてものすごくホメられているように感じる」
クラフティはそう言うと少し前屈みになって両腕を後ろに回す。もう悠が何かを言っても聞く耳は持たないようで、上半身を素っ裸にせんとホックを外そうと手を動かす。
「う……く、クラフティ」
これはもう腹をくくらねばならないのだろうかと、悠は男子の活力に満ちまくるアレを意識しながら両足をモゾモゾ動かす。
しかしブラのホックをひとつ外したところで、クラフティの脳にズキ! っと痛みが走る。
「あんぅ!」
ビクン! となって目を丸くしたまま固まるクラフティ。
「え、クラフティ、どうしたの?」
ブラを外されては困るとしながらも、可能なら見てみたいと思う悠が心配して声をかける。
「え、えぇ? な、なにこれ、わたし……いったい何をしている?」
どうやらここで効き目というのが切れたらしい。真っ赤な顔になって両腕で胸を隠すクラフティ、床に転がる悠を見て動揺のギアを一段上げる。
「ゆ、悠? なにしてる」
「な、なにって……」
悠はゴロっと寝返ると手錠の両腕を見せ、クラフティがやったんじゃないかと拗ねたような声で言ってやる。
「あ……ちょ、ちょっと待って」
クラフティは大急ぎで服を着て帯を締める。そしてアタフタしながら袋の中から鍵を取り出し手錠を外してやった。
「悠……ご、ごめん……ごめんなさい!」
立ち上がるとすぐアタマを下げるクラフティだが、床を見る目からうっすら涙が落ちる。それは自分がとんでもない事をした想像を絶する恥ずかしさと、悠に幻滅されたであろって傷ついた心のせい。
「ゆ、悠……わ、わたしは……」
「な、なに?」
「人に迷惑をかけてしまった以上、死んでお詫びするしかない!」
袋に入れていた自分の剣を取り出すと、それを首に当てて自決しようってアクションに流れる。
「ちょ、ちょ、ちょ、バカ!」
悠は慌てて剣を取り上げると、何やっているんだよと少し諫める。
「わ、わたしは恥ずかしくてたまらないんだ」
クラフティの目に溜まる涙の量はどんどん増えていく。その表情からは恥ずかしいから死なせて欲しいという訴えがにじんでいる。
「死ぬ事はない、大げさだよクラフティは」
「そんな事ない、だってわたしは……」
「だって?」
「へ、変な薬を飲んで性格のカベを超えようとしたし、悠に迷惑がかかるカタチで無理やり下半身を見ようとした。こんな過ち、あってはならない」
「クラフティ」
「な、なんだ?」
悠はスーッとクラフティに接近すると、ドキッとした相手を真正面からギュッと抱きしめた。あぁ、なんていいニオイ、なんてやわらかい弾力、なんという心地よさなどなど重い顔を赤くしながらも、悠はクラフティに大事なことを伝える。
「クラフティ」
「な、なに?」
「誰だってまちがいは犯すモノだよ。その度に死んでたら命なんていくつあっても足りない」
「で、でも……」
「それにクラフティ、性格を変えようなんて思わなくてもいいよ。なぜだと思う?」
「な、なぜ?」
「今のままでもクラフティは十分魅力的な女の子だから。そうだよ、とってもステキな女の子だよ」
悠は相手をギュッと抱きしめながら、ついでだからということで頭を少しばかりナデナデしてやる。
「ゆ、悠……」
「さ、もう忘れて、いっしょに晩ごはん食べよう」
悠がそう言って体を離すと、クラフティの胸はクゥンと感じさせられ目が周りそうだった。
「それにしてもスフレはどこに行ったんだ?」
悠のその声を聞いてクラフティは内心焦る。いませっかくいい感じだったのに、ここでクラフティの事を打ち明けるとフンイキが台無しになるんじゃないか? と。それもまたあざとい女だと自覚しつつ、このフンイキを薄めたくないということで悠に言った。
「悠、お願いがあるんだけど、ちょっとそこらを見てきてもらってもいい?」
「あぁ、そうだね、行ってくるよ」
悠がそう言って家を出たら、今だ! とばかりクラフティはスフレの部屋に入る。しかし怒っているだろうなぁと思いながらアタマをかく。そして謝りの言葉以上に考えてしまうのは、散歩していたってウソを吐いてくれないかなぁってお願いすること。
(わたしはもしかするとゲスな女なのかもしれない)
ほんのり罪悪感を持ちながらも、先ほど悠に抱きしめられたいい感じとかフンイキを失いたくないと思いながら、クラフティはクローゼットを開けるのだった。
「ここか……」
午後5時、くノ一姿の美形巨乳女子って姿になっているクラフティ、問題の店を正面に見て立つ。パネトーネがひとりデレデレするので何事かと聞けば、悠に料理をつくったとか調味料でしくじったとか悠を入院させたとかすごい話がでてきた。だからしてクラフティも何かしら役に立つアイテムが手に入らないかと足を運んだ次第。
「パネトーネとかスフレに遅れを取っているように思う。わたしも積極的に悠へ攻め込んでいかないと」
そう思い意気込むが怪しげな雰囲気にちょっと怯む。どちらかといえば意識高い方の女子であるクラフティにしてみれば、モワーっと浮かぶ湿気みたいな怪しさはけっこう抵抗を感じる。
(えぇい、わたしだって女だ)
Hカップというパネトーネに劣らぬ豊かな胸に勇気を押し込め、胡散臭い空気に満ちた店内へと足を進めた。
「なんと……」
グルーっと見渡す空間にはたっぷりなアイテムが置かれている。それらはどれもこれもイマイチよくわからないとか、誰がどこでつくった? と聞きたくなるような面構えをしている。それをパネトーネは大変におもしろいとか言っていた。
(店員さんに聞いてみるかな)
自分で探すのが面倒くさいというより、見落としてしまうかもしれないということでクラフティはレジに立っている店員と向き合った。
「あの……」
「いらっしゃいませ」
「えっとその、わたし……じゃなく、わたしの姉とかそういう人が欲しがっているんですけどね」
ここでひとつウソが出た。姉などいない、欲しいのは自分、でも正直にいうのが大変に憚れたので上手というより定番っぽいごまかしを出す。
「お姉さまがなにか?」
「そ、その……ほ、ほ、ホレ薬みたいなモノはあるかなぁって……」
「ホレ薬ですか? ちょっと待ってくださいね」
店員がそう口にして歩き出すのを見てクラフティはおどろいた。まさか本当にあるわけ? と子どもっぽいドキドキに心拍数が少し上昇。だがそれは残念な事に空振りに終わってしまう。
「あっと、ごめんなさい、ただいま売り切れ中ですね」
「そ、そうですか」
ググっと上がりかけていた感情がズドっと落下。しかしここでかんたんに引き下がっては女が廃るという事でウソの盛り付けを増やす。
「あの、姉っていうのは照れ屋なんです」
「そうですか」
「その照れ屋を克服するっていうか乗り越えられるような薬ってないですか?」
自ら言いながらクラフティはドキつく。あったらいいけど、やっぱりそんなのはないよね? と半分あきらめな顔。
「克服というか、吹っ切れるための薬ならありますよ」
店員が案内してくれた場所には大量の小袋が吊り下げられている。それらは一見するとキャンデーみたいなと思わせるが、近くで見るとデザインがとても狂った感覚に満ちている。
「あ、これですね、グリーンジュネス」
「グリーンジュネス?」
「未熟な青春という意味です」
「それってどういうモノなんですか?」
「理性的とかおとなしい人ほどブチ切れます」
「ぶ、ブチ切れる?」
「おらぁ、てめぇふざけんじゃねぇ! というノリが出せるわけですね」
「えぇ……」
「見ればお客さんは大変に美人で巨乳な人。きっとお姉さんも似たような人なんでしょう。だったらこれでお姉さんの心を解放させてあげたらどうですか?」
「あぁ……なるほど」
「10粒入りにしてはちょっと値段が高いですが、人生を楽しめると思えば決してぼったくりではないと思いますよ?」
店員の女性がニコっと笑ったので背中を押された。つまりクラフティはそれを購入したという事。いやいや実を言うとそれだけではない。進めれば買ってくれそうな気がすると思った店員に乗せられ、手錠だの縄だのも購入。いったいなぜ? といえば、好きな相手を拘束してわがものにするのも青春ではありませんか? などと言われその気になったせいだ。
「ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる店員を後にクラフティは店を出た。思ったより散財してしまったとやや後悔しているものの、有意義な展開で満足すればいいのだと考え直す。
「よし、ひとまず悠の……ではなくスフレの家か、とりあえずそこに行こう」
ドラゴンになって空をはばたくクラフティには考えている事があった。なぜか悠とキスしてみたいと思うからキスをする。そのあげく大変気になることを確認してみようとも思う。男というモノの下半身はいったいどういう風になっているのか? である。クラフティ本来の性格だけでは悠を押した押したり縛ったりなどできないが、グリーンジュネスを服用すればイケるかも? と本人がやる気になっている。
「ふぅ……」
スフレ宅の近くで人間姿になると、買い物袋からグリーンジェノスの小袋を取り出す。黒地に緑色で落書きみたいなデザインが施され見るからにヤバそうな感がビンビン浮かんでいる。
「だいじょうぶなんだろうか……」
やや大きめの円形錠剤で色はけっこうあざやかなグリーン。口に入れ飲み込むのに一瞬はためらったが、悠を押し倒したいという女子力に満ちた願望には打ち勝てない。だから口に入れると水の入った小瓶を取り出しグイっとやった。
「ぁ……リンゴ味? 意外とおいしいかも」
予想に反する味わいにちょっと警戒心が緩みかけた。なんなら一度に2つか3つ飲もうかなんて大胆になりかける。しかし店員の女性より一度にたくさん飲むと昏睡状態に陥るかもしれないと注意を受けていたので踏みとどまる。
「よし、行こう」
買い物袋を持ってスフレ宅のインターホンを押す。
「あ、クラフティだ」
ひょこっと顔を出したスフレ、パネトーネとちがってクラフティは落ち着いているなぁと思いながら質問した。
「買い物してたの?」
「あ、あぁ……」
「ちょうどよかった、もう6時だから晩ごはんにしようと思っていたの」
「悠は?」
「いまランニング中、もうすぐ帰ってくるよ。だからクラフティもいっしょに晩ごはん食べていけばいいよ」
快くクラフティを家に招くスフレだった。そして悠が帰ってくるまで台所のテーブルで女同士の会話でもしようかと思った。
ところが……ここでクラフティの態度というかキャラクターというか、何かが突然変異を起こす。スフレ! といきなり命令的な口調で名前を呼ぶ。え? っとおどろいたスフレが振り返ろうとしたら、そのままいきなり両腕を後ろに回された。ガチャ! っとつめたく固い音がひとつ発生。それはスフレの色白むっちりな両手首が後方にて手錠されたことを意味する。
「え、ちょっと、何これ」
慌てて体を動かそうとしたら、ジタバタするな! と別人みたいな口調で怒鳴りつけられる。
「スフレ!」
「は、はい……」
「悠と2人暮らし。自分だけ何かいい思いをしていないだろうな?」
「は、はぁ? なに言ってんの? ちょっとクラフティ、どうしたの?」
「わたしは男とはいったいどういうモノか知りたいと思っているんだ。だから男というモノの下半身はどうなっているのも知りたい。スフレ……おまえ、悠の下半身を見たりした事があるか?」
「ないない、わたしだって知らないよ」
「そうか、だったらおとなしくしていてくれ。わたしと悠、つまり男と女の1対1でやるのがすごくたのしい事って気がするから」
「あんた何言ってんの? どうしたのよ一体」
「うるさい!」
クラフティはスフレを縄で縛り始めた。そして体の自由を奪うとクルっとスフレを前に向かせ、縄で縛られた状態の胸をみる。
「勝った」
「なにが?」
「スフレも巨乳だが、わたしの方が上」
「やだもう……クラフティ―、あんたパネトーネみたいになってるよ?」
「だまれ! これはわたしと悠の2人だけの物語なんだからな」
袋からガムテープを取り出すと、それをスフレの口にグワっと貼り付ける。しかもそれ2枚だからスフレはアフアフしながら声が出せない。
「さて、どこに放り込むか」
ちょっとばかり考えたクラフティはスフレの部屋に主を連れていき、クローゼットを開けて感心。
「きれいに片付いて広いこと。これならちょっと窮屈ではあろうが、スフレみたいなチンチクリンなら押し込められるな」
「ふんぅぅぅぐんぅぅんぅ!!」
「足で蹴られると音が出るか。なら両足首も縄で縛っておくか」
「ふむぅむぅんぅぅ!!」
「心配するな、悠の下半身を確認したら自由にしてやる」
言ってクラフティはクローゼットを締めた。そうして何食わぬ顔で悠が帰ってくるのを待つ。
「ただいま」
いい汗を流し腹も空いたと悠が戻ってきた。なんかいいニオイがする、今日の晩ごはん何かなぁと思うとき、わずかとはいえ周囲に対する警戒が緩む。だから突然にドン! と背中を蹴られ床にビッターン! うつ伏せに倒れる。
「な……」
なんだ? と体を起こそうとしたら、それより早く片腕を取られ手首に手錠をかけられる。
「えぇ?」
おどろいたのもつかの間、反対側の方にも手錠をがっちりかけられ後ろで結ばれてしまう。
「いったい誰が!」
モゾモゾっと動き体を仰向けにしてみた。するとそこにはくノ一姿の美人女子が立っている。下から見るとすごい巨乳ってところに思わず目を引っ張られる悠。
「く、クラフティ?」
「おかえり悠、待っていた。ちなみにスフレはお出かけ中」
「待っていたって、この手錠って何?」
悠が両足を動かしジタバタすると、床からバンバンって音が鳴る。
「少し静かにするべし!」
なんとクラフティが悠の胸板をグッと片足で踏みつけたではないか。あまりに似つかわしくない、普段のイメージとちがう行為をされた悠はマジに戸惑う。
「え、く、クラフティ? どうしたの?」
なんかフンイキが危なっかしいぞという事で悠は静かになる。ほんとうにクラフティなのか? と疑りながらだまって相手と見つめ合う。
「悠」
かがんだクラフティ、一見すれば冷静で上品な女子。だが次に口から出たセリフはぶっ飛んでいた。
「男というモノの下半身が見たい。だから見せてもらうぞ、悠」
「ブッ! く、クラフティ、なに、どうしたの?」
「だからイチイチうるさい。あんまりさわぐな、男っていうのは女よりおとなしそうに見えるのにちがうというのか?」
「いやいや、話の内容によるんだって」
「とにかく悠の下半身を見る!」
息まくクラフティの両手が悠のズボンに伸びた。が、左手の平が股間に当たったらドキッとして硬直。
「あんぅ……」
思わず悠が赤い顔でブルってしまう。
「え、え? な、なんだ……いったい何があるんだ?」
クラフティは初めて触れて感じるモノにまったく想像する事ができずアタマが白くなる。これはちょっと危険な展開だと予感する悠、真っ赤な顔をしつつまず大事な事を言っておく。
「クラフティ……こ、これは……その……男として重要なお願い」
「な、なんだ?」
「まちがってもつよくギュッとにぎったりとかしないよう。それをされたら男は死んでしまうんだ」
「な、なに? 死ぬ?」
「そ、そうだよ……ウソじゃない……そしてぼくは死にたくない」
「じゃ、じゃぁどうしたらいいんだ?」
「どうしても触るんだったら撫でるだけにして……あるいはほんのりクゥーっと指先でつかむような、その程度にして、それなら死なずに済むから」
クラフティは悠がウソを言っていないと感じたし、たとえキャラが変わっても死という言葉は無視できなかった。だからここは悠の言う事に従うとする。
「あん……ぅ」
ズボンの上からとはいえ、クラフティのやわらかい手にやんわり撫でられるとたまらない。悠は何度も両足をガクブルさせる。
「なんかこう……中途半端にやわらかいようなフニャっとした感じだ。悠、これはいったいなんだ?」
「えっとその……男の象徴というかなんというか……」
「象徴……で、さっきから何度も震えているが、それはなんだ? わたしに股間をさわられて不愉快だというのか?」
「いや、その……感じてしまうから……」
「感じる? キモチいいって事か?」
クラフティ―は何も知らないくせして官能的に手を動かしやんわりスーッと股間をなでる。そして悠が恥じらいの顔で身震いしたあげく、普段は聞かない悶え声を落とすことにうれしい驚きをおぼえた。
「く、クラフティ……あ、あんまり長々触るのは……」
「でも悠はわたしに触られてキモチいいのだろう?」
「あんぅ……ん……」
「そ、その声……まるで女みたいな」
クラフティは不思議な感動に豊かな胸を震わせた。なぜかとてもたのしい、理由はわからないが悠が感じると自分の手柄みたいに思えてハンパない喜びが胸に沸いてくるなどなど思う。
だがここで悠のこらえていたひとつが一線超えた。なんとか初期状態にとどめていたのだが、これだけ長々触られたあげくかがみ込んでいるクラフティの豊満でやわらかそうって胸のふくらみ具合を見ているとつい制御のネジが一本外れる。
「え……」
ここでクラフティの表情がカチっと固まった。悠の股間に当てている手の動きも基本的に止まっており、全神経がおどろきという4文字に集中している。
「こ、これ……」
そうなのだ、クラフティのきれいでやわらかい手の平や指先は、触っているモノに生じた変化に衝撃を受けている。
「悠、いったいなんだ、きゅ、急に固くなってきたぞ」
「う……」
「しかも固いだけじゃない、なんか大きくなっているように思う」
「うん……その通りなんだ」
「大きくなる? 何が? いったいどうして?」
スフレは思わず股間から手を離し、前屈みな体を起こしてから悠を見下ろす。そして見たり触ったり触られたり性的に感じると、男のモノは新たなステージに進むのだと説明を受けた。
「新たなステージ?」
「ま、まぁね……」
「え、いま、見たり触ったり触られたりと言ったか? だったら自分で触っても感じるのか?」
「もちろん」
「いや、待て……悠、悠はわたしみたいな女を見るだけでもこんな風に感じたりしていたのか?」
「あぅ、そ、それは……」
一瞬の詰まり、それはクラフティに衝撃と確信をもたらす。そして妙な期待感を質問に変換する。
「悠、女なら誰でも下半身は新たなステージに行くのか?」
「い、いや、誰でもって事はない」
「じゃぁ、どういう女だ?」
「ぅ……」
「言わないとつよく握るぞ? それをやると死ぬんだろう?」
「わ、わかった言うから止めて」
「じゃぁ早く言え」
「た、たとえばそのスフレとかパネトーネとかクラフティとか」
「はぁ? わたしだけじゃない? パネトーネもスフレも?」
クラフティはなぜかどうしてか屈辱だと思った。なぜあんなバカな女もしくはチンチクリンと自分がいっしょにされるのだ? とはげしい疑問が怒りに変わりかける。だがここでピン! と脳内電球が点灯。
「あん? わたし……パネトーネ、スフレなどなどっていう事は、つまりその悠はおっぱいの大きい女子が好きだって事か?」
「ぅ……」
「そうか、それならスフレやパネトーネに反応しても不思議ではないのかな。いや、しかしなんか腹が立つ、腹が立つぞ、悠!」
クラフティ―がグッと前のめりになると、グワーッとすごい勢いで悠の首を両手で絞め始める。
「んぅぉぅ……ぅう……」
シュワーっと青くなる悠の顔、彼は本気で思った……殺されると。
「うん?」
また何か思ったのかクラフティの動きが止まった。そして見るだけで感じるという事はと言いながらスクっと立ち上がる。
「悠、もしここでわたしが脱いだらどうなる?」
「う……」
「脱いでブラ姿とか裸になったら、悠はものすごく喜ぶとみた、ちがうか?」
「う、うれしいけど、冗談通じなくなったら怖いからダメ」
「冗談が通じなくなる?」
「お、男が女に欲情してガマンできないとか、それってけっこう大変なわけで」
「大変……よし! 脱ぐ」
「なんでそうなるんだよ」
「どうしてかはわからない。でもいま悠が言った大変というのは、女にとっては名誉な事という気がする。わたしという女の直感だ」
クラフティ、悠のヒザ辺りをまたいで立つ。そして青ざめている悠を見下ろしながら、ゆっくりと帯を外し始める。
「ぅ……」
それはダメだ、本音を言えば見たいけど……と、複雑な思いに駆られる悠の足がジタバタ動くと、それはクラフティの両足に辺りますます持ってやる気を促す結果になるのだった。
ハラっと落ちた帯、するとクラフティは顔を赤くし悠を見つめ下しながら悩むような声を落とす。
「な、なんだろう……今からブラ姿を見せようと思うと、なんでかものすごく恥ずかしい。しかも屈辱っぽい気もする」
「だ、だったら脱がなくていいよ」
「いや、でも悠に見せたいって女として疼く。だから脱ぐ」
クラフティ―の両手が帯をつかんで緩め始める。そしてスルスルっと女の感情を表現するかのように帯は下へと落ちていく。するとクラフティ―は両手でまとっているモノをつかむと悩める乙女のようにつぶやく。
「なぜか……屈辱的に気恥ずかしい、なぜなんだ……」
「そ、そんなに言うなら脱がなくていいよ」
「いや、脱いで悠に見せなければ女として納得できないという気もする、悠、いったいおまえはわたしにどんな魔法をかけているというんだ!」
「いや、だから……そういう魔法は持っていない」
「脱ぐ! 悠を震えさせたいのだから仕方ないだろう!」
クラフティがバッと纏っているモノを広げた。するとベージュ色のフルカップってふくらみと、色白ふっくらな谷間が揺れ動く。そして少し体を前に倒して腕をヌイたりする時、フルフルっと揺れて悠の心を鷲掴みにする。
「あぁうんぅ……」
両手を後ろに結ばれている悠、クラフティのブラ姿を見上げたら落ち着いてなどいられない。両足を苦しそうに本気でジタバタ動かす。
「その反応……なぜだかすごくうれしい。女としてものすごくホメられているように感じる」
クラフティはそう言うと少し前屈みになって両腕を後ろに回す。もう悠が何かを言っても聞く耳は持たないようで、上半身を素っ裸にせんとホックを外そうと手を動かす。
「う……く、クラフティ」
これはもう腹をくくらねばならないのだろうかと、悠は男子の活力に満ちまくるアレを意識しながら両足をモゾモゾ動かす。
しかしブラのホックをひとつ外したところで、クラフティの脳にズキ! っと痛みが走る。
「あんぅ!」
ビクン! となって目を丸くしたまま固まるクラフティ。
「え、クラフティ、どうしたの?」
ブラを外されては困るとしながらも、可能なら見てみたいと思う悠が心配して声をかける。
「え、えぇ? な、なにこれ、わたし……いったい何をしている?」
どうやらここで効き目というのが切れたらしい。真っ赤な顔になって両腕で胸を隠すクラフティ、床に転がる悠を見て動揺のギアを一段上げる。
「ゆ、悠? なにしてる」
「な、なにって……」
悠はゴロっと寝返ると手錠の両腕を見せ、クラフティがやったんじゃないかと拗ねたような声で言ってやる。
「あ……ちょ、ちょっと待って」
クラフティは大急ぎで服を着て帯を締める。そしてアタフタしながら袋の中から鍵を取り出し手錠を外してやった。
「悠……ご、ごめん……ごめんなさい!」
立ち上がるとすぐアタマを下げるクラフティだが、床を見る目からうっすら涙が落ちる。それは自分がとんでもない事をした想像を絶する恥ずかしさと、悠に幻滅されたであろって傷ついた心のせい。
「ゆ、悠……わ、わたしは……」
「な、なに?」
「人に迷惑をかけてしまった以上、死んでお詫びするしかない!」
袋に入れていた自分の剣を取り出すと、それを首に当てて自決しようってアクションに流れる。
「ちょ、ちょ、ちょ、バカ!」
悠は慌てて剣を取り上げると、何やっているんだよと少し諫める。
「わ、わたしは恥ずかしくてたまらないんだ」
クラフティの目に溜まる涙の量はどんどん増えていく。その表情からは恥ずかしいから死なせて欲しいという訴えがにじんでいる。
「死ぬ事はない、大げさだよクラフティは」
「そんな事ない、だってわたしは……」
「だって?」
「へ、変な薬を飲んで性格のカベを超えようとしたし、悠に迷惑がかかるカタチで無理やり下半身を見ようとした。こんな過ち、あってはならない」
「クラフティ」
「な、なんだ?」
悠はスーッとクラフティに接近すると、ドキッとした相手を真正面からギュッと抱きしめた。あぁ、なんていいニオイ、なんてやわらかい弾力、なんという心地よさなどなど重い顔を赤くしながらも、悠はクラフティに大事なことを伝える。
「クラフティ」
「な、なに?」
「誰だってまちがいは犯すモノだよ。その度に死んでたら命なんていくつあっても足りない」
「で、でも……」
「それにクラフティ、性格を変えようなんて思わなくてもいいよ。なぜだと思う?」
「な、なぜ?」
「今のままでもクラフティは十分魅力的な女の子だから。そうだよ、とってもステキな女の子だよ」
悠は相手をギュッと抱きしめながら、ついでだからということで頭を少しばかりナデナデしてやる。
「ゆ、悠……」
「さ、もう忘れて、いっしょに晩ごはん食べよう」
悠がそう言って体を離すと、クラフティの胸はクゥンと感じさせられ目が周りそうだった。
「それにしてもスフレはどこに行ったんだ?」
悠のその声を聞いてクラフティは内心焦る。いませっかくいい感じだったのに、ここでクラフティの事を打ち明けるとフンイキが台無しになるんじゃないか? と。それもまたあざとい女だと自覚しつつ、このフンイキを薄めたくないということで悠に言った。
「悠、お願いがあるんだけど、ちょっとそこらを見てきてもらってもいい?」
「あぁ、そうだね、行ってくるよ」
悠がそう言って家を出たら、今だ! とばかりクラフティはスフレの部屋に入る。しかし怒っているだろうなぁと思いながらアタマをかく。そして謝りの言葉以上に考えてしまうのは、散歩していたってウソを吐いてくれないかなぁってお願いすること。
(わたしはもしかするとゲスな女なのかもしれない)
ほんのり罪悪感を持ちながらも、先ほど悠に抱きしめられたいい感じとかフンイキを失いたくないと思いながら、クラフティはクローゼットを開けるのだった。
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